UKANO家計のクリニック

贈与税は高い?生前贈与を上手に使って相続を賢くしよう

コンテンツ

生前贈与の上手な活用法

相続税は被相続人である親などが死亡したときから10カ月以内に支払わなければならない税金です。
10カ月の間に払えばよいのでそんな難しくないと考えがちですが、場合によってはかなり大変になるケースもあります。

遺産相続で兄弟親など同士で相続に争いがある場合、10カ月はすぐに経過してしまいます。
「家には財産なんてないから関係ない」と考える人も多いようですが、実際に相続が発生すると兄弟間だけでなく、その妻や子供などが絡んできて泥沼になることも少なくありません。
ですので、他人事と考えずに、被相続人が死亡する前からこの問題に対処する方法を考えておく必要があります。

その対策の1つが遺言書の作成です。
そして、もう1つの対策が生前贈与です。
遺言書を正式に弁護士を通じて作成することで法的拘束力が発生し、相続時のトラブルはかなり軽減されます。
ただ、子どもに少しでも多くの財産を残したいと考えるなら遺言書だけでは不十分です。

そこで考えたいのが生前贈与。
つまり、本人が死亡する前に相続税対策をしておくということ。
今回はその生前贈与について詳しく見ていきましょう。

生前贈与とはどんなものか

生前贈与とは、親などが将来の相続を見越して相続人になる子供や孫に対して、生きているうちから財産を分けることで相続される財産を目減りさせ、課税される相続税を低減しようとするものです。
生きているうちに財産を無償で譲渡することを贈与といいます。
ちなみに贈与の場合は相続と異なり、全くの赤の他人である第三者に対してでも行うことができます。

生前贈与するにあたって注意するべき点として贈与税があります。
贈与の額が一定額を越えてくると贈与税が発生します。
ですので、相続税を減らす対策としては、贈与税がかからないことが条件となります。
そのためには、できるだけ早めの贈与を始める必要があるのです。
その理由については後ほど詳しく述べることとします。

生前贈与で相続人の相続税の負担を減らす

相続税は亡くなった親や祖父などから財産を相続するときに発生する税金です。
その税金の額は決して小さいものではありません。
計算方法としては、まずは相続税の基礎控除である3,000万円に法定相続人の人数×600万円を加えた額を相続する財産の価値から差し引きます。

具体例を挙げると、1億円の財産を相続するにあたって、法定相続人が5人いるとします。
先ほどの計算式から3,000万円+600万円×5人=7,000万円が基礎控除となり、1億円から7,000万円を引いた額3,000万円に相続税が課税されます。

この3,000万円に課税する場合の税率は15%です。
実際の計算は、(3,000万円-50万円(控除額))×15%となり、相続税は442.5万円となります。
配偶者への軽減措置など細かいことはありますが、普通に計算すると442.5万円もの税金がかかってしまうのです。
相続税は累進課税方式なので、財産が大きければさらに大きい金額を納税しなくてはなりません。

親としては子どもに残す財産を少しでも多くしたいのが親心というものです。
そこで、生前贈与という選択を考えるのです。
生前贈与すれば相続としての財産を少しでも減らすことができ、その分子どもに残す財産が増えます。

生前贈与は贈与税の対象となる

生前贈与にも税金の縛りがあります。
生前贈与にしても相続にしても本人以外に財産を譲る行為には違いありません。
ですので、財産を相続する際の相続税の負担との不公平さをなくすために贈与税がかかってくるのは当然です。

ただ、贈与税は相続税にくらべ、かなり少額から課税対象になるのですが、相続税が一度に課税されるのに対し、贈与税は年ごとに分けて課税されたり、相続税にはない特徴をもっているので、この両方の特色をうまく使えば、節税対策ができます。

贈与税は課税方法を選択する必要がある

あまり知られていませんが、贈与税は課税方式を選択することができます。
1つが相続時精算課税制度です。
相続時生産課税制度は2,500万円までであれば税金がかかりません。
しかも、一度で全額を贈与する必要はなく限度額の範囲内であれば何度でも贈与を行うことができる使い勝手のよい制度です。

