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「FXで借金をしないために」噂以上に怖い最悪の事態を回避するには

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FXはハイリスクハイリターンな金融商品

今や、株や投資信託などの金融商品の中では、最も一般人に身近な金融商品が「FX(Foreign Exchange)」ではないでしょうか。
取引用の口座が無料で作れる会社も多く、さらには100円単位から売買できる会社もあります。
インターネット上で平日の24時間、いつでも簡単に取引できます。

低予算から始められて、空いた時間に手軽に取引できるため、普段は会社にお勤めの方や主婦の間で副業として大人気です。
近年、こういった個人投資家がこぞってFXを始めて、苦い話・甘い話を山ほど生み出しています。
「数万円が数千万円に」だとか「本業より稼げるから脱サラ」とか「億り人」とか、夢のような話ばかりです。

ただし、FXに関わるなら知っておくべきことがあります。
甘い話の裏には、必ず苦い話があるのです。
甘いほうが夢のようなら、そのぶん反対側は地獄のようだということ。
投資をするうえで、リスクを理解することは必須事項です。

FX金融商品の特性について

そもそもFXとはどういうものなのでしょう。
損益の仕組みから見ていきます。
ご存じの方も、一緒におさらいしてみてください。

FX取引での損失

FXは、どんなときに儲けが出るのでしょう。
FXといえば為替売買ですから、米ドル1ドル=100円で買って、1ドル=110円で売れば10円分の儲けです。
ほとんどの方は、これをするためにFXを始めます。
この利益を、「為替差益」といいます。

またFXでは、低金利の通貨を売って高金利の通貨を買い、通貨間の金利差で利益を得る方法があります。
こちらは「金利差益」または、「スワップポイント」といいます。

基本的にFX取引では、この2つの方法で儲けを出します。
つまり、FX取引をして損失が出るときは、これの逆のことが起こったときです。
「今の例えでは、損失と言っても10円しか出ていないし、金利差なんて微々たるものでは?」と思ったとしたら大間違いです。

FXは、取引用の口座に預けている金額(証拠金)以上の取引が行えます。
レバレッジ取引といって、FXの特性の一つです。
例えば、元手10万円で100万円の取引ができてしまいます。
この場合はレバレッジ10倍です。
現在、日本のFX会社ではレバレッジ25倍までかけられます。

レバレッジの倍率は利益の倍率、そして損失も倍率です。
利益が出たときのことばかり考えて、無理なレバレッジをかけて損失が出たときに、悲劇が起こるのです。

信用取引と現物取引は違う

投資には、信用取引と現物取引があります。
現物取引は、自分で決めた資金の範囲内で取引をすることです。
そのため、資金が0円になったら終了です。
信用取引は、資金や株を証券会社に担保として預けて、資金以上の取引をすることです。

FXは信用取引ですね。
レバレッジをかけて、少ない資金で高額の利益を出す仕組みです。
FX取引で、数万円を数百万・数千万円にしたという人たちは、こういう仕組みを上手に使ったのでしょう。

FX取引で損失が発生しにくい仕組み

取引口座のマイナスは、証券会社のマイナスになってしまいます。
マイナスの顧客だらけにならないように、証券会社もいろいろと考えています。

強制的に決済されるロスカットルール

実はFXでは、取引で負け続けたので、口座の中がマイナスになるということは、基本的には起こりません。
「信用信託は、資金以上のお金が使えるのでは?」と疑問に思われたかもしれませんね。

これは、強制ロスカットというルールによるものですが、信用信託とは別の話で、FX会社が設けているルールです。
手持ち建玉の含み損が、FX会社の定める証拠金の割合(証拠金維持率)を割ったときに、損失が証拠金を超えないよう強制的に決済されます。

FX業者からの警告(マージンコール)

強制ロスカットのラインに近づくと、FX会社からマージンコールという警告がきます。
マージンコールがきたら、やることは主に以下の3択です。

どれを選ぶかは、本人次第です。

強制ロスカットの例外

証券会社のほうで勝手に決済してくれると思うと、強制ロスカットはすごく便利な気がします。
しかし、マイナスにならないのであれば安心と、強制ロスカットに頼ってばかりもよくないのです。

為替は世界情勢などの影響を受けているので、ときどき急激に大幅な変動を起こすことがあります。
その際、強制ロスカットが追い付かずに、予定の取引値からズレた値で決済されることが、まれにあるのです。

また、自分で設定した損切ラインでも同じです。
これは、リアルタイムで値動きし、常に取引できるFXのデメリットでもあります。
そして、まれではありますが実際に起こっていることです。

