遺留分減殺請求権と時効期間について。制度の内容を踏まえ確認しよう
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遺留分減殺請求の時効期間について解説
法定相続人には、民法上「遺留分」という最低限度の遺産に対する取り分が確保されており、この遺留分を請求する権利を「遺留分減殺請求」と呼びます。
たとえば、遺言により相続分が減少した場合でも、少なくとも遺留分に相当する分については権利を主張することができます。
さて、この遺留分減殺請求ですが、時効による権利の消滅や除斥期間があるため一定の期間内にのみ行使できることとなっています。
損をしないように詳しく確認していきましょう。
遺留分減殺請求の制度とは
遺留分減殺請求制度とは遺言により法定相続分よりも多くの財産を承継している法定相続人に対し、遺留分にあたる部分の請求ができる制度です。
遺言の効果を無効にする
被相続人が遺言者により相続分の指定を行う場合であっても、遺留分の規定に反することは許されていません。
ただし、遺留分に反する相続分の指定がなされている遺言がその時点で無効になる訳ではなく、遺留分の侵害を受けた相続人がその遺留分の権利を侵された範囲内で遺留分の減殺請求を行うことができるにとどまります。
(つまり、遺留分減殺請求を行えば、一部の遺言の効果を排除できます)。
最低限の財産を保証するもの
民法上、法定相続人には一定の割合で相続財産を受け継ぐことができると定められており、この割合を法定相続分といいます。
ただし、この法定相続分は絶対ではなく、被相続人が遺言によって法定相続分と異なる遺産配分を決めることができます。
その結果、相続人の中には法定相続分より少ない財産しか配分されない人が現れます(極端なことをいうと遺族の住居なども失う可能性もあります)。
このように一部の相続人に著しい不利益が生じることを防止するため、一定の相続人に対して、最低限の相続財産を保証するために設けられた制度が「遺留分」です。
遺留分減殺請求は遺言により相続人の遺留分が侵害された場合に請求することができます。
なお、遺留分減殺請求権はそれを行使した段階でその効力を持ちます。
よって遺言により相続した人は請求を受けた段階で侵害していた遺留分を返還しなければいけません。
遺言により相続した人が侵害していた遺留分を返済しない場合には、弁護士を立てて、調停や裁判により財産を返却するように家庭裁判所に申し立てを行うことになります。
請求後に受け取れる割合は
遺留分減殺請求による受け取ることができる財産割合は民法第1028条により定められています。
内容は以下のとおりです。
1.配偶者と直系卑属(子ども、孫、曾孫)は、遺産2分の1の遺留分権利がある
配偶者や子どもや孫、曾孫がいる場合に該当します。
全体割合は遺産の2分の1で、優先順位は、配偶者、子ども、孫、曾孫の順になります。
2.直系尊属(父・母、祖父母、曾祖父母)のみの場合、遺産3分の1の遺留分権利がある
配偶者や子ども、孫、曾孫がいない場合はこの条件にあてはまります。
全体割合は遺産の3分の1で、優先順位は、父母、祖父母、曾祖父母の順になります。
3.兄弟姉妹には遺留分権利がない
遺留分では兄弟姉妹は対象外となり、割合は0です。
遺留分減殺請求ができるのは
遺留分減殺請求ができる権利は一定の人にしかありません。
以下で確認していきましょう。
直系尊属もしくは配偶者
遺留分減殺請求を行うことができる権利のある人を遺留分権利者といいますが、遺留分権利者となるのは以下のとおりとなります。
なお、前述のとおり、遺留分権利者の性質により遺留分の権利の範囲に相違があります。
1.配偶者、直系卑属(子、孫、曾孫など。
胎児や養子も含む)
2.子の代襲相続人
3.直系尊属(父母、祖父母など)
被相続人の兄弟姉妹は請求できない
被相続人の兄弟姉妹は遺留分減殺請求ができません。
つまり兄弟姉妹は遺言内容に対して不満があったとしても、遺留分の権利により遺言の内容を否定できないということです。
これも民法第1028条に定められています。
その理由は相続関係が被相続人から一番遠いことや、兄弟姉妹には代襲相続の制度が存在するためといわれています。
遺留分滅殺請求で注意したいこと
遺留分減殺請求にはある程度期間が経過すると請求できなくなってしまう場合があります。
