UKANO家計のクリニック

【遺産相続の手続きは何をすればいい?】詳しい流れを具体的に解説

コンテンツ

遺産相続は何をしていいか全くわからない

遺産相続とはいったい何でしょうか。
「両親が亡くなったあとに受け取る財産」、頭ではそうわかっていても、実際どんな手続きをすればいいのか、そもそも一体誰が遺産をもらうのか。
初めてのことでわからないことだらけです。

しかも、受け取る財産がプラス財産だけならまだしも、場合によってはマイナス財産を引き継いでしまう可能性もあります。
しかるべき手続きを踏まえれば、避けることはできますが、それらの手続きには期限があり、申請期限を過ぎてしまうと、自動的にマイナスもプラスも含めた全財産を相続してしまうことになります。

実際に相続する場面になってから慌てることのないよう、事前に遺産相続の手続きについて知っておきましょう。

ほとんどの人が遺産相続について考えていない

遺産相続と聞いて、いつかは直面する問題だと頭では理解しているものの、具体的に考えている人はほとんどいないというのが、現状ではないでしょうか。

「まだ両親も自分も元気なので、心配するほどでもない」「考えたほうがいいのだろうけど、どうしてよいかわからない」「財産もそれほどないだろうし自分には必要ない」など、さまざまな理由があると思います。

しかし、遺産相続の種類は一つではありませんし、中には期限が切られているものもあります。
お葬式になってから慌てると、思わぬ失敗をしてしまうこともあります。
お葬式のあとは気持ちも沈んでおり、事前にある程度の予備知識があったとしても、スムーズに相続手続きを行うことは難しいときがあります。
そのようなことも踏まえ、事前にきちんと情報を収集しておき、しかるべきときに備えておくことは、非常に重要なのです。

考えている人は10%以下

実際に、土地などの相続財産を所有している、相続人(子世代)と被相続人(親世代)を対象に行った調査では、「具体的に検討している」と答えたのは、相続人・被相続人ともに、1割未満という結果が出ています。

詳しくいうと「具体的に検討している」と回答した人は、親世代で8.7%、子世代で7.0%です。
さらに「具体的ではないが、検討している」と回答した人は、親世代で28.6%、子世代で24.1%でした。
つまり、少しでも検討している人を合わせても、両世代とも4割以下なのです。

理由はとくに心配がないから

どうしてアンケートで、「相続に関して検討している」と回答した人が、そんなに少ないのでしょうか。
アンケート調査で「財産相続について不安や心配事があるか」と質問したところ、親世代の約6割が「特に心配事はない」と答えています。
つまり、親世代は、”心配事がないから、財産相続については検討していない”と感じている人が多いとわかります。

子世代で同じ質問に対する回答は、親世代とは違い「特に心配はない」約35%「話すきっかけがない」3割弱「難しくてよくわからない」3割弱、と三つに分かれます。
このことから、子世代は、”心配していないわけではないが、具体的にどうしたらよいのかわからない”と思っている人が多いことがわかります。

兄弟の不仲も原因

財産相続について話し合いをするときは、両親だけでなく、兄弟とも話し合う必要があります。
あなたは、ご兄弟の連絡先をご存じでしょうか。

ある調査によると、3割以上の方が、兄弟仲がよくない、または疎遠であると回答しています。
この数字を多いとみるか少ないとみるかは、意見が分かれるところではあります。
しかし、相続について具体的に検討している方が少ないのは、相続問題について話し合う以前に、兄弟と疎遠ということが原因の一つかもしれません。

遺産相続について考えておくべき理由

ご存じない方も多いかもしれませんが、実は平成27年1月(2015年)から相続税が改正されました。
大きな変更点は、基礎控除額が下がったことです。
それによって、これまで課税対象とならなかったケースも、相続税が発生する場合が増加しました。
つまり、遺産相続手続きを行わなくてはならない人が増えたのです。

平成27年1月に行われた相続税の改正

相続税の基礎控除額の引き下げ

この改正により、平成27年分の遺産相続で課税対象者が大幅に増えました。
例えば、東京国税局(管轄:東京都、神奈川県、千葉県、山梨県)での相続税の課税対象者は、これまでの約2倍の12.7%に急増しています。
ほかの都市でも同じく、課税対象者増加の傾向がみられました。

税金対策は事前にやる必要がある

遺産相続額というのは、あらかじめ定められた計算方法によって出すので、相続が実際に発生したあとに、変更することはできません。
しかも、納税は基本的に現金支払いであり、もし相続財産が不動産などの現金でない場合、納税用の現金を別に用意するか、もしくは相続した不動産を、支払いまでに現金に変えなくてはなりません。
しかし、急いで売る場合適正価格で売れない可能性もあります。