そして、もう1つの贈与税の制度が暦年贈与制度です。
こちらは基礎控除が110万円と前者と比べると控除額が控えめではありますが、毎年の基礎控除が110万円あるので、長い目で見ればこの基礎控除部分を使ってかなりの節税効果が見込めます。

これら2つの制度は一長一短あり、ケースによってどちらがよいかが変わってきます。
そのため、現状ある財産をまずはしっかりと把握することです。
さらには、今後相続人がどのような出費が待っているか、今は少しずつ将来に備えるだけでいいのかなど、状況を応じて自分にあった選択をすべきです。

暦年課税で110万円の非課税枠の活用をする

2種類の贈与税の課税方式のうち、一般的に使われるのが、この暦年課税制度です。
なぜ利用されやすいのか、それは仕組みが非常に単純でわかりやすいことに尽きます。
暦年課税の特徴として、1年間でいくら贈与を受けたかで計算します。
このときに110万円までが非課税なので、毎年110万円の贈与を続けていけば、その分に課税される金額は0円です。

つまり、例えば毎年110万円を子どものために、20年間贈与を続ければ、2,200万円分が非課税になるのです。
この状態が、3人の子供に対してしていれば、6,600円分が非課税です。
その上で、本人死亡のために相続が発生したとしても、贈与分は関係ないので、相続の控除も新たに使えることになります。

ただし、本人死亡から数えて3年以内に行われた贈与は相続と見なされますので、注意が必要です。
110万円以下だから申告しないでいると過小申告になってしまいます。

相続時精算課税制度のメリットを活かす

相続時精算課税制度は、2,500万円までであれば税金がかかりません。
ただし、贈与してもらった親などが亡くなった場合が暦年課税とは違い、相続税を課税する計算に相続時精算課税制度を利用して贈与されてきた贈与財産分も加えられて相続税が算出されます。

実際の相続税の控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の人数です、この範囲内であれば早期に財産を贈与することができるので、贈与を受ける者が資金が必要な場合などにとても有効な手段となります。
最近は、相続時精算課税制度を選択する割合も増えてきているというのもこの利便性からでしょう。

生前贈与を非課税で行うための方法

そもそも生前贈与するのは節税目的です。
この節税知識が曖昧では、上手な税金対策は困難です。
ここでは生前贈与における非課税にするために知っておきたい基本的な知識について説明していきます。

基礎控除を利用した生前贈与

生前贈与を非課税を行う典型的な方法はやはり、暦年課税による基礎控除を利用する方法です。
年間110万円までの贈与は非課税であるので、110万円を超えない範囲で毎年贈与を繰り返すのですが、後ほど説明しますが、実は贈与に工夫が必要です。

贈与は誰にでもできますので、子どもの夫婦そして孫にまで、110万円程度の贈与を繰り返していけばかなり節税することは可能です。
課税の区切りは年ごとになるので、極端な話、12月31日に110万円を贈与し、その翌日に110万円を贈与したとしても、それぞれ基礎控除が使えるので、税法上はどちらも非課税扱いになります。

贈与税の配偶者控除を適用する

贈与税にも配偶者控除があります。
ただし、この控除を受けるには大きな制限があります。
まず1つは20年以上の婚姻歴があることです。
そして、もう1つは自分が居住するための不動産もしくはその購入資金の贈与であること。
最後に、その贈与を受けて居住している住宅に、贈与を受けた年の翌年の3月15日まで入居し、その後も引き続き居住すること。
これらの条件をすべて満たす場合にのみ、最大2,000万円まで非課税になります。

この制度を利用すると、夫から居住用の住宅2,000万円の贈与をうけ、さらに別に110万円の現金を贈与されても非課税となります。
ここで注意したいのは、たとえ非課税になったとしても配偶者控除の適用を受けるためには贈与税の申告が必須です。
これを忘れると申告もれにより最悪の場合には、罰則の対象になり得ます。

相続時精算課税制度を適用する

相続時精算課税制度のメリットは、被相続人死亡の前に一時的に2,500万円の非課税になること。
自営業者などで資金繰りをしている人などは、いきなり2,500万円が手元にできるので、十分な事業資金になります。
しかも、返す必要がありません。

