エンディングノートと遺言書の違いは?遺された家族へ、メッセージを
自分の人生を振り返る
「エンディングノートを書く」と聞くと大掛かりな作業と感じがちです。
家事や仕事が忙しく、時間を作れなかったり、整理する資産が多いとなかなか手がつけられないものです。
しかも、未来に起きることを想定して「このときはこうしてほしい」と考えていかなくてはいけません。
しかし、実はエンディングノートの作成は全く逆の作業。
エンディングノートの作成は、自分の名前や誕生日から書き始める「自分の人生を振り返る作業」です。
不要なことに思えるかもしれませんが、卒業した学校や思い出を書き残していきます。
自分にしか残すことのできない軌跡を記すノートなのです。
子どもが大きくなって手元を離れたり、孫が遊びに来て次の世代が意識するようになったら、ゆっくりと時間を使って、自分の人生を振り返る旅を始めましょう。
エンディングノートに書くことは?
自分について
エンディングノートに書くことは、まずは自分の身の回りのことから始まります。
名前や生年月日、本籍地といったプロフィールを書いていきましょう。
転居の流れ、そこで所属した団体、人生を変えた経験。
忘れていた思い出を早速思い出すかもしれません。
併せて、健康保険証や運転免許証、年金手帳などの身分証明書の保管場所を書きましょう。
遺された家族がさまざまな手続きを滞りなく進められるよう、自分の生きた道のりを伝えるつもりで書くことが大切です。
また、個人情報を記載していくことになりますから、エンディングノートの保管場所も注意しましょう。
資産について
相続でも問題になりがちな資産、つまり「お金」についてです。
預貯金の有無や債務等についても触れ、取引のある銀行口座、クレジットカード、保険会社について書きます。
保険についてはその内容や、死亡時に必要となる作業とともに家族へと渡る資金とその使途を書いておくとよいです。
貯金だけでなく、株や有価証券など、ここはできる限り詳しく書いておいたほうがよいでしょう。
証券会社を利用して投資している場合には、担当者や暗証番号も一緒に書くとベスト。
相続で一番焦点になるところなので、不安が残らないように整理しましょう。
家族や友人について
エンディングノートには、万が一のときに連絡してほしい親戚、知人なども書きます。
病院に呼んで欲しい友人と、葬儀に呼んで欲しい友人が違う場合などが想定されるため、知人についても触れておいたほうがベター。
もし自分が最期のときを迎えるとすれば、会っておきたい人がいるのではないでしょうか。
エンディングノートが家族以外の手に渡ることはおそらくないので、当人に気持ちを伝えておいてもよいかもしれません。
相続がかかわってくるのであれば、戸籍謄本を用意する
相続に関する家族のことも必要です。
例えば戸籍謄本など、親兄弟、親戚がわかるものを市町村役場で取得しておくのもよいかもしれません。
金融機関などとの間で交わす相続のやりとりで一番大変なのがこの戸籍謄本です。
過去に本籍をおいていた場所まで行く必要がある場合もあるので、できる限り準備できるとよいですね。
解約するサービスについて
現代ではインターネットや宅配など便利なサービスが普及しており、生活している中でさまざまなサービスを利用しています。
生きていれば活用していても、息を引き取った後は利用しないため、電気、ガス、水道等の公共料金はもちろん、携帯電話やインターネットのプロバイダなどのサービスは、解約が必要となるのです。
さらにインターネットの中にもコミュニティがあり、課金のあるサービスについては停止処理が必要。
それらのサービスは、口座停止やクレジットカードの解約で支払いは止められますが、滞納となって請求される場合があります。
解約時に必要となるので、web上で使用しているパスワードも書き残しましょう。
延命治療について
「万が一のとき」が、ある程度予期できる死とは限りません。
事故などによる急な別れや、脳死判定や意識が戻らない状態に陥ることも考えられます。
その際に、臓器提供の有無など医師に伝えるべき事項を、家族と相談して書きましょう。
言葉を発せられなくなった自分と家族は話し合えません。
家族にとって大切な人が少しでも生きる可能性があれば、延命を望む場合が多いでしょう。
もし、自分に意識がなくなり、延命措置を断りたい場合は、家族にも理解を得ておく必要があります。
持病や薬の情報、お薬手帳の保管場所も書くとよいでしょう。
死後について
エンディングノートと言えば、真っ先にイメージするのが、自分が亡くなった後のことです。
葬儀など、自分がいなくなってからの運びに要望がある場合は、しっかり書きとめておきましょう。
よく「遺骨は海にまいてほしい」との希望を叶える映画のワンシーンなどがありますが、恥ずかしがらずに書くのがベスト。
死後のことは、一番大切なことです。
葬儀の規模や内容、喪主の指定、誰に最初に骨を拾って欲しいか、墓地の所在などを書いておきます。
また、自分の死を誰に知らせてほしいか、自分の遺品を託している人がいれば、書きとめておくとよいでしょう。
