遺留分は法律に規定された相続財産の取り分。遺言より優先されます

遺留分は法律に規定された相続財産の取り分。遺言より優先されます

ビジネス 2018.04.01

遺留分の仕組みとは

自分の最も身近な存在だった親が亡くなり、悲しみに暮れるとともに、遺産という現実的な問題もでてきます。遺産は遺言書によってどのように配分するのかを決めるほか、遺言書が無い場合には法律の定めによって、「どの程度の遺産を譲り受けられるか」が決まっています。
ただ遺言書によって、遺産の分配割合を被相続人である亡くなった親がある程度自由に決められるとしても、相続を受けることができる権利を持つ人への割合があまりにも小さい場合、期待していたものを裏切られる結果につながります。
そこで被相続人に近しい人に対しては最低限の取り分を法律で定めており、その最低限の取り分のことを遺留分といっています。この遺留分について、詳しく理解しておきましょう。

遺留分に関する基礎知識

遺留分とは被相続人と近しい関係の人に対して、法律で最低限の相続の取り分を定めたものです。この遺留分の基礎の部分をしっかりと知っておきましょう。

相続人は一定割合の財産が留保される

被相続人にいろいろな思いがあるのも当然でしょう。その思いが遺言となり、特定の親族だけに財産をすべて譲ったり、親族以外の人へ遺贈として財産を譲ることになるのです。しかし、遺言書が無い場合には、法定相続分として相続できる割合が定められています。配偶者と子供が相続人の場合には、配偶者が1/2、子供が1/2を人数で割った割合となるのはよくご存知のことでしょう。
遺言書に配偶者には一切相続させないとか、子供のうち弟には全く相続させないと書かれていた場合、もらえないことにガッカリすると同時に、親族間での紛争につながることは明白です。そこで遺言書に一切相続させないと書かれていても、一定の割合の財産を譲り受ける権利として遺留分(遺留分権)があり、この権利を持つ人を遺留分権利者とよびます。

子が代襲相続の場合も遺留分は認められる

相続を受ける権利を持つ子供が、亡くなった親より先に亡くなっていることもあり得ますが、法定相続では代襲相続といって、相続を受ける権利を持つ子供が亡くなっている場合はその人の子供へ(亡くなった親からみると孫)、さらにその人の子供が亡くなっている場合には孫へ(亡くなった親からみるとひ孫)に相続を受ける権利が移ります。
遺留分についても、相続を受ける権利を持つ子供が亡くなっている場合には、その子供の直系卑属(子供や孫)がその遺留分を持つことになります。

遺言より遺留分が優先される

遺留分を考慮しなければいけない事態は、遺言書に書かれた内容に納得できないことで起こります。例えば亡くなった父親には愛人がいて、遺産のすべてをその愛人へ譲ると書かれていれば、子供としては納得できるはずがありません。
遺留分はこのようなケースの場合に威力を発揮し、いくら遺言書に全ての遺産を愛人に贈る(遺贈)と書かれていても、法律で定められた遺留分が優先されることになっています。兄弟姉妹の間でもらえる遺産の額に大きな違いがある場合などにも、遺留分で定める割合まではもらえることが権利として保証されているのです。

法定相続人は基本的に配偶者と子供

死亡した人の配偶者は常に相続人になると定められています。そのうえで相続人の第一順位として、死亡した人の子供と定められており、死亡した人の直系尊属である父母や祖父母は第二順位、死亡した人の兄弟姉妹は第三順位となっています。第一順位の相続人がいれば第二順位や第三順位の人は相続人なれませんし、第二順位の人がいれば第三順位の人は相続人にはなれません。
このように法定相続人は死亡した人の配偶者とその子供を優先しており、遺留分に関しても死亡した人の配偶者とその子供が優先されています。

遺留分減殺請求には1年の時効がある

遺留分減殺請求とは、相続した財産が多い人に対して自分の遺留分を請求する手続きです。遺留分の請求をできる期間は、自分の遺留分を侵害していることを知ってから1年間です。兄ばかりがたくさん財産を引き継いでいることや、愛人が財産の大半を持っていたことを知った日から1年以内に請求しないと、遺留分減殺請求権は消滅してしまいます。
また誰かがたくさん財産を引き継いだことを知らない場合もあるかもしれませんが、このような場合でも相続が始まって10年を超えると、遺留分減殺請求権は消滅してしまいます。

法定相続人の数ごとの遺留分割合

民法1028条に遺留分の割合が定められていて、直系尊属のみが相続人である場合は被相続人の財産の1/3、これ以外の場合は被相続人の財産の1/2となっています。これだけでは分かりにくいので、それぞれのケースに合わせて把握していきましょう。

