配偶者控除の見直し。改正で配偶者の年収の引き上げによる影響とは

配偶者控除の見直し。改正で配偶者の年収の引き上げによる影響とは

ビジネス 2018.08.03

配偶者控除とは

配偶者控除とは、配偶者の所得金額が70歳未満の人は合計38万円以下、70歳以上の人は48万円を課税所得から控除されます。合計所得金額が38万円以下の人は全額控除されます。配偶者特別控除は、合計所得金額が103万円以上の人で、金額に応じて控除額が変わります。

配偶者控除が見直された理由

なぜ、配偶者控除が見直されることになったのか、理由について掘り下げてみましょう。

もともとは配偶者控除を廃止しようとしていた

配偶者控除は1961年に制定されたもので、専業主婦が当たり前の時代に作られたため、2010年以降、働く女性が増えている今の時代にそぐわないとなりました。そのため、配偶者控除は廃止されようとしていました。また、配偶者特別控除は1987年に制定されたもので、38?70万円の配偶者の所得に応じて控除額が決められていました。

就労を抑制することに繋がっていた

女性が働く人が増える中で、103万を超えると夫の扶養を外れることになっていたので、103万円以下しか働かないというパートの人が多く、就労を抑制することにつながっていました。そのため、1961年の配偶者控除は現状に合わないということで、配偶者控除でなく、夫婦控除を新設するという案もありましたが、配偶者控除を改正するという方向になりました。

見直されてどうなったか

配偶者控除が見直された結果、何がどう変わったのでしょうか?改正された配偶者控除の額についても解説します。

配偶者控除の要件として配偶者の年収が103万から150万に引き上げ

配偶者控除は、年収が103万円から150万円に引き上げることで法案が通りました。配偶者特別控除は、年収が約103~約183万円から、150~約201万円に引き上げられました。配偶者の年収が150万までなら従来通り配偶者控除が38万円を受けられます。

納税者本人の所得が加わって決まることになった

今までの配偶者控除は配偶者の所得のみが関係していましたが、改正では納税者の所得が3区分に分けられ、納税者本人の所得が1220万になると配偶者控除が受けられなくなりました。納税者の所得は次の3区分に分けられていて、所得金額により配偶者控除の金額も異なります。控除対象配偶者(70歳未満)をA、老人控除対象配偶者(70歳以上)をBとします。

改正による配偶者控除の額

  • 900万円以下(1,120万円以下)            A 38万円  B 48万円
  • 900万円超950万円以下(1,120万円超1,170万円以下)  A 26万円  B 32万円
  • 950万円超1,000万円以下(1,170万円超1,220万円以下) A 13万円  B 16万円

改正により、合計所得が1,000万円超の人は配偶者控除を受けられなくなり、高所得者にとっては増税となります。

改正による配偶者控除の額

  • 納税者の合計所得900万円:38万円
  • 納税者の合計所得900万円超950万円以下:26万円
  • 納税者の合計所得950万円超1,000万円以下:13万円

配偶者の合計所得が85万超90万円以下の場合

  • 納税者の合計所得900万円:36万円
  • 納税者の合計所得900万円超950万円以下:24万円
  • 納税者の合計所得950万円超1,000万円以下:12万円

配偶者の合計所得が90万超95万円以下の場合

  • 納税者の合計所得900万円:32万円
  • 納税者の合計所得900万円超950万円以下:21万円
  • 納税者の合計所得950万円超1,000万円以下:11万円

配偶者の合計所得が95万超100万円以下の場合

  • 納税者の合計所得900万円:26万円
  • 納税者の合計所得900万円超950万円以下:18万円
  • 納税者の合計所得950万円超1,000万円以下:9万円

配偶者の合計所得が100万超105万円以下の場合

  • 納税者の合計所得900万円:21万円
  • 納税者の合計所得900万円超950万円以下:14万円
  • 納税者の合計所得950万円超1,000万円以下:7万円

配偶者の合計所得が105万超110万円以下の場合

  • 納税者の合計所得900万円:11万円
  • 納税者の合計所得900万円超950万円以下:11万円
  • 納税者の合計所得950万円超1,000万円以下:6万円

配偶者の合計所得が110万超115万円以下の場合

  • 納税者の合計所得900万円:11万円
  • 納税者の合計所得900万円超950万円以下:8万円
  • 納税者の合計所得950万円超1,000万円以下:4万円

配偶者の合計所得が115万超120万円以下の場合

  • 納税者の合計所得900万円:6万円
  • 納税者の合計所得900万円超950万円以下:4万円
  • 納税者の合計所得950万円超1,000万円以下:2万円

配偶者の合計所得が120万超123万円以下の場合

  • 納税者の合計所得900万円:3万円
  • 納税者の合計所得900万円超950万円以下:2万円
  • 納税者の合計所得950万円超1,000万円以下:1万円

配偶者の合計所得が123万円超(年収2015万円超)の人は配偶者特別控除は受けられません。配偶者の控除額が広がりましたが、その反面、納税者が高額所得者ほど控除が受けられなくなり増税になりました。

