UKANO家計のクリニック

年収と所得税の関係を学び、自分の年収に対する所得税を把握しよう

所得税が発生する年収は

個人の年収に課せられる所得税については、年収に応じて所得税も変わります。
通常、サラリーマンや会社勤めをしている場合、年末調整という仕組みを通じて税金計算が完結しているため、意識していない人も多いでしょう。
年収と所得税の基本ルールを理解し、所得税が発生する年収や、自分の年収にかかる所得税の計算方法を学びましょう。

年収と所得税の仕組み

高額年収の人ほど所得税率が高い

税金には、高額年収のように所得の高い人ほど税金が高くなる「累進課税制度」と、所得が低い人ほど税金の負担率が高くなる「逆進税制度」のように、大きく分けて2つに分類することができます。
例えば、消費税は所得に関係なく、税金を一律に納めるため所得が低い人ほど税金の負担が増えます。
この制度を逆進税制度と呼びます。

しかし、税金がすべて逆進税の制度の場合、高額年収や富裕層に対して有利に働き、低所得者には不利になってしまうため、貧富の差が大きくなると考えられます。
このことから、日本では累進課税制度を導入し、高額年収の人は所得に応じて払う税金が多くなる仕組みをとっています。

累進課税制度を導入することにより、所得格差や不況時の税負担の緩和、高所得家系の世襲の防止などが挙げられます。
高額年収の人は支払う税金も増えますが、低所得者は所得に応じて、税金の負担も少なくて済みます。
さらに、その税金によって、年金や医療などの社会保障、教育・交通・警察など公共サービスの提供がなされ、国民の生活水準を平準化しています。

所得税率の最高は45%

2015年の税制が改正され、2018年の所得税の最高税率は45%となっています。
現代の日本において、平均年収は約300万円~500万円と言われており、年収が1,000万円を超えると高収入というイメージがあります。
それでは、年収5,000万円の手取り額のイメージはどうでしょうか。
日本では、富の再配分という観点から累進課税制度を導入しているため、所得が多い場合はそれに伴うよう、税金も多く支払う必要があります。

そのため、年収500万円の場合の所得税率が20%であるのに対して、年収4,000万円を超える場合、所得税率は45%に跳ね上がります。
実際の手取り額については、年収5,000万円の手取り額を概算すると、2,500万円以下となってしまい、実際は年収の半分以下しか貰えません。
現状の税制では、所得税45%、住民税10%、その他に社会保険料などが控除されるため、年収が5,000万円でも実際の手取りはその半分以下になります。

103万円までは課税されない

所得税とは、収入にかかる金額であり、年間の収入からさまざまな控除を差し引いた課税対象所得に対し、税率をその額に応じてかけたものが所得税額です。
アルバイトやパートで働いている場合も、自分の所得に応じて税金を払う必要があります。
控除にはいろいろな種類があり、給与所得控除である65万円と、基礎控除である38万円が全ての人に適用されます。

課税対象所得は、「給与所得控除:65万円」と「基礎控除:38万円」の合計103万円を、年収から引いた額になります。
そのため、年収103万円以下、月収8万8000円未満の場合、全額控除となるため所得税を払う必要はありません。
ただし、年収が103万円を超えると、アルバイトやパートであっても所得税を支払う必要があるので、注意しましょう。

年収から所得税を計算する方法

収入ごとの所得税率を調べる

通常所得税とは、所得に対して課税されるため、会社から支払われる給与はイコール所得ではありません。
所得については、「所得=給与-控除」で表すことができ、同じ給与でも利用できる控除によって所得も変わってきます。
例えば、結婚している場合は配偶者控除、子供がいる場合は扶養控除を利用することができます。
また、基礎控除のように全ての人に等しく適用される控除もあります。

先に述べたように、年収が103万円以下の場合は全額控除となり、所得税を支払う必要はありません。
それでは、年収が103万円を超える場合の所得税率はどうなるのか見てみましょう。

● 所得金額が195万円以下の場合、税率は5%、控除額は0円
● 所得金額が195万円~330万円の場合、税率は10%、控除額は9万7,500円
● 所得金額が330万円~695万円の場合、税率は20%、控除額は42万7,500円
● 所得金額が695万円~900万円の場合、税率は23%、控除額は63万6,000円
● 所得金額が900万円~1,800万円の場合、税率は33%、控除額は1,053万6,000円
● 所得金額が1,800万円~4,000万円の場合、税率は40%、控除額は2,079万6,000円
● 所得金額が4,000万円超の場合、税率は45%、控除額は4,079万6,000円

所得が増えるごとに税率が増えていくことが分かります。
高収入の人に多くの税金を払わせることで、所得の再分配を実現することが所得税の役割の一つでもあります。

計算式に当てはめる

給与所得の計算方法は、次の計算式を使って算出することができます。

● 給与所得-所得控除(基礎控除38万円)=課税所得金額
● 課税対象所得金額×所得税率=所得金額
● 所得金額-税額控除=確定所得金額
また、給与所得の金額は、「収入金額(源泉徴収される前の金額)-給与所得控除額=給与所得の金額」のように表すことができ、この給与所得控除額については、給与等の収入金額に応じて算出できます。
給与所得控除額を出す場合、 給与所得の源泉徴収票の支払金額が年収180万円以下のケースは、収入に40%を掛けて算出します。
また、年収65万円以下のケースは、全額が給与所得控除額となり、年収によって違いがあります。

