初めての個人事業主のために必要な商号登記について学ぶ。
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個人事業主が申請できる登記を知る
平成30年1月にガイドラインが公開された「働き方改革」の実行計画の一つとして、厚生労働省が見直しをしたのが、会社員を対象とした副業・兼業」に関する規制緩和策です。
一般企業に勤める会社員が余暇などを利用して副業・兼業をしやすくするため、それまで禁止していた「就業規則」を見直した制度です。
これをきっかけに副業や兼業を始める人が増えてきました。
また、一度リタイアした人が今までの経験を生かした事業を始める人も増えてきています。
こうして独自に事業を始める人の多くは個人事業主の道を選んでいます。
一人もしくは少人数で運営できる個人事業はとても手軽で自由に出来る点が魅力となっているようです。
しかし、いくら手軽で自由だと言っても事業を始めるにあたって正式な手続きは必要です。
何もかもが初めての人たちにとって、事業の夢は膨らむけれど、始めに何をするべきなのか、何をどのように手続きしたらいいのか、まったく手を付けられずに悩んでいるのではないでしょうか。
ここでは、初めて個人事業主になった人のために、始めにやるべきことを中心にお話ししたいと思います。
個人事業主の登記とは何か
登記とは、事業の運営を始める際の申告書です。
登記を申請することで一会社として認定されることになります。
起業する個人や会社には必要な手続きです。
個人事業主になるのに登記は必要ない
登記とは、一定の事項について登記簿という公式の帳簿を利用した事業の運営をするために大切な事前登録の手続きのことをいいます。
ここでいう登記とは商号登記の事で、個人事業主の登記は、この商号登記というものに含まれます。
ふつう商号登記は法人が行うものなので、実際のところ個人事業主は登記をする必要・義務はありません。
個人事業主にとって必要な手続きは、「開業届出書」という書類を提出することだけです。
この届出書は法務局ではなく税務署に提出するもので、正式な名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」という書類です。
この書類は、事業を始めた日から約1カ月以内に提出することになっていますが、開業の申請書なので、この時点での屋号や会社名の申請は義務づけられていません。
年度末に提出する青色申告や白色申告の際に確定申告書に記入するだけで構いません。
開業届出書は各税務署にもありますが、国税庁のホームページからも自由にダウンロードして印刷できますし、書類の届出に係る費用は一切必要ありません。
個人事業主が申請できる商業登記は4種類
一般的には法人が登記する商号登記ですが、個人事業主が申請していけないわけではありません。
商号登記と一口に言っても数多くの種類があります。
その中でも個人事業主が申請できる登記は4種類。
商業登記法によると「商号の登記」「支配人の登記」「未成年者または後見人の営業登記」「商号の廃止・更生・消滅または抹消の登記」の4種類です。
商号の登記(第27条)
その商号が他者がすでに登記した商号と同一であり、かつ、その営業所の所在場所が当該他者の商号の登記に係る営業所の所在住所と同一ではない場合登記できる。
申請する会社名がすでに他の人が申請していた場合、または事業を始める予定の場所と同じ住所に他の人が申請している場合は登記申請はできません。
支配人の登記(第43条)
支配人の氏名及び住所、商人の氏名および住所、商人が数個の商号を使用して数種の営業をするときは、支配人が代理となり営業およびその使用する商号や支配人を置いた営業所を登記するもの。
事業の責任者を申請します。
実際にその場所に住んでいなくても申請できます。
未成年者または後見人の営業登記(第35条)(第41条)
- 未成年者の氏名、出生の年月日及び住所、営業の種類や営業所を登記するもの。
- 未成年者が事業を始める場合も同じように申請します。
- 後見人の登記は、後見人の申請によって行うもの。
- 実際事業をする人とは別に後見人を立てることが出来ます。
商号の廃止、更生、消滅または抹消の登記(第132条)(第134条)
登記内容に間違った記載があった場合、当事者は、その登記内容の変更を申請することが出来る。
申請に係る当事者の営業所の所在地が申請を受けた管轄の登記所に属さない、または登記するべき事項以外の事項の登記を目的とする場合、申請に係る登記がすでに登記されている時は、申請を消滅または抹消することが出来る。
すでに申請手続きをした内容について不備や間違いがあった場合は、その旨を申請し直さなければいけません。
【参照リンク:http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_searchlsg0500/detail?lawld=338AC0000000125#N】
個人事業主が商号登記するメリット
個人事業主には本来は商号登記をする必要はないですが、商号登記をすることで、何かと有利な点もあります。
自分の屋号を保護できる
商号登記では、商号(会社名)、営業を始める人の氏名や所在地住所、営業の種類などを申請します。
法務局に申請すると自動的に一般に公開されるので、他の競合業者に対して、屋号(会社名)の使用を法的に制限することができます。
屋号付きの口座が開設しやすくなる
法務局に登記申請することで、正式の事業(会社)として認められるので、銀行などの金融機関の信頼性も高まり、屋号名義の口座を開設しやすくなります。
法人化した後も使い続けられる
一度、法務局に登記した情報は無期限に保管されますので、もし将来法人化した場合も、そのまま使うことが出来ます。
法人化に伴っての変更手続きなどは一切必要ありません。
登記簿が取得可能になる
一般に、個人事業主は登記手続きをする必要がないので登記簿を取得して使用することはありませんが、法務局に登記申請をすることで登記簿を使用できるようになります。
何よりも社会での信頼度が高まる
そして何よりも、登記を申請することで一会社として自動的に公開されます。
よって、社会での認知度が上がり、さらには運営をしていくうえでの取引先や顧客との信頼関係も高まります。
個人事業主が商号登記するデメリット
個人事業主が商号登記をすると、運営をしていく上での社会的な認知度が高まります。
