大学教授の年収を徹底解説。実際はどのくらいの収入なのかを検証

May, 31, 2018

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大学教授の収入はよいのか

ドラマや映画でも描かれることの多い大学教授。
社会的ステータスが高く、収入面でも安定しているイメージがありますが、実際の収入事情となるとわからない部分も多く、フィクションとは違う面もあるようです。

教授になるまでのプロセスについても一般的には知られていませんので、この機会に大学教授という職業の全体像を把握し、現在進行形で大学教授をめざしている人は、具体的な流れをシミュレーションしておきましょう。
これを読めば、堅苦しいイメージだった大学教授という職業が少しだけ身近に感じられるかもしれません。

大学教授になるには

大学教授はわりとポピュラーな職業ですが、教授になるまでのプロセスとなると意外に一般的には知られていないのが実情です。
大学教授をめざすためにはどのようなスキルと努力が必要なのでしょうか。

大学院の博士課程が必要

「大学教授」という資格はありません。
したがって、原則的には誰であってもめざすことができるのですが、一般的なルールとしては最低限、大学院の専門課程を修了して博士号を取得することが条件として定められています。

博士号を取るためにはまず大学院の修士課程に進む必要があり、そのうえでさらに先の博士課程に入学することがもとめられます。
修士課程や博士課程では研究室に所属して専門的な研究を行い、定期的に論文を執筆し、研究室の長である大学教授に認められることが教授への第一歩となります。

学部生の4年間のうちに自分が本当に興味のある専門分野を見つけておき、修士課程と博士課程の4年間から6年間で集中して研究に打ち込めるだけのジャンルを決めておくことが必要です。

博士課程修了後に教授にはなれない

博士課程を修了し、研究室を取り仕切る教授に論文が認められればめでたく博士号取得、ということになりますが、博士課程を修了したからといって無条件に大学教授への道が開けるわけではありません。
博士課程を修了後、大学内で職員としての募集求人を探して就職活動を行うことになりますが、定員が少ないうえに応募人数が多いため文字通りの狭き門、ということになります。

博士課程修了前の就活となりますが、修了前は研究や論文に追われてしまいなかなか時間が取れず、料率がきびしくなり、最終的に民間企業への就職に志望を切り替える、という人も少なくないようです。
ごくまれに、教授のほうから就職先を紹介してもらえる場合がありますが、基本的には自分自身で学内の求人に応募し、まずは助手からスタートするのがオーソドックスなパターンと言えます。

助手が教授になる為の初めの一歩

大学院の博士課程を修了して無事に博士号を取得し、狭き門を何とかくぐり抜けて学内の求人に応募して採用されると、まずは助手のポジションからスタートすることになります。
助手のおもな役目は主任教授の研究や実験の準備をすることで、単独での講義を担当することができる助教とは立場的に違いがあります。

助手の年収は平均で600万円程度で、同年代と比較しても決して低い水準ではありませんが、教授の研究内容によっては長時間労働が連日のようにつづくこともあり、時間単位で換算するとアルバイトよりも下がってしまう、ということもめずらしくはありません。

教授の推薦を受けて常勤講師へ

助手や助教としてある程度のキャリアを積み、こまめに論文を執筆して主任教授から認められれば常勤講師へとステップアップすることができます。
常勤講師というと一般企業でいえば係長クラスのようなもので、大学内では准教授の次に地位が高く、基本給以外に1日に受け持つ講義の時間数によって月収が決まってきます。

大学内では「論文をいかに執筆するか」ということが大きな評価基準となり、常勤講師として日々の講義をこなしつつ質の高い論文を書き、教授にアピールしていくことで自分の名前と存在を知ってもらうことができ、大学教授への道がぐんと近づきます。

大学助教授として5年以上の勤務が通常

助手から助教になり、講義と論文執筆を地道に両立させていると、そろそろ教授のポジションが見えてきます。
はっきりとした基準はありませんが、一般的な目安としてはおおよそ助教として5年以上の実務が最低条件と言われており、実際にはさらに一定以上の本数の論文を執筆して学会から認められる必要があります。

「実務経験5年以上」といっても、現実には大学教授の世界も高齢化が進んでおり、論文執筆や人脈づくりに時間を費やしているうちに年齢を重ねてしまい、40代後半になってようやく教授へ推薦される、というパターンも少なくはありません。

