理学療法士は稼げるのか?年収、仕事内容、養成学校などの事情を調査
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理学療法士は稼げるのか
理学療法士は医師や看護師、X線技師などと同様に医療機関に必要不可欠な職業です。
最近は、理学療法士を目指す若者がどんどん増えている人気がある職業の一つです。
そんな理学療法士の気になる収入や将来性について説明します。
理学療法士の給料事情
どんな職業においても気になるのは給料について。
生活を成り立たせるのはもちろん、プライベートを充実させるためにも給料は欠かせず、仕事選びの重要なチェックポイントです。
では、理学療法士の給料事情はどうなっているのかみていきましょう。
理学療法士の平均年収について
厚生労働省が発表した『平成28年賃金構造基本統計調査』によると、平均年齢31.8歳、平均勤続年数5.3年にして平均年収は約406万円とされています。
こう聞くと、医療に関する仕事のわりに若干低く感じるという人もいるかもしれませんが、国家試験に合格し資格を持っている人しか名乗ることができない専門職であるため、同世代の平均よりもやや高めとなっています。
社会の高齢化が進み理学療法士が不足している一方、患者さんを勇気づけられるやりがいのある仕事ということで、最近では若者に人気な職業として知名度が高くなってきています。
養成学校も増え、社会での需要が高まっているなかで理学療法士も増加の傾向にあり、今後は実力社会になると予想されています。
つまりはきちんと高い技術と知識を習得、経験を積むことでより高い収入を得ることができるということです。
参照リンク:http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2016/index.html
理学療法士の初任給について
理学療法士の初任給は男女別にみると、男性は20歳~24歳で3,623,700円、25歳~29歳で3,954,900円、女性は20歳~24歳で3,242,900円、25歳~29歳で3,856,300円とされています。
厚生労働省が発表した『平成28年賃金構造基本統計調査結果(初任給)』の大卒の平均月収は男性20.5万、女性20.0万という統計結果でした。
このデータから、他の産業と比較すると初任給としてはやや高いといえます。
厚生労働省が直接経営をする病院を「国立病院」、地方自治体が直接経営する病院を「公立病院」、その他の公益法人、社会福祉法人、個人などが経営する病院を「私立病院」といいます。
国公立の病院より私立病院の方が初任給が高く設定されているため、その分賞与を含めた年収も高くなります。
ただし私立病院の場合は、個人の成績により昇給が決定します。
病院の業績と賞与が連動するため、昇給金額が低い可能性があるうえに、賞与の支給額にも波があります。
一方で国公立の病院では、毎年昇給し安定した収入を得ることができます。
初任給も大切ですが、長い目でみて就職先を考えることが望ましいです。
参照リンク:https://co-medical.mynavi.jp/pt/column_1/#column01
理学療法士の仕事について
理学療法士は医師や看護師と同じように病院などの医療機関や福祉施設においてなくてはならない存在です。
その立場こそ違うものの、とても重要な役割をもっています。
では、理学療法士が具体的にどんな仕事をするのか紹介します。
身体機能を回復させる
理学療法というと、病院や福祉施設のリハビリ室での歩行訓練などを想像する人が多いかもしれませんが、実際にどのような仕事をしているのか、具体的には知らない人も多いのではないでしょうか。
理学療法士は、英語でPhysical Therapist(PT)といいます。
ケガや病気で身体に何かしらの不自由がある人や、生まれつき障害がある人などに対して、基本運動能力の回復や維持、悪化の防止を図るエキスパートです。