さらに、贈与する財産の価値の計算は贈与したときをもとに計算します。
となると、例えば土地が贈与したときに500万円の価値だったものが、相続時に2,000万円となったとしても、相続上の計算では500万円として計算されるので、これから財産価値が上がりそうなものは早めに贈与することで得をするのです。

ただし注意してほしいのは、この相続時精算課税制度には贈与の制限があります。
贈与する者は60才以上で、贈与される者は20歳以上の子もしくは孫だけです。
しかも税務署に届け出が必要なので、必ず申告することを忘れないでください。
申告しないと普通に贈与税の対象になります。

住宅取得資金等の贈与税の非課税の特例を適用する

平成27年1月1日から平成33年12月31日までの期間で、父母や祖父母など直系尊属から自分が住むために新築、取得または増改築の費用にするために贈与されると、一定の条件を満たせば、限度額の範囲内で贈与税を非課税にできます。

非課税の枠は現在のところ1,200万円で年を追うごとに減ります。
32年4月から33年3月までは1,000万円、33年4月から12月までは800万円の非課税枠が減っていきます。
なお、この制度を受けるには住宅にも条件があり、断熱性4級以上、耐震等級2以上もしくは免震建築物、高齢者等配慮対策等級3以上これらの条件をもとに省エネ等住宅を認められた住宅であることです。

この特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに所轄の事務所に必要書類を提出する必要があります。
これは、この特例に限ったことではありませんが、贈与の特例を受けるためには決まって税務署への申告が必要です。
にもかかわらず、税務署への申告をしないで、特例を適用したつもりになっている人が少なくないのです。

メディアは特例によるお得な情報はいち早く流すのですが、具体的な手続きについての情報はおろそかな場合も多いので、この手の税金の特例を受けられる制度は必ずその方法を事前にチェックしてください。

教育資金の一括贈与を行う

教育資金として贈与される場合も非課税になる特例があります。
教育資金は学校等に直接払われる入学金や授業料はもちろんのこと、学校等以外の者に、教育に関する役務の提供として直接支払われる金銭等も対象になります。
非課税となる限度額は1,500万円までです。

なお、この制度の特殊な部分として、受贈者が30才になるなど教育資金管理契約が終了した場合には、贈与を受けた金額から教育資金支出額を控除して残額がある場合は、その年分の贈与税として計算されます。
この特例の適用を受けるためには贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに所轄の事務所に必要書類を提出する必要があります。

結婚子育て資金の一括贈与を行う

結婚子育て資金のための贈与も上限1,000万円まで非課税になります。
この制度は、何かとお金のかかる結婚や子育ての時期に子供のために親や祖父母が持っている財産で支援するというものです。
この特例を受けるためには、祖父母もしくは父母が20歳以上50歳未満の子供や孫に、まとまった財産を贈与するもので、最大1,000万円が非課税になります。
ただし、結婚に関しては300万円が限度とされています。

ただし、この特例は終わりの時期が迫っていて、平成31年3月31日までに贈与の手続きを行う必要があり、手続きは金融機関を通じて行います。
終了時期は贈与受けた者が50歳になるか使いきるか、贈与者が死亡したときに終了し、終了時に使いきっていないお金は課税対象となってしまいます。

障害者への贈与を行う

障害者への贈与に関しても特別な制度が設けられています。
特定障害者に対する贈与税の非課税制度というものです。
この制度は親族に特定障害者がいて、生活の安定を目的として信託銀行などの受託者に対して親族が財産を信託するのです。
特別障害の場合は6,000万円、特別障害者以外の特定障害者の場合は3,000万円の非課税枠があります。

この制度を適用させるためには、障害者非課税信託申告書を信託会社を通じて所轄の税務署に提出することで利用することができます。

生活費など贈与税対象外の贈与を行う

ここまで贈与税について非課税の特例を多く取り上げてきましたが、生活費なども贈与税の対象外です。
生活費とは子供への仕送りや子供のすむアパートの賃貸料に使うものは生活費の代表格です。
また、子供の結婚費用や出産費用なども非課税対象です。
新婚生活の家電や家具などは高い買い物が多いです。
加えて、出産にかかる検査費用や入院費用、赤ちゃんのためのベビーベッドも含まれます。

