相続が始まる前に知っておきたい遺産相続手続きの基礎知識

相続が始まる前に知っておきたい遺産相続手続きの基礎知識

ビジネス 2018.08.23

いざという時に慌てないための遺産相続の基本

自分の親がなくなったときにしなければならない手続きが遺産の相続です。相続人が自分一人であったり、遺言状が残されているのであれば、手続きとしては楽です。しかし、相続人の数が多くて遺言状もない、という場合にはかなりのエネルギーを使うことを覚悟しなければなりません。
相続人や相続財産の確定に始まり、遺産分割協議書の作成、それに基づく不動産登記の申請や金融機関に対する届出など、やらなければならないことは山ほどあります。また、相続財産の中に借金があったり、なくなった親が他人の連帯保証人となっていた場合などは、その対応も考えなければなりません。しかも、それらの問題については法律で決められた期間内に答えを出さなければならないのです。
そのため、遺産相続については、事前にその内容を知っておくことが必要。そうすることで、いざという時にも慌てることなく、冷静な対応をすることができるでしょう。

遺産相続の手続きについて

遺産相続の手続きには、早くに進めなければならないものや、遠い期限が定められているものがあります。どのような手続きが必要なのか、把握しておきましょう。

死亡届は7日以内に

親がなくなった時には、死亡届を7日以内に区市町村の役所に提出します。死亡届の提出先は本人の死亡地、本籍地、もしくは届出人の居住地、を管轄する役所であればいずれでもかまいません。その際には医師による死亡診断書もしくは死体検案書を添付する必要があります。
死亡届を提出すると、火葬許可証が発行されます。火葬許可証がないと葬儀ができませんので、大切に保管してください。
なお、死亡届の記載は届出人である子がしますが、役所への提出は届出人でなくともできるので、葬儀社が代行することが多いようです。

早く始めるべき手続き

相続手続きのなかには、期限が決まっているものがあります。その期限を過ぎてしまうと手続きができなくなったり、相続税や所得税の準確定申告などの税金がからむ場合には、延滞税を支払わなければならなくなるのです。そのため、相続の手続きは早めに行うようにしましょう。

遺言書の有無の確認

相続手続きを始めるにあたって、まずは遺言状の有無を確認します。遺言状は被相続人である親の思いが込められた書類であり、相続についてはそれに記載された通りに行うことが求められるからです。
なお、遺言状が公正証書遺言の場合には、すぐに遺言執行手続を行うことができます。しかし、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には、遺言状を開封する前に家庭裁判所による検認の手続きをしなければなりません。
検認は、遺言状の変造や毀損、さらには隠匿などを防ぐために行われる手続きです。検認を申し立てる先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。検認の手続きは被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本を家庭裁判所に用意されている検認申立書に添付して行います。
検認手続きが完了すると家庭裁判所から検認済証明書が発行されます。検認済証明書は不動産の登記や預貯金の出し入れを行う場合に遺言状と一緒に提出する書類であり、この書類がなければ遺言執行の手続きを行うことはできません。さらには、検認を行わずに勝手に遺言状を開封した場合には50,000円以下の過料が科されます。

遺産分割協議の開始

遺言状がない場合、遺産分割協議を行うこととなります。その際には相続財産の確定とともに、相続人の調査も忘れずに行わなければなりません。遺産分割協議は相続人全員で行うこととされています。1人でも協議に加わっていなければ、その遺産分割協議は無効とされてしまうのです。
相続人調査は被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せることで行います。被相続人の戸籍を辿ることで相続人を確定するわけです。ケースによっては見知らぬ人が相続人として登場することもあります。その場合には、その人も含めて遺産分割協議を行わなければなりません。

3カ月以内の手続き

相続手続きには一定の期限が設けられているものがあり、その期限を過ぎると手続きができなくなるものがあります。ここでは、3カ月以内に行わなければならない手続きについて解説します。

相続放棄か限定承認の手続

相続が開始されてから3カ月以内に行わなければならない手続きには、相続放棄と限定承認があります。
相続財産にはプラスの財産だけではなく、マイナスの財産となる負債も含まれます。もしも、被相続人が負債を抱えていた場合には、相続人はその負債を支払わなければなりません。しかも、負債額が相続財産よりも大きな場合には相続人自身が所有する財産から支払う必要があるのです。
また、被相続人が他人の債務の連帯保証人となっていた場合には、その地位も引き継ぐこととなります。
そこで検討されるのが相続の放棄、もしくは限定承認という手続きなのです。いずれも遺産分割協議のなかで、行うか否かを検討することとなります。
相続の放棄とは文字通り、被相続人の財産のすべてを相続しないことです。もしも、被相続人名義の土地や建物があり、相続人がそこに住んでいる場合には、その場所から立ち退かなければなりません。その代りに、被相続人の残した債務を引き継ぐことは一切ありません。
限定承認とは、相続によって引き継ぐ債務を、相続財産の範囲で返済するというものです。たとえば、被相続人に1,000万円の債務があったとして、相続財産が500万円であった場合には、500万円を返済すれば、残りの債務を支払わなくてもよいのです。
相続人の財産で被相続人の債務を支払う必要がなくなるので、見方によっては便利な制度です。しかし、限定承認を行うためには、他の相続人全員の承諾が必要となります。
先述したようにこれら2つの手続きの期限は相続開始から3カ月以内です。しかし、相続財産や相続人の確定に時間がかかるなどの理由がある場合には、家庭裁判所に対して期間延長の申し立てをすることができます。ただし、この申し立ては相続開始から3カ月以内に行わなければならず、さらに、期間延長は必ず認められるものではありません。そのため、相続財産や相続人確定の調査は早めに行うことが必要です。