注意点を確認しましょう。
時効消滅と除斥期間の制限がある
民法1042条では、遺留分減殺請求ができる期間を定めています。
条文の内容は以下のとおりです。
「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないときは時効によって消滅する。
相続開始のときから10年を経過したときも同様とする。
」
前段は「時効消滅」です。
遺留分減殺請求は、遺留分権利者が相続開始・減殺すべき贈与・遺贈があったことを知ったときから1年で時効により請求できなくなります。
後段は、相続開始後から10年を経過した場合にも、遺留分減殺請求権が消滅することを定めています。
なお、後段の規定は除斥期間(権利を行使すべき確定期間)であると解されています。
遺留分減殺請求の起算点は
簡単に前述しましたが、遺留分減殺請求には起算点があります。
消滅時効の場合は「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったとき」が起点になります。
つまり、相続の開始を遺留分権利者が把握したときです。
逆に考えると、相続の開始を知らなければ時効による権利の消滅はないということです。
なお、「知った」について、実際には的確に知ったということまで求めらず、ある程度漠然と知ったぐらいが起算点となります。
また、除斥期間については「相続開始のとき」です。
相続の開始から10年で完全請求できなくなります。
時効消滅による制限は
時効消滅による制限および制限の対処法について具体的に確認していきましょう。
1年間の時効により消滅する
前述のとおり、遺留分減殺請求権は遺留分権利者が相続の開始を知ったときから1年で時効となります。
なお、これに関連し、遺留分減殺請求権行使の効果として生じた法律関係に基づく請求権も1年の消滅時効に服するのかという問題もあります。
結果からいうと、基本的には、遺留分減殺請求権の行使の効果として生じた請求権自体は消滅時効にかかりません。
ただ、例外的に当該請求権が金銭の返還請求の場合には、金銭については所有権を観念できないことを理由に、不当利得返還請求権として10年の消滅時効にかかるものと考えられています。
内容証明郵便で時効を防げる
遺留分減殺請求権の消滅時効の進行を妨げる方法はさまざまですが、一番簡単な方法は内容証明郵便を相手に送付する方法です。
権利行使する旨を伝えられれば、書面に金額などを記載する必要はありません。
なお、内容証明郵便の送付は、各相手方ごとに効力を生じます。
よって、遺留分を請求できる可能性がある人全員(被相続人から遺贈や贈与を受けた受遺者・受贈者、遺言書で相続させるとされた受遺者・受贈者・受益者の包括承継人(相続人))に内容証明郵便を送付するのが効果的です。
除斥期間による制限は
次に除斥期間についての制限について、具体的に確認しましょう。
被相続人死亡から10年間
遺留分減殺請求権は被相続人が死亡し、相続が開始したときから10年で完全に請求できなくなります。
なお、この除斥期間には例外があり、たとえば、認知症にかかり行使のしようがなかった場合や、相続人全員が遺言を無効と信じ相続の協議を重ねていた場合などには例外的に除斥期間の経過後でも行使できる場合があります。
認知症の方に場合は成年後見人が選任された場合には選任の確定後6カ月以内に遺留分減殺請求の意思表示をする必要があります。
時効の消滅は防げない
前述の消滅時効とは違い、除斥期間は中断という概念が存在しません。
つまり、10年の期間が経過してしまうと権利自体が消滅してしまうのです。
ただし、遺留分減殺請求権は「形成権」(単独の意思表示のみによって法律効果を生じることのできる権利)と解されており、当該請求権を1回でも行使すれば、消滅時効や除斥期間は問題ならなくなります。
遺留分が気になったら早めに確認しよう
相続は誰しもが無視できないイベントです。
そして自分の親が亡くなった場合には必ずこの話題がでてきます。
被相続人の遺書などにより自分の遺留分が侵害されていると分かった場合には、自分の遺留分の確認を行うとともに、消滅時効や除斥期間があることから、できる限り早めに内容証明郵便の送付などの方法により行動するようにしましょう。
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