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年収480万円の人の実際の生活を知りたい
年収が480万円の人の生活水準はどのようなものなのでしょうか。
平成29年9月に国税庁から発表された民間給与実態統計調査によると、日本人の平均年収は422万円です。
年収480万円というのは、この数字と比較すれば高いですから、ある程度、余裕のある生活を送ることができるのではないかと考えられます。
しかし調べてみると、生活していくには厳しいとか、これだけあれば十分といった様々な声が聞かれます。
そういった声があがる背景には、独身か既婚か、扶養家族が何人いるのか、といったその人が置かれている状況による違いがあるようです。
ここでは、年収480万円の人の生活の実態についてご紹介いたします。
将来の生活設計を考えるひとつの尺度としてお役に立てていただければ幸いです。
年収480万の人の割合
日本社会で年収480万円の人が占める割合は、約20%。
5人に1人がこの年収で生活をしていることとなります。
これらの人たちの生活スタイルは一様ではありません。
それぞれにものの見方も考え方も違うのですから、お金の使い方も当然違います。
そのことによって、楽であるとか、厳しいとかいった生活実感も異なってくるかもしれません。
しかし、ここではそのような個人的な事情は別にして、生活していくために必要な支出を基にした生活実態についてみていくこととします。
年収480万の人の手取り額と生活基準
年収が480万円ある人の実際の手取り額はいくらになるのでしょうか。
また、それによる生活基準はどうでしょうか。
生活の基準を計る尺度として考えられるのは、たとえば、奥さんが専業主婦であっても生活が成り立つのかどうか、という点です。
生活をしていくうえでは、税金、社会保険料といった給与から引かれるもののほかに、電気、ガス、水道といった公共料金や、パソコン、スマホの利用に必要な通信費といった支払いがでてきます。
そのほかに、住宅ローン、子どもの教育費など、お金を必要とすることはいくらでもあげられます。
それらを支払ってなおかつ、奥さんは専業主婦という暮らしが成立するのであればよいのですが、そうでなければ生活の実感としては厳しいということになるでしょう。
実際の手取り額
年収480万円から税金と社会保険料を差し引いた手取り額は、およそ380万円といわれています。
差し引かれる税金の額は扶養家族がいる場合や居住地域によっても変わりますから、一概にはいえないのですが、社会保険料と合わせて約100万円となるからです。
この手取り額380万円から生活費を引いた金額がいくらになるのかによって生活基準も決まってきます。
生活レベルはどのくらい?
平成27年12月16日に総務省から発表された「平成26年全国消費実態調査」には、家族が二人以上の勤労者世帯の一ヵ月の家計収支が掲載されています。
年収480万円の世帯に関する調査ではないため、正確ではないのですが、ひとつの目安として見てみますと次のことがわかります。
「平成26年全国消費実態調査」によると食費、光熱費、医療費、さらには教養娯楽費などを含めた一ヵ月の消費支出は、313,747円です。
一方で、年収480万円の場合の手取り額はおよそ380万円。
この金額を12分割すると約316,000円となります。
この数字と「平成26年全国消費実態調査」の一ヵ月の消費支出との差額は次の通りとなります。
316,000円ー313,747円=2,253円
差額は、2,253円となり、家計収支は黒字ですから、計算上は生活は成り立つといっていいでしょう。
贅沢はできませんが、奥さんが専業主婦であっても、家族旅行や個人的な趣味を楽しんだりして暮らしていくことはできるレベルです。
月にどのくらい貯金できるのか
金融経済団体や学識経験者で構成される金融広報中央委員会が発表した平成28年の金融資産の状況に関するデータによると、次のことがわかります。
年収が300万円から500万円未満で、二人以上の世帯における金融資産の保有者は全体の70,2パーセント。
年収が300万円から500万円未満で、二人以上の世帯におけるもっとも多い貯蓄割合は10パーセントから15パーセント。
この数値は全体の20.7パーセントにあたります。
年収が300万円から500万円未満で、二人以上の世帯におけるもっとも多い貯蓄金額は500万円から700万円。