生活費以外にも教育費も非課税です。
学費や教材費、文具費用はもちろんのこと、交通費や修学旅行への参加費用、また進学のための学習塾や受験費用も教育費に含まれます。
とはいえ、社会通念上あり得ない額の贈与が生じたときは、たとえ生活費や教育費という名目であっても非課税と認められないことがありますので、ほどほどにしておきましょう。

不動産や土地を生前贈与する

子や孫に贈与する財産の中には不動産も含まれることがあります。
贈与といえば、お金をイメージしがちですが、この不動産についても生前贈与するほうが得する場合もあるのです。
例えば、生前贈与する時点で不動産の評価額が2,000万円だったものが、贈与者死亡時に6,000万円となったと仮定すると、贈与する際には2,000万円に対しての税金で済んだものが、相続時点では6,000万円で計算されてしまうので、かかる税金も当然多くなってしまいます。

さらに、相続時精算課税制度を使っての贈与となると、本人死亡時に相続税として計算され、計算の根拠はあくまでも贈与時の2,000万円で済むので、かなり得することになります。
ただし、反対にいえば、不動産の価値がこれから値下がりすることが予測される場合には生前贈与は可能であれば避けたほうが良いということも言えます。
ですので、状況に合わせて贈与と相続の制度を上手につかうことを考えましょう。

不動産を贈与する際に必要な事と税金について

不動産を贈与するのは個人ではかなり困難です。
結果的に、司法書士や税理士の手を借りることになりますが、当事者である以上ある程度は理解しておくに越したことはありません。

贈与財産が不動産の場合は登記が必要になる

贈与財産が不動産である場合は、その手続きの一環として不動産登記が必要になります。
一般的には、司法書士に手続きを依頼し、法務局で管理している不動産の権利情報を贈与者から贈与を受ける者に名義変更するものです。

この贈与における登記には、司法書士や税理士に依頼することになるのでその手数料がかかります。
さらに登記費用や税金もかかるので、不動産の贈与はかかる費用も勘案して贈与すべきかを判断しなければなりません。

もし、贈与する不動産を将来に向かって必要な財産なのであれば、不動産を売却し、売却代金を贈与する形にしたほうが楽ですし、その他の手数料もかからないので、売却できる金額によってはそれも1つの方法です。

登録免許税の納付が必要になる

不動産の登記の申請にあたっては登録免許税を納付する必要があります。
ここで、気になるのがその税率です。
贈与の場合、不動産の価額の2%が税金として徴収されるのですが、これは売買と同率なので、結構税率は高いです。

それに比べて、相続となると不動産の価額の0.4%で済むので、登録免許税だけを考えると相続の方がかなり有利です。
もちろん、登録免許税だけでは相続が有利か贈与が有利かは判断できませんが、贈与を何回か繰り返すならなおさら必要経費として上乗せされてしまいますので注意が必要です。

不動産取得税の納付が必要になる

生前贈与による不動産の取得には不動産取得税を納付する必要があります。
不動産の登記情報を変更してから、半年経ったぐらいに納税するための通知書が送付されてきます。
基本の税率は固定資産税評価額の3%になります。

ちなみに、相続による登記の場合には不動産取得税がかからないので、この不動産取得税も贈与することによる余分な費用であるといえます。

生命保険を利用した生前贈与で節税する

生命保険を利用した生前贈与により節税を行う方法もあります。
方法は簡単で、贈与税の基礎控除額である110万円の範囲内で贈与し、そのお金を使って生命保険に加入するというものです。

ただし、生命保険の契約形態には注意が必要です。
これを間違うと全く節税対策にならず、単純に相続財産の一部と見なされてしまうので、保険契約は慎重に行いましょう。
節税対策としてもっとも一般的なのが、保険契約者と保険料負担者、保険受取人を贈与される子供にし、被保険者のみを親にするという方法です。

これだと親が死亡してもかかる税金は子供の所得税でしかも一時所得としての課税だけであり、贈与税よりもかなり税額を抑えることができます。
ただし、毎年同額の贈与を行う場合は、定期贈与と見なされる可能性があり、贈与額の総額に贈与税がかけられてしまうかもしれませんので、注意が必要です。

