【寄与分制度について】公平に遺産を相続するためのポイントを解説

【寄与分制度について】公平に遺産を相続するためのポイントを解説

ビジネス 2018.05.31

遺産相続で不公平にならないための寄与分

遺産分割協議を進める際に、自分はどれくらいの遺産を相続することができるのかが気にかかる方は多いでしょう。特に、被相続人(なくなった人)の営んでいた事業に貢献したり、療養看護につとめたりしてきた方にとっては法定相続分通りの遺産分割には納得いかないことがあるかもしれません。
そのような時には、自分が被相続人の事業の発展に貢献したり療養看護につとめたり、さらには財産の管理をしたりしたことによって、相続財産を維持したり増やしたりしてきたことを根拠に、財産分与の際に優遇されるべきことを主張することが認められています。
この主張の根拠が寄与分と呼ばれ、遺産の分割が不公平にならないために設けられている法律上の制度です。実際に、28年間にわたって家業である農業に従事してきた妻に対して寄与分が認められた例や、相続財産である土地建物を購入する資金を提供した妻に対して寄与分が認められた例などいくつかの事例があります。ここでは、寄与分について解説します。

寄与分の制度とは

遺産分割協議を行う際に基本となるのは法定相続分による分割です。民法には被相続人(なくなった人)の相続財産を分割する基準が、配偶者であるとか、子供であるとかいった相続人の被相続人との関係や、相続人の人数に応じて決められています。
たとえば、相続人が妻と子供2人であった場合には、配偶者には相続財産の50%、2人の子供には残りの相続財産を頭割りにした25%ずつという具合です。この割合のことを法定相続分と呼びます。
しかし、法定相続分による相続財産の分割を杓子定規に当てはめて遺産分割協議を進めた場合には、相続財産の増加もしくは維持管理に貢献した相続人からは不満の声があがることが予想され、円滑な分割協議が進まない可能性があります。
そこで、相続財産の維持増加に貢献した相続人をある程度優遇することで相続人間の利益を調整し、円滑な遺産分割協議を進めるために設けられたのが寄与分の制度です。
寄与分を主張することができるのは、法定相続人のなかで遺産分割協議の権利を持つ相続人に限られています。具体的には、配偶者と子供がそれにあたり、被相続人の親、兄弟などは、配偶者や子供がいない場合に寄与分を主張することができるにすぎません。

寄与分がもらえる場合は

寄与分を主張することができるのは、相続人の側が無報酬に近い状況で被相続人の財産を維持増加させることに貢献したとされる場合です。具体的には次の3つに分けられます。

事業に貢献した場合

被相続人が農業や個人事業を営んでいた場合に、被相続人を助けてその事業を発展させた相続人に寄与分が認められる可能性があります。これが家業従事型と呼ばれる寄与分です。
注意しなければならないのは、寄与分が認められるためには、単に被相続人の事業の発展に貢献したというだけではだめで、それ以上の特別な寄与がなければならないとされている点です。
特別な寄与とは、被相続人の財産を維持増加させるために通常考えられる以上の貢献をすることとされていますが、明確に決まったものはありません。あくまでも個々のケースに応じて判断されます。
ただし、基本的に対価としての報酬を受け取らない、特定の相続人が被相続人を長期にわたって支えている、などといったケースでは特別な寄与として認められる場合が多いようです。
そのため、被相続人の事業に貢献する家業従事型では、通常の報酬を得て事業を発展させたというだけであれば、寄与分として認められることは難しく、基本的に無報酬ということが前提となります。現実に、14年間無報酬に近い形で家業の中華料理店を手伝ってきたことで、寄与分が認められた事例があります。

金銭の援助をした場合

自己の財産や自分が働いて得た報酬などを提供することで、被相続人の財産の維持増加に貢献した場合に認められるのが、金銭等出資型の寄与分とよばれます。
事例としては、約20年間にわたり被相続人の生活費を援助し、その財産の維持増加に寄与した長男または夫名義で購入した不動産のローンを払い続けた妻に対して、寄与分が認められたケースがあります。