基本運動能力というのは、座る、立つ、歩く、寝転ぶといった日常で必要とする動作のことを指し、医師の指示の下、患者さんが自立した生活を送れることを目指します。
ケガや病気、老化はさまざまな身体機能の低下を伴います。
身体機能が低下すると、筋力が衰えたり、動きが鈍感になったりと新たなケガや病気に繋がる危険性があるのです。
身体機能や基本運動能力を保ち、健康を維持することも理学療法士の仕事です。
運動療法と物理療法
法律により、理学療法は運動療法と物理療法の2つに分けられています。
運動療法は、読んで字のごとく「運動」をする治療法です。
例えば、つま先の上下運動やラジオ体操、ウォーキングといった身体の一部もしくは全体を動かす運動をし、運動機能に直接働きかけることで、関節の動きのスムーズ化、衰えた筋力の回復、麻痺の回復、痛みの軽減、心肺機能の改善などを目指す方法です。
物理療法は、温熱や寒冷、電気刺激、光線、マッサージなど物理的エネルギーを使って治療することで、痛みの軽減や循環の改善を目的としています。
患者さんは子どもから高齢者まで年齢も違えば症状も違うため、効果的な治療をするためにはどの手法を使うのかという適した判断を要します。
最近では医学やスポーツ学の研究が進み、高機能の機械や器具が開発されるようになり、急性期の患者さんにおいては運動療法をする前に取り入れることで早期治療に繋がるとされています。
理学療法士の勤務先
日本理学療法士協会の統計(平成30年3月時点)では、資格を取得してはいるものの理学療法士として勤務していない人や海外で就業している人を除くと、最も多い勤務先は病院や診療所といった医療機関が68,104人、続いて特別養護老人ホームやデイケア施設といった医療福祉中間施設が8,294人となっています。
近年では、高齢者福祉施設、障害者福祉施設、児童福祉施設といった福祉施設、リハビリセンターやスポーツ関係(フィットネス施設やスポーツチーム)など理学療法士の勤務先の幅が広がっています。
▼ 施設別公益社団法人 日本理学療法士協会の統計(2018年3月の時点)
・ 医療施設(大学病院、総合病院といった病院・診療所など) 68.104人
・ 医療福祉中間施設(介護老人保健施設、デイケアなど) 8.294人
・ 老人福祉施設・介護保険法関連施設(養護老人ホーム、有料老人ホームなど) 2.312人
・ 身体障害者福祉施設(身体障害者福祉センターなど) 224人
・ 児童福祉施設(知的障害児童施設、児童相談所など) 734人
・ 障害者社会復帰施設・障害者福祉施設・障害者自立支援施設 85人
・ 教育・研究施設 2,610人
・ 健康産業(スポーツ関係施設、フィットネス施設) 80人
・ 行政関係施設 342人
・ その他 2,433人
・ 不明・海外・自宅 21,078人
合計 115,825人
一口に理学療法士といっても、対象とする患者さんの年齢や症状はさまざまなので、「どのような患者さんを対象としているか」という点も勤務先を選ぶポイントです。
例えば、子どもから高齢者まで幅広い患者さんの治療をしたいのであれば病院・診療所、高齢者を対象に介護・福祉をしたいのであれば高齢者福祉施設、スポーツによるケガからの復帰やスポーツ選手の活躍に貢献がしたいのであれば、スポーツ施設やプロスポーツチームのトレーナーという選択肢も。
患者の自宅に出向く訪問リハビリテーション
退院後、日常生活に困っている患者さんや通院ができない患者さんを対象に医師の指示のもと、理学療法士がご自宅を訪問しリハビリすることを訪問リハビリテーションといいます。
具体的には、食事や排泄、服薬といった健康管理、部屋間の移動や自宅周辺の散歩といった日常動作訓練にトレーニング、検温や身体測定といった健康状態の把握、患者さんが過ごしやすい環境づくりなど患者さんの症状と自宅の環境に合わせたさまざまなことをします。
患者さんご本人に対してだけではなく、ご家族や介護をしている方に対して、食事や治療のアドバイス、介護に関わる心労のケアをすることも訪問リハビリの仕事の一つです。
住み慣れた環境に応じて支援を受けることができるので、患者さんのストレスも少なく、生活によりフィットした支援が受けられます。