生前贈与加算には注意が必要

相続や遺贈によって財産を取得した場合、生前贈与を受けていた場合には死亡前の3年間以内に贈与を受けた分については相続税の課税財産と判断されるのです。
つまり、本人死亡により相続が発生する日の3年以内の贈与であれば、贈与税の基礎控除110万円に関係なく、贈与された財産すべてを相続財産に加えて計算するのです。

生前贈与の手続きの方法

生前贈与はとても形式が重視されます。
もし、この条件をおろそかすると、本来受けられる特例なども認められないことになります。
一つ一つ形式に沿って手続きすることが賢明です。

贈与契約書を作成する

金銭の贈与であっても贈与契約書という形で残るものを作成しておく必要がありあります。
一番の理由は税務署への証明です。
税務署から贈与した証拠を見せるように言われたときに、贈与契約書により証明すると税務署職員もぐうの音もでません。
反対にこれがないと確固たる証拠がないとして、贈与の事実を認められない可能性があるのです。

作成するポイントとしては、必ず自筆で書くことです。
もちろんパソコンで作っても本来問題ないはずですが、誰にどんなことを言われても自分の意思で書いたとの証拠になるので自筆が望ましいのです。
さらに、印鑑も実印にすべきです。
理由は自筆である理由と同様です。

贈与する金銭の振り込みをする

贈与する場合は必ず銀行送金することです。
贈与した証拠としてこれ以上の証拠はありません。
銀行送金をすることで「日付・送金者・金額」を銀行通帳に記録として残しておけます。

贈与した本人が贈与する意思能力が問われる場面が相続ではあるのです。
そんなときに、銀行通帳は厳然たる証拠として税務署に見せることができるので、銀行振込をすることによって、確実に贈与がされたと認められやすくなります。

不動産の贈与の場合は登記申請する

生前贈与の際には先程も申し上げたとおり、不動産登記申請をする必要があります。
この登記の申請は法務局において行うことができます。
基本的には司法書士に手数料を払って代理で登記してもらいます。
ただ、自分で書類が作れるなら自分で登記することも不可能ではありませんが、書類に不備や権利関係に間違いを起こさないためにも司法書士の先生に依頼する方がよいでしょう。

ちなみに、登録免許税や不動産取得税など他にも諸費用がかかるので、そこまでして贈与する価値があるか、不動産以外に贈与できるものはないかをあらかじめ検討しておくべきでしょう。

贈与税の申告をする

贈与税は贈与を受けた人にかかる税金です。
ですので贈与を受けた人が自分が住んでいる管轄の税務署に贈与税の申告をすることになります。
この贈与税の考え方は贈与を受けた人がいくら贈与されたかによって課税の有無が決まります。

つまり、1人から110万円以上の贈与を受けようが、複数人から年間合計で110万円以上の贈与を受けようが取り扱いは同じです。
1年間で、110万円以上の贈与を受けたら、翌年の2月1日から3月15日までに申告手続きをしなければなりません。
なお、一般的な贈与税の申告の場合は贈与税の申告書のみを提出すればよく、他の特例を受ける場合にはその特例の申請に沿った書類が別途必要です。

生前贈与する際に注意すること

生前贈与を認められるには決まった形式では足りないことがあります。
結局税務署が生前贈与であるかを判断することになるので、認められやすくする体裁も重要なのです。

非課税枠いっぱいの同額の贈与を繰り返さない

実は生前贈与には思わぬ落とし穴があります。
それが定額贈与という考え方です。
例えば非課税枠一杯の110万円を毎年贈与するとします。
これは贈与税の法律上一見合法的な節税対策とおもえます。
ですが、このような方法で贈与すると税務署が贈与の金額を単純に毎年分けて贈与していると見なしてしまい、一括で贈与したときの贈与税をかけられてしまう危険性があります。