それでは、デメリットとしてどのようなことが挙げられるでしょうか。
費用がかかる
税務署に提出する「開業届出書」が無料なのにくらべ、法務局に提出する「登記申請書」は、商号登記の手数料となる「登録免許税」として30,000円が必要です。
印紙を申請書に貼付しますので、事前に準備しておきましょう。
課税対象になる
登記の種類は、個人事業主が申請できるものとして登録免許税の30,000円のほかにも「支配人の登記」「未成年者または後見人の営業登記」「商号の廃止、更生、消滅または抹消の登記」がありますが、それぞれ1件につき6,000円~30,000円の費用がかかりますので、自分にとってどの登記が必要なのかを事前に調べておくほうがいいでしょう。
【参照リンク:https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/7191.htm】
手続きが面倒な場合も
登録免許税がかかるうえに、提出する書類の記載が多くかつ複雑で、提出する前の手続きが面倒な点もデメリットといえるでしょう。
また、ほとんどの個人事業主の場合、これら全てを一人でこなさなければいけないので、司法書士など専門家に申請手続きを依頼する人も多いようです。
個人事業主の商号登記の手続き方法
しかし、登記をすることで社会的な信頼を得られるので、会社の概要が公開される商業登記をは有利に働くでしょう。
この商号登記をする際に用意する書類や手続きについて説明します。
登記に必要な書類と持ち物を用意する
商号登記の申請手続きは全て、事業を始める営業所の所在地を管轄する法務局(あるいは法務局支局や出張所)で行います。
それぞれの管轄の登記所は、法務局のホームページで確認できます。
登記所に出向く前に準備しておくものもあります。
- 登記申請書
商号や屋号を申請するための書類です。
記入する前に、商号や屋号が他の人が使用していないか、重複していないか必ず確認してください。
この調査や確認には、法務局のホームページの「オンライン登記情報検索サービス」を使うと便利です。
利用する際には、「登記・供託オンライン申請システム」に申請者情報を登録して、ログインに必要な「申請者ID」と「パスワード」を取得してください(無料)。
一度取得すると、何度でも利用できます。
ただし、このサービスはあくまでも、商号や屋号、およびその所在地を調べて確認するためのものです。
会社のその他の詳細な情報を調べることはできません。
- 登録免許税30,000円
登録免許税として30000円分の印紙が必要です。
また、他の登記の申請もそれぞれ1件ごとに費用がかかります。
登録税はそれぞれの登記内容で違います。
事前に法務局や国税庁のホームページで確認しておきましょう。
- 申請する人の実印
必ず役所で印鑑登録をしてあるものを使用してください。
印鑑登録が済んでいなければ、事前に市役所などで印鑑登録の手続きを済ませてください。
- 実印の印鑑証明
各自、市役所などで入手してください。
自治体にもよりますが、市役所などで印鑑証明を発行してもらう際には、一応身分を証明するものや登録してある実印を持参してください(印鑑の状況によっては、再度登録をし直す場合もあります)
- 印鑑届出書
事業で実際に使用する印鑑を実印として法務局に登録するための書類です。
仕事上で使用する印鑑ですので、すでに銀行や市役所などに届けてある印鑑とは別のものを用意した方がいいでしょう。
- 商号印、屋号印
法人が登記申請をする場合には絶対必要ですが、個人事業主の場合は、必ず届けなければいけないものではありません。
申請書類にもなつ印をしないで提出しても構いません。
ただし事業をしていく上で、社名や店名の入った印鑑があれば、何かと便利なのは確かですので、この機会に作っておくほうがいいかもしれません。
【参照リンク:http://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/】
管轄の法務局に申請する
書類がそろったら、まとめて管轄の法務局・登記所に申請します。
申請は必ず事業を始める営業所の所在地を管轄する登記所で手続きをしてください。
法務局のホームページで、管轄する登記所を調べることが出来ます。
【参照リンク:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html】
個人事業主の商号登記に関する注意点
商号登記の手続き方法は、個人事業主も一般の会社の場合と全く同じです。
印紙は不備がないか、必ず確認してから貼付する
申請書には印紙を貼る箇所が明記されています。
貼ってしまってから書類の不備を見つけて、もう一度書き直さなければならなくなると、印紙の貼り直しをしなければならなくなってしまいます。
書類の不備がないことを確認してから貼るようにしてください。
できれば、印鑑のなつ印も、全体を確認してからのほうがいいでしょう。
また、出来れば印紙や印鑑を押さずにそのまま法務局へ持って行き、係の人に見てもらってから印紙貼りやなつ印をする方が二度手間にならずにいいと思います。
分からないことは、申請窓口で確認しよう
届出をするのはほとんどの人が初めてだと思いますので、分からないことはどんな些細なことでも法務局や登記所に問い合わせや相談をしてください。
逐一確認しながら申請書を作成したほうが、二度手間、三度手間にならずに済みます。
管轄の登記所で作成したほうが、作成のあとそのまま提出できるので何度も足を運ぶ手間もいりません。
事業の発展のためにも商号登記を検討してみよう
はじめて個人事業主になる人にとって一度にここれだけの手続きをすると考えると、時間や手間が必要になるような印象を受けます。
そのうえ、申請の内容によっては想定外の手数料(登録免許税のことです)もかかり、少なからず負担となります。
しかし、商号登記をすることで、自分の会社や店の社会的な認知度が確実に上がり、顧客や取引先からの信頼度も高まるのは間違いありません。
そういう点を考えると商号登記はとてもいいPRとなります。
しかも、一度登記申請をしてしまえば、社名や住所の変更などをしない限りこれ以上の負担や手間はかかりません。
せっかく夢を持って始める事業を成功させ、自分の事業の発展のためにも商号登記を検討しましょう。
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