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クレジットカード払いで領収書はもらえるのか
所得税を申告するときに、仕事をするために必要なものを買ったお金を「経費」として計上できます。
そして経費を計上して税金を安くするためには、買い物をしたという証拠、つまり「領収書」が必要です。
そのため、お勤め以外の収入がある人の多くは、買い物をしたときや飲食店を利用したあとには、領収書またはレシートをもらって貯めておくことが習慣になっていることでしょう。
店側も、領収書を書いて欲しいといわれたら、書くことが当たり前になっています。
それでは、クレジットカードを使って支払いをしたときはどうなのでしょうか?実はここには、少しややこしい問題があります。
クレジットカードを使った場合は、領収書を出してもらえないことがあるのです。
どうしてそうなるのか、またどうすればいいのかといった話を整理してみましょう。
領収書発行の義務がないクレジットカード払い
なぜ、現金で払うと領収書がもらえるのに、クレジットカードだともらえない場合があるのでしょうか?基本から知ってゆきましょう。
信用取引では領収書を発行しない
クレジットカードを使った支払い、いわゆる「クレジット払い」は、実はかなり特殊な支払い方法です。
なぜなら、カードで支払う手続きをしたあとで、お店にお金を払うことは買い物をした本人ではなく、クレジット会社だからです。
購入した金額は、クレジット会社が立て替えて払うシステムになっているわけです。
これを店側から見ると、商品を売った相手はお客ですが、売買が成立した瞬間は、どこからもお金がもらえません。
クレジット会社を信用して、お店はお客に商品を渡すわけです。
こうした、すぐにお金がやり取りされない取引のことを「信用取引」といいます。
そして基本として、信用取引で商品を渡した相手に、店側は領収書を発行する義務はありません。
「たしかに代金をもらいました」というのが領収書ですが、店側はお客からもクレジット会社からも、領収書を書く時点ではお金をもらっていないので、考えてみれば当然のことといえます。
クレジットカードの利用伝票が領収書代わりに
最終的に、買い物の代金を支払うのは買い物をした本人です。
クレジット会社が立て替えはするものの、いずれ請求が来てお金を払うのですから、「お金を直接もらってないから領収書は出せません」というのは、理不尽に感じられるでしょう。
しかし、安心してください。
クレジットカードを利用すると、お店から「利用伝票」という紙が発行されます。
これがほとんどの場合、領収書がわりになります。
利用伝票とレシートを保管していれば、クレジットカードを使ったら経費で落ちなくなった、ということはほぼありません。
ただし、利用伝票には「伝票作成者の名前」「作成日」「購入したものの内容」「金額」「伝票を発行される人の名」が、間違いなく書かれている必要があります。
したがって、もらったときは書き落としがないか、よくチェックしてから受け取りましょう。
クレジットガード以外の支払いと領収書の関係
クレジットカード以外の電子マネーはどういう扱いになるかというと、クレジットカード以外ならほとんどのカードは領収書がもらえます。
煎じ詰めれば、「信用取引であるかないか」が問題なので、信用取引でない、つまり立て替えが発生しない電子マネーは現金払いと同じ扱いになります。
お店側から見れば、電子マネーとはたんに現金を別のお金に両替しただけ、ということで、どんなお金であれあなたからお金を受け取ればそこで領収書を書くことができるわけです。
また、クレジットカードと似た使い方をされるデビットカードも問題なく領収書が発行されます。
デビットカードは支払った時にあなたの口座から即座にお金を引き落とすので、信用取引にならないからです。
なお、電子マネーのポイントを使うと、それはお店にとっては「値引き」という扱いになります。
ですから、ポイントで安くなった金額が領収書に書かれることになります。
条件次第でクレジットカードで領収書を発行
クレジットカード使用の領収書は、なくても利用伝票で十分通用しますが、それでも領収書がいるというケースがあるかもしれません。
大きな買い物や、税金以外で経費を申告するときなどです。
はたして、クレジットカードを使って領収書をもらうことは無理なのでしょうか?