理不尽に思えるかもしれませんが、税務署さんが指摘したを覆すのは大変です。
そのため、あらかじめこのような取り扱いがされないように対策するほうが賢いです。
簡単に言えば金額をランダムして、計画的でない贈与をおこなうのです。
もちろん、これで問題ない訳ではありませんが、毎年少しずつ贈与税をし支払う程度の贈与を受ければ、定額で贈与するよりは税務署に指摘される可能性はかなり低いです。

現金手渡しではなく銀行口座を利用して贈与する

贈与は日付や金額及びその贈与者が明確になっている必要があります。
贈与税は年間で110万円の非課税枠があるので、年が違えば計算も変わってくるので、これらの記録が残る銀行口座を贈与先として使い、かつ通帳記帳しておけば確固たる証拠というわけです。

ただし、形として、子どもの口座で親が管理しているだけだと危険な場合もあります。

子や孫の名義で預金する場合は本人に管理させる

名義が子や孫になっている銀行口座に振込するのは確実に贈与している証拠として重要ですが、便宜上子や孫の口座とみなされる場合があります。
名義預金と呼ばれたりして、税務署はこういったものをチェックしています。

これを避けるためには、子や孫がこの銀行口座を認識しており、自身で管理していることが重要です。
具体的には、その口座の通帳や印鑑などを自分で持っていてお金の出入金を自由にできる状態であることが理想です。
少なくとも、自分の通帳が存在していることは認識しているべきです。

贈与の契約書を作成する

生前贈与の際には、必ず贈与の契約書を作成すべきです。
確かに、銀行口座への振り込みにより、贈与の記録は確実に残りますが、それが贈与によるお金であることをさらに裏付ける意味で贈与契約書を作っておきましょう。

書き方は決まった書式があるわけではなく、日付・贈与を受けた者の名前・贈与したもの(多くは金額)を記載し、贈与のやり取りをする両社の署名押印があれば問題ありません。
この書類は基本自筆で行う方が証拠能力が高くなりますので、面倒かもしれませんが、年1回この書類を作ることをおすすめします。

生前贈与は分割して行う

生前贈与を行うにあたってはできる限り分割して行うことです。
財産があればあるほど相続時に一括で相続すると税金の負担が大きくなります。
ですので、予め相続が発生することが見込まれるほどの資産がおありであれば、できるだけ早く贈与を開始すべきです。

また、子や孫など贈与の対象が多ければ多いほど、一年で贈与できる額は大きくなりますので、親族が多い方はより効率的に財産の贈与ができます。
これらの作業は面倒ですし、相続税は払うべきだとお考えの方にはお勧めしませんが、節税対策としてはこの方法は有効なので節税をお考えであれば、このことは覚えておいてください。

孫への生前贈与で節税効果が高まる

生前贈与は子供だけに限定する必要がないこともメリットのひとつです。
孫も含めて生前贈与することで節税効果は高まります。

贈与の範囲を広げて相続税を減らす

相続と違って贈与については誰にでも行うことができます。
つまり、法定相続人となっていない孫でも贈与は可能です。
もちろんひ孫でも第三者でも贈与できるので、まずはご自身がどなたに贈与したいのか検討すべきです。

生前贈与が多くできればできるほど相続税は抑えられますので、贈与の対象者の範囲を子だけに固定するのはあまり賢い選択ではないでしょう。

孫への贈与は生前贈与加算の適用外のため節税につながる

孫への贈与は相続税対策の1つとして有効です。
理由は簡単で、孫は通常相続人ではないからです。

子が生きている場合は、子に対して相続が発生するので、孫には相続されません。
ということは、孫に対して贈与しても、生前贈与加算の適用外です。
ただし、遺言書により、孫への遺贈があった場合は生前贈与加算は有効になります。

この取り扱いは何も孫に限った話ではなく、赤の他人に対して贈与する場合も同様の取り扱いにより生前贈与加算は回避できます。
もちろん、あなたの財産を贈与したい相手がいたらの場合ですが。

子の死亡による相続税の節税になる

孫への贈与は子が死亡したときの相続税対策にもなります。
孫は子の法廷相続人であるので、子の死亡により発生する相続にはもちろん相続税がかかります。
ですが、すでに孫への贈与された財産は子が死亡したからといって改めて相続財産となりません。

