相続放棄の手続き方法と注意点。 知っておいたほうが良いポイントとは

August, 09, 2018

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借金を相続したくない場合の対策について

親が借金を残したまま亡くなってしまった場合、その借金を引き継いで払っていかなくてはいけないと不安に思っている方もいることでしょう。
自分が残りの借金を引き継がなくてもいいように「相続放棄」という手続きがあります。

今は親が健在でも、多額の借金がある場合は生きているうちに完済できない可能性があるので、今のうちに相続放棄について知っておくとよいです。
相続放棄の手続きにはいくつかの注意点があります。
知っておいたほうがよいポイントを抑えながら、手続きの方法を学びましょう。

相続放棄手続き前に必ず知っておきたいこと

相続放棄手続きの前に、以下の項目を必ず確認しておきましょう。

相続放棄が受理されたら原則取り消しできない

「例外」はありますが、相続放棄が一度受理されたら原則取り消しはできないので慎重になりましょう。
受理される前なら取り下げることはできます。
「例外」とは、以下に記載のあるようなことです。

  • 詐欺や脅迫によって相続放棄させられた場合
  • 未成年者が法定代理人の同意を得ずに相続放棄した場合
  • 成年被後見人がいるのに、被後見人または後見人が後見監督人の同意を得ず相続放棄した場合
  • 被保佐人が保佐人の同意を得ず相続放棄した場合

相続放棄手続きの期限は原則3カ月

借金の存在を知らなかった等の理由がある場合をのぞき、相続の開始を知った日から原則3カ月以内に手続きしなければいけません。
3カ月という期限を過ぎてしまった場合は、借金も一緒に相続することになります。

遺産相続が発生した際にはいろいろな相続手続きがあり、それぞれに期限がありますが、その中で最も早く手続きをしなければいけないのが「相続放棄」です。
「相続放棄」は、プラスになる財産よりも借金のほうが多いときに行いますが、3カ月の期限を過ぎてしまった場合は、多額の借金があったとしても否応なしにその借金を引き継がなければいけないので、期限を過ぎないように注意しましょう。

相続放棄するなら遺産には一切手をつけない

遺産に手をつけると、相続を承認したものとされ、相続放棄が認められなくなります。
相続放棄をしたら、故人の相続財産に対して赤の他人になるからです。
相続財産に手をつけてもよいのは相続人のみなので、相続放棄するなら遺産には一切手をつけてはいけません。

ただし、葬儀費用の支払いに使っただけなら認められる可能性が高いです。
葬儀は高額な費用が必要となります。
過去の裁判所の事例によると、葬儀費用が社会的に見て妥当な金額であれば、個人の財産から支払っても相続放棄ができる可能性が高いです。

葬儀費用を大目に見てもらえたからといって、墓の購入も遺産から支払うとなると話が違います。
墓の購入まですると相続を承認したとみなされ、相続放棄が認められない可能性が高くなるので注意しましょう。
葬儀費用は大目に見てもらえたとしても、遺産には手をつけないことが基本です。

次の代に相続権が移行することを踏まえ手続きする

相続人には順位があります。
例えば、配偶者や子供が相続放棄をすると故人の両親や兄弟、甥姪などに相続人が次々と移っていくのです。
借金の請求も次の世代に相続権が移行してしまうので、そのことを認識して手続きを行わなければいけません。

次の順位の相続人の方に相続権が移行していることを知らせずに、勝手に相続放棄の手続きを進めた場合、後で親族関係ともめる原因になるので注意しましょう。

相続放棄手続きに必要な費用

相続放棄手続きに必要な費用は、「自分で行った場合」「司法書士に依頼した場合」「弁護士に依頼した場合」により異なります。

自分で手続きを行った場合にかかる費用は3,000円くらい。
収入印紙代、故人の戸籍謄本(故人の配偶者が申請する場合は不要)、故人の除籍謄本・改製原戸籍謄本(手続きする人と故人の関係により他にも必要)、故人の住民票除票または戸籍附票、手続きする人の戸籍謄本、郵便切手代、その他(交通費など)が必要です。

司法書士に依頼した場合にかかる費用は30,000円くらい。
相談料、代行手数料、申述書作成代行費用、戸籍謄本取得、実費などが必要です。
弁護士に依頼した場合にかかる費用は50,000円~10万円以上。
相談料、代行手数料、申述書作成代行費用、戸籍謄本取得、実費などが必要です。