さらには、通院による交通費や雑費、移動時間が削減できるという点で、患者さんとご家族の負担を軽くすることができます。
理学療法士と作業療法士との違い
理学療法士を目指している人であれば、一度は「作業療法士」という名を聞いたことがあるはずです。
作業療法士も理学療法士と同じように医療の現場になくてはならない存在ですが、その違いを知らない人もおおいのでしょうか。
この2つの職業の異なる点をみていきましょう。
立場の違いを明確にしない医療機関も
理学療法士と作業療法士の違いについてですが、理学療法士の資格取得者は約11万人に対し、作業療法士の資格所得者は約7万人となっています。
どちらもリハビリに関わり、誰かを勇気づけるやりがいのある仕事であることなど共通している部分は多いですが、医療機関によっては立場の違いを明確にしていないところもあるようです。
実際、リハビリ施設での治療を経験した方でも、理学療法士と作業療法士どちらなのはわからないで受けていた人もいるのではないでしょうか。
作業療法士は、英語でoccupational therapist(OT)といいますが、理学療法士・作業療法士を募集する求人の応募資格においても「PT、OTいずれかの資格」と記載されていることが多いようです。
しかし理学療法士と作業療法士は似て非なる職業であり、その目的や仕事内容、役割には違いがあります。
理学療法士は身体に特化
理学療法士は、基本となる動作(座る、立つ、歩く、寝転ぶといった日常の動作)の回復・維持・悪化の予防を目的としています。
運動療法や物理療法といった物理的な治療手段を駆使して、歩行訓練や筋力訓練を行います。
つまり、ケガや後遺症のある箇所といった「身体的」な部分に着目してリハビリを行う専門家です。
身体の構造を熟知していることから、医療・福祉の分野だけではなく、スポーツ関連施設やスポーツチームのトレーナーなどスポーツの分野で活躍することもできます。
作業療法士は心身両方にアプローチ
作業療法士は、理学療法で基本となる動作が回復した患者さんを対象にしており、社会に復帰するための応用動作の回復を目的としています。
入浴や食事といった日常生活での動作をはじめ、手芸や料理、遊びなどを通して身体と心の両面の回復をサポートします。
つまり「心身的」な部分に着目してリハビリを行う専門家です。
作業療法士は、身体・精神・発達・老年期と理学療法士よりも関わる領域が広く、理学療法士よりも活躍の場が多いのが特徴です。
例えば医療分野においては、うつ病や摂食障害などの精神疾患のある患者さんを対象とした精神科で活躍することができます。
その他にも、心の疲れや悩みを抱えてる患者さんと関わる児童福祉施設や更生相談所などがあります。
リハビリ部位の違い
理学療法士は座る、立つ、歩く、寝転ぶといった身体機能の回復を図るので、具体的には、立ち上がったり歩くために必要な腰や足の筋力アップ、体の軸となる体幹を鍛えるストレッチや歩行訓練を扱うことが多いです。
作業療法士は、理学療法により座れるようになった患者さんに対して、着替えをできるようにしたり、歩けるようになった患者さんがトイレに行けるようにしたりといった、応用運動能力・社会適応能力の回復を図ることを目的としているので、理学療法よりも細かい動作を得意とします。
具体的には、字を書く、ボールを投げる・蹴る、食べるといった指先から手首、肘にかけての動作訓練を扱うことが多く、手芸や趣味を通じて、身体のリハビリとともに「こころ」のリハビリをすることも作業療法士の仕事です。
「病は気から」と言うように、気持ちが落ち込んでいたり心に深刻な悩みを抱えると体調を崩すこともあれば、その反対にケガや病気が原因で心に悩みを抱える人も多くいます。
このように人間は「こころ」と「からだ」の結びつきが非常に深いのです。
理学療法士と作業療法士は目的や具体的な仕事範囲は違うものの、一人の患者さんのリハビリをするという点は共通しており、多くの医療・福祉の現場で協力することが求められ、医師や看護師だけではなく、さまざまな療法士との連携も大切です。