相続税対策は事前に考え、準備しておいたほうがよいというのは、そのような理由からです。
さらに、あとから相続人同士の争いを避けるためにも、事前に相続人同士で話し合ったり、場合によっては遺言状を用意しておいたりすることも対策の一つです。

相続手続きには期限がある

相続手続きには、決められた期限があります。
手続きは一つではないうえに、どの手続きかによって、期限もバラバラです。
しかも、相続といっても、財産ばかりではなく借金の場合もあります。
もしも、両親に借金があった場合、期限までに何もしなければ、借金も相続してしまうことになります。

期限内にきちんと手続きが終えられるように、遺産相続の手続きで困ったことがあったら、早めに弁護士などの専門家に相談しましょう。

期限別で見る遺産相続手続き

遺産相続にはかなりの手続きが必要で、人によって少し違いはありますが、15個以上の手続きがあります。
そして、すべてに期間が決められています。
それでは期限が短く、早く手続きをしなくてはならないものから見ていきます。

1週間以内に済ませる相続手続き

まずは、被相続人の死亡から、1週間以内に済ませなくてはならない手続きです。

死亡診断書の取得

はじめにしなくてはならないのは、死亡診断書の取得です。
こちらは、医師から受け取ります。
診断書の用紙は病院か、市役所の戸籍課にありますので、医師に記入してもらいましょう。
死亡診断書の提出期限は、死亡日から7日以内です。

死亡届の提出

死亡診断書の他に死亡届も取得するのですが、死亡届は死亡診断書と一体になっています。
左側が医師に記入してもらった死亡診断書で、右側が死亡届です。
こちらに必要事項を記入して提出します。
死亡届の提出先は、届出人の住所地の役所か、死亡者の本籍地になります。
提出期限は、死亡してから7日以内です。

死体埋葬火葬許可証の取得

役所に死亡診断書・死亡届を提出するとき、同時に死体埋葬火葬申請書の提出も忘れずに行いましょう。
全部提出すると、「火葬許可証」をもらうことができます。
こちらの提出期限も、死亡してから7日以内です。

同時に火葬する許可を得るための「死体火葬許可証交付申請書」も、市区町村の役所に提出することで「火葬許可証」が取得できます。
「火葬許可証」がなければ、遺体を火葬することはできません。
そして、遺体の火葬後に、火葬場より確かに火葬が行われたという記載がされた「火葬許可証」が手元に戻ってきます。
これがそのまま「埋葬許可証」となり、納骨の際に使われます。

なお、葬儀を葬儀社に委任した場合、これらの一連の手続きは、葬儀社が代行してくれる場合もあります。
委任した葬儀社に、確認してみてください。

10日以内に済ませる相続手続き

亡くなった方が年金を受けていた場合、受け取る権利がなくなるため「年金受給権者死亡届」の提出をしなくてはなりません。

提出期限は、死亡から10日以内で、期限内に提出しなかった場合、さかのぼって年金の返却、場合によっては罰金が科せられるので、注意が必要です。

2週間以内に済ませる相続手続き

死亡後、2週間以内に済ませるべき手続きは、かなり多いです。
主な手続きは以下のものです。

国民健康保険証の返却

故人の国民健康保険証は、速やかに返却しなくてはなりません。
故人が住んでいた地域の担当市町村に、提出してください。

年金受給停止の手続き

亡くなった方が年金受給者の場合、厚生年金だと死亡後10日以内、国民年金の場合14日以内に「受給停止手続き」の提出を行わなくてはなりません。
提出場所は、住民票の住居地がある社会保険事務所です。
また、必要書類は以下のとおりです。

介護保険の資格喪失届

死亡者が介護保険を受けていた場合、市町村に「介護保険の資格喪失届」を提出しなくてはなりません。
また、要介護認定を受けていた方は、「介護被保険者証」も返還する必要があります。

住民票の抹消届と世帯主の変更届

故人を住民票から抹消しなくてはなりませんが、抹消自体は死亡届の提出をもって、自動的に処理されるため、手続きは不要です。
ただし、住民票から抹消された「除票」は、不動産登記や相続税申告に必要なので、取得の申請を行ってください。

また、故人が世帯主であった場合、世帯主の変更届を出さなくてはなりません。
ただし、残された世帯員が一人の場合、または15歳未満の子供とその親権者の二人だった場合は、世帯主変更届は必要ありません。