自分で手続きを行えば、司法書士や弁護士に依頼した場合と比べて大幅に費用を抑えることができますが、慣れていない手続きを自分で行うのは大変です。
また、相続放棄手続きには3カ月という期限があるので、専門家に依頼したほうが時間に追われることなくスムーズに手続きができます。

相続放棄手続きに必要な書類

相続手続きに必要な書類は、「手続きする人が故人の配偶者の場合」「手続きする人が故人の子供や孫(代襲者)の場合」「手続きする人が故人の両親や祖父母(直系尊属)の場合」「手続きする人が故人の兄弟姉妹や甥姪の場合」で異なります。

必要書類として相続放棄申述書・故人の住民票除票または戸籍附票・手続きする人の戸籍謄本の他、手続きする人と故人との関係によってさらに書類が必要です。

手続きする人(故人との関係):故人の配偶者
追加で必要な書類:

  • 故人の除籍謄本
  • 故人の配偶者・改製原戸籍謄本(死亡の記載のある戸籍謄本)

手続きする人(故人との関係):故人の子供や孫(代襲者)
追加で必要な書類:

  • 追加で必要な書類:故人の除籍謄本・改製原戸籍謄本(死亡の記載のある戸籍謄本)
  • 手続する人が孫の場合、本来相続人である除籍謄本・改製原戸籍謄本(死亡の記載のある戸籍謄本)

手続きする人(故人との関係):故人の両親や祖父母(直系尊属)
追加で必要な書類:

  • 故人の除籍謄本・改製原戸籍謄本(出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本)
  • 故人の子供で死亡者がいた場合、その子供の除籍謄本・改製原戸籍謄本(出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本)
  • 故人の直系尊属に死亡者がいた場合、その者の除籍謄本・改製原戸籍謄本(死亡の記載のある戸籍謄本)

手続きする人(故人との関係):故人の兄弟姉妹や甥姪
追加で必要な書類:

  • 故人の除籍謄本・改製原戸籍謄本(出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本)
  • 故人の子供で死亡者がいた場合、その子供の除籍謄本・改製原戸籍謄本(出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本)
  • 故人の直系尊属の除籍謄本・改製原戸籍謄本(死亡の記載のある戸籍謄本)
  • 手続する人が甥姪の場合、本来相続人の除籍謄本・改製原戸籍謄本(死亡の記載のある戸籍謄本)

相続放棄手続きの手順

費用や必要書類について知った後は、なるべく早く準備を進めましょう。
下記は、相続放棄手続きの手順とそれにかかる時間や日数の目安です。

  • 役所で戸籍謄本などを集める:20~30分
  • 相続放棄申述書記入:20~60分
  • 切手・収入印紙購入:10~20分
  • 家庭裁判所に申述書提出(郵送でも可):30~60分(「相続放棄の意思確認」も含む。)
  • 相続放棄の意志確認:意思決定する前に、金融機関や所有している不動産など、時間をかけて念入りに調査する。
  • 照会書が届いたら回答記入、再送:申し立てから約10日後に照会書が届く。
  • 相続放棄申述受理通知書が届く:「照会書が届いたら回答記入、再送」から約10日後に届く。
  • 任意で相続放棄申述受理証明書を交付申請:相続放棄申述受理通知書を紛失した場合などに申請する。

手続する人と故人との関係で、必要な書類が異なってくるため、時間や日数にも差が出ます。
また、「相続放棄の意思確認」には、調査に想定外の時間がかかる可能性があることも、頭に入れておいたほうがよいです。
上記を目安にしながら、時間や日数の余裕を持って準備を進めていきましょう。

相続放棄をしたほうがよいケース

本当に相続放棄をしてよいのか、一旦立ち止まってよく考えてみましょう。

プラスの財産よりマイナスの財産が多い

「プラスの財産よりマイナスの財産が多いから」または「マイナスの財産しかないから」というのは、相続放棄する理由として最も多いです。
借金を引き継ぎたくないために相続放棄をします。