配偶者のみの場合は1/2

遺留分とは法律で定められた、遺産の最低限の取り分のことです。このため法定相続分とは取り分が異なってきます。
配偶者のみが相続する場合、法定相続分ではすべてになるのですが、遺留分としては「これ以外の場合は被相続人の財産の1/2」なため、1/2が遺留分となります。

子供が1人の場合は配偶者と子に1/4

遺留分は直系尊属以外は被相続人の財産の1/2となっています。法定相続分に遺留分の割合を乗じたものが、実際の遺留分となります。配偶者と子供1人の場合、それぞれ法定相続分は被相続人の財産の1/2です。この法定相続分の割合に遺留分の割合を乗ずることになりますので、配偶者は1/2×1/2で1/4に、子供は1/2×1/2で、1/4が遺留分となります。
配偶者と子供3人の場合、配偶者の遺留分は1/4で変わりませんが、子供は人数でさらに割るため1/4÷3で1人あたり1/12になります。
なお養子や認知を受けた非嫡出子にも実子と同様に相続権があり、遺留分についても同様に認められています。遺留分の計算も実子とまったく同じになります。

配偶者が死亡し子供2人の場合は1/4

配偶者が既に死亡しており、法定相続人が子供だけというケースも多くみられます。配偶者が死亡している場合、法定相続分は子供にすべての遺産が渡ることになっています。
遺留分は「これ以外の場合は被相続人の財産の1/2」ですので、子供全体では1/2となり、子供の人数で割ることになりますので、子供2人の場合は1/4、子供が3人の場合は1/6が遺留分となります。

子供がいない場合は両親に1/6

子供がいない夫婦の場合、法定相続人は配偶者と直系尊属である死亡した方の両親(両親が死亡している場合は祖父母)になります。この場合の法定相続分は配偶者は2/3、直系尊属は1/3です。直系尊属以外も相続人としていますので「これ以外の場合は被相続人の財産の1/2」の規定から、配偶者は1/3に、直系尊属は1/6となります。
相続人が直系尊属である両親しかいない場合には、「直系尊属のみが相続人である場合は被相続人の財産の1/3」の規定により、遺留分は1/3となります。

離婚した配偶者に相続権はない

離婚した時点で配偶者ではなくなりますので、相続権はありません。ただし2人の間に子供がいた場合ですが、たとえ親権が離婚した元パートナーにあったとしても、親子関係がある事実には変わりがありません。離婚した元パートナーに相続権はありませんが、その子供には相続権があります。
また内縁の妻にも相続権は認められません。内縁の妻との間にもうけられた子供(非嫡出子)に関しては、認知されている場合には相続権があります。

遺留分侵害が起こるケース

遺留分の侵害とは、本来自分がもらえるはずの相続の遺留分が、なんらかの原因によって遺留分より少なくなるケースのことを指します。どのようなケースで遺留分侵害がおこるのでしょうか。

被相続人が遺留分を侵害した遺言を残した

もっとも多いケースが、被相続人が作成した遺言書によって遺留分が侵害されるケースです。法定相続人にはあたらない愛人や内縁の妻に遺贈するケースや、長男だけにすべての財産を譲ると記したケースが多いです。
遺言書は被相続人の意思ですし尊重されるべきではあるのですが、すべてを遺言書による相続に委ねてしまうと、残された配偶者や子供の生活支援という側面からもはずれてしまうため、法律によって最低限相続できる割合を遺留分として定めているのです。

被相続人が相続人に生前贈与をしていた

被相続人が亡くなる1年前までに生前贈与をおこなっていた場合、この生前贈与された金品は相続における遺留分の対象としてカウントされます。これは法定相続人以外に生前贈与をおこなった場合も含まれます。
愛人に多額のお金や不動産を、亡くなる1年前までに生前贈与していた場合、生前贈与されたお金や不動産を含めて遺留分を計算することになるのです。
また長男に財産の大半を、亡くなる1年以上前に渡していたケースがあるとします。あきらかにほかの子供や配偶者に相続させたくないために、前もって長男に生前贈与した場合には、亡くなる1年以上前の生前贈与でも相続に含んで遺留分を計算します。これを特別受益とよんでいます。
特別受益に当たるケースとして、ほかの相続人は大学に進学させなかったのに、特定の相続人だけを留学させたり医大へ進学させたりしたケースや、事業を始めるための資金を特定の相続人だけ負担してあげたなどが含まれます。

