確定拠出年金の仕組みをしっかり理解して、年末調整を賢く乗り切ろう
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確定拠出年金を年末調整で申告するメリット
確定拠出年金の控除に必要な年末調整での申告をすることで、所得税や住民税を安くすることができます。
確定拠出年金には個人型と企業型があり、その掛け金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の所得控除の対象となります。
ただし、所得控除のメリットがあるのは、確定拠出年金の個人型(iDeCo・イデコ)や、企業型のマッチング拠出などで、掛け金の払い込みの段階で自分で掛け金を払っている場合のみになります。
確定拠出年金に年末調整が必要な理由
掛金の全額所得控除を受けるため
個人型確定拠出年金(iDeCo)では、掛け金を資産運用し、積み立てた掛け金は全額所得控除の対象となるため、所得税と住民税が軽減されます。
また、自営業者については確定申告、会社員については年末調整で対応することができます。
個人型確定拠出年金へ拠出する掛け金は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。
例えば、年間所得400万円(所得税率20%、住民税率10%)の人が、月々2万円を積み立てた場合は、年間7万2,000円(=2万円 x 12月 x 30%)分の所得控除を受けることが可能です。
運用収益を非課税とするため
個人型確定拠出年金(iDeCo)の資産によって得られた利息や配当などの運用収益については、全額が非課税となっています。
さらに、銀行預金などの一般的な金融商品は、所得税15.315%(2013年1月1日~2037年12月31日まで)、そして住民税5%の合計20.315%が、運用益に対して源泉分離課税されます。
しかし、個人型確定拠出年金の場合、全額が非課税になります。
その上、個人型確定拠出年金を利用して貯蓄した資産については、受け取る際に税負担の軽減措置もあるため、分割(年金)で受け取る場合は「公的年金控除」の対象となり、一括(一時金)で受け取る場合は「退職所得控除」の対象になります。
一時金を退職所得控除の対象にするため
一時金については退職所得となり、計算式は「(収入金額 - 退職所得控除額)x 1/2 = 退職所得の金額」を使って表すことができます。
また、算出された退職所得の金額(退職所得から控除する所得控除がある場合は控除後の金額)に対し、速算表に応じた所得税が課税されます。
退職所得控除額の計算式
● 勤続年数が20年を超える場合、退職所得控除額は、800万円+70万円(金属年数 - 20年)。
所得税の速算表
課税される所得金額 | |
---|---|
195万円以下 | 税率5%、控除額0円 |
195万円~330万円以下 | 税率10%、控除額9万7,500円 |
330万円~695万円以下 | 税率20%、控除額42万7,500円 |
695万円~900万円以下 | 税率23%、控除額63万6,000円 |
900万円~1,800万円以下 | 税率33%、控除額153万6,000円 |
1,800万円~4,000万円以下 | 税率40%、控除額279万6,000円 |
4,000万円以上 | 税率45%、控除額479万6,000円 |
退職所得の金額に対して、10%の住民税と、上記の計算式で算出された所得税額の2.1%の復興特別所得税が課税されます。
例えば、勤続年数が30年で一時金が2,000万円の場合の退職所得の金額は次の通りです。
一時金の場合は、退職所得控除額以下であれば、課税対象となる所得は発生しないため、税金はかかりません。
そして、退職所得控除額を超える場合であっても、課税対象となる所得については超えた金額の1/2となり、税負担が軽減されます。
その上、退職所得は「給与所得」「不動産所得」「事業所得」「雑所得」など、合算されずに別個で税率がかけられるため、相対的に低い税率が適用されます。
注意点として、確定拠出年金以外に他の退職所得に該当するものがある場合は、退職所得控除額は原則として別々には計算されません。
年金を公的年金等控除の対象とするため
年金で受け取る場合については、雑所得の公的年金などとして、
の計算式で所得金額を算出することができます。
また、この計算式の中の公的年金等控除額は、年齢に応じて計算されます。
また、計算された所得金額は「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「公的年金」等以外の雑所得などと合わせて計算し、さらに総所得金額を構成します。
総所得金額から配偶者控除、基礎控除などの所得控除額を差し引いた金額に対し、退職所得の金額と同様に住民税、所得税、さらに復興特別所得税が課税されます。
