転職した人の保険証切替中の受診について
より豊かな生活のために転職し新たな生活を踏みだそうとしているミドルな女性である貴女。
しかしそんなときだからこそ、その環境の変化から体調を崩してしまうことがあります。
ところが、これまで使用していた保険証は退職日をもって失効しています。
健康保険を切り替えている間は手元に保険証がありません。
新しい保険証はいつ届くのか、届くまでの間に医療機関を受診したら医療費は全額負担しなければならないのか。
余計な支出を防ぐためにも、そういった疑問や不安をここで解消しておきましょう。
転職して保険証の発行までの期間
健康保険の切り替え後、新しい保険証がいつ頃届くか。
目安となる期間すら知らない状態は不安は尽きません。
どのくらい手続きにかかるものなのでしょうか。
保険証の発行は郵送が主で約1~2週間
健康保険の加入手続き、および保険証の受け取りは基本的に郵送です。
前職の退職日翌日を入社日として転職先で働き始めているのであれば、加入手続きは転職先の会社経由で行います。
転職までに期間が空く場合は、自分で健康保険の切り替え手続きを行います。
離職中に自分で手続きを行う場合、健康保険は国民保険に変更するか、社会保険を任意継続するかを選択することになりますが、いずれにしても加入手続きの書類を発送後、保険証が手元に届くまでには約1週間、遅くても2週間程度の期間がかかります。
保険事務所に直接行けるなら翌日には発行
社会保険には、厚生労働省所管の全国健康保険協会(略称は協会けんぽ)と民間の企業などが運営する各種健康保険組合があります。
手続きを行う保険窓口となる保険事務所の場所はそれぞれ組合によりますが、協会けんぽは各都道府県の支部がこれにあたります。
自分で加入手続きをしており、保険事務所が直接行ける距離にあるのであれば、窓口で早期受取りの希望を伝えることによって翌日には発行してもらうことが可能です。
春などの手続きが混む時期は10日~2週間
注意しておきたいのが新社会人が多く就職する春など、保険証発行の繁忙期となる時期はこの限りではない、ということ。
数多くの件数を処理している関係上、直接窓口で手続きしても翌日発行は難しい可能性があります。
また郵送の場合は、到着まで10日~2週間を見込んだ方が良いでしょう。
なお、2週間を過ぎても保険証が届かない場合は、事務処理の不備などで手続きが止まっている可能性もありますので、保険事務所へ問い合わせてみましょう。
保険証手続き中の受診対応について
これまでの生活スタイルが変わりますから、注意していても体調を崩すことはあります。
でも基本的に保険証がなければ医療費は全額負担です。
保険証が手元にない期間は、どうすればよいのでしょうか。
手続き中も保険には加入しているので受診できる
保険証が手元に届くまで医療機関を受診できないかといえば、そうではありません。
保険証が手元にないだけで、保険には加入しています。
無保険ではありません。
また治療中のケガや病気については、事前に届出ることで退職後も継続して保険の適用を受けることができます。
手続き中の証明書を発行してもらう
通常、保険証が無ければ医療機関側に社会保険に加入していることを証明できません。
そこで保険証の代わって、手続き中であることを証明する「健康保険被保険者資格証明書」という書類があります。
保険事務所、あるいは既に転職後であれば勤務先の社会保険担当へ依頼すれば発行してもらえます。
保険証は手続き中と伝えて3割負担で受診する
健康保険被保険者資格証明書は保険証の代わりです。
会計窓口で手続き中であることを伝えて証明書を提示すれば、保険証を持って医療機関を受診したときと同様に、手続き中でも医療費の支払いは3割負担ですみます。
証明書をあらかじめ発行してもらう手間はありますが、医療費の全額支払いをせずにすむため、離職中で一度に支払うのが厳しいときには助けになることでしょう。
ただし、保険証が手元に届いたら再度医療機関に足を運び、会計窓口で保険証を提示・確認してもらう必要がありますのでお忘れなく。
10割で受診して後日精算してもらう方法
では健康保険被保険者資格証明書を請求していなかったら3割負担で受診できないのかといえば、そうではありません。
ただ、保険証やその代替となる証明書がないので、一旦10割(全額)負担で支払う必要がある、というだけです。
これは扶養者も同様です。
医療機関で精算する
保険証が手元に届いたら医療機関の会計窓口へ行き、受診時の領収書(レシート)と保険証を持って精算すれば、7割分の払戻しを受けることが出来ます。
ただし医療機関によっては払戻しの有効期限を設定しているところもあるので、事前に期限の確認は必要です。
保健事務所で精算する
医療機関での払戻しが困難な場合、あるいは医療機関で精算できる期限を過ぎてしまった場合は、保険事務所に「健康保険療養費支給申請書」を提出することでも精算可能です。
