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臨床心理士の年収はどのくらいか。新卒者や転職組のための職業ガイド

臨床心理士は非常勤の方が多い

臨床心理士というと、一般的には安定した職業のようにみえるかもしれませんが、実際の働き方としては非常勤というかたちが多いのが現状です。
非常勤というと、生活が安定しない、というイメージがあるかもしれませんが、実際にはどのくらいの収入が期待できるのでしょうか。

掛け持ちや社会保険の有無についても具体的な事例とともにお伝えしますので、これから臨床心理士を目指すという方はぜひとも参考になさってください。

活躍の場が多い臨床心理士

私たちの身近なところで、臨床心理士は暮らしをサポートしてくれています。

臨床心理士の活躍の場所

一般的には、臨床心理士よりも心理カウンセラーのほうが呼び方としてなじみがあるかもしれません。
実は、心理カウンセラーはあくまで一般的な呼称であり、あらたまった呼び方としては臨床心理士のほうが正式ということになります。
臨床心理士の勤め先としては、学校、一般企業、福祉施設、少年鑑別所などがあります。
それぞれの職場によって呼び方が異なり、学校ではスクールカウンセラー、一般企業では産業カウンセラーなどとよばれています。

どの職場でも臨床心理士にもとめられる役割は同じで、心を病んだ人のメンタル面でのケアを継続的に行い、その人が心身ともに健康な状態で日常生活に復帰することができるようなアプローチを繰り返すことが大きな職務といわれています。

どこかの組織に所属するのではなく、個人でメンタルクリニックを開業している臨床心理士も多く、今後もその職域はさらに広がっていくことが予想されています。

職場を掛け持ちする方が多い

臨床心理士の多くはいわゆるフリーランスの立場であり、いくつかの職場を掛け持ちすることで安定した収入を確保しています。

フリーランス同士であれば職場を掛け持ちしたほうがトータルの年収は上がり、「より多く稼げる」ということになります。
ただし、フリーランスの場合、基本的に固定給はありませんから期間内にケアした患者の人数や治療時間によって報酬が左右されることになり、実力や知名度などによって収入の安定度が大きく左右されるかたちとなります。

また、フリーランスである以上、社会保険などが個人加入である場合も多く、いざ失業した場合の収入保障の面で不安がある、という声も聞かれます。
安定した収入を得たいのであればやはり、門戸はせまくても正規雇用の道を探ったほうが長いスパンでみてもお得かもしれません。

臨床心理士の平均年収

知りたくてもなかなか聞けない臨床心理士の年収事情についてくわしく掘り下げます。

臨床心理士の年収には幅がある

臨床心理士にかぎらず、実力や知名度次第で依頼のペースが変動する職種ではどうしても年収に個人差が出てしまいます。
マスメディアに取り上げられる機会が多く、著書をコンスタントに出版しているような人の場合は収入も高くなり、臨床心理士として1,000万円以上の年収を得られるケースもありますが、かけだしのフリーランスだと仕事の依頼もそれほどないため、年収が200万円以下、ということもめずらしくはありません。

平均すると300万円から500万円

1,000万円超えから200万円まで、年収の振り幅が大きい臨床心理士という職種ですが、平均すると300万円から500万円というのが一般的な年収のようです。

月収に直すとおよそ30万円から40万円程度ということになりますから、所属先が安定してコンスタントに依頼をこなせるようになれば、平均的なサラリーマンぐらいの生活レベルは維持できるといわれています。

公務員として働ければ安定

すべての臨床心理士が公務員というわけではありませんが、公務員という立場になれば収入面でも安定しますし、厚生年金などの公的保険も完備されているため、万一のケガや病気の場合でも収入源が絶たれる心配はありません。

臨床心理士もゆくゆくは国家資格になるといわれており、心理士が仮に公務員としてみなされるようになれば、社会的地位も向上し、「確実に食べていける職業」として認識されるかもしれません。

非常勤だとボーナスはない

全国の臨床心理士のうち、半数以上は非常勤という雇用形態となっています。
非常勤と常勤の大きな違いはボーナスがないことで、なおかつ非常勤だと基本的に時給制のため出勤した分だけ、働いた分だけ収入が得られるという仕組みになっています。

よほど有名にならないかぎり時給も低くおさえられるため、若いうちはひとつの職場だけで生計を立てることはきわめて難しく、複数の職場を掛け持ちしてようやく暮らしを成り立たせている人も少なくありません。

認められれば年収も上がる

たとえ非常勤の身分であっても、臨床心理士として高収入を得ることは可能です。
臨床心理士は、いってみれば個人事業主であり、「この人には需要がある」と判断されれば需要と供給の関係で自然と時給が上がり、時間単位での収入が格段に変わっていきます。

そのためには、ただじっと依頼を待っているのではなく、若手のうちから個人開業にむけた人脈づくりや情報収集をつづけたり、カウンセリングの基礎理論を日々勉強してスキルを磨いたりと、自分自身の需要を高めるための努力をつづけておきましょう。