どちらを目指すべきか
理学療法士は、身体機能を回復させることを目的としているので、身体や筋肉の構造を熟知しています。
また、医学の研究は日々進歩をしているので、患者さんに携わるかたわら新しい知識や技術の習得ができる環境でもあります。
そのため、高い専門性を持って仕事をしたい人にはおすすめです。
狭き門ですが、医療・福祉だけではなくスポーツ分野でも活躍できるので、スポーツ領域で働きたい人も理学療法士がいいでしょう。
作業療法士は、患者さんの日常における細かい作業から心のケアまで多岐にわたるので、精神的な支援をしたい人におすすめです。
特にコミュニケーション能力が高く、相手のニーズを汲み取れる観察力がある人は向いているかもしれません。
なかには、そううつ病や統合失調症といった精神に大きな悩みを抱えている患者さんの心のケアもあるので、患者さんの情緒に巻き込まれずに、しっかりと精神状態を保たなくてはなりません。
国家試験の合格率においては理学療法士の方が高く、平成19年からの10年間で作業療法士の合格率が理学療法士の合格率をうわまったことは一度しかありません。
理学療法士を目指す
人の身体やこころに関わる仕事なので、なりたいと思っても簡単になれるわけではありません。
理学療法士になるには、いくつかの難関を突破しなくてはならないのです。
理学療法士になるには国家資格が必要
理学療法士及び作業療法士法 第10条の規定により、労働厚生省が実施する国家試験に合格し国家資格を取得しなければなりません。
国家資格というのは、国が法律で定め認定する資格のことです。
誰でも簡単に理学療法士の国家試験を受けられるのかというとそうではありません。
試験を受けるためには、理学療法士の養成学校で3年以上学び、所定の課程を修了する必要があります。
そのうえ深い知識と技術が必要になるため、学校に通ったからといって容易く取れる資格ではないのです。
一般的な学習能力に加え、専門的な知識と技術を習得するためには、身を粉にして勉強に励む人もいるのです。
作業療法士の資格を取得する人も
理学療法士として働く人のなかには、身体機能と心の動きに関する知識を深めるために作業療法士の資格を取る人もいるようです。
一方の資格を持っている人であれば、学校での単位を免除してもらえる場合もあるそうです。
理学療法士と作業療法士の資格を一度に取得することはできないため、いずれにせよ再び学校に進学することになります。
時間も学費もかかるので、より専門的な知識を身につけて活躍の幅を広げるために高い志を持てる人、根気よく続けられる人は両方の免許取得を目指すのに向いているかもしれません。
理学療法士に向いている人
理学療法という仕事に対する向上心がある人
養成学校で学んだ知識や技術は臨床で十分活かせるものではありますが、多くの患者さんに携わり経験を積むことが、さらなる知識と技術の向上に繋がります。
医学やスポーツ学の研究は進み、新しい発見がされ常識が覆されることもあります。
日々、新しい知識や技術の習得が必要となるので、変化や流れに前向きな姿勢でいれて向上心のある人は向いています。
患者さんと向き合える体力がある人
身体機能の回復を目的としたストレッチや運動をするので、体育会系である必要はありませんが体力は必要です。
また、患者さんの中にはケガや病気、生まれつき持っている障害が原因で精神的な悩みや心に疲労を抱えており、ナーバスになっていたり落ち込んでいる人もいます。
そんな患者さんを元気付け、前向きにすることも理学療法士の仕事の一つなので、身体的にも精神的にも体力が必要です。
仕事に対する責任感、根気がある人
ケガや病気の治りは患者さんによってさまざま。
リハビリをしていてもなかなか効果が現れず、中には治療を諦めたくなる患者さんもいます。
ですが、ここで理学療法士が諦めてしまうとそこまでの患者さんの努力が水の泡になります。
長期間にわたるリハビリにも根気強く患者さんに寄り添い、最後まで努力する責任感が必要です。
コニュニケーション力