ただし、相続を放棄すると不動産や貯金などのプラスの財産も放棄することになるので注意が必要。
どうしても残したい土地や建物などがある場合は、マイナスの財産があったとしてもよく考えたほうがよいです。

処分に困る不要な土地や空き家がある

いらない土地や空き家などの不動産の固定資産税を払いたくないために、相続放棄を行うという方もいます。
確かに、相続を放棄すれば固定資産税の負担は免れますが、相続財産管理人が決まるまで管理責任は免れることができません。

その場合、相続財産管理人を選任してもらうように裁判所に申し立てることで、相続財産の管理責任を引き継ぐことはできます。
ここまでしてようやくいらない不動産を手放せるのですが、相続財産管理人の選任コストはとても高いので(数十万円~100万円くらい)デメリットも大きいです。

相続に関することに一切関わりたくない

各家庭それぞれがいろいろな事情を抱えています。
親族と不仲などの理由で、相続に一切関わりたくないという場合も相続放棄をするとよいでしょう。

口頭だけで「自分は相続しないから勝手にやっておいて」と伝えたとしても、他の相続人から遺産分割調停の申し立てがあり、裁判所に呼ばれてしまう可能性があります。
そういったリスクを回避し、不仲な親族と関わらないようにするためにも、相続放棄をすれば確実に相続人ではなくなるので、他の相続人と関与せずに済むのです。

相続放棄をしないほうがよいケース

相続放棄をしないほうがよいケースもあります。
相続を放棄の手続きをする前に確認しておきましょう。

借金は相続したくないが自宅は手放したくない

「借金相続したくないが自宅は手放したくない」場合、限定承認または単純承認のほうがよい場合もあります。
相続放棄すると、次の順位の相続人で単純承認した方が所有することになり、自宅を明け渡さなければいけないからです。

自宅を手放したくない場合には、「全員が相続放棄をして、自宅を取得したい方が相続財産管理人から買い受ける」または「限定承認を申し立てて自宅を守る」のいずれかの方法をとるとよいでしょう。

限定承認をすると、借金のほうが多かったとしても、相続により得た利益の限度で弁済すればよくなります。
万が一借金が多すぎた場合は、自宅を売却し、得た金額で弁済するという方法も可能です。

消費者金融やカード会社からの借金がある

消費者金融やカード会社からの借金があり、過払い金が負債金額を上回る場合は、相続放棄しないほうがよいです。
万が一過払い金が発生している場合は、相続人が過払い金を請求できます。

カード会社の契約書、利用明細書、カード、信用情報機関にて信用情報などを確認し、過払い金の確認をしましょう。
もし故人の生前の借金にて過払い金があることが判明した場合、借金を返済する必要はなくなり、逆に過払い金を請求することができます。
相続放棄をしてしまうと過払い金を受け取ることはできなくなってしまうので注意しましょう。

財産調査に時間がかかり全財産が把握できない

相続放棄の申し立ての期限は3カ月です。
もし財産調査に時間がかかり全財産が把握できない場合は、限定承認または相続放棄の期間を伸長する申立をするとよいでしょう。

不動産や借金など、財産調査が複雑になるケースも多いです。
その場合は、3カ月の期限内に家庭裁判所へ行き、「相続の承認または放棄の機関の伸長の申し立て」をすることが可能。
まずは期限を延ばし、財産をしっかりと把握してから、相続放棄するか限定承認するかなどの判断を決定するとよいです。

相続放棄手続き中や手続き後にやるべきこと

相続放棄手続き中や手続き後にやるべきことがあります。
必ず下記の項目を確認しましょう。

相続権が移る次順位の人に必ず連絡を

相続を放棄すると自分は借金を引き継がなくなってよいかもしれませんが、その相続権は次の順位の人に移ります。
そのため、相続権が移る次の順位の人に必ず連絡をしましょう。

連絡しないとトラブルの元になることも

相続放棄すると相続権が次順位の人に移り、その人が借金を含む遺産を相続することになります。
勝手に相続を放棄し、そのことを知らせないとトラブルの元になることもあるので注意しましょう。

相続権が移る範囲はどこまでなのか

相続権は被相続人の直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹または甥・姪の順位で相続権が移ります。
配偶者は相続順位が関係なく、法律上では常に1/2を相続するという規定があるのです。

