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国の文化を守る学芸員の仕事内容とやりがい|年収はどのくらい?

国の文化を守る学芸員

学芸員と聞いて何を想像しますか?多くの人は、博物館や美術館で来館者を相手に作品などのガイドをしたり、作品や所蔵品の管理や保存作業が主な仕事だと思っているでしょう。
しかし、博物館や美術館だけではなく、動物園、植物園、科学館、さらに公立・私立・学校などの図書館司書も学芸員なのです。

学芸員とは

文部科学省によると、学芸員とは「博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業を行う「博物館法」に定められた、博物館における専門的な職員」を指します。

そもそも、「博物館」とは、「博物館法」に定められた歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研修、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関をさしています。
この定義から考えると、学芸員は博物館や美術館だけではなく、動物園や水族館、植物園、さらに図書館司書も学芸員の部類に入ります。

学芸員は国家資格

学芸員は、文部科学省の管轄する試験を経て取得する国家資格です。

【参照URL:?http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/gakugei/1288649.htm

学芸員の種類

学芸員は次のような施設で資料収集や保管業務などを行っています。

学芸員になるための方法

学芸員と言って前に述べたように様々な分野に分かれています。
それぞれの学芸員になるために、どのような過程を経てどのような資格を取ればいいのでしょうか。
文部科学省が定めている取得の方法が3つあります。

  1. 4年制の大学で、文部省令で定める博物館に関する科目の単位を修得する。
  2. ?大学に2年以上在学し、博物館に関する科目の単位を含めて62単位以上を修得し、3年以上学芸員補の実務経験に就く。
  3. ?文部大臣が、文部省令で定めるところにより、1.および2.と同等の学力および経験を有する。

以上の方法は、いずれも学芸員になるための方法であり、資格を取得後すぐに博物館などで学芸員として働けるわけではなく、関係施設での実務経験を経てから国家試験を受検・合格しなければいけません。

【参考URL:?http://www.mext.go.jp/a_menu/shogai/gakugei/1288649.htm

各学芸員の仕事と収入

一口に学芸員といっても施設ごとに多くの仕事があり、いずれも「資料を管理・保存する」ことは一緒ですが、扱う対象が全く違いますので、必要となる知識やスキルはそれぞれに違います。

博物館などの歴史系学芸員

博物館や資料館など歴史研究を目的とした施設で勤務します。
その種類は国や地方自治体が運営する国公立の博物館、一般社団法人や財団法人が運営する私立の博物館などさまざまです。
日本には合わせて3,700館以上あります(平成20年度の社会教育調査による)。

「博物館法」の条文には、学芸員の主な仕事として次のようなものが挙げられています。

  1. 博物館資料を収集し、保管し、及び展示すること。
  2. 博物館資料を分館や当該博物館外で展示すること。
  3. 一般公衆に対して、博物館資料の利用に関し必要な説明、助言、指導などを行うこと。
  4. 博物館資料に関する専門的、技術的な調査研究を行うこと。
  5. 博物館資料の保管および展示などに関する技術的研究を行うこと。
  6. 博物館資料に関する案内書、解説書、目録、図録、年報、調査研究の報告書等を作成すること。
  7. 博物館資料に関する講演会、講習会、映写会、研究会等を主催し、およびその開催を援助すること。
  8. 当該博物館の所在地又はその周辺にある文化財保護法の適用を受ける文化財について、解説書又は目録を作成する等一般公衆の当該文化財の利用の便を図ること。
  9. 社会教育における学習の機会を利用して行った成果を活用して行う教育活動その他の活動の機会を提供すること。
  10. 他の博物館と緊密に連絡・協力し、刊行物および情報の交換、博物館資料の相互貸借等を行うこと。
  11. 学校、図書館、研究所、公民館等の諸施設と協力し、その活動を援助すること。

美術館などの芸術系学芸員

古今東西の美術作品を所蔵管理する施設に勤務する学芸員です。
国や地方自治体で運営する国公立の美術館、一般社団法人などが運営する私立美術館があり、日本には合わせて1,000以上あります。

美術館の学芸員も、上記の博物館の学芸員の仕事とほぼ同じです。

水族館などの生物学系学芸員

自然科学分野の施設である水族館、動物園、植物園などで勤務する学芸員です。

  1. 生き物の生態観察、展示
  2. 展示企画
  3. 資料収集および整理
  4. 目録作成
  5. 広報の企画、実施

また施設によっては研究の一環として飼育業務も兼任する場合があります。

公務員としての学芸員

いずれも、国や地方自治体で運営している諸施設の学芸員は公務員として勤務しています。
よって、募集の際も、公務員募集の中の「研究員」や「学芸員」として募集することがほとんどです。

また、地方自治体によっては、学芸員の募集をしていない所もあります。
そういう時は、公務員として応募し、就職してから関連施設の職員として採用する形をとっています。
収入も他の公務員とほぼ同額ですので、地方によってかなりの差があります。

図書館司書としての学芸員

図書館司書も学芸員の一つです。
学校や企業などの図書館業務を行っています。
例えば、

国や地方自治体で運営する図書館司書は公務員扱いですので、募集の際は公務員として扱われます。
よって、収入も一般の公務員とほぼ同額です。

学芸員の年収

学芸員の仕事はそれぞれが独立した勤務体系ですので、待遇面も全く違います。
同分野の学芸員でも運営している団体の違いでも大きく差があります。

学芸員別の年収

学芸員も、施設が公立の運営か私立の運営か、または私立でも来館者数が多い少ない、規模が大きいところと小さいところ、運営している企業自体の規模によって、収入や勤務時間などの待遇にかなりの差があります。

公立では、一般公務員とほぼ同額の収入ですし、私立の大手企業が運営する美術館などは、館長クラスで年収1,000万円を超えているという話も聞きます。
このことは、博物館でも動物園でもさほどの違いはありません。

ただし、自然科学系でしたら、生態観察のために時間外・休日の勤務があるでしょうし、美術館でも大々的な企画展の準備で時間外や休日の出勤などということもあるでしょうから、どの分野の学芸員がよいかということは一概には言えません。

他の職業との比較

ここで、学芸員の平均年収はどうなのでしょうか、他の職種と比べてみましょう。

資格別に見ると、1位が医者の1,098万円、これに対し学芸員の平均年収は240万円前後です。
同じ国家資格でもこれほどの違いがあります。
また、職業別に見ても、1位がパイロットの1,530万円と比べると、学芸員はパイロットの1/6です。
もっとも、それぞれ仕事の内容や勤務時間なども違うので公平に比較することはできませんが、金額的に見ると明らかに差があります。

学芸員の仕事にはお金に換えられない魅力がある

学芸員の仕事は、扱う分野や施設の規模によっても、収入や勤務時間など様々な点で大きな違いがあります。
しかし、収入面だけを見ると相対的に他の業種よりも低収入で、しかも国家資格の必要な職業であるにもかかわらず、一般の企業に勤める会社員よりも低いともいえます。
それでも、学芸員の仕事をしたいという人は減ることがありません。

人生に現実的な潤いを求めている、目に見えないような生きがいを求めているなど、学芸員の仕事を選ぶ理由はそれぞれです。
今の時代、自分の生き方を自由に選べます。
だから納得した人生を送りたい、そう思って生きがいを求め学芸員の仕事を選ぶ人も多いのではないでしょうか。
好きなことをして生きる。
それはお金には代えがたい「生きがい」です。
学芸員の仕事はあなたの人生を豊かしてくれるかもしれません。