ここで言うコミュニケーション力というのは、話し上手であればいいというわけではありません。
患者さんの心情や動向を把握・見極めて、患者さんに配慮した対応ができることが重要です。
そのため、コミュニケーション力に加え観察力が優れている人は向いています。
患者さんだけではなく、ご家族や医師、看護師といった同僚など多くの人とのコミュニケーションを円滑に行う能力が必要です。
気配り、優しさがある人
患者さんの中には、ケガや病気による後遺症が残ってしまった人や、生まれつき障害があり自由がきかない人がいます。
患者さんの多くは、心に不安を抱え辛く苦しいリハビリに耐えています。
そんな患者さんに対して、元気付けるだけではなく寄り添う優しさや、患者さんを思いやりサポートする気配りが求められます。
理学療法士国家試験について
国家試験とは国家資格を取得するために国もしくは地方公共団体が実施する試験のことです。
国家資格を取得することは、手に職をつけ将来的に安定することにも繋がります。
ここでは理学療法士の国家試験について説明します。
理学療法士国家試験の受験資格
理学療法士の国家試験は誰でも受験できるわけではありません。
文部科学大臣が指定した学校もしくは都道府県知事が認定した理学療法士養成施設で3年以上理学療法士としての知識と技術を修得することで受験資格を得られます。
養成学校は4年制大学、短期大学、専門学校、特別支援学校があります。
また、下記いずれを満たすことが条件となります。
・ 4年制大学の場合は理学療法士養成課程で4年間修学すること
・ 高校卒業後は指定の養成校で3年以上必要な知識を修得すること
・ 外国の相当する学校卒業者または免許を所持していること
理学療法士国家試験の試験科目
理学療法士の国家試験科目は、筆記試験と口述試験および実技試験があります。
筆記試験はマークシート形式で行われ、養成校の授業で学習する内容から出題される一般問題と、授業で学習した内容に加え実技や実習で習ったことが問われる実地試験で構成されています。
具体的には、一般問題の試験科目は、解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)、理学療法から出題され、実施問題の試験科目は、運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)、理学療法となります。
合格率は80パーセント以上
ここ5年間の合格率は、平成26年度/83.7%、平成27年度/82.7%、平成28年度/74.1%、平成29年度90.3% 、平成30年度/80.1 %となっています。
資格受験者が増加している影響もあり平成28年度は80%を切っていますが、ここ5年間で平均して80%以上の合格率です。
これは10人に8人が合格しているということです。
さらに、平成29年度には90%以上となり高い合格率となっています。
難易度は決して易しいものではない
先ほども述べたように、10人に8人が合格するという点では一見簡単な試験のように思えてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。
理学療法士の国家試験は、養成学校に通い専門知識を持つ人に特化している試験であり、受験者は養成学校での学習に熱心に取り組み、一般的な教養の学習、理学療法の知識、実習を通じて深い知識を修得しているからこそ合格できるのです。
また、理学療法士の国家資格は、一度取得すればその後更新する必要がないという点でも、試験の難易度は易しいものではないといえます。
理学療法士国家試験受験者数の推移
ここ5年の理学療法士試験受験者数は、平成26年度/11,129人、平成27年度/12,035人、平成28年度/12,515人 、平成29年度/13,719人、平成30年度/12,148人となっています。
平成30年度にいったん下がってはいるものの、平成26年度~平成29度年にかけて受験者の数が増加している傾向にあり、平成29年度には13,719人もの人が受験しています。