遺産分割協議終了後の手続き

遺産分割協議が終了したら、遺産分割協議書を作成します。法律上は口約束だけでも契約は成立するので、相続人同士で遺産分割の内容について合意できればそれでよし、とすることもできますが、文書にして残しておかなければ、後になって無用の争いが生じるおそれがでてきます。また、不動産登記や預貯金の名義変更など、遺言執行にあたっては遺産分割協議書がないと手続きを進めることができません。
そのため、遺産分割協議の終了後には遺産分割協議書を作成する必要があるのです。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書には相続人の間で合意した内容を記載します。作成にあたって注意するべき点としては、誰がどの財産を取得するのか、という点を明確に記載することです。
不動産であれば、不動産の全部事項証明書の表題部に記載されている内容をそのまま記載します。預貯金であれば、銀行名、預金の種類、口座番号なども記載します。
作成した遺産分割協議書には相続人全員が署名押印します。その際に使用する印鑑は実印を用い、印鑑証明書を添付します。
なお、遺産分割協議書を作成する際には相続人全員が一カ所に集まる必要はありません。それぞれの相続人が署名押印したものを郵送する形であっても有効な遺産分割協議書とされます。

遺産分割協議書終了後の手続き

遺産分割協議書の作成が終了した後には、不動産や預貯金の名義変更といった実質的な遺言執行手続を行うこととなります。

遺産の名義変更登記

遺産の名義変更について注意が必要なのは、預金や証券には10年間の時効があることです。遺産分割協議書を作成しても、10年間名義変更手続きをしないでいると、預金や証券に対して持っている権利が失われてしまうのです。そのため、預金などの債権に対する名義変更手続きは早く行うことをおすすめします。
ただし、10年間の時効が過ぎてしまった後でも、正式な手続きを行なえば金融機関は名義変更に応じてくれるようです。

10カ月以内の手続き

相続税が発生する場合には10カ月以内に手続きを行わなければなりません。ここでは相続税の申告と納付について解説します。

相続税の申告と納付

相続税の申告は税金の納付を含めて、相続開始後10カ月以内に行わなければなりません。もしも、この期間内に手続きを行わなかった場合には延滞税が発生します。延滞税とは納税期限である10カ月を過ぎた後の日数に応じてかけられる税金のことです。そのため、納税期限を過ぎれば過ぎるほど延滞税は高くなっていく仕組みになっています。
遺産分割に時間がかかり、期限内の納税は困難という場合もあります。しかし、そのような時でも相続税は納付しなければなりません。そこで遺産分割協議が終わっていなくても、相続人の法定相続分に応じて仮に納税をすませておく方法がとられています。正式な遺産分割協議が終了した後に改めて更生請求をするのです。そうすると、払い過ぎた税金は還付されますし、反対に納税金額が少ない場合には追徴されることとなります。

1年以内の手続き

相続開始後1年以内に行う手続きには遺留分減殺請求があります。

必要ならば遺留分減殺請求を

被相続人の兄弟を除いた、配偶者、親、子どもには最低限残さなければならない相続財産の割合が決められています。これを遺留分と呼びます。遺言状でも遺留分の割合を変えることはできません。
たとえば、全財産を相続人甲に相続させるとした遺言状があり、それが他の相続人乙、丙の遺留分を侵害している時には、乙、丙は侵害された分を取り戻すことができるのです。この権利は遺留分減殺請求権と呼ばれています。この遺留分減殺請求権の時効が、遺留分を主張できる相続人が自分のために相続があったことを知った日から1年間なのです。
ただし、遺留分減殺請求権は必ず主張しなければならない権利ではありません。遺留分を請求するか否かの判断は、遺留分を侵害された相続人に委ねられています。そのため、場合によっては相続人の判断で遺留分減殺請求権を行使しないこともあります。1年間はその見極めをするための時間と考えてもよいでしょう。

葬祭後にでる給付制度

葬儀を行った後で、健康保険に加入していれば葬祭費の給付を請求することができる制度があり、葬祭費給付金制度と呼ばれています。給付金額は加入している健康保険によって異なります。国民健康保険の加入者に対しては50,000円から70,000円、企業の健康保険の加入者に対しては50,000円が支給されます。国民健康保険の申請先は市区町村、健康保険の場合は全国健康保険協会となります。申請期限はいずれも2年間です。