領収書の発行は店の判断次第
現実的には多くの店は、頼めばクレジットカード使用の領収書を書いてくれます。
買い物をしたこと、タイミングの違いはあれど、お金がきちんと払われることは間違いないので、店側としては素直に応えるケースが多いでしょう。
しかし、店には断る自由があるということも知っておきましょう。
これは、クレジットカードを使ったときだけではありません。
領収書というのは、税法で重要なものとして定義されているのに、実は法律のどこにも、お店に領収書を書くことを義務付けた条文はないのです。
極端にいえば領収書というのは、店が慣例と好意で書いているものです。
そのため、クレジットカードは信用取引だから、やはり領収書は書けないという店があったら、もちろん交渉はできますが、結局のところ書くように強制はできないので、覚えておきましょう。
通常の領収書との違い
領収書を書いてくれたとしても、その領収書に「クレジットカード使用」と書いてある場合、それは厳密にいえば法律上の「領収書」ではありません。
いちばんの違いは、収入印紙です。
正式な領収書は、50,000円を超えるものだと、収入印紙を貼ることが義務付けられていますが、クレジットカード使用の場合は、貼る必要がありません。
それはつまり、税法上の領収書ではないということです。
領収書というのは、本来支払い完了を示す書類なので、信用取引であると書いてある書類は、どこまでいっても正式にはなりません。
あくまでも「領収書らしきもの」であるとくことは、忘れないようにしましょう。
領収書で二重発行のリスク
店に頼んで領収書を書いてもらった場合、同じ店から利用伝票も出ているので、手元に書類がニつあることになります。
この2つを別々の経費として申告しないように、十分に注意しましょう。
なぜなら、領収書を使った経費の不正水増しになるからです。
領収書の二重発行による経費の水増しは、違法な節税の基本的な手口であり、税務署はこれが行われていないか常に目を光らせています。
たとえうっかりミスであっても、見つかれば延滞税が課せられ、以後、税務署からマークされて苦しむことになります。
税金ではなく、組織内の経費申告であっても、領収書の二重使用は忌み嫌われる行為です。
ビジネス上の信用をいっぺんになくしてしまうため、もし手元に同じ経費を証明する書類がニつある場合は、細心の注意をもって扱いましょう。
交通機関での領収書の発行方法
交通機関の運賃を、クレジットカードで支払う場合、領収書はもらえるのでしょうか。
また、具体的にどこでどうすればもらえるのでしょうか。
交通機関での領収書について解説します。
みどりの窓口で領収書を発行
JRでは、現金払いでもクレジット払いでも、頼めば領収書を書いてくれます。
ただし、黙っていても領収書が出てくることはないので、きちんと「領収書をください」とお願いしましょう。
領収書がもらえる場所は、切符販売窓口であるみどりの窓口です。
係員さんに申し込めば、すぐに書いてくれるでしょう。
もしみどりの窓口で領収書をもらうのを忘れ、改札を通ってしまったあとでも、改札の駅員さんに事情を話せば、領収書を書いてくれることがあるので、頼んでみましょう。
JRの券売機で領収書を発行
JRの券売機には、「領収書」のボタンがついていることをご存じでしょうか。
切符を買うときに押すと、切符といっしょに領収書も発行してくれます。
SuicaなどのICカード乗車券の購入や、チャージでも領収書がもらえます。
万が一ボタンを押し忘れてしまったときは、駅員さんを呼び出してお願いするとよいでしょう。
航空券で領収書の発行
航空券は値段が張るものなので、領収書が欲しいというケースが多いです。
航空会社側もそれを考慮して、購入から1年以内の航空券なら、頼めば領収書を書いてくれます。
航空券を買ったときにしかもらえないということはないので、税金の申告の時期が来たときに、「領収書がない」ということになったら頼んでみましょう。
ただし、基本的に一度書いたら再発行はしてくれません。
それは、二重発行による違法申告を防ぐためです。
ネットショッピングでの領収書の発行方法
ネットショッピングは現在、クレジット払いがもっとも活躍する場所です。
そこでの領収書の扱いは、どうなっているのでしょうか。
Amazonなら自分で領収書を印刷
Amazonでは、支払い方法に関係なく、領収書を表示して印刷ができます。
自分の注文履歴に行き、領収書が欲しい注文の詳細を見ます。
すると、領収書/購入明細書の項目が出てくるのでクリックしましょう。
領収書画面になったら、氏名や会社名を自分で記入して印刷すれば完了です。
こういうシステムなので、領収書の再印刷もできるのですが、二度目の印刷からはしっかりと「再発行」という文字が書かれ、違法申告を防いでくれています。
Yahooや楽天は店舗で対応に違い
Yahooショッピングや楽天市場は、Amazonと違い、たくさんのオンラインショップが集まった場所で、領収書に関しても店舗によって対応がバラバラです。
Yahooもしくは楽天としての統一ルールはないので、購入前に各店舗のページを確認してみましょう。
領収書の扱いについても書かれているはずです。
もし書かれていない場合は、INFOや会社概要といった項目に連絡先が書いてあるので、問い合わせてみるとよいでしょう。
領収書代わりにならないもの
クレジットカードの領収書について、勘違いしやすいことがあります。
それは、クレジット会社が送ってきてくれる「利用明細」です。
これは、どういう買い物をしたかを記した書類なので、領収書の代わりに使えると思う人が多いのではないでしょうか。
お店が出してくれる「利用伝票」と、なんとなく同一視している人もいるかもしれません。
しかし「利用明細」は、領収書の代わりとしては使えません。
理由は簡単で、買い物をした相手が発行した書類ではないからです。
クレジット会社の利用明細は、あくまで「立て替えた履歴」の記録にすぎません。
とはいえ、税金の申告に使えないだけで、買い物をしたという記録としては有用なので、きちんと保管しておくにこしたことはないでしょう。
ルールを守ってクレジットカードを利用
クレジットカードを使ったあと、領収書を書いてもらわなければと考える必要はありません。
税金の申告においては、店が出してくれる「利用伝票」とレシートがあれば、まず問題が起きることはありません。
利用伝票は注意して、きちんと保管しておくとよいでしょう。
それでも何らかの理由で領収書を書いてもらったなら、経費の二重申告にならないようによく注意しましょう。