FXで借金をしてしまう理由

FXで借金を作ってしまった人もいますが、なぜそうなってしまうのでしょう。
最も多いであろうFX借金までの流れを、ご説明しましょう。

急変動に強制ロスカットが追いつかない

強制ロスカットが追いつかない場合で最悪なのが、ズレて結局決済された取引値が証拠金でもまかなえない額だったときです。
非常に珍しい事例ですが、これも実際に起こっています。

近年で最も酷かったのは、2015年1月のスイスフラン暴騰ですね。
このときは、変動の勢いが激しすぎて値が付かず、クロススイスフランの通貨配信を、一旦停止する証券会社がたくさん出ました。
配信停止しているので、投資家たちは自分で決済ができませんでした。
また、あまりにも急すぎて、ロスカットも間に合っておらず、それはもうめちゃめちゃでした。
これをきっかけに、破綻したFX会社があったほどです。

もう一つ記憶に新しいのが、2016年11月のアメリカ大統領の選挙日です。
スイスフラン暴騰ほどではありませんが、このときは1日のうちでの乱高下が印象的でした。

ポジションを持ったままの間に為替が大きく動いた場合

最もあり得る場合の話ですが、ロスカットまではいかないにしろ、ポジションを建てた状態で含み損が出るとします。
ほとんどの方は、自分なりのルールにのっとって損切り決済します。

しかし、ここで損切りする決断ができないという、最初のつまずきをする人が出てきます。
とくに急な変動のときは、またすぐに戻ってくるだろうと、根拠のない理由で我慢する人が多いです。

ハイレバレッジで取引してしまう

含み損が発生しているときや、損失が重なったときは、その損失を取り返そうという心理がどうしても働いてしまいます。
そして、できるだけ早く元に戻したいという焦りから、ハイレバレッジでの取引をするようになってしまいます。
この行動が第二のつまずきです。

この考え方を始めてしまっている方は、もうすでに冷静ではないと思って間違いないです。
レバレッジの倍率は利益の倍率、そして損失の倍率でもあるのです。
損失を補填したいのに、損失の倍率を上げるやり方を選ぶことはいかがなものでしょう。

借金をして投資資金にしてしまう

ハイレバレッジ等で含み損がさらに膨らんだり、マージンコールが来てしまったりすると、冷静でない人に限ってその場しのぎをしようとします。
とりあえず、口座の証拠金を増やすわけですね。
ここでついに大コケをする人がでてきます。

自身のお金を、別口座から移動させるだけならまだよいですが、ここで借金をしてまで投資をする人がいます。
ポジション保有のためだけでなく、損失が重なって資金が減り、次の投資のためにわざわざ借金をしてしまう人もいます。
FXで借金を作った人のほとんどが、この流れを経験していると思われます。

冷静な判断ができなくなる

FXで借金をする一番の原因は、冷静な判断ができていないことです。
取引値が思っていた方向と逆に動き、みるみるうちにマイナスが膨らんでいるさまを見ると焦ってしまいます。
そこにマージンコールが来ると、余計にあおられてしまい、冷静さを失ってしまうのでしょう。

現実とバーチャルとでは違う

投資は、メンタル一つです。
冷静さを失って、借金を投資にあててしまう人は、その損失が自分のお金だから冷静でいられないわけですよね。
デモトレードで、練習してから実践する方もいると思いますが、バーチャルと実践では精神面の違いで失敗する方が多いです。

バーチャルは自分のお金で取引しないので、メンタルの部分では、まだ何もトレーニングできていない状態です。
実践用の心構えがないままでは、何もできずに損失だけ重なって退場になってしまいます。

FXで借金を作らない方法

FXで借金をしないためには、自分なりのルールを作ることが大切です。
「自分なり」なので、経験を積むごとに変更可能です。
むしろ成長に合わせて変更しましょう。
独自ルールこそが成長の証です。

ストップロスによる損失をコントロールする

ずっと勝ち続けることは、どんなプロでも至難の業です。
しかし、ときどき損失を出しながらでも、トータルではプラスにしている投資家はたくさんいます。
そういう人たちは、損失が出たとしても自分のルール内で潔く決済し、次に気持ちを切り替えるというメンタルの部分ができているのです。

当然ですが、投資をするうえでリスクは付き物なので、ある程度のリスクは許容しておきましょう。
許容範囲は自由ですが、これ以上の損失は許さないという、固い意志でリスクをコントロールすることが大切です。