例えば故人が夫の場合、配偶者以外の第1順位は「子供」になります。
「配偶者や子供」が相続放棄をした場合、第2順位の「故人の親」に相続権が移ります。
故人の親も借金を引き継ぎたくないなら、相続放棄の手続きが必要です。
次は、第3順位の「故人の兄弟姉妹」、「甥や姪」と相続権が移っていきます。

手続き中に借金の支払いを請求されたときの対応

相続放棄することを債権者に伝え、支払いには一切応じないことが大切です。
債権者に求められたら、相続放棄申述受理通知書のコピーまたは相続放棄申述受理証明書を渡すとよいでしょう。

「相続放棄の手続き中」だと告げれば、普通は取り立てがなくなるはずです。
それでも取り立てがあれば、賃金業法違反に該当する可能性があるので、警察に通報するなどして落ち着いて対応しましょう。

その他相続放棄について知っておきたいポイント

その他にも相続放棄について知っておきたいポイントがあるので、すべてを把握しておきましょう。

相続放棄は生前にはできない

被相続人が死亡していないのであれば、そもそも相続が発生していないので、生前に相続放棄をすることはできません。
生前にできる対策としては、「遺留分放棄」「遺言書を作成してもらう」「債務整理してもらう」という方法があります。

「遺留分放棄」は、一定の法定相続人に認められる最低限の相続財産の取り分をあらかじめ放棄できるものです。
裁判所への申し立てが必要になります。
「遺言書」は、相続人が残すものなので、相続人が自ら偽造して記入しても認められません。
生前に「債務整理」をしてもらうのも1つの手段としておすすめです。

相続放棄申述書は代筆でもよいのか事前に確認

特段の事情があれば代筆でも受理される可能性がありますが、事前に確認したほうがよいです。
特段の事情とは、例えば高齢で直筆が困難などの理由があり、本人が放棄の手続きを他のものに一任した場合など。

押印は本人がしたほうがよいですが、それも困難な場合は家庭裁判所の書記官に事情を説明して相談しましょう。
本人が相続放棄をする意思があるかどうかが重要なので、本人が裁判所に行き、本人確認と意思確認を受けることができれば大丈夫です。
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相続放棄すると代襲相続は発生しない

被相続人の死亡時に相続人となる人がすでに亡くなっている場合、その子が代わりに相続することを代襲相続というが、相続放棄した場合には発生しません。
また、代襲相続できる者とされているのは、相続人の直系卑属に限られています。

養子の連れ子(養子縁組をしていない人)など、相続人の直系卑属でない場合は、そもそも代襲相続権はありません。
配偶者も相続人の直系卑属ではないので、代襲相続権はないということになります。

相続放棄しても受け取れるものもある

相続放棄しても生命保険金や遺族年金は受け取れます。
生命保険に関しては、裁判所の見解で「生命保険はその人が亡くなった瞬間に他人にお金を渡す契約になるので、相続財産に含まれない」としているのです。
つまり、相続放棄しても保険金は受け取れます。

遺族年金に関しては、遺族が固有の権利に基づき受給するものなので、相続財産には含まれません。
そのため、相続放棄しても受け取ることができるのです。

相続放棄と遺産分割協議は違う

相続放棄は、家庭裁判所で手続きするもので、親族との話し合いで「自分は財産を一切相続しない」と決める遺産分割協議とは違います。
相続放棄すれば借金の支払い義務を完全に免れるが、遺産分割協議では免れることができないという点も大きな違いです。

相続放棄は、最初から相続人ではなかったと家庭裁判所で認定を受けることになります。
プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しません。
遺産分割協議は、単なる身内の話し合いなので、債権者に主張することはできません。
つまり、遺産分割協議で決めただけでは借金の支払いを免れることはできず、支払いの義務があります。

相続放棄の検討は慎重に手続きは速やかに

被相続人に借金が残っていたとしても、相続放棄は慎重に検討しましょう。
相続を放棄すると、自宅などの不動産を含め、プラスの財産までも相続を放棄することになるからです。

しかし相続放棄の手続きは3カ月という期限が定められています。
事情がある場合は期限を伸長することも可能ですが、期限が過ぎてしまったら相続放棄の手続きができなくなってしまうため、相続放棄を決めたら手続きは速やかに行いましょう。

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