年金の場合は、公的年金等控除額があるため、所得金額は収入金額よりも低くなります。
老齢基礎年金や老齢厚生年金など、他の公的年金等を同時に受け取る場合は、これらと合算して公的年金等にかかる雑所得が計算されるので注意が必要です。
よって、年金での受給を検討する場合、老齢厚生年金の受給が段階的に65歳からになるので、公的年金等控除額を企業年金から控除できるように、60歳~64歳までの5年間で受け取るプランを検討すると、税金上はメリットになります。
さらに、年金での受け取りで所得が発生する場合は、配偶者控除や基礎控除などの所得控除により、実質的に課税される所得が生じなければ、それほどデメリットにはなりません。
確定拠出年金の年末調整を申告するポイント
申告書に掛金を記入
確定拠出年金で積み立てた掛け金は、全額所得控除されるため、きちんと税金が戻ってきます。
ただし、税金を手元に取り戻すためには、年末調整や確定申告で手続きをする必要があります。
申告対象の年度内に、確定拠出年金や小規模企業共済の掛け金を支払っていた場合は、その金額に応じて税金の一部を免除してもらうことが可能です。
これを、小規模企業共済等掛金控除と呼びます。
記入の対象となる確定拠出年金とは、公的年金以外にも加入することができ、老後に給付を受け取ることが可能な私的年金のことです。
一方、小規模企業共済とは、個人事業主の人などが利用できる共済制度で、共済金(保険料)を事前に積み立てておき、退職の際にまとめて積立金を受け取ることができます。
払込証明書を添付して勤務先に提出する
確定拠出年金を統括する国民年金基金連合会から、毎年10~11月頃に自宅に郵送される「小規模企業共済等掛金払込証明書」という書類が届きます。
これは、確定拠出年金の加入者が1年間にどのくらい掛け金を払ったかを証明する書類で、税金に関する手続きを行うために大切な書類です。
「小規模企業共済等掛金払込証明書」は失くさないように保管しましょう。
書類には、「小規模企業共済等掛金控除」の枠に「個人型又は企業型年金加入者掛金」と書かれている箇所があります。
その右側の空欄と、合計(控除額)の欄に、その年の確定拠出年金で支払った掛け金の総額を記入します。
記入後、保管していた小規模企業共済等掛金払込証明書を添付し、記入した書類と一緒に勤務先へ提出します。
源泉徴収書で控除額を確認する
源泉徴収票とは、会社などで仕事をして、収入を得ている人の年間の収入を表すものを指します。
特に個人事業主は、源泉徴収票と確定申告を自分で行う必要があります。
一方会社員の場合は、社内で所得税を計算して年末調整を行なった上で源泉徴収票を発行してもらうため、源泉徴収票にて確定申告を行うことが可能です。
源泉徴収票には、給与の支給額と所得税の金額が明記されており、毎月徴収される税金について、年末調整で所得控除や保険料控除などの計算を再度行います。
源泉徴収票によって、毎月徴収していた金額と、年間の差額を年末調整で計算され、確定拠出年金はその所得控除の対象となります。
確定拠出年金の年末調整を忘れた場合の対処法
確定申告する
確定拠出年金の年末調整を忘れた場合でも、還付申告をすることで対処することが可能です。
年末調整というのは、本来個人がするべき確定申告を、簡易的に完結させるための手続きを指し、年末調整の時に会社へ書類を出し忘れるなどして、確定拠出年金の調整ができなかった分については、確定申告をすることで問題なく対応できます。
確定申告は、原則として翌年の3月15日までとなっており、年末調整は12月中に行うという会社が多いですが、万が一それを過ぎてしまった場合でも、自分で確定申告をすれば問題ありません。
払込証明書の再発行手続きを行う
確定申告をする際に、納税者が支払った保険料や年金などを控除として申告することで、収める税金の額を少なくすることができますが、控除を受けるためには、確定申告書に、支払額の証明書、明細書、領収書などを添えて提出する必要があります。
個人型確定拠出年金の掛け金を支払った場合も、その掛金支払額を所得金額から控除することができますが、万が一振込証明書を紛失した場合は、国民年金基礎連合会に問い合わせることで再発行することが可能です。
また、掛け金の払込方法が「事業主払込」の場合、年末調整を会社が行っているため、確定申告書への添付は不要とされるため、証明書は発行されません。
参考リンク:http://www.npfa.or.jp/join/application.html
5年以内であれば還付申告可能
もしも昨年以前の申告忘れがあった場合であっても、5年以内であれば還付申告の対応が可能になります。
この場合、納め過ぎた所得税や住民税も還付の対象になります。