埋葬料の請求

健康保険に加入している本人が死亡した場合、本人によって生計を維持されていた人に対して50,000円の埋葬料が支払われます。
また、身寄りのない人が死亡した場合、身内に代わり、実際にその人の葬儀を行った人に対しては、埋葬料の中から埋葬費という名目で、50,000円を限度に実際にかかった費用が支払われます。
埋葬料、埋葬費ともに請求期限は2年間です。

高額医療費の請求

高額医療費制度とは、1カ月にかかった医療費のうち、一定の金額を超えた部分について還付を受けることができる制度のことです。国民健康保険、健康保険などの公的保険制度に加入している人が利用することができます。
被相続人が死亡した場合、還付される高額医療費は相続財産の一部とみなされます。そのため、相続を放棄した場合には、高額医療費の還付の請求はできません。また、相続放棄をする前に高額医療費の還付を受けた場合には相続放棄はできなくなります。高額医療費の還付を受けたことで、相続することを承認したこととみなされてしまうからです。

生命保険金の請求

生命保険金の請求手続きは、相続が開始されたと同時に始めることをおすすめします。生命保険の保険金受取人が指定されている場合には、保険金は指定された人の財産とされ、相続財産には含まれません。しかし、保険金受取人の指定がない場合、その保険金は相続人全員の共有財産となり遺産分割協議の対象となります。
まずは、被相続人の通帳明細や被相続人あてに郵送されてきている生命保険会社のダイレクトメールなどを確認して、保険会社に問い合わせをしましょう。たとえ、保険証券が見つからない場合でも、保険会社からの案内がきているのであれば、その保険に加入している可能性があり、保険に加入していることの確認が取れれば、保険金は支払われるからです。

専門家に依頼すべきか

相続が起きたとき、当人同士の話し合いで進めるのではなく、専門家への依頼を検討することがあるでしょう。依頼することのメリットや依頼先を検討しておきましょう。

専門家に依頼する利点

相続が開始した時に、弁護士や司法書士などの専門家に相談するべきか否か、迷うことがあるかもしれません。相続手続きを行うためには、限られた時間の中で多くの書類を集めたり作成したりする必要があります。そのような作業を専門家に依頼することで、効率的な相続手続きを行うことができます。この点で、専門家に依頼するメリットは大きいといえるでしょう。
ただし、専門家に依頼する前に、相続財産の状態や相続人同士の人間関係などを検討することが必要です。専門家には得意とする分野が分かれているからです。

司法書士に依頼する

相続手続きを行う際のポイントの1つに、相続財産が相続税の基礎控除の枠内に納まるか否か、という問題があります。もしも、基礎控除以内に納まるのであれば、司法書士に依頼するのがよいでしょう。司法書士は不動産登記の専門家です。相続財産の中に不動産が含まれるのであれば、遺産分割協議書の作成から不動産登記の申請までを依頼することができます。

司法書士と税理士に依頼

相続財産が相続税の基礎控除額を超えてしまう場合には、司法書士と税理士に依頼することで、遺産分割協議書の作成や不動産登記だけではなく、相続税への対応をすることができます。

司法書士と土地家屋調査士

相続財産の中に未登記の建物がある場合には、司法書士に加えて土地家屋調査士に手続きを依頼しましょう。建物の登記については、名義変更手続きは司法書士が行います。しかし、名義自体のない未登記の建物については名義の変更の前に建物標題登記という登記をしなければなりません。建物標題登記は土地家屋調査士によって行われます。司法書士は建物標題登記をすることができないのです。

司法書士と弁護士

相続手続きについて、相続人の間に争いがある場合には弁護士に依頼しましょう。弁護士であれば、家庭裁判所の調停手続きを利用するしないに関わらず、依頼した相続人の側に立って、相手側の相続人と話し合いを進めることができます。ただし、弁護士に依頼する場合、案件の内容によっては費用が高額になる場合がありますので、事前に費用の確認をするか、もしくは相談のみにとどめておくかを検討することが必要でしょう。
また、争いがなくとも、相続人の中に未成年者や認知症の人がいる場合には、家庭裁判所に対して後見人もしくは代理人の申し立てを行う必要があります。そのような時には、弁護士の他に司法書士にも申し立て手続きを依頼することができます。

相続手続きは素早くお金をかけずに

相続手続きには期限が決まっているものが多いため、早めに行うことが肝要です。手続きの中には、被相続人の財産状況や生命保険など、事前に確認したり用意したりすることが可能なものもあります。もしもの時に備えて、それらのものについては確認しておくようにしましょう。
また、手続きを行うについては専門家の手を借りることが必要な場合もでてきます。その際には、自分でできること、専門家に依頼することの仕分けを検討するのもよいでしょう。なるべくお金をかけずに手続きを完了することができればそれにこしたことはないからです。

この記事のライター UKANO 編集部

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