不動産を売却することができない

遺産には預貯金が少なく、土地と建物といった不動産が大半といったケースの場合に起こる問題です。土地と建物を遺留分どおりの割合とした共有とすればよいのですが、後々にその不動産を売却する際にもめることが多いです。そのために不動産を売却して遺留分をもらえればよいのですが、都市部などで売却が比較的容易な場所と違い、地方へ行くと売却自体が困難なケースも見受けられます。
どうしても不動産が売却できない場合には、遺留分相当額を不動産を相続した人から分割で支払ってもらうということもあります。

代襲相続人であることを知ったのが遅かった

代襲相続人とは、遺産を相続できる権利を持つものが死亡している場合、その子供や孫が相続人としての権利を得ることです。法定相続人としては亡くなった人の兄弟姉妹が含まれ、その人たちの子供も代襲相続人となるのですが、遺留分については亡くなった人の兄弟姉妹は含まれませんので、その子供たちは代襲相続人にはなれません。
祖父や祖母あるいは曾祖父や曾祖母が亡くなり、その子供や孫も死亡している場合には代襲相続人となる場合がありますが、疎遠であったり遠隔地に住んでいるなどの理由で連絡がこず、自分が代襲相続人であることを知ったのが遅かった場合、すでに遺産の配分が終わっているケースもあるでしょう。こういった場合に遺留分侵害がおこるのです。

遺留分の放棄を強要された

亡くなった人をずっと世話していた人だけ、この家を継ぐ人だけ、といった理由で遺留分の放棄を強要されるケースもよくあります。
自分の意志で相続を放棄したのならばよいのですが、遺留分の放棄を強要された場合には遺留分が消失することはありません。先に遺産を分配されてしまった場合、遺留分を請求することができます。

遺留分減殺請求のやり方

遺留分減殺請求とは、自分の遺留分を侵害している人に対して請求する行為です。なお遺留分減殺請求相続の開始と、遺留分を侵害されていることを知った日から1年以内に請求しなければいけません。またそういった事実を知らない場合でも、遺留分減殺請求権は遺産相続開始から10年で権利は消滅します。遺留分減殺請求の手順も知っておきましょう。

内容証明郵便で通知する

まず最初におこなう手続きとして、遺留分を侵害している相手に対して、内容証明郵便で遺留分請求の通知書を送ることです。この通知をおこなう相手は、遺留分を侵害している人全員となります。
内容証明郵便を利用する理由は、相手に送った通知と同じものの控えが自分の手元と郵便局に残されるという点。法律上有効な確定日付が入る点などがあります。遺留分減殺請求権は1年で消滅するため、いつ請求をおこなったのかが重要になるのですが、内容証明郵便の確定日付はこれを証明するものとなります。また遺留分請求の通知など知らないといったトラブルからも回避することができるからです。
内容証明郵便で遺留分減殺請求の通知をおこなったあとは、話し合いによる解決が望ましいのですが、話し合いでは解決できそうにない場合には、裁判所において解決をはかっていくことになります。

家庭裁判所で調停をおこなう

遺留分減殺請求に関しては、訴訟の前に調停による解決を試みなければならない調停前置主義が適用されます。調停を経ずに訴訟を起こした場合には、裁判所の職権により調停が先におこなわれます。調停とは裁判官と一般市民から選ばれた調停委員が当事者間に入り、紛争の解決を合意によって図る手続きです。
基本はお互いの話し合いによる合意で、訴訟より時間的に早く解決することが多く、費用もあまりかかりません。しかし話し合いによる合意が得られなかった場合には、訴訟による解決を目指すことになります。

地方裁判所で訴訟を起こす

合意が得られず調停が不成立になると、地方裁判所で訴訟による解決を目指すことになります。遺留分が140万以下の場合には簡易裁判所での訴訟となります。被相続人の最後の所在地を管轄する地方裁判所でおこないますが、被告の住所地を管轄する地方裁判所でもかまいません。
裁判ですので、自分に遺留分があることや、その遺留分を侵害されていることを示す証拠を提示し、自ら立証していく必要があります。ただ多くの場合は裁判所から和解をすすめられます。和解も話し合いによる合意で、調停は決裂すれば不成立となるだけですが、和解が決裂すると裁判が続けられて、その裁判の結果を受け入れなければなりません。裁判は長期にわたるものですし、できれば和解での解決をはかりたいところです。