となると、本来子へ相続すべきだった財産の一部がすでに孫の所有になっているので、新たに相続は発生しないので、その意味でも孫への贈与は子から孫への相続税を減らせる節税対策といえます。

生前贈与の手続きの依頼はどこにしたらよいか

結局、まとまった財産を贈与するにはお金をケチって素人だけで行うと、問題が発生することが少なくありません。
ですので、ここはその道の専門家に依頼するべきでしょう。

司法書士に依頼する

自分の不動産を確実に贈与したいのであれば、司法書士に生前贈与の手続きを依頼するのが賢明でしょう。
法律上では、贈与は意思表示つまり口約束でも成立します。
ただし、口約束など形のないものだと、贈与を完了していないと内容を取り消すことも容易ですし、後日の争いのもとになります。

さらに、税務署が贈与の証拠を求めたときも確実な証明が提示できません。
そういう意味で贈与契約書を作成すべきなのです。
もちろん贈与契約書は自分達でも作成することは可能です。
ただ、贈与契約書としての要件に漏れがあったり、贈与者および贈与を受けた者の互いの同意のもとで作られたものでないと判断され、無効とされる可能性もあります。

対して、司法書士に正式に贈与契約書の作成を依頼することで、書類に不備はなくなります。
さらに、第三者が介入することで、その契約により確実性を持つことができるのです。
加えて、不動産登記は間違って登記してしまうと取り返しがつきません。
手数料がもったいないと自分で登記を試みる人も実際にはいますが、大事な部分をケチったばかりに権利をうまく譲渡されなかったとなるとやり直しにまた費用がかかったりと手間ばかり増えてしまいます。

無理せず司法書士にお願いしましょう。
ちなみの司法書士の報酬は全部で10万円程度を目安にしておけば間違いありません。

税理士に依頼する

贈与税の申告についても専門家に依頼するのがよいでしょう。
単純に贈与する財産が現金だけであり、単純に暦年贈与するだけであれば、別に税理士に依頼する必要はないでしょう。
ですが、現金以外に不動産や株式など複数の財産を贈与したり、複数人に対し贈与していくなどすると管理だけでも大変です。

特に不動産を贈与したり、相続したりする場合には迷わず税理士にお願いするべきです。
不動産を贈与するときなどはその不動産の評価額を定めたり、その財産価値に対する見解が税務署と違う場合などのやり取りも税理士は代理で行ってくれます。

もし、これを個人でやるとなると税理士並みの知識が必要になりほぼ不可能です。
結果的に税務署の言いなりに物事が進んでしまい、税理士の手数料よりも遥かに高い税金を追加で納める可能性も十分あります。
そうならないためにも、税理士それも相続を専門にする税理士に依頼しましょう。

税理士にも得意分野があり、いくら優秀だとか知り合いだからだとかで専門外の税理士を雇うと間違った取り扱いをする確率が上がります。
あなたが大リーグの監督でもイチロー選手をピッチャーで起用しないのと同じ理屈です。

税理士に対する報酬は特に定めがなく、税理士がそれぞれ自分で決めます。
とはいえ、多くの税理士は旧税理士業務報酬規定を参考に報酬を定めている税理士が多いです。
これによると贈与税の場合は最低3.5万円からで金額によっては30万円を越える場合もあります。

とにかく、依頼する前に直接税理士に報酬の金額を尋ねてみることです。

生前贈与を上手に活用してしっかり節税しよう

生前贈与について今まであまり考えてこなかったかもしれませんが、条件さえ整えば、大きな節税効果をもたらす方法であることは理解いただけたことでしょう。
子供がこれから出産を控えている、孫の教育資金が必要だ。
子供や孫が家を持つことを検討しているなど、子や孫の人生のイベントにおいて贈与の特例は多くあります。

ですので、これらの特例を上手に利用しつつ、できるだけ早く財産を贈与し始めることが、節税の最大のポイントでしょう。

相続はその金額が大きければ大きいほど遺族を混乱させる可能性が高くなります。
そんな状況をあなたが望むわけはないでしょうから、相続人のためにも計画的に生前贈与を利用して相続における負担を軽減させるよう努めるべきではないでしょうか。