「退職金に課税される所得税」とは。計算の仕方と注意点を把握しよう

「退職金に課税される所得税」とは。計算の仕方と注意点を把握しよう

ビジネス 2018.05.31

給与に課税される所得税との違いを理解する

会社を退職したときに出る退職金。これにも給料と同様に所得税がかかります。では、その税金の計算方法はどうなっているのでしょうか。給料とは全く違う方法で所得税は計算されます。ここでは退職金の所得税について、どのように計算されるのか、また、確定申告できる場合があるのかなど、退職金の税金計算を知って、備えるための知識をみていきます。

退職金の所得税は分離課税制度

退職金の計算はかなり、優遇されています。それは一体どのようなものでしょうか。まず、所得税の税金を計算するにあたって計算のもととなる金額が手取り額に比べてかなり低くなるようになっています。
次に、退職金の所得税の計算にあたっては、分離課税制度といって、他の所得とは分けて計算するようになっています。これは、銀行の利息にかかる税金と同じで、退職金を受け取る際に税金が引かれたらそこでおわりとなり、これ以上は申告も納税もしなくてもいいということです。

退職金の収入金額の求め方

退職金の税金の計算のもととなる金額は、どのようにして求められるのでしょうか。ここではその収入金額の求め方をみてみましょう。

手取金額+源泉徴収額=収入金額

退職金の収入額は手取り額+源泉税額によって退職金の収入金額が決まります。給料とは違って、健康保険料や厚生年金の保険料は引かれることはありませんので、計算からは省いています。また、先程の計算式の中の手取り額の中には「功労金」等の名目で退職金とは別に退職に際して支払われるものも含まれます。
これは、給与の名目で支払われたものも含みます。ただし、会社の慶弔金に関する規定によって支払われるいわゆる「退職祝金」のたぐいは税金の対象外になっていますので、先程の計算式の中にある手取り額の中に含める必要はありません。

死亡退職の場合は源泉徴収はない

退職金の場合、源泉徴収がない場合があります。それは、死亡退職の場合です。死亡退職の場合は亡くなられたあとに支払われたものであるということで、所得税ではなく相続税の対象になリますので、所得税の源泉徴収は行われません。余談ですが、この場合、相続税は500万円×法定相続人の数の金額分税金がかかりません。

退職金の退職所得控除額の求め方

退職金の全てに税金がかかるわけではありません。源泉税を計算する際は、退職所得控除額を求めた後にそれをさし引いて計算されます。ここではその退職所得控除額を求めます。

勤続年数が20年以上か以下により異なる

収入金額がわかったので、これを税率の計算に当てはめて…と思われますが、その前に計算すべきことがあります。まずは収入金額から退職所得控除額を控除することです。
退職所得控除額の計算方法は、勤続年数が20年以上か20年以下かによって違ってきます。退職所得控除額を求める際の勤続年数は年未満の月単位は切り上げて計算します。例えば、5年8カ月の場合は8カ月を切り上げて6年として計算します。

20年以上の場合は870万×(勤続年数-20年)

20年以上の場合の計算式は、800万円+70万円×(勤続年数-20年)=退職所得控除額 となっています。例えば、30年勤めた方は、800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円です。

20年以下の場合は40万×勤続年数

20年以下の場合の計算式は、40万×勤続年数=退職所得控除額 です。例えば、10年勤めた方は、40万円×10年=400万円です。ただし、求めた退職所得控除額が80万円以下の場合は80万円です。つまり、1年以下で退職した方は40万円ではなく80万円です。

障害により退職の場合はプラス100万円

障害者になったことによって退職した場合、年数によって計算された退職所得控除額に100万円プラスした金額が最終的な退職所得控除額です。この100万円という金額は障害の程度、勤続年数によって変わることはありません。

退職金の所得税の課税対象額の求め方

退職金の源泉税の金額は収入金額と退職所得控除額から求めます。どのようにして計算するのでしょうか。

退職所得額は収入金額-退職所得控除額

このあと退職金の所得税を計算するのに必要なのは、退職所得額を求めること、課税所得額を求めること、課税所得額から税金を求めることです。ここではまず、退職所得額を求めていきます。求め方は簡単で収入金額から先ほど求めた退職所得控除額を引くだけです。例えば、2,000万円の退職金をもらった勤続30年の人の場合は、2,000万円-1,500万円(計算式は前の退職所得控除額の項目のとおりです)=500万円 です。
ちなみに、計算結果がマイナスとなった場合は0円です。それでは、他のケースはどうなるのでしょうか同じ2,000万円の退職金でありながら勤続年数が40年の人、10年の人で違いが出てくるのでしょうか。まず、40年の人の場合、退職所得控除額は2,200万円ですので、2,000万円-2,200万円=?200万円のため0円です。一方で、10年の人では退職所得控除額は400万円ですので、2,000万円ー400万円=1,600万円です。