10年前の受験者数9,199人、15年前の受験者数4,289人と比較すると大幅に増えたといえます。
理学療法士国家試験合格率の推移
ここ5年の理学療法士国家試験の合格率は平均して80%、平成28年度試験の合格率では、前年より大幅に上昇し90.3%となっています。
そのうち、新卒者の合格率は96.3%、既卒者の合格率は69.0%です。
このデータから、新卒者の合格率が非常に高いことがわかり、現役合格を目指すことが大切といえます。
理学療法士養成学校の選び方
理学療法士を目指すことを決めたら、いよいよ養成学校選びです。
自分にあった学校をみつけるためのみるべきポイントを紹介します。
見学会や説明会に足を運ぶ
学校選びにおいて重要なのは、実際に見学会や説明会を訪れその学校の雰囲気を感じることです。
パンフレットやホームページには記載されていない情報を知ることができるうえに、オープンキャンパスでは、実際に在学している在校生や先生の話を聞いたり、相談する機会を得るチャンスがあります。
また学校近くにコンビニエンスストアやドラッグストアといった生活に必要なお店あるどうかといった周辺情報も確認することができます。
入試の難易度だけで選ばない
現在、日本には理学療法士を養成する大学が国公立・私立合わせて106校、短期大学は6校、4年制専門学校は65校、3年制専門学校は84校あります。
これだけの数があると入試の難関度もさまざまです。
これからの学校に入学したからといって理学療法士になれるわけではなく、国家試験に受からなくては元も子もないので、学校の教育カリキュラムや設備、就職に関するサポートなども選ぶうえで重要なポイントとなります。
下記の点を踏まえて、焦らず慎重に志望校は選びましょう。
- カリキュラムや学校の特色が自身に合っているか
- 理学療法士の知識・技術を修得するための設備や機械が充実しているか
- 学生が設備や機械を自由に使用して自習することができるか
- 図書室や自習室などが充実しているか
- 就職業績、就職サポートがしっかりしているか
- 国家試験対策をしっかりしているか
- 学費および学費サポートについて
合格率には要注意
よく学校紹介のパンフレットやホームページに「合格率97%!」など大々的に謳っている学校もありますが、その合格率はどのような条件で出しているのかわかりません。
あくまで学校側のさじ加減で算出しているものになるので、合格率の数字だけに惑わされないようにしましょう。
理学療法士養成学校で学ぶこと
理学療法士の養成学校は、座学だけではなく実践型の学習まで積極的にとりいれています。
これは、理学療法士になってから1日でも早く自立すること、国家試験に合格すること、医療に失敗が許されないという点から学生のうちにしっかり学べる体制になっています。
はじめは医学と医療の基礎を学ぶ
養成学校のカリキュラムには、一般教養科目、専門基礎科目、専門科目、臨床実習の4種類に分類しています。
1年次は、医療分野における基礎科目を中心に学習をするため、作業療法士など他学科の学生と一緒に授業を受ける機会も多いです。
生物体の形態や構造に関する「解剖学」や、生物体の諸器官の働きに関する「生理学」、運動に関する基礎知識を学ぶ「運動学」、リハビリテーションの基礎に関する「リハビリテーション医学」などがあります。
徐々に専門的な授業に
2年次になると、基礎科目を学ぶ領域が広くなり、身体の臓器に関する「内科学」や身体の関節や筋肉など運動器系に関する「整形外科学」、神経系を取り扱い領域とする「神経内科学」、各種精神障害に関する「精神医学」などより専門的な分野の勉強が増えるようになります。
1年次からの専門科目の基礎学習に加えて、患者の評価方法を学ぶ「理学療法評価学」や、理学療法士が行なう治療法について学ぶ「運動療法」や「物理療法」といった、理学療法士に必要な知識や技術を学ぶための実技の授業が増えてくるため、学科で分かれて受講することが多くなります。
集大成としての実習
3年次・4年次になるといよいよ「臨床学習」がはじまります。
