個人事業主が見落としがちな雇用保険のしくみを理解しよう
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雇用保険制度の仕組みの知識を高める
雇用保険は、厚生労働省が労働者の生活や雇用の安定・就職の促進のために実施する働く人のための保険です。
労災保険とセットで、労働保険とも呼ばれます。
雇用保険は条件に合う労働者であれば国が強制的に加入させることができる強制保険です。
条件に合えば大企業も中小企業も、あるいは個人事業の雇用者も加入しなければなりません。
個人事業主の中にはこの雇用保険制度をよく知らず、加入手続きを忘れてしまうケースもあるようです。
もし加入すべき労働者を加入させなければ、過去2年までさかのぼって雇用保険料を徴収されるなどの罰則があります。
そのようなことのないよう、雇用保険の知識を高めましょう。
個人事業主の雇用保険の加入について
雇用保険の加入者は「雇用されている労働者」です。
従って、個人事業主本人は雇用保険には加入できません。
また原則として個人事業主と同居している親族も、事業主とともに事業の利益を得ていると考えられるため加入はできません。
ただし、常時同居の親族以外の労働者を使用する事業において、日常的に事業主の指揮命令に従っていることが明白であること、就業の実態型の労働者と同様で賃金もこれに応じて支払われていること、取締役など事業主と利益をいつにする地位にないことの全てを満たせば加入は可能です。
この場合は、公共職業安定所に同居の親族雇用実態証明書を提出しなくてはなりません。
個人事業主も従業員に雇用保険をかける
雇用保険に加入することは事業主としての義務であり、労働者には安心感を与え、結果的に事業の好転につながります。
もし労働者が失業したときには失業給付が支給され、次の就職のために指定の学校で講座を受講する場合は、学費免除で手当までもらえる教育訓練給付金など複数のメリットがあるからです。
加入の条件に事業所の規模は関係なく、従業員を抱えている全ての事業所で、雇用保険に加入しなければならないのです。
雇用保険の加入条件について
雇用保険加入の対象者は、すべての労働者というわけではありません。
日常的に就労する人は必須ですが、そうでない場合は違います。
週に20時間以上の就労がある
まず1つ目の条件は、週あたりの就労時間が20時間以上であるということです。
正社員の場合は、通常週あたり40時間の就労時間なので該当します。
正社員以外のパートやアルバイトでも、週あたり就労時間が20時間以上であれば雇用保険の加入義務があります。
しかし、これは継続雇用が前提となっているため、毎週決まった時間で働く労働者が対象です。
例えば「今週は20時間働くけど来月から2カ月休む」といったように、好きなときにきて、好きな時間働く労働条件の場合は雇用保険に加入できません。
雇用契約期間の見込みが31日以上ある
もう1つの条件は、雇用される期間が31日以上見込まれることです。
従って雇用期間が30日以下の短期バイトの従業員は雇用保険に加入できません。
逆にいうと雇用契約書に期間が限定されていない無期契約や、31日以上の契約であれば派遣でも雇用保険に加入できます。
雇用期間は多くの場合、採用時に提示されます。
契約条件はしっかり確認するようにしましょう。
労基署で従業員の雇用保険加入の手続きをする
事業主は、従業員を雇用すると雇用保険と労災保険を合わせた労働保険に加入する必要があります。
労災保険とは、従業員に仕事上の負傷があった場合に給付される保険です。
労働保険加入に必要なのは以下のような手続きです。
労働保険保険関係成立届の提出
雇用保険・労災保険に加入するには、労働保険保険関係成立届を所轄の労働基準監督署に、雇用した日から10日以内に提出しなくてはなりません。
労働者を雇用し、労働保険関係が成立したことを事業所が届けます。
労働保険概算保険料申告書の提出
その後、その年度分の労働保険料(保険関係が成立した日から、その年度の末日までに労働者に支払う賃金の見込み額に保険料率をかけた金額)を概算保険料として申告し、納付しなければなりません。
こちらは雇用した日から50日以内の提出が必要です。
事業形態を確認できる書類を用意する
上記の他に、実際の事業の形態が確認できる書類が必要です。
自宅で事業を行なっている場合は住民票、自宅以外で事務所などを借りて事業を行なっている場合は、その賃貸契約書の写しなどになります。
労基署への手続きが済んだらハローワークへ
労働基準監督署での手続きが終わったら、次はハローワークでの手続きです。
まず、事業所が初めて雇用保険加入対象者を雇った際に提出する適用事業所設置届を雇用の日から10日以内に、加入対象者ごとに被保険者資格取得届を雇用した月の翌月10日までに提出しましょう。
最初の手続きでは事業形態を確認するものや労働保険保険関係成立届の控え、開業届の控えなど多くの添付書類が必要ですが、2回目以降の被保険者資格取得届では、あればその雇用者の前職で加入していた雇用保険被保険者証と本人確認書類だけで手続きできます。
雇用保険の保険料率と負担額について
雇用保険の保険料率は、一般事業であれば労働者が1,000分の3、雇用主が1,000分の6の合計1,000分の9ですが、実は事業によって異なります。
農林水産業と清酒製造は労働者が1,000分の4、雇用主が1,000分の7で合計1,000分の11。
建設業は労働者1,000分の4、雇用主が1,000分の8で合計1,000分の12です。
これらの事業は、一般的なものと比較すると季節によって就業が不安定になりやすく、失業給付の可能性が高いことからやや高めに設定されています。
しかし、中には農林水産業であっても、季節に左右されないものは一般事業として扱われるものもあります。
保険料率は年度ごとに変動する
雇用保険料率は毎年4月1日に、積立金や失業給付の状況に合わせて見直されていますが、実際には見直しが行われても雇用保険料率自体は変わらない場合もあります。
また新たな雇用保険料率は、見直される4月1日以降に締められた給与からの適用となります。
例えば毎月20日締め翌月10日支払いなら、4月20日締めの給与からの適用となり、それ以前は旧料率で計算されます。
負担額は労働者負担と事業主負担
雇用保険料は労働者と事業主の両方が負担しますが、どの事業でも事業主負担の方が多くなっています。
これは労働保険徴収法第30条で、事業主負担分が多い部分については雇用安定事業と能力開発事業の二事業分に使われるとされ、これらは事業主に対するいわゆる助成金であることがわかります。
これを除いた部分は失業保険などの給付に使われています。
雇用保険未加入は罰則がある
個人事業主の中には、制度を誤解し雇用保険未加入のまま経営していることもあり得ます。
もし雇用保険加入義務があるのに未加入である場合は、雇用保険法に罰則を定めた条文があります。
83条1項に、違反した場合は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となっています。
個人事業主の雇用保険の関わりを理解する
雇用保険は、事業の規模や法人・個人といった経営母体にかかわらず、一定の条件を満たした労働者が加入するものです。
家族での事業や、非常に小さな規模だからといって免除されるとは限りません。
事業の主なら、雇用した労働者を守る雇用保険と事業との関わりを理解し、適切な運営に努めたいものです。
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