臨床心理士として年収1000万円を狙うには

これから臨床心理士を目指す人にとって、収入面での安定性は大切なチェックポイントです。

施設などに勤務しているだけでは不可能

臨床心理士になるにはいくつかのパターンがありますが、心理学部などがある大学で基礎理論を学び、指導教授に師事してスキルを習得し、教授の紹介によって施設や病院などの配属先で数年間勤務する、というのが一般的な流れです。

もちろん、施設勤務の臨床心理士も社会にとってなくてはならない存在ですが、収入面でいうと施設勤務のうちはやはり一定の限界があり、複数の施設を掛け持ちしなければ生活が成り立たない、というのが現状です。

若いうちは施設で経験を積み、中堅やベテランになったら個人開業も選択肢として視野に入れていく、というのが理想のライフデザインといわれています。

有名大学の教授を目指す

少々下世話な話になりますが、臨床心理士も実のところはブランドやネームバリューがものをいう世界です。
有名大学の教授に就任すれば、それだけで「あの人は心理士として実力がある」とみられるようになり、理論や発言にも説得力が出てきます。

大学教授になると講演会やセミナーの依頼がコンスタントに舞い込むようになり、本来の業務以外でも、そちらのほうでもある程度の収入が得られるようになり、年収も自然と上向くことになります。

独立開業を目指す

臨床心理士にとって個人開業はひとつの憧れです。
個人のメンタルクリニックをもつことができれば日々の依頼も安定しますし、施設勤務時代よりも収入面でもはるかに向上します。

個人開業にあたって大切なのは、何といっても人脈づくりです。
実力も知名度もない臨床心理士がいきなり開業したところで、すぐにはクライアントはつきません。
開業前から綿密な計画を立て、懇意にしているクライアントに何人か声をかけるかたちで人脈を広げ、開業後の依頼に結びつけるのがスムーズな流れです。

テレビ出演できれば収入がグンと上がる

最近は、メンタルヘルスが一種のブームのようになり、テレビでも臨床心理士の顔をみる機会が増えてきました。
メディアへの露出は臨床心理士として高収入を得るための近道であり、コメンテーターというかたちでレギュラー出演することができればそれだけで年収が跳ね上がります。

ただ、メディアへ露出するためにはそれ相応の魅力が必要で、見ためがきれい、トーク力がある、理論に説得力がある、などの個性をアピールしなければテレビ出演は難しいと考えておいたほうがいいでしょう。

本を出版する

テレビ出演から本の執筆、あるいはその逆というパターンは、臨床心理士にかぎらずどの職種でもよくみかける流れです。

本の種類にもよりますが、堅苦しい専門書よりも雑学的要素を盛り込んだハウツー本の類のほうが売れる傾向にありますし、いわゆる新書は時流に乗ったテーマを扱っているため一般レベルでの関心をひきやすく、注目度も高まるといわれています。

臨床心理士は出費も多い

テレビに出て本が売れればそれで安泰かというと、臨床心理士の世界はそれほど甘くはありません。

資格維持にお金がかかる

臨床心理士は一生ものの資格ではなく、二年に一度の資格更新が義務づけられています。
資格更新に際しては、その都度一定の受講料がかかり、なおかつその時々に合わせてテキストを購入しなくてはならないため、まとまった出費になります。

もちろん、資格の更新を怠ると臨床心理士としての仕事を失ってしまうばかりか、それまでにこつこつと積み重ねた信用を一気に失墜させてしまうため、更新時期をつねにチェックしておくようにしましょう。

学会や研修への参加

クライアントのカウンセリングだけが臨床心理士の仕事ではありません。
心理士としてのスキルと知識をつねにアップデートしていくためには、学会や研修への参加が必須条件であり、それらもまた心理士としての欠かせない業務であるといえます。

学会や研修では異なる理論を専門とする心理士との交流も広がるため、自分自身の知識も深まりますし、また、将来の開業を見据えた人脈づくりにも役立ちます。

臨床心理士の将来性

臨床心理士は今もなお、時代に合わせて変化をつづけています。

公認心理師という新しい資格

心理職で初めての国家資格として、平成30年度より「公認心理師」という資格が制定されます。
取得にあたっては国家試験に合格することが必要で、四年制大学を卒業して大学院へ行くか、実務経験を一定年数積むか、あるいはそれらに相当する知識と技能を認定されることで公認心理師の受検資格が得られます。

資格の信用度も上がる

公認心理師が資格として新設されても、現在の臨床心理士の資格が廃止されるわけではありません。
すでに臨床心理士として仕事をしている方はあらためて公認心理師にならなくても資格更新まではそのままの肩書きで働きつづけられますが、両方の資格を取得することで信用度が上がり、心理士としての需要も高まるため、両方の資格を取得するパターンが主流になるとみられています。

臨床心理士はやりがいがあり今後も注目の資格

臨床心理士は心が傷ついた方のメンタルケアを行う非常に尊い職業です。
日本国内でも少しずつメンタルヘルスの重要性が認識されるようになり、「心のケア」という言葉の意味が正しく理解されるようになってきています。
今後、臨床心理士の社会的地位がさらに高まれば収入的にも安定し、大学から心理士を一生の職業として志す若者も増え、理想の職種としてみられるようになっていくでしょう。