3月15日という確定申告の期限に縛られる必要はなく、控除漏れがあった翌年の1月1日から、5年間であればいつでも確定申告書を提出できると税法で規定されています。
万が一、年末調整し忘れている項目があっても、基本的には後からでも修正して対応することが可能なので、もしも忘れてしまったという場合であっても、あきらめるのではなく、しっかりと対応するようにしましょう。
年末調整の申告が必要ない確定拠出年金
企業型の確定拠出年金
企業型の確定拠出年金とは、実施企業などに勤務する従業員(国民年金の第2号被保険者)が加入の対象になり、従業員は企業の定めた規約に従って加入します。
掛け金の負担については、事業主拠出となるため、企業が規約に基づき、従業員のために拠出し、この掛け金を「事業主掛金」と呼びます。
一方、規約に定めがある場合は、従業員が事業主掛金に拠出を上乗せすることができ、この掛け金を「加入者掛金」と呼びます。
拠出金は、企業が取りまとめて資産管理機関へ払い込み、拠出限度額などの管理は企業が行います。
また、運用については、個々の加入者は運営管理機関から提示される、運用商品の中から投資する運用商品を選択し、運用商品の預け替えについては、最低3カ月に1度認められます。
自分の給与からも掛金を出すマッチング拠出
マッチング拠出とは、企業年金でありながら、加入者も掛け金を拠出することで、退職後の資産形成を図ることができる仕組みです。
利用は任意で行うことができ、加入者は会社掛金と同額まで合わせて算出し、拠出限度額まで拠出することができます。
また、勤務先が所得控除の手続きをするため、加入者の掛け金は全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されます。
ただし、原則として年齢が60歳になるまで受け取りができないため、必要な資金は当面手元に残すなどしておくことが大切です。
マッチング拠出は加入者が掛け金を負担する仕組みなので、わずかな負担で会社は福利厚生の拡充を図ることができます。
選択制による確定拠出年金の加入
選択制による確定拠出年金は、通常の確定拠出年金のように、会社自身が掛け金を拠出するのではなく、従業員の給与の一部を会社が拠出した年金の掛金とします。
企業型確定拠出年金の一種ですが、主に個人による掛金拠出となり、社員の給与の内、従業員自身の意思で一定の金額を給与として今受け取るか、もしくは選択制確定拠出年金として老後の年金として、後で受け取るかを決めることができます。
選択制確定拠出年金のメリットとして、個人型確定拠出年金と同様に、掛け金として拠出した分については、所得税や住民税の控除の対象となります。
さらに、掛け金として拠出した金額は、社会保険上の報酬からも差し引くことができます。
また、通常の個人型確定拠出年金の場合は、所得税の対象になり、社会保険料上の控除にはなりません。
社会保険料率は年々上昇しており、労働者負担分だけでも収入の15%ほどになりますが、選択制確定拠出年金に拠出をすることで、社会保険料を安く抑えることが可能になります。
払込方法が事業主払込の場合
払込方法が事業主払込の場合は、毎月ごとに、掛け金額が事業主へ、国民年金基金連合会から通知が届きます。
その通知を元に、事業主が加入者に変わって毎月給与から天引きし、天引きした掛け金を加入者の代わりに口座振替によって払い込みします。
会社側が払い込みをしてくれるため、掛け金は会社側が把握し、加入者は年末調整の際、何もする必要がありません。
初回の掛金を払い込んだのが10月以降
個人払い込みの場合は、毎月掛け金が加入者名義の銀行から引き落とされます。
個人払い込みは、会社を経由せずに、毎年10月ごろ、国民年金基金連合会から送られる「小規模企業共済等掛金払込証明書」を、会社へ年末調整の際に提出する必要があります。
もしも転勤をした場合などで、給与の支払い元が変わる場合などは、掛け金の拠出がすぐにストップしてしまうため、すぐに「加入者登録事業所変更届」を提出する必要があります。
個人払い込みの場合でも、加入者登録事業所変更届を提出する必要はありますが、個人の口座から引き落とされるため、掛金の拠出がすぐに止まる心配はありません。
会社員は忘れずに年末調整で申告しよう
確定拠出年金に加入し、節税のメリットを受けるためには、年末調整の手続きをしっかりと行うことが大切です。
ただし、実際に年末調整を行うには、必要書類も多く、迷うことも多いでしょう。
年末調整で慌てないためには、確定拠出年金に関する書類の添付や、必要事項の記入などを前もって把握しておくことがとても大切です。
また、確定拠出年金に関する書類や封筒は、紛失しないように大切に保管し、年末調整の際には書類がスムーズに提出できるように、しっかりと準備するようにしましょう。
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