この数値は全体の12.4パーセントにあたります。
これらのデータから、年収480万円の世帯では、金融資産を保有している家庭は7割にのぼることがわかります。
また、年収のうち、1割から1割5分の割合を貯蓄に回している家庭が多いこともわかります。
年収480万円の手取り額は380万円。
そのうち、1割を貯蓄に回すことできるのであれば、年間38万円の貯金ができるわけです。
そのうえで、貯蓄金額についてみれば500万円から700万円がもっとも多くなっていますから、収入のうち、貯蓄に回すことができる割合は意外と高いのかもしれません。
総務省が発表した「平成26年全国消費実態調査」は年収ごとの調査結果ではなく、勤労者で二人以上の世帯の平均値を示したものです。
この点で金融広報中央委員会のデータとの差
はあります。
しかし、生活していくうえで必要な支出をまかないつつ、貯金もできることは客観的に見て取れます。
その意味で年収480万円というのは安心して生活をしていくことができるレベルといってよいでしょう。
年収480万を目指せる職業
厚生労働省が平成30年2月28日に発表した平成29年賃金構造基本統計調査によると、30代から40代までの年齢で年収480万円を超す業種は、金融業、保険業、情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業となっています。
家賃の目安
年収480万円の家庭における家賃の目安としては、いくらが妥当なのでしょうか。
以前は年収の3分の1が相場といわれていました。
しかし、バブル経済崩壊のあと、長期に渡る不況が続くなか、現在では年収の4分の1という額が相場といわれるようになっています。
気を付けなければならないのは、ここでいっている年収は手取り年収であることです。
年収480万円でいうなら、380万円の手取りについて、4分の1が家賃の相場になるわけです。
計算すると年間で95万円、月に直すと約7万9000円。
しかし、この金額では子どもがいる世帯が暮らせる広さのマンションに住むのは難しいかもしれません。
これに対して、手取り年収の3分の1を目安とした場合には、月に直して約11万円となります。
こちらであればある程度の広さのあるマンションを確保することはできる可能性があります。
他に必要な支出額がいくらになるのかを検討しつつ、手取り年収の3分の1もしくはその少し上が家賃の目安になっていると考えるのが現実的ではないでしょうか。
年収480万の人の税金
税金は大きく住民税、所得税の二つに分けられます。
また、扶養家族の有無によって税額が変わります。
単身者も既婚者も同じ額の所得税を納めなければならないとすると、扶養家族がいて、その分支出も多い既婚者にとっては不利になります。
そのため、扶養者のいる世帯に対しては税金を少なくする扶養控除が認められています。
このことによって、同じ年収でも納めなければならない税金は違ってくるのです。
そこで、年収480万円の世帯が支払う税金はいくらになるのか、計算してみました。
住民税
住民税は、前年の所得金額に対して課税される所得割と所得金額に関わらず課税される均等割の二つを足した金額となります。
均等割は5,000円とされていますが、所得割については年収から給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除を引いた課税対象額に10パーセントの税率を乗じ、その値から調整控除2,500円を引いて計算します。
年収480万円の場合の単身世帯の住民税を、給与所得控除を150万円、社会保険料控除を69万3000円、基礎控除を33万円として計算すると次の通りとなります。
480万円ー(150万円+69万3000円+33万円)=227万7000円(課税対象額)
227万7000円×10パーセント(税率)ー2,500円(調整控除額)=230,200円
この金額に均等割を足します。
230,200円+5,000円=235,200円
奥さんと17歳の子どもの扶養家族がいる場合、住民税は次の通りとなります。
配偶者控除:33万円 扶養控除:33万円 合計:66万円
227万7000円(課税対象額)ー66万円=161万7000円
161万7000円×10パーセント(税率)ー2500円(調整控除額)=158,500円