その他の変更届

その他、以下の手当てを受けていた方も、14日以内に抹消手続きを行う必要があります。

なるべく早く済ませておくべきこと

遺言書の有無の確認

身内が亡くなったら、故人の遺言状があるかどうかを確認します。
もし見つかった場合、裁判所に遺言状の状態を確認してもらう「検認申し立て」という手続きを行います。

ただし、「公正証書遺言」の場合は、もうすでに役所に正式だと認証してもらっている遺言状なので、検認申し立ては必要ありません。

相続人を確定する

誰が相続人なのか、相続人を確定させる必要があります。
相続人を確定させるためには、個人が生まれてから亡くなるまでの、すべての戸籍を取り寄せる必要があります。

最後の本籍地で、過去の戸籍について尋ねれば、役所の担当者が教えてくれます。
この作業を怠ると、あとから相続人だという人が現れ、遺産分割協議が無駄になる可能性もあるので、全ての戸籍を取り寄せましょう。

相続財産の調査

遺産分割協議をするためには、まず故人のすべての財産を調査しなくてはなりません。
最も簡単な方法は、故人の郵便物から、銀行や不動産、保険や固定資産税の内容を確認することです。
あとから知らなかったマイナスの財産が出てきて、借金を引き継いでしまうことのないように、すべてしっかり調べておきましょう。

遺産分割協議を始める

故人の遺言がなかった場合、どのように遺産を分けるのか、相続人全員で協議します。
これを「遺産分割」と言います。
相続人全員の合意が必要なので、なるべく早めに対応を始めましょう。
協議する内容として、以下のものが挙げられます。

3カ月以内に済ませる相続手続き

相続財産をどのようにするか決める

基本的に、相続財産は3カ月後に、すべてを相続することになります。
例えば、故人に借金などがあり、相続したくない場合、3カ月以内に財産放棄の手続きを行わなくてはならないので、期限内に手続きをすることが大切です。

相続の種類には以下の3種類があります。

相続の承認または放棄の期間伸長の申し立て

原則的には三つのうちのどの相続を選ぶか、3カ月以内に決定しなければなりません。
しかし、3カ月の期限内に決定できなかった場合、裁判所に申し立てを行い、この期間を延長してもらうことも可能です。

4カ月以内に済ませる相続手続き

故人が個人事業主として事業を行っていた場合など、年度の途中で死亡すると、確定申告を行うことができません。
そこで、故人に代わって確定申告を行うのですが、これを「準確定申告」といいます。

準確定申告は、相続があったことを知った日の翌日から、4カ月以内に申告と納税をしなくてはなりません。
ほかの手続きに比べて時間がかかるため、早めの準備が必要です。
はじめに故人の場合、準確定申告が必要なのか早めに確認しておきましょう。

できるだけ早く済ませておくべきこと

遺産分割協議書の作成

相続財産の分配の仕方が決まったら、全員で合意した内容を文書にしておきます。
これを「遺産分割協議書の作成」といいます。
これは正式な証明書の役割を果たし、相続財産を明確化することや、のちのトラブルを防止するために作成します。

不動産の名義変更

故人が不動産を所有していた場合、不動産を相続することになった人は、法務局で不動産名義の変更を行います。
不動産の名義変更は、司法書士しか行えません。
その際には、司法書士への報酬や、名義変更登記にかかる税金(登録免許税)などの諸費用が必要になります。
実際の金額は、司法書士にお願いしたいサービスの内容、相続財産の価格等で異なります。

<司法書士への報酬の一例>

<司法書士が行う仕事内容(一例)>

10カ月以内で済ませる相続手続き

相続する内容が決まったら、税金の支払いが必要か確認します。
相続には基礎控除というものがあり、相続がその範囲内に収まっていれば、相続税は発生せず、申告も必要ありません。

しかし、基礎控除を超えた場合は、相続開始後10カ月以内に相続税の申告と納税をしなければなりません。
遅延すると、税務署からの遅延税が加算されます。
相続内容がはっきり決まっていないなど、納税額が期限までにはっきりしなくても、支払い期限が伸びるわけではありません。

したがってその場合は、概算で支払たあと修正が可能です。
また、納税の現金が期限までに用意できない場合、「延納」と「物納」という特別な納付方法も認められています。
困ったときは、弁護士または税理士や役所に相談しましょう。

2年以内に済ませる相続手続き

国民傾向保険、健康保険に加入していた場合には、決まった額の葬祭費用の給付を受けることができます。
給付を受けられるのは、喪主になります。
また、埋葬費についても給付制度があります。