介護や看護で貢献した場合

被相続人の介護や看護に貢献したことで寄与分が認められるケースがあり、療養看護型の寄与分と呼ばれます。
療養看護型の場合に寄与分が認められるためには、療養看護をすることによって相続財産の減少が防止されたことが必要です。
寄与分について定めた民法第904条の2には、寄与分を主張することができるのは「被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」と規定されています。療養看護にあたって介護事業者等を極力介在させずに、相続財産の減少を防止した場合に寄与分が認められる可能性があるでしょう。
さらに相続財産を減少させないことが条件となっているところから、無報酬に近い形での看護が前提となりますし、また、通常の親族関係(親子、夫婦等)で期待される以上の特別な貢献があったのか否かという判断、さらには看護をした期間も療養看護型の寄与分認定にあたって重視されます。
一方で、療養看護型の寄与分が認められるためには、被相続人の状態が介護保険の判定基準である要介護度が2以上であることが必要とされ、療養看護を受ける側の状況も考慮されます。

寄与分をもらえない場合は

寄与分は、被相続人の財産の維持増加に貢献していなければ受け取ることができません。被相続人と一緒に暮らしていて精神的な支えとなっていたとしても、それは単なる扶養として考えられ寄与分としては認められないのです。

財産の維持や増加に貢献していない

寄与分は被相続人の財産の維持増加に貢献していなければ認められません。相続人の存在が被相続人にとってどんなに精神的な支えとなっていたとしても、それが財産の維持増加につながっているのでなければ寄与分とはみなされないようです。

扶養義務の範囲を超えていない

民法では夫婦間、親子間の扶養義務を定めています。夫婦の間での扶養義務は、お互いに同じ生活レベルを維持できるようにする義務のことをいいます。
一方、親子間の扶養義務は親が未成年の子供に対してもつ扶養義務と、成人して経済的にも自立した子供が老いた親に対して持つ扶養義務とではその意味合いが異なります。
寄与分との関係では、後者の扶養義務の内容が当てはまります。この扶養義務は子供に余裕がある場合に課されるものであり、履行を強制される義務ではありません。子供の持つ負担能力に応じた扶養が求められるのみということになります。
夫婦間や親子間で寄与分が認められるためには、扶養義務以上の行為を一定期間継続して行っていたことが必要です。その結果として、扶養された被相続人の相続財産が維持されたのであれば、寄与分が認められる可能性があります。
たとえば、子供が同居している老親の生活費を援助することで、老親の相続財産が維持された場合などがこれに当たります。単に同居しているだけである場合には、一般的な扶養義務の範囲を超えていないとみなされ、寄与分は認められないでしょう。

寄与分を受け取るには

寄与分を受け取るためには、遺産分割協議などの場で他の相続人に対して、被相続人の財産の維持増加に貢献したことを主張しなければなりません。その方法について解説します。

寄与分を申請する

寄与分を受け取るためには次の3つの方法があります。

  • 遺産分割協議で話し合う
  • 遺産分割調停を申し立てる
  • 遺産分割審判を申し立てる

寄与分の受け取りについては、遺産分割協議で話し合うのが一般的です。相続人の間で話し合うことで、解決がつくのであればそれに越したことはないからです。遺産分割協議書を作成するために必要な費用は、相続人ごとの印鑑証明書の取得料のみのため経済的な負担もほとんどありません。
しかし、相続人同士の話し合いがつかない場合には家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることとなります。公正中立な立場にある調停委員に話し合いの中に入ってもらい解決の道を探るわけです。それでも解決できない時には遺産分割審判に移ります。
遺産分割審判は、裁判官によって遺産分割方法が指定されることです。裁判の判決と同じ効力をもち、審判確定後14日以内に不服の申し立てを行わない限り、審判の内容通りに遺産の分割方法が確定します。
審判は、必ずしも調停の後に行わなければならないものではありません。相続人の間で話し合いの余地がまったくない場合には、調停を行わずに審判の申し立てをすることも可能です。
しかしまずは調停によって話し合いの機会を持ち、そのうえで審判に進むというのが一般的でしょう。

寄与分にかかる費用は

寄与分を請求するために家庭裁判所に調停手続きを申し立てる場合の費用は、相続人1人あたり1,200円の収入印紙で納付します。またこの金額にプラスして、家庭裁判所が各相続人に対して行う連絡のために切手を用意する必要があります。
家庭裁判所からの連絡は書面で行われるため、送付用の切手が必要となるのです。金額は申し立てを行った家庭裁判所によって異なりますので、申し立て手続きの際に確認しましょう。