申請期限は、医療費を支払った日の翌日から2年以内になります。
保険証が届いたら忘れないうちに申請しましょう。
転職するときの保険の変更について
保険証は離職する際に返却する
退職するとそれまで加入していた健康保険の加入資格を失います。
保険証は、持っていても退職日翌日には失効してしまいますので、離職する際に会社経由で提出・返却します。
忘れた場合は、後日保険事務所へ郵送することでも返却できます。
誤って失効した保険証を使用すると…
後日、失効した健康保険の保険事務所から返還請求を受けることになります。
その際は一旦健康保険の負担分(7割)を立て替えて支払った後、加入している健康保険へ療養費の申請を改めて行わなければならなくなり、非常に手間がかかります。
双方の保険事務所にも迷惑をかけることになります。
失効した保険証は速やかに返却しましょう。
前職で社会保険離脱証明書をもらう
健康保険は多重加入を回避するため、離脱・喪失を証明する書類がなければ次の健康保険に加入することができません。
そこで保険事務所に、社会保険離脱証明書(健康保険資格喪失証明書)を発行してもらう必要があります。
これは退職の際、会社から保険事務所に「健康保険資格喪失届」を提出することでもらうことができます。
なお届出の提出期限は資格喪失日(退職日翌日)から5日以内ですが、早く健康保険の切り替えを行いたい場合は、事前に会社の担当者へ話しておくとスムーズです。
離職後すぐに転職先へ就職するのであれば、この証明書を転職先の会社に提出することで新しい社会保険への加入手続きは完了です。
1日でも離職期間がある場合は以下のいずれかの健康保険の切り替えが必要です。
加入手続きには各種加入の申請書とこの証明書の提出が必要になります。
ケース1.これまでの社会保険を任意継続
退職日以前に継続して2カ月以上の被保険者期間があることと、退職の翌日から20日以内に任意継続の手続きしなければならないという加入条件があります。
なお、加入期間は2年間という制約があります。
2年を経過すると、国民保険へ切り替えるための手続きが必要になります。
会社の負担がなくなるため退職前の2倍の保険料になりますが、扶養の概念があるので扶養者に保険料はかかりません。
しかし、加入時期によっては二重払いのリスクがあります。
ケース2.国民保険へ加入
国民保険への加入は退職日の翌日から14日以内に手続きをする必要があります。
扶養の概念がなく、各市町村で設定された保険料を加入者数分支払う必要がありますが、保険料を二重払いするリスクはありません。
なお、この期間を過ぎ、かつ社会保険に加入しなかった場合は自動的に国民保険への加入扱いとなりますが、加入手続きをしていない期間は無保険扱いとなります。
この期間に万が一医療機関を受診すると、医療費は全額負担となり療養費の精算はできません。
ケース3.家族の扶養に入る
既に健康保険に加入している家族の扶養者となるには、年間130万円未満の収入であり、かつ被保険者の年収の1/2未満の必要があります。
扶養者がいるときは一緒に申請する
扶養者がいる場合、前職の退職とともにこちらもこれまでの健康保険から一緒に脱退になります。
扶養者を無保険にしないよう、一緒に新しい健康保険への加入手続きを申請しましょう。
また一緒に手続きをすれば、扶養者の保険証が手元に届くのもそれだけ早くなります。
子どもの保険証は給付金の受給などで必要になることがあります。
一緒に手続きせず、後から扶養者申請を提出することになればそれだけ扶養者の保険証が手元に届く期間がかかり、受給手続きができないなど、受診以外でも問題が発生するリスクが高まりますから、是非とも一緒に申請しておきましょう。
離職期間が長期になる時は国民保険へ加入
国民保険と社会保険では保険内容は変わりません。
異なるのは保険料と加入時期による二重払いのリスクです。
保険料での差があまりなく、離職期間が2年を超える長期になることが見込まれている場合は、任意継続せずに最初から国民保険へ加入するというのも、手続きの面からメリットになるかもしれません。
ただし、離職期間中に国民保険に加入していた場合、転職先の入社日をむかえたら速やかに国民保険の脱退手続きが必要です。
月末まで加入したままにすると、保険料を国民保険と社会保険の両方に払うことになる二重払いが発生します。
転職しても申請期間中は受診料は同じになる
保険証を持参しなければ医療費全額負担は原則です。
しかし、新しい健康保険に加入申請している期間については、無保険ではありません。
一時的に全額負担することになったとしても後日精算することによって、これまで通りの受診料で医療機関を受診することはできるのです。
こうした知識を持っていれば転職によって保険証が手元にない期間でも、安心してこれまで通りの負担額で医療機関を受診できますから、是非覚えておいてください。