臨床学習は「評価実習」や「臨床実習Ⅰ」、「臨床実習Ⅱ」に分かれており、これまで学んできた知識や技術をもとに実際の医療現場で患者さんを担当します。
理学療法士に必要な知識や技術の習得、さらには理学療法士としての患者さんとの接し方や社会で働くうえで必要な知識、振る舞いなどを身をもって学ぶことができます。
社会人から理学療法士を目指す
社会人から理学療法士を目指すことはもちろん無理なことでなく、年齢や経験に関係なく努力すれば国家試験に合格し、理学療法士になれます。
むしろ社会人経験があるからならではの利点もあるのです。
社会人を積極的に受け入れる学校も
「人の役に立つ仕事がしたい」「社会に貢献したい」「手に職が欲しい」と思っているものの理学療法士を目指すことを躊躇している社会人の方も多いのではないでしょうか。
実際、理学療法士だけでなく医療関係で働く人は、社会人を経験してから国家資格を取得した人が比較的多く活躍しているそうです。
理学療法士には、患者さんや職場の同僚を相手に、知識や技術だけではなく高いコミュニケーション力や観察力が必要となります。
これらのスキルを修得している社会人は、学校で理学療法士の勉強をし国家資格を取得することで、卒業後に即戦力になることから、雇用の需要が高まっているそうです。
そのため、社会人を積極的に受け入れる専門学校が増えています。
新卒の学生と同じルートで
理学療法士を目指す専門学校には、夜間コースを設置しているところが多く、日中は会社員として働き安定した生活をしながら理学療法士を目指すことができます。
?新卒の学生と同様に、所定のカリキュラムを修了する必要があるため「仕事をしながらだと勉強についていけないのでは」と不安に思う方は、4年生の専門学校への進学がいいです。
社会人経験が役立つ
社会人で培った経験は理学療法士の仕事に大いに役立ちます。
例えば、営業・接客や顧客折衝、上司や同僚とのコミュニケーションは患者さんやご家族、職場の同僚に対するコミュニケーション、観察力に活かすことができます。
また、プロジェクトを遂行したことのある人であれば、最後まで患者さんと向き合う責任感や忍耐力という点も社会人経験者ならではの強みになります。
理学療法士の就職事情
ここで気になるのは就職先。
「せっかく理学療法士の国家試験に合格し、学校を卒業できても就職先に困ってしまったらどうしよう」と不安に考える人もいるかもしれません。
ここでは理学療法士の就職事情を紹介します。
就職は段々と厳しく
理学療法士を目指している人のなかには、「就職状況はどうなっているのか」「稼げるのか」といった将来性が気になる人も多いのではないでしょうか。
理学療法士の数は年々増えており、それに伴い就職は段々と厳しくなっていると言われています。
また、理学療法士の数に対して作業療法士の数は約4万人も少なく、作業療法士を求める雇用者が多いのが現実です。
しかし、アメリカの金融情報サイト キップリンガーが発表した『今後10年で成長する職業』では、IT関連の職業が数多くTOP10入りするなか、理学療法士が4位にランクインしました。
AIやロボットといったテクノロジーが急激に進歩し日常生活においても活用の幅が広がっているなか、患者さん一人一人に向き合い知識や技術を必要とする理学療法士は、テクノロジーに代替される可能性も低く、将来的に安定した収入を得られると予想されています。
就職先は広がりつつある
医療機関では医療スタッフの人不足や病床削減により「医療難民」が増えていることから、医療機関以外にも福祉施設などで理学療法士、作業療法士を求める声は多くなってきています。
例えば、高齢者福祉施設や障害者福祉施設、児童福祉施設などです。
また最近は、国の政策により在宅医療が拡大し、訪問リハビリテーション事業所や介護ステーションが増えています。
さらには、保健所やスポーツ関連施設、スポーツチームのトレーナーなど理学療法士の就職先は年々広がっています。
病院や診療所といった医療施設だけではなく、それ以外への視野も持ち、自身の目的にあった就職先をみつけましょう。
アルバイトとして働く