レバレッジをかけない

一度にたくさん儲けたいと思うことは、誰でも同じです。
しかし、儲けのことを考えるときは、同時に損失が出たときのことも想定するべきです。
無理なハイレバレッジ取引は、大ケガの元にも。

初心者の場合は、レバレッジ1倍から始めるのが妥当でしょう。
もしかけても、2~3倍にとどめておきましょう。
小さいケガなら、治しながら歩けますよね。

値動きの幅を予測する

FXは投資で、ギャンブルのように当て物ではありません。
FXの書籍を読み、ニュースなどで世界情勢は把握できているか、FX用語は理解できているか、テクニカル等チャートを正しく見ることはできるか、指標発表をチェックしているかなど、努力できる部分は山ほどあります。
FXは、成長する術には恵まれているジャンルなので、努力は惜しまないようにしましょう。
何の努力もせずに、お金が手に入るわけはありません。

しっかりと知識を身に付け、なぜそこでポジションを持ったのか、人に説明できるくらい確固たる考えをもって、取引できるようになりましょう。
「こうなればいいのに」と希望でポジションを建てるのではなく、「こういう理由があるからこう動く」と予想して、ポジションを建てるのです。
正解不正解よりも、まずは自分自身で納得して取引しているかが重要です。

ゼロカットシステムを利用する

海外のFX業者も視野に入れている方は、ゼロカットシステムをぜひ知っておきましょう。
ゼロカットシステムとは、急な為替変動でロスカットが追い付かずに、証拠金がマイナスになっても、FX会社がマイナス分を負担してくれるシステムです。
したがって、入金額以上の損失が発生しません。

ただし、このゼロカットシステムは、現在国内のFX会社では採用されておらず、ゼロカットシステムを利用したい方は、海外のFX会社で口座を作る必要があります。
ゼロカットシステムは頼もしいですが、海外の会社だと出金に時間がかかったり、スプレッドが広かったりなど、別の点でのデメリットもあります。
そのため、国内の会社と海外の会社を使い分けている方もいるようです。
いろいろと吟味してみる必要がありそうですね。

FXで借金を作ってしまった場合の対処

万が一、FXで借金をしてしまったときのために、知っておいて損はないです。
損失も想定するという考え方のうえでは、なぞっておくべき項目ではないでしょうか。

免責不許可事由について

もしも、FXで返済できないくらいに借金をしてしまったら、自己破産ということになります。
自己破産が成立したら、借金はチャラというイメージがありますが、実は破産だけでは借金の支払い義務は消えません。
破産と一緒に免責を許可してもらって、借金をなくしてもらわなければならないのです。

しかし、免責不許可事由といって、身の程にあわない無茶なお金の使い方をした結果の破産など、借金の理由によっては、免責してもらえない場合があります。
免責不許可事由の種類はいろいろですが、ギャンブルや株取引、FX取引も含まれます。

免責不許可事由でも自己破産できる

免責不許可事由があっても、裁判所が事情を考慮して免責が許可されることがあります。
しかも、免責申立てをして不許可になる事例は、1%にも満たないそうです。

FXで借金を作ってしまっても、あきらめずにきちんと適正に申立て手続きを行えば、免責許可してもらえる可能性は大きいです。

自己破産以外の選択肢

自己破産だと、財産を失ったりクレジットカードが持てなくなったり、その後に支障が出ます。
それでは困るという方には、個人再生や任意整理をおすすめします。
個人再生は、裁判所が選んだ個人再生委員の指導のもと、債務整理の手続きをしてもらいます。
任意整理は、主に弁護士や司法書士などの専門家に依頼して、債権者との話し合いで債務整理します。

家族にすら知られたくないという人は、裁判所を介さない任意整理を選んだほうがよいかもしれません。
ただし、個人再生のほうが借金の減額率が高いです。

FXのきちんとした理解と対策をしましょう

FXをしているのは、素人だけでなくプロ中のプロ達も同じフィールドで取引しています。
そのプロ達や企業、さらには世界情勢といった、さまざまな思惑が渦巻いたとても複雑な世界ということを、常に念頭に置いて下さい。

FXは投資であり、ギャンブルではないので、まずはしっかりと知識を付けましょう。
皆、簡単にやっているように見えて、実はものすごく考えて努力しています。
そして、「損失が出ているときこそ冷静に」です。
そもそも、投資で出た損失を取り返そうとする考え方自体、あまりおすすめできません。
リスクを理解してコントロールできるようになれば、おのずとプラス収支も増えるでしょう。

メリットも大事ですが、デメリットをよく理解しましょう。
投資をするうえでの心構えとして、絶対に忘れてはいけないことです。