晴れて大学教授に

助教や准教授としてこつこつとキャリアを積み、質の高い論文をコンスタントに書けるようになれば晴れて大学教授としてのポジションが与えられることになります。
大学教授は就活すればなれるというわけではなく、ほとんどの場合、「近いうちに文学部のポジションが空くからどう?」というかたちで内々に打診されるパターンであり、ポジションが空かなかったりなどのケースも。

学内での影響力が低かったりした場合、一生のうちに一度も教授になれずに終わるケースも稀ではありません。
大学教授になると安定した収入が保障されますが、そのかわりとして連日の激務をこなさなくてはならず、こまめに論文を執筆し、学会にも定期的に参加して影響力を保っておかなければポジションを維持できない世界でもあります。

大学教授になるまでの収入

大学教授になるまでのネックとなるのが収入の確保です。
ポジション別の年収のランクについて掘り下げます。

オーバードクター時代の年収 0から400万円

博士号を取得してから助手として採用されるまでは「オーバードクター」とよばれます。
この期間は収入的にもまったく安定せず、首尾よく主任教授に認められて助手としてのポジションが与えられれば300万円から400万円の年収が確保されます。

しかし就職先が見つからなければ「ポストドクター」として無収入のまま暮らしていかなくてはならない場合もあります。
当然のことながら生活は苦しくなりますが、オーバードクターとして地道に就活を行い、国内外の論文に目を通して知識を積み重ねていけばいつしか常勤講師の道が開け、教授のポジションが現実味を帯びてきます。

助手の年収

助手になってはじめて大学の正式な職員として認められ、まがりなりにも毎月安定した収入が確保できるようになります。
助手の平均年収はおおよそ400万円程度で、月収で考えると30万円から35万円ということになりますが、業務のほとんどが教授の補佐業務であり、早朝から夜遅くまでの長時間労働となることが多く、時給換算では決して高収入とは言えないのが現状のようです。

常勤講師の年収

助手のポジションを卒業すると、学内では常勤講師として認められるようになります。
常勤講師になると年収もアップし、平均的には500万円程度が相場であると言われています。
常勤講師となると単独で講義を担当することができ、論文をこまめに執筆して学内での信頼と評価を積み上げていくことで、自然と教授の覚えもよくなり、助教授や教授への道が具体的に見えてきます。

大学助教授の年収

教授の次に地位が高いのが助教授です。
助教授の平均年収はおよそ600万円程度となっており、このあたりのクラスになればようやく大学内でも発言権と影響力が与えられるようになります。
また、助教授クラスになると有名になればテレビやマスメディアの取材も増えてきますから、職員としての収入以外にも出演料や著書の売上などで年収が上乗せされるパターンもあります。

助教授まで進んだら次はいよいよ大学教授ですが、ここでも教授との関係性が重要なポイントとなり、人事への影響力をもった教授の下で研究を進めることによりおのずと大学内での認知度も高くなり、教授へ推薦されるチャンスがおとずれやすくなります。

大学教授の収入はいくらか

学部生から博士号を取得し、助手のポジションから努力をつづけて必死の思いでつかんだ大学教授のポジション。
果たして、気になるお財布事情はどのような感じになっているのでしょうか。
国立大学と私立大学で比較してみました。

国立大学の平均収入873万円

一般的に、給与水準としては私立大学よりも国立大学のほうが低く、平均でおよそ873万円というのが基本相場になっているようです。
一見するとそれほど低くはないように思われるかもしれませんが、民間企業では役職によっては年収2,000万円や3,000万円超えもめずらしくはありませんから、相対的に考えると世間一般に言われるほど高給取りではないようです。

なお、これはあくまでも全国平均であり、東京などの都市部と地方都市ではさらに収入面での格差が広がっているのが現状で、地方の国立大学では一般の会社員として働いたほうがよほど稼げる、というケースもめずらしくはありません。

私立大学の平均年収1,000万円前後

私立大学の場合、国立大学よりも給与水準が高く、平均年収は1,000万円前後となっています。
生活は安定するものの、日々の業務や労働時間と比較しても相対的に収入がいいというわけではなく、一部の有名教授以外は講義をぎりぎりまで詰め込んだり、複数の大学の客員教授を兼任することでようやく収入を確保している現状があります。

大学教授は高収入なのか

高給取りのイメージが先行している大学教授という職業ですが、ほかの職種とくらべて本当に高収入と言えるのでしょうか。

国家公務員の給与の方が高い

単純に平均年収で比較した場合、国家公務員のほうが断然高収入であると言えます。
国家公務員の場合、役職に応じて年収の最低ラインが定められており、課長クラスが1,200万円、部長クラスで1,400万円、事務次官レベルならば1,800万円から2,000万円という給与水準となっています。