年収ごとの基礎控除額を引く

基礎控除とは、所得控除の中でも無条件に全ての納税者が差し引くことのできる所得控除を指します。
人的控除でもあり、確定申告や年末調整での所得税額を計算する際、総所得金額などから差し引くことができます。
基礎控除の控除額は、納税者に一律で38万円です。

例えば、給与所得が103万円以下の場合は、基礎控除(38万円)+給与所得控除(最低65万円)=103万円となるため、給与所得が103万円以下の場合、所得税額は0円となります。

課税所得については、収入から必要経費(給与所得控除)を差し引いて、所得を計算します。
ただし、この所得には税率が課せられず、次に所得控除を差し引きます。
さらに、課税所得に税率が掛けられ、税額が算出されます。

● 収入-必要経費(給与所得控除)=所得
● 所得-所得控除(基礎控除)=課税所得

年収別の所得税早見表

年収別の所得税はいくらになるのか、計算方法もあわせてご紹介します。
今回は、社会保険料は除外して計算していますが、本来は社会保険料控除もありますので、実際にはもう少し安くなります。

300万円で77,000円

それでは、給与総額が300万円の場合の所得税額を計算します。
まず始めに、給与所得控除額を算出します。
300万円×30%+18万円=108万円となり、給与所得控除金額は108万円であることが分かります。
さらに、300万円から108万円を差し引くと、給与所得金額である192万円が算出されます。
確定所得金額=給与所得-基礎控除で計算するため、192万円-38万円=154万円となり、確定所得金額は154万円です。

ここから、確定所得金額に所得税率を掛けます。
154万円の場合、課税対象が195万円以下になるため、所得税率は5%、控除額はありません。
ただし、195万円を超え、330万円以下の場合、所得税率10%、控除額は97,500円と変わります。
154万円の場合、154万円に5%を掛け、確定所得税77,000円が算出されます。

500万円で21万500円

給与総額が500万円の場合の所得税額を計算します。
まず始めに、給与所得控除額を算出します。
500万円×20%+54万円=154万円となり、給与所得控除金額は154万円であることが分かります。
さらに、500万円から154万円を差し引き、給与所得金額である346万円を算出します。
確定所得金額=給与所得-基礎控除で計算するため、346万円-38万円=308万円となり、確定所得金額は326万円です。

ここから、確定所得金額に所得税率を掛けます。
308万円の場合、課税対象が330万円以下になるため、所得税率10%、控除額は97,500円です。
ただし、330万円を超え、695万円以下の場合、所得税率20%、控除額は42万7500円と変わります。
308万円の場合、308万円に10%を掛け、97,500円を引き、確定所得税21万500円が算出されます。

800万円で69万6,500円

給与総額が800万円の場合の所得税額を計算します。
まず始めに、給与所得控除額を算出します。
800万円×10%+120万円=200万円となり、給与所得控除金額は200万円であることが分かります。
さらに、800万円から200万円を差し引き、給与所得金額である600万円を算出します。
確定所得金額=給与所得-基礎控除で計算するため、600万円-38万円=562万円となり、確定所得金額は562万円です。

ここから、確定所得金額に所得税率を掛けます。
562万円の場合、課税対象が695万円以下になるため、所得税率20%、控除額は42万7,500円です。
ただし、695万円を超え、900万円以下の場合、所得税率23%、控除額は63万6,000円と変わります。
562万円の場合、562万円に20%を掛け、42万7,500円を引き、確定所得税69万6,500円が算出されます。

1,000万円で107万600円

給与総額が1,000万円の場合の所得税額を計算します。
まず始めに、給与所得控除額を算出します。
1,000万円×10%+120万円=220万円となり、給与所得控除金額は220万円であることが分かります。
さらに、1,000万円から220万円を差し引き、給与所得金額である780万円を算出します。
確定所得金額=給与所得-基礎控除で計算するため、780万円-38万円=742万円となり、確定所得金額は742万円です。

ここから、確定所得金額に所得税率を掛けます。
742万円の場合、課税対象が900万円以下になるため、所得税率23%、控除額は63万6,000円です。
ただし、900万円を超え、1,800万円以下の場合、所得税率33%、控除額153万6,000円と変わります。
742万円の場合、742万円に23%を掛け、63万6,000円を引き、確定所得税107万600円が算出されます。

年収と所得税の関係を理解しておこう

会社勤めをしていると、自分の給与に年間どのくらい税金がかかっているかや、所得税をいくら払っているかか、気にしない人が多いはず。
日本では、超過累進税率を導入しているため、年収に応じて所得税率が変わります。
自分の年収に対して、どのくらいの所得税が支払われているのかイメージできるように、年収と所得税の関係をしっかりと理解できるようにしましょう。