結婚や出産をしても理学療法士として長く働き続けたいと思っている人もおおいと思います。
けれど理学療法士は患者さんにつきっきりでフルタイムじゃないと働けないのではないかと考える人も多いそうです。
ですがそんなことはありません。
自分のライフバランスにあった働き方を紹介します。
非常勤で働くことも
理学療法士の中には、正社員としてではなくアルバイト・パートタイマーという形態で「非常勤」として働く人もいます。
結婚や育児をきっかけに「プライベートの時間と両立をしたい」「時間に余裕を持って働きたい」という理由が挙げられます。
理学療法士だけではなく、アルバイト・パートタイマーは働く時間や日数が少なくなります。
正社員は基本的に8時間労働が多いですが、パートであれば1日3時間程度、週に2~3日というのも可能です。
実際に非常勤として働く人は、家事や育児の時間を確保することができたり、精神的な面での余裕が生まれたなどライフワークバランスを大切にできているそうです。
さまざまな現場で経験を積む
正社員と違い、アルバイト・パートタイムであれば職場を掛け持ちすることも可能です。
理学療法士が働ける環境には、病院や医療施設といった子どもから高齢者まで幅広い世代を対象にするところもあれば、高齢者を対象としている高齢者福祉施設、子どもを対象としている児童福祉施設など多くの現場で働けることで、経験を積むだけでなく、人脈を広げるというメリットもあります。
ブランク克服のためにアルバイトを利用
理学療法士として活躍していた女性のなかには、結婚・出産・育児をきっかけに第一線から退く人も多いです。
産休中や育児中のブランクがあるなか、いきなり正社員として再就職するには不安も多いと思います。
理学療法士の非常勤の待遇は他職種のアルバイトよりも高時給であることが多かったり、勤務日数や時間も少なかったりと好条件が多いのです。
働いていたときの感覚取り戻すためにも、アルバイトやパートタイムとして現場に復帰し、徐々に慣れていき調整するという方法もいいでしょう。
また出産後に育児が継続していくことを考えると、すぐに正社員として働きはじめるよりも、将来的に「常勤」「非常勤」どちらの働き方が自分に合っているか考えてみるとよいでしょう。
女性が働きやすい環境
理学療法士として女性が働きやすい環境を施設側もいろいろ工夫をしています。
また一度は子育てなどのために離職したのに、復帰しやすい環境もあるようです。
子どもがいても働ける
医師や看護師、理学療法士や介護士といった病院に勤務するスタッフを対象に、そのお子さんを預けることができる施設内の保育所があります。
つまりは病院関係者専用の保育所です。
病院内の保育所は、一般の保育所と違い年齢によるクラス分けはありません。
また、病院によっては施設内ではなく周辺の施設を併用しているところもあるようです。
都内では待機児童問題が深刻化しており、区や民間が経営する保育園や託児所にお子さんを預けることができずに仕事に復帰したくてもできない悩みを持つ方も多くいます。
自分が働いている近くに保育所があるのは、医療に関わる仕事の特権になります。
復帰しやすい
理学療法士など医療関係には女性も多く働いているため、産休育休制度が整っている施設が多いそうです。
特に国公立の病院は福利厚生が充実しています。
その理由として、女性はよりきめ細かな対応ができる人が多いこと、出産や育児をしてきた人間力の大きさが患者さんとのコミュニケーションに活かせることなどを理由に、女性が仕事復帰するための制度や環境が整っている施設が多いのです。
理学療法士として福祉に貢献しよう
理学療法士は、他職業の同世代と比較するとやや給料水準は高く、個人の裁量や就職先次第では充分に稼ぐことが可能です。
そのうえ、人の役にたてるやりがいのある仕事です。
理学療法士を目指している人はもちろん、漠然と福祉に貢献したいと考えている人は理学療法士を仕事の選択肢の一つにしてはいかがでしょうか。
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