したがって、国家公務員のほうが稼げる、ということになりますが、業務内容や日々の労働時間、休暇の取りやすさなどを考え合わせると必ずしも「大学教授のほうが分が悪い」ということにはならないようです。

民間の大手企業職員の方が高い

民間企業と比較しても、大学教授の年収は決して高水準とは言えません。
大手企業の場合、30代後半から年収が1200万円超え、というケースもめずらしくはなく、その後の昇給ペースによっては生涯年収が1億円を上まわることも夢物語ではありません。
大学教授の弱点として、再就職のしにくさが挙げられます。
つまり、つぶしがきかないということで、一流どころの有名私立大学ならいざ知らず、知名度のあまり高くない地方の大学などでは教授の再就職の道はほとんどないのが現状のようです。
専門性が高いのはひとつの武器にもなりますが、反面、人材の流動性が高い民間企業と比べると、年収の面ではどうしても「となりの芝生は……」という心理になってしまうところがありそうです。

どの大学が一番給与が高いか

大学によっても教授の収入は変わってきます。
国公立と私立それぞれのランキングを見ていきましょう。

国立大学では政策研究大学院大学が1位

国公立で見ると、政策研究大学院大学が教授の年収ランキングでは1位となっています。
政府系の研究機関ということでより高度な研究を行うことができ、また、政策面などの最先端の情報が入りやすいため、研究の最前線に立っていたい、という教授職には人気の大学と言われています。

私立大学では中央大学が1位

私立大学で見ると、中央大学が年収ランキングの1位となっています。
中央大学では教授に高水準の給与が与えられるだけではなく、研究設備の充実などにも大学を挙げて力を入れており、教授や助教、常勤講師にとっても研究が進めやすい環境であると言えます。

欧米の大学教授の給与は

日本の大学教授が意外なほど高給取りではないことがわかりましたが、欧米の大学の場合、教授職の待遇はどのようになっているのでしょうか。

米有名大学での年収

アメリカの大学教授は日本の教授よりもはるかに高給取りであり、有名大学でキャリアを積んだ教授の場合、年収が4,000万円から6,000万円を超えることもめずらしくはありません。
アメリカの有名大学といえばハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などが挙げられますが、文系よりも理系のほうが平均年収が高い場合が多く、科学分野の研究に力を入れているのがうかがえます。

英有名大学の年収

アメリカとならんで、イギリスの有名大学も教授の待遇がよいことで知られています。
平均年収としては2,000万円から3,000万円が基本相場であり、在職中の研究成果であればそれ以上に上乗せされる場合もあるようです。

年収が低いが教授職は有利なのか

日本の大学教授は必ずしも高給取りとは言えませんが、職業としてのやりがいはお金ばかりではありません。

安定した収入が確保できる

教授職の最大の魅力は、収入の安定性です。
いったん教授のポジションに就くことができればよほどのことがないかぎり安定した収入が約束され、年齢や役職に応じて基本の年収がベースアップしていきます。
ほかの職種とくらべても決して昇給ペースがよいとは言えませんが、毎月安定した収入を確保したい、という方にはおすすめの職業と言えるでしょう。

終身雇用で身分保障が確保されている

大学教授ほど、終身雇用と年功序列が厳格に守られている職業はないかもしれません。
どの大学も基本的に終身雇用であり、いったん教授として認められれば自分から退職するか、不祥事を起こさないかぎり失職する心配もあります。

ただ、最近は時代の流れもあり、終身雇用を見直す大学も多く、ベテラン教授であっても幅広い見識とスキルを身につけ、異なる分野への転身も視野に入れておく必要があります。

社会的期待値が高い

大学教授というと、社会的なステータスの高い職業の代表格のようなものです。
ベースの年収としてはそれほど高くはありませんが、有名になってメディアで取り上げられるようになればテレビ出演も増えるでしょうし、著書を出す機会も増えるため年収が一気にはね上がります。

給与は安いが社会的地位が高いのでお得

ここまで見てきた通り、日本の大学教授は一般に思われているほど極端な高給取りではありません。
ただし、社会的ステータスが高く、知名度を上げればテレビ出演の機会も増え、こつこつと努力すれば年収1000万円越え、というケースも少なくはありません。

大学院の修士課程から考えると相当な時間と労力が必要になりますが、終身雇用であることも魅力で、教授のポジションに就くことができれば、将来の不安もなく研究に集中することができるといえるでしょう。

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