期限は遺留分の侵害を知ってから1年以内

遺留分減殺請求権には時効があり、遺留分を侵害されていることを知ってから1年以内となっています。全体の相続財産を調べ、そこから自分の遺留分を計算するには1年はかなり短い期間といえます。
また遺留分が侵害されているにもかかわらず、その事実を知らなかった場合には、遺産相続開始から10年で遺留分減殺請求権は時効により消滅します。

不安なときは弁護士に依頼する

遺留分減殺請求はすべての相続財産を調べ、自分の遺留分を確定させなければなりません。預貯金などは分かりやすいのですが、土地や建物といった不動産はその評価額を調べなければなりませんし、生前贈与や特別受益を受けている人とその額の算定も必要になってきます。
個人でもできなくはありませんが、少しでも不安を抱えているのならば弁護士に依頼することを検討しましょう。

遺留分の請求が認められない人

法定相続人ならば誰もが遺留分を認められるわけでもありません。ケースによっては認められない人もでてきます。遺留分の請求が認められない人とはどんな人なのでしょうか。

相続を放棄した

相続の放棄とは口頭で相続しませんとか、覚書のようなものに相続しませんと書くだけのものではありません。家庭裁判所において相続放棄の申立て(申述)をおこない、許可をもらってはじめて相続の放棄をしたことになります。
相続の放棄が家庭裁判所で認められると、その人は元々相続人ではなかったものとみなされます。相続人ではなくなるので遺留分も発生しませんし、その人の子供や孫についても代襲相続人として認められなくなります。

相続する権利を失った欠格者

相続欠格者については民法891条に規定されており、この規定のいずれかに当てはまるような事由がある場合には欠格者として、相続権のすべてを失うことになります。おもな内容は次のとおりです。
1.被相続人や自分と同順位やそれ以上の順位の相続人を殺害し有罪判決が出た場合
2.被相続人が遺言を書いたり内容を変えることを、相続人が妨害した場合
3.相続人が被相続人に対して無理やり遺言を書かせたり、内容を無理やり改変させた場合
4.相続人が遺言を隠してしまったり、捨てるなど処分した場合
1はドラマや小説の世界でよく書かれるため理解しやすいでしょう。遺産目当てで被相続人を殺害したり、取り分を少しでも多くしようと相続人を殺害した場合です。
2から4はこれらの行為に加え、この行為によって遺産相続が自分にとって少しでも有利にさせようという意思が必要だとされています。
このほかに被相続人が殺害されたことを知っているのに、告発や告訴をしなかった場合という規定もあります。

相続人として排除された

相続人が被相続人に対して暴力や侮辱的な行為をおこなうなど虐待行為があった場合や、相続人が殺人や強盗など重大な犯罪を犯し刑罰を受けた場合、相続人が度重なる浪費や借金によって被相続人に迷惑をかけるなどの非行行為があった場合には、相続人として排除することができます。
排除するためには家庭裁判所への申立てが必要で、排除の理由が認められれば、相続人排除の審判が下され審判書が送付されてきます。その審判書を市区町村役場へ提出することで、相続人として排除されることになります。

生前に遺留分の放棄をした

相続放棄に関する手続きは、被相続人が亡くなってからでないとおこなうことができません。しかし、遺留分の放棄に関しては、被相続人が存命のうちにおこなうことができます。遺産相続などでもめることがあきらかな場合、できればその争いに巻き込まれたくない人もいるでしょう。
そういった人が家庭裁判所に申し立て、許可を得られれば遺留分の生前放棄が可能となります。生前とはいえ遺留分を放棄しているのですから、あらためて遺留分減殺請求をすることはできません。

相続人が兄弟や姉妹である

法定相続人は配偶者は常に認められ、その次に第一順位として死亡した人の子供であり、その子供が亡くなっている場合は代襲相続として亡くなった人の孫になります。第二順位として第一順位の人が誰もいない場合に、亡くなった人の親など直系尊属。第二順位の人もいない場合には亡くなった人の兄弟姉妹が第三順位として法定相続人となります。
ただし、遺留分については民法1028条において「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける」と定められており、亡くなった人の兄弟姉妹に関しては法律上遺留分は認められていません。

権利を知って公平に遺産を相続しよう

遺産について自分にとっては不利になるようなことが、遺言書にはっきりと記されているケースも多々あります。遺言書に書かれているのだから、不満はあるものの仕方がないとあきらめることはありません。
このようなケースに対応するために法律には、最低限の遺産の取り分である遺留分が示されており、その遺留分を請求することは権利でもあるのです。遺留分という権利を知ることで、あまりに不公平な遺産相続にはしっかりと対応していきましょう。

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この記事のライター UKANO 編集部

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