一番得をするのは自営業の妻となった

改正では、配偶者の年収だけでなく納税者の年収も関係してきます。配偶者の年収が150万円に引き上げられたため、月給で12万5千円までなら配偶者控除を受けられます。配偶者特別控除は201万円までその収入に応じて控除されます。ただ、夫の年収が1,220万円を超えた場合は、妻の給与収入が少なくても、配偶者控除は受けられなくなりました。
自営業の人は国民健康保険に加入するので、130万円という社会保険の壁がないため、配偶者控除の適用は給与収入の配偶者よりも得をします。ただし、自営業の妻がパートとして外に働きに出るなら、配偶者特別控除の額まで仕事を増やすことができますが、自営業を手伝っている配偶者は専従給与を得ているので配偶者控除の対象にはなりません。

いつから変わるのか

高所得者やパートの配偶者にとっては改正が少なくいつから始まるのか気になるところです。パートの配偶者はそれを見越して仕事を増やすことができます。

2018年の年末調整から

配偶者控除の改正が適用されるのは、所得税が2018年1月1日から2018年12月31日までの所得から対象になり、住民税が2019年1月1日から2019年12月31日の所得から対象になります。そのため、所得税が2019年の確定申告から、住民税は2020年の確定申告から適用になります。
一番影響を受けるのは納税者が年収1,220万円以上の高所得者です。今まで、配偶者控除を38万円うけていたのに、それが受けられなくなるので、10万円以上の増税になります。しかし、納税者が900万円以下でパートの配偶者は仕事を増やせて、控除額が受けられるので改正により税金が少なくなります。

配偶者控除の3つの壁

配偶者控除の3つの壁とは、社会保険の壁と住民税の壁、所得税の壁です。その3つの壁とは、課税されるボーダーラインの額のことです。

社会保険の壁

社会保険には、「130万円の壁」や「106万円の壁」があります。社会保険の扶養者として加入するには年収130万円未満という基準があります。配偶者の年収が130万円になると扶養から外れ、保険料と年金の支払いが増えます。これを「130万円の壁」といいます。
また、2016年より社会保険の加入要件が週の労働時間で決まるようになりました。そのため、年収が160万以上の人、雇用が1年以上ある人、週20時間以上働いている人、雇用期間が1年以上の人、501人以上の従業員がいる企業は、勤務先で社会保険に入らなくてはなりません。つまり、社会保険に入らないようにするには106万円を超えないようにしないといけません。これを「106万円の壁」といいます。

住民税の壁

住民税は「100万円の壁」と言われます。それは、ほとんどの地域で配偶者の年収が100万円になると住民税を払わなければならなりません。住民税の支払い先は住民票がある自治体で、所得割と均等割りをした合計した額を支払います。
均等割りはすべての人に一率の税率でかかります。所得割は、所得により税額を計算しています。多くの自治体が所得が100万円以上だと課税されますが、自治体によって課税基準が異なっています。

所得税の壁

給与所得者の場合は、給与所得控除額が65万円あり、基礎控除額が38万円あるので両方を合計すると103万円になります。そのため、配偶者の年収が103万円になると所得税を払う必要があります。これを「103万円の壁」と言います。計算方法は次のようになります。
課税所得額 = 総所得金額 ー 所得控除
納税額 = 課税所得金額×税率 - 税額控除額

3つの壁が原因で必ず得するとは限らない

3つの壁が原因となって配偶者控除が引き上げられても必ず得をするとは限りません。配偶者の年収を150万円まで引き上げたとしたら、社会保険に加入しなくてはなりません。社会保険に加入しなくてはならない場合と、しなくてはいい場合では年収に差が出てきて、130万円~150万円では損をしてしまいます。3つの壁が原因で、たとえ、配偶者控除が引き上げられても得するとは限りません。

例で具体的に考えてみよう

納税者本人が年収500万円の人で、配偶者の年収が配偶者控除が受けられる131万円と、控除を受けられない205万円の場合でみてみましょう。

納税者本人の年収500万、配偶者の年収131万

配偶者の年収が131万円なので、配偶者特別控除がありますが、配偶者は社会保険に加入しなくてはなりません。

  • 夫・・住民税 21万1,700円、所得税 10万3,900円、社会保険料 70万6,068円、手取り額397万8,332円
  • 妻・・住民税 15,500円、所得税 4,000円、社会保険料 18万9,324円、手取り額109万1,176円円

世帯としての手取り収入は506万9,508円となり、3つの壁の負担が増えるため配偶者の年収109万のときと手取りがあまり変わりません。

納税者本人の年収500万、配偶者の年収205万

この場合の計算をしてみましょう。この場合は配偶者控除もありません。社会保険、住民税、所得税の支払いもあります。

  • 夫・・住民税 24万1,700円 円、所得税 13万9,600円、社会保険合計70万6,068円、手取り額391万2,632円
  • 妻・・住民税 62,100円、所得税 27,900円、社会保険料合計 29万2,548円、手取り額161万7,452円

世帯としての手取り収入は553万84円となり、3つの壁で夫の手取りは減りますが、家計としては手取りがかなり増えることになります。

今後配偶者控除はどうなっていくのか

配偶者控除や配偶者特別控除は改正により限度額が引き上げられましたが、納税者の所得が細分化して、年収が1,200万円以上の人は配偶者控除が受けられなくなりました。改正は、所得税が2018年の年末調整から、住民税が2019年の年末調整からになります。
配偶者控除が引き上げられたからといって、パートの時間数を増やしても、住民税、所得税、社会保険料の3つの壁があるため、必ずしも得になるわけではありません。これから、働く配偶者が増えていくことで、将来配偶者控除は廃止の可能性もゼロではありません。

この記事のライター UKANO 編集部

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