ここが、エンディングノートで最も大切な最後の仕事です。
遺産の相続について
遺産相続は、資産を家族で分け合うことです。
亡くなった後は助言ができないので、それらをどう扱ってほしいか書きましょう。
相続には相続税がかかるため、資産の多い方はファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しながら考えることも必要です。
また、例えば貯蓄や不動産などでなくても「これは○○に持っていてもらいたい」と思うものがあれば、何でも書いておきましょう。
自分は何に思い入れがあって、それを誰に伝えたいのかが見えてくるでしょう。
遺言書との違い
エンディングノートで遺産相続について触れたとしても、実はエンディングノートには法的効力がありません。
よって、遺言書としての働きは成さないということです。
遺言書には、その効力を発揮するための細かい取り決めがあり、通常は弁護士や会計士などの専門家に相談して作成します。
これが遺言書であり、公正証書です。
資産について希望や要望ではなく、決定として格付けておきたい場合には、専門家に頼り、遺言書を作成します。
その上で、エンディングノートに遺言書の有無と相談した専門家を書きましょう。
エンディングノートは全部書かなくてもいい
書きやすいところから書き始める
エンディングノートを、普通のまっさらなノートに最初から書き始める場合は、書きやすい内容から書き始めればよいです。
しかし、何を書いてよいか戸惑う場合は、ひな型を利用したほうが格段に書きやすいでしょう。
現代では、保険会社や葬儀屋、出版社など多くの組織からいろいろのエンディングノートを販売しているので、薄くて簡単そうな一冊を何気なく手に取って見てみれば雰囲気がつかめます。
また、販売されているエンディングノートの中で、「これなら今から書けそう」と感じたものを選び、実際に書き始めてみましょう。
当然、無理してすべての項目を埋める必要はありません。
ゆっくり時間をかけて行う作業なので、書きやすいところから始めましょう。
書けるときに書く
「エンディングノートを書こう」と決め、ノートを手にしたからといって、その日から書かなければならないものではありません。
もちろん期限もないため、急いで書く必要もないのです。
空欄があってもなんの問題もありません。
まるで取り留めのない日記のように「あ、これは書いておこう」と思いついたときに書きとめるくらいでよいのです。
エンディングノートは「あったらいいな」というものですから、「なくてはならない」と根を詰めて書かなくても大丈夫です。
書けないところは空白
エンディングノートは、出された問いにすべて答えなければならないという「テスト」とは違います。
ひな形のエンディングノートに書き綴っていけば、自分には該当しない項目などもあるでしょう。
また、エンディングノートを1ページ目から書き始めると、全ての欄を埋めていかなくてはいけない感覚になりがち。
しかし、エンディングノートは、あくまで自分の基本情報や履歴と自分の希望を残しておくものなので、書き始めが1ページ目からでなくてもよいのです。
なにがなんでも書かなくてはいけないものではない
履歴の中でも、手続きにも使わなければ家族なら知ってて当然のこともあるでしょう。
面倒なら書かなくてよいのです。
自分の死後についても、家族に思い通りにしてもらえればよいという気持ちが強く、特に希望がない場合だってあります。
全ての欄を無理矢理埋めなくてもよいのです。
エンディングノートは、あるがままの自分自身を書き綴ったものにしましょう。
書き換えは自由
エンディングノートをおおよそ書き終えても、年を重ねたり、月日が経つうちに考えが変わることがあるかもしれません。
また、現実も自然と移り変わります。
わかりやすい例でいえば、葬儀に呼んで欲しい人が自分より先に亡くなってしまったときや、新しい出会いから葬儀に来てもらいたい友人が増えたという場合です。
エンディングノートは常に未完成。
自分が消え、家族の手に渡ったときに初めて完成します。
それまで何度でも書き換えることが可能です。
思いついたときに書き足し、事情が変わったら書き換え、より自分の本意に近いエンディングノートを作り上げましょう。
エンディングノートの選び方
売っている場所
人生の終焉に向けた活動、いわゆる「終活」という言葉が日本社会に浸透し出してから、現代ではエンディングノートはどこでも手軽に購入することができるようになりました。
書店でも豊富に取り扱っており、amazonや楽天といったインターネットショップでも購入することができます。
雑誌の付録として付いている場合もあります。
いろいろと手に取ってみて中身を確認したり、自分が一番楽に書きやすそうなものを選んでみましょう。
無料配布のものでお試し
現代では、サービスの一環で生命保険会社などがエンディングノートを無料配布しています。
JA共済などでも独自のエンディングノートを作成しているので、気になる場合は問い合わせてみてもよいでしょう。
また、インターネットでもエンディングノートの無料版をダウンロードすることが可能です。