158,500円+5,000円=163,500円
単身世帯との差額
235,200円ー163,500円=71,700円
扶養家族がいる場合といない場合とではかなり差があることがわかります。
所得税
所得税の税額は、年収から給与所得額、社会保険料、基礎控除を引いて算出した課税対象額に税率を乗じ、そこから決められた控除額を引いて求められます。
しかし、住民税と同様、扶養家族がいる場合に扶養控除が認められており、その金額によって納める税金が変わってきます。
単身世帯と扶養家族がいる世帯との違いを計算すると次の通りとなります。
単身世帯の場合
給与所得控除:150万円 社会保険料控除:69万3000円 基礎控除:38万円
480万円ー(150万円+69万3000円+38万円)=222万7000円(課税対象額)
222万7000円×10パーセント(税率)ー97,500円=125,000円
扶養家族がいる世帯
配偶者控除:38万円 扶養控除:33万円 合計:71万円
222万7000円(課税対象額)ー71万円=151万7000円
151万7000円×5パーセント(税率)=75,850円(課税対象額が195万円以下の場合基礎控除はありません)
単身世帯との差額
125,000円ー75,850円=49,150円
住民税同様、その差は大きいことがわかります。
ふるさと納税の上限額
ふるさと納税をすると、納税額から2,000円を引いた残りの額が、所得税と住民税から控除されます。
しかし、この金額には上限が定められており、その部分を超えた金額については控除の対象とはなりません。
控除の対象となる金額は、家族構成と年収によって違っています。
総務省のふるさと納税ポータルサイトによると、年収を475万円とした場合、控除できる上限額は単身世帯は56,000円、配偶者と高校生の子どもがひとりの世帯は36,000円となります。
住民税や所得税とは違って、単身世帯のほうが有利になっています。
年収480万の社会保険料と年金
年収480万円の人の社会保険料の額は、全国健康保険協会によると、平成29年9月分から、社会保険料算定の基準となる報酬月額が395,000円から425,000円の場合、年間693,960円となっています。
この数値は健康保険料と厚生年金保険料とを合わせた額で、そのうち、厚生年金保険の保険料は、日本年金機構によると、年間で450,180円です。
年収480万の人の住宅ローンってどのくらい?
住宅ローンの返済を考える場合に重要となるのが、返済負担率という考え方です。
簡単にいうと、年収のなかで住宅ローンも含めたすべての負債の割合がどれだけあるのか、ということです。
年収に対して負債の割合が大きければ、家計は圧迫されますので、割合が小さいほうがよいわけです。
通常は年収の25パーセント以内であれば良好とされ、最大でも40パーセント以内に収めるべきといわれています。
年収480万円の場合、返済負担率を25パーセントに収めるためには、いくらまでローンを組むことができるのか計算してみましょう。
返済負担率は年間の返済額を年収で割り、それに100を乗じて得られます。
毎月の返済額を10万円とすると
10万円×12=120万円(年間返済額)
120万円÷480万円×100=25パーセント(返済負担率)
年収480万円の場合、住宅ローンは10万円に抑えるのがベストであるといえます。
しかし、住宅ローンは用意できる頭金によって左右されるますから、現実には返済負担率が30パーセントという世帯が多いかもしれません。
この場合には毎月の返済額は12万円となります。
単身者と既婚者では生活が大きく変わる
年収480万円の家庭の生活水準や必要な費用などについてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
単身者と既婚者では、特に税金についてかなりの差があることに驚かれた方もいるでしょう。
もっとも、使える生活費については単身者のほうが自由度が高いのですから、その分の負担は仕方のないことかもしれません。
また、消費支出に関する平均的なデータと実際の生活実態には差があります。
既婚者で奥さんが専業主婦をしている家庭は、データ上では余裕があるように見えますが、単身者と違って生活費の自由度が低いのですから、様々な工夫によって暮らしを支えているのが実態なのでしょう。