課税退職所得金額は退職所得額の半分

次に、課税退職所得金額を求めていきます。この計算は退職所得額を半分にすることです。つまり、計算式は退職所得額×0.5=課税退職所得金額です。
先程の、2,000万円の退職金をもらった勤続30年の人の場合は、計算した退職所得額が500万円ですので、500万円×0.5=250万円、で250万円が退職所得の課税額です。なお、この際、最終的な金額の千円未満の端数は切り捨てて下さい。
では、同じ退職金でも勤続年数が違うケースではどうなるのでしょうか。同じ2,000万円の退職金で勤続40年の人と勤続10年の人とで比較してみます。勤続40年の人は退職所得は0ですので0円、勤続10年の人は退職所得が1,600万円ですので1,600万円×0,5=800万円で、800万円が退職所得の課税額です。

7段階の表から所得税を算出する

ここでは最終的に源泉税の金額を求めます。計算方法をみていきましょう。

課税対象額を表に当てはめる

ここでは、税金の計算を行います。税金の計算方法は課税標準額を税率の計算表に当てはめることです。その税率の計算表は、国税庁のホームページにあります。年度が違えば税率が違ってくるので、注意して計算しましょう。
【参照リンク:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/shikata2018/pdf/08.pdf

該当部分の税率を掛けて控除額を引く

この表の使い方は、先ほど求めた退職所得の課税額に、税率をかけて控除額を引き、復興特別税2.1%を足します。税額は、1円単位で求めて1円未満の端数は切り捨てます。実際に計算してみましょう。
退職所得の課税額が250万円の人は、上から二つめの195万円超から330万円以下のところの税率と控除額を使います。つまり税率は10%、控除額は97,500円です。これをそのまま当てはめると、250万円×10%-97,500円=152,500円、152,500円×102.1%=155,702.5円のため、155,702円です。

退職金に分離課税を適用するための知識

退職金の税金は分離課税ですが、そうならないケースもあります。どのようなケースでしょうか。

分離課税が適用されないと20.42%の源泉所得税

分離課税が適用されないこともあります。この場合は、収入金額に20.42%の税金が課せられます。分離課税のときのように退職所得控除額を引いたり、半額にする作業がないので金額が高くなります。
先程の1,500万円の退職金を受け取る人の場合、源泉所得税は約306万円です。ですので、手取りの額はその分減ることになります。

退職所得の受給に関する申告書の記入

分離課税を適用するには「退職所得の受給に関する申告書」を記入して勤務先に提出する必要があります。たいていの場合は、住んでいる住所、氏名、個人番号を記入して勤務先に提出すれば、あとは勤務先の方で手続きしてもらえます。
【参照リンク:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_37.htm

申告書の未記入や年度途中の退職は確定申告で

それでは、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合、どうすればよいのでしょうか。この場合は確定申告をすれば源泉徴収された場合と同じとみなされて、源泉徴収された分と本来納めるべき金額との差額が返金されます。
また、年度途中の退職で社会保険などの控除が出てきた等の場合も、確定申告をすれば退職金にかかる源泉徴収分が返金される場合があります。

役員の退職金にかかる所得税について

役員の退職金は会社員のものとは違います 。それは、どのように違うのでしょうか。役員の退職金について詳しくみていきましょう。

H25年~累進緩和措置の廃止

法人役員(取締役など)については、さらなる規定があります。役員報酬を退職金に置き換ることによって節税するのを防ぐため、就任から5年以下で退任する法人役員については、先ほど説明した課税退職所得金額を求める際の二分の一の計算をしないことが定められています。

生命保険会社などからの退職金も収入額に含む

会社の中には、生命保険会社や信託会社に退職金の運用を依頼して、そこから退職金を受け取っているケースが多いかと思います。この場合もここで計算される退職金の対象です。
【参照リンク:https://biz.moneyforward.com/blog/18426

勤続年数が5年を超える場合

就任から5年を超えて退職する法人役員はどのような計算になるのでしょうか。この場合、他の人と同様に二分の一の計算を行います。つまり、法人役員でない人と全く同じ計算を行います。

所得税を理解して退職金の課税額を把握する

退職金にかかる所得税の制度は複雑で手続きも必要です。しかし、その複雑な制度と手続きを理解すれば、税金が低く抑えられ、手取り額が多くなるというメリットもあります。退職後の生活をよりよいものにするために制度をよく知っておきましょう。

この記事のライター UKANO 編集部

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