ただ、インターネットに出てきたリストを闇雲に開いても、たくさんの情報が舞い込んで混乱するだけです。
まずは、自分の書きたいことを見極める作業からとりかかりましょう。
その上で、それらを網羅したテンプレートを探し、PCで無料ダウンロードを試してみるとよいでしょう。
シンプルな作りのノートを選ぶ
字を書き綴っていくうちに生じることといえば、手の痛み。
それはエンディングノートのひな形に忠実になり過ぎて書きすぎてしまったり、分厚いノートだと、いろいろな項目があり、埋める作業に追われてしまうからです。
おすすめは、「シンプルな作りの薄いノート」。
エンディングノートは、手紙や自伝ではありません。
また、単純に、分厚いエンディングノートは、書く項目が多すぎて書くのが大変になってしまいます。
せっかく書こうと思っても、そのうちにやる気がなくなって、三日坊主にもなりかねません。
簡単なエンディングノートの冊子であれば、とても低価格であり、無料版も多く存在しています。
書き換える場合でも、全て書き直すのも苦にならない程度のものがよいでしょう。
書き足りなくなった場合を想定したノートを買う
シンプルなものは、項目や内容も少な目。
そのため、書いているうちに不足に感じることもあるかもしれません。
その場合は、今まで書いた内容を書き直さなくてもよいようにできそうなノートを買うとベスト。
また、既に書いた項目を切り貼りして、自作で作るのもよいでしょう。
今まで書いたものと、新しいものの2冊にエンディングノートを分ける場合は、内容が重複しないようにしましょう。
また、インターネット上では必要なページだけダウンロードできるようになっているものあります。
それらを使って、書きやすいところから順番に完成させていくのもよいでしょう。
個性を重視するなら自作
販売されているものや無料配布されているものでは物足りない場合は、自作でエンディングノートを作ってみましょう。
多くの時間をかけられるのであれば、それこそ自伝となるような力作にしてもよいでしょう。
自作であれば、自由な構成が可能となり、自分にとって重要なことから伝えていくこともできます。
また、設問に対する回答として希望などを書いていくのとは違い、自分の意思で文章を書き出せるので、既成のものよりメッセージ性が高いエンディングノートを作成することができます。
遺された家族に、亡くなった自分を思い出してもらえる、大切な遺品であり「形見」の1つとして重宝されることでしょう。
エンディングノートを書くメリット
情報の整理
エンディングノートを書くメリットは、遺された家族だけではなく、「終わりを迎える自分」にあります。
エンディングノートを書いていく中で、「自分には知的財産や友人関係がどれだけあるか」、「保険の契約を見直す」といった機会を得ることができるのです。
エンディングノートを書き始めて、改めて考え直し、不要なサービスの解約をしてしまいましょう。
心が軽くなってすっきりします。
また、「エンディング」と名がつくものでも、人生は生きている限り続いていくものなので、これからの展望もよりリアルに見えてくることでしょう。
家族と話し合うきっかけになる
万が一のときのことは、自分だけで考えていても、人とはあまり話さないものです。
ましてや、取り決めておくということは少ないでしょう。
エンディングノートを書いているうちに、どうしても家族に相談しないといけないことや、家族の意見を仰がなければならないことが出てくるはずです。
それらを家族と共有することは、とても大切なこと。
家族と離れて暮らしている場合は、なおさらその時間を設けましょう。
例えば、介護など子どもに依頼することになるものなどは、子どもの環境や貯蓄状況にもよるため、あらかじめできる限り話し合っておくことをおすすめします。
普段言えない感謝のメッセージを記す
書きながら思いを馳せるのは、遺していく物より、やはり「人」です。
疎遠になっている友人や、世話になった恩師などに会いたくなったりするかもしれません。
伝えられる環境にあるなら、勇気をもって伝えてみましょう。
なにより、今の幸せな生活があるのは、愛しい家族のおかげだと改めて感じることができます。
エンディングノートには、「たくさんのありがとう」を詰め込んでおきましょう。
その思いは、手に取る人々に伝わっていきます。
エンディングノートは、愛のこもったあなたからの「最期の形見」となるのです。
エンディングノートがスタートライン
エンディングノートは、決まりはなく、家族への強いメッセージを遺すものであり、公的に認められた証書ではありません。
よって、自由に構成し、感謝を伝えたり、詳しい内容を書き残せるものなので、書く内容に縛られたり、考えこむ必要はないのです。
どんなことが書かれているか漠然として分かりにくい場合は、無料版のエンディングノートのひな形を見てみたり、販売されている既製品を手に取ってみるとよいでしょう。
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