?寄与分の期間について

家事審判規則103条の4には、「家庭裁判所は、遺産の分割の手続きにおいて、その当事者が寄与分を定める審判の申し立てをすべき期間を定めることができる。この場合においてその期間は、1ヶ月以上でなければならない」と規定しています。
家庭裁判所は、遺産分割の審判の中で寄与分の申し立てを行うことができる期間を制限することができるという趣旨の条文です。制限される期間は1ヵ月以上の間をおいて定めるとしていますが、この期間制限が過ぎた後に申し立てを行った場合には、その申し立ては却下されます。
そのため、寄与分は、家庭裁判所によって示された期間制限の間に申し立てなければなりません。もしもその期間内に寄与分を証明するための書類を揃えることができなかった場合などは、その理由を記載した上申書を提出して期間の延長を求めることができます。また寄与分には時効はありません。

寄与分の計算方法は

寄与分の計算方法には、明確に決められたものはなく、これまでの事例の積み重ねによって運用されているのが実態です。そのため、いくつか計算の方法はありますが、それによって出された額がそのまま寄与分として認められるとは限りません。

金額に換算できる場合

寄与分について規定している民法904条の2の2項には、寄与分は、「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して」定めるとしているだけで、明確な計算方法は決まっていません。
そのため、先ほど解説した寄与の方法によっていくつかの計算方法はあるのですが、それによって算出された金額がそのまま寄与分として認められるとは限らないのです。
そのうえで、先ほど解説した類型ごとの寄与分の計算方法は次の通りとなります。ただし、計算方法は類型ごとにさらに分かれていますので、ここでは主だったものを紹介します。

  • 家業従事型の寄与分の計算方法

寄与分=(通常、その職業に従事していれば得られたであろう報酬)×(生活費控除割合)×(寄与年数)

  • 金銭等出資型の寄与分の計算方法

寄与分=(贈与した金額)×(貨幣変動額)×(裁量的割合)

  • 療養看護型の寄与分の計算方法

寄与分=(他に付添人を頼んだ場合の日当)×(療養看護日数)×(裁量的割合)

金額に換算できない場合

相続人が持つ財産を被相続人に提供した結果、被相続人の財産が増加したなどのように、目に見える形での寄与分は金額に換算できます。
しかし、それ以外の金額に換算できない方法によって被相続人の財産の維持増加に貢献したとして寄与分を主張する場合には、その根拠が明瞭でないため、相続人間の話し合いによって決めることとなります。相続人同士による話し合いで決めることができなければ、家庭裁判所に対して調停もしくは審判の申し立てを行います。

寄与分と関係のある特別受益

被相続人の生前に贈与を受けた財産は特別受益とされて、相続財産から差し引かれることとなります。寄与分は相続人が自分の資産を被相続人に提供したり、無報酬で被相続人の財産の維持増加に貢献したりすることで認められるものですから、特別受益のある相続人には寄与分は認められません。

特別受益の制度とは

特別受益とは、被相続人から、生前に事業資金や結婚資金などの名目で贈られた財産のことをいい、この行為は生前贈与と呼ばれています。被相続人から生前贈与を受けていた相続人は、法定相続分から生前贈与として受けた金額を差し引いた額を相続財産として受け取ることとされており、このことを特別受益の持ち戻しと呼びます。
特別受益の制度とは、遺産分割協議の際に、特別受益の持ち戻しをすることで、相続人間の利害を調整して公平を担保するための制度です。

特別受益の場合の計算方法は

特別受益がある場合の遺産分割の計算は次の通りです。
(被相続人が死亡した時の財産+生前贈与分の財産)×(相続人ごとの相続割合)=仮の相続分
(仮の相続分)-(生前贈与分の金額)=生前贈与を受けた相続人の相続財産
※仮の相続分が生前贈与を受けなかった相続人の相続財産となります。
特別受益がある人と寄与分の主張をする人とが同一人である場合、その人は特別受益はなかったものとして扱われるとともに寄与分の主張は認められず、法定相続分通りの財産を受け取ることになります。
特別受益がある人と寄与分の主張をする人とが同一人ではない場合には、それぞれに特別受益の持ち戻しや寄与分の主張をすることになるでしょう。

相続の悩みは専門家に相談しよう

寄与分は決められた手続きをすれば認められるといった性質のものではありません。寄与分を主張するためには根拠となる書類を収集するだけではなく、場合によっては家庭裁判所への調停、審判といった申し立てをも視野にいれる必要があります。
そのため、寄与分の主張を検討するのであれば弁護士などの専門家への相談を検討したほうがよいでしょう。また、寄与分に限らず、相続全般についても専門家の手を借りることで間違いのない手続きを進めることができます。相続の悩みは専門家に相談することをおすすめします。

この記事のライター UKANO 編集部

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