受け取れる給付額は、以下の通りになります。
申請期間は2年ですが、葬儀後から2年と死亡後2年の場合があります。

葬祭費(国民健康保険加入の場合)

葬祭費(健康保険加入の場合)

葬祭費(国家公務員共済組合の組合員の場合)

埋葬費 (申請・問い合わせ先 全国健康保険協会)

さらに、相続人が相続放棄をしていなければ、個人が受けていた高額医療費の還付金を受け取ることができます。
こちらも申請期間は2年です。

【参照URL:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r129

2年で時効を迎えるもの

故人が国民年金のみに加入していて、国民年金の保険料を3年以上納め、なおかつ、老齢基礎年金・障害基礎年金の両方とももらわないままで亡くなった場合、故人と生計を共にしていた遺族は、死亡一時金の請求ができます。
2年で時効なので、該当すると思ったら速やかに申請しましょう。

3年で時効を迎えるもの

故人が生命保険に加入していた場合、遺族または相続人は、死亡保険を受け取ることができます。
ただし、死亡保険金は、遺産相続が決定するまで請求することができず、受け取ることができません。

死亡保険金の期限は死亡日から3年、かんぽ生命では5年とされていますが、商法では、生命保険金支払い義務は2年となっています。
したがって、2年以内に請求したほうが安全です。

5年で時効を迎えるもの

支給の条件を満たした遺族は、遺族基礎年金・遺族厚生年金の請求ができます。
故人によって生計を維持していた配偶者と、18歳以下の子は、国民年金又は厚生年金保険の被保険者が死亡したときに、遺族基礎年金・遺族厚生年金の申請ができます。
申請の時効は5年です。

また、国民年金のみに加入しており、支給条件を満たした者は寡婦年金の申請ができます。
こちらも申請の時効は5年です。

【参照URL:http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html

課税対象となる相続財産は具体的にどのようなものか

相続財産とは、不動産や有価証券、現金などのプラスの財産ばかりではなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。
プラス財産だけならいいのですが、把握していないマイナスの財産まで相続してしまい、あとで困ることのないように、すべての財産をしっかり把握しておきましょう。
ここでは、どのようなものが相続財産になるのか、その内訳を説明します。

経済的な価値のあるプラス財産

土地建物などの不動産

始めに経済価値のあるプラスの財産として、宅地・居宅・農地・店舗・貸地などが挙げられます。
相続と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、土地建物の不動産で、相続財産に占める割合も高いです。
しかし、均等に分配することが困難で評価も難しいため、相続人間でトラブルを起こしやすい財産です。

借地権や定期借地権や地上権などの不動産上の権利

家や土地の借地権・地上権・定期借地権などは、相続財産です。
相続財産なので、相続に貸主の承諾は必要ありません。
万が一、貸主に契約者の死亡によって、契約解除を言い渡されたり、立ち退きを要求されても、応じる必要はありません。
これは、相続人と故人の同居の有無とは無関係です。

現金有価証券小切手などの金融資産

現金・預貯金・有価証券・小切手・株券・国債・社債・債権・貸付金・売掛金・手形債権などは、すべて金融資産に入ります。

車や貴金属などの動産

車・家財・骨董品・美術品・宝石・貴金属・果樹などは、動産に分類されます。

その他ゴルフ会員権特許権著作権など

その他、株式・ゴルフ会員権・著作権・特許権・商標権・意匠権などの財産があります。
ただし、ゴルフ会員権で、「会員が死亡したときにその資格を失う」などの記載がある場合は、相続対象にはならないため、注意が必要です。

経済的な価値のないマイナス財産

被相続人が借り入れた借金

故人が持っていた借入金・住宅ローン・買掛金・手形債務・振出小切手などは、マイナス資産です。
プラスの財産だけでなく、マイナス財産も相続の対象になります。
相続人が複数いる場合、プラスの財産については話し合いなどで、法定相続分とは違う割合で相続が可能です。

しかし、マイナスの財産については、必ず法定相続の割合で相続分割されます。
ただし、マイナスが大きい場合、「相続放棄」の手続きも可能です。

未払いの税金

未払の所得税、住民税、固定資産税など、故人が支払っていないすべての税金をさします。
これらもすべて、相続人に引継ぎされるので、相続の際にしっかり把握しておきましょう。

その他の未払のもの

未払費用・未払利息・未払の医療費など、故人が未払いのものも、すべてマイナスの財産として、相続が引き継がれます。
あとから知らなかった未払い分を、引き継いでしまうことのないように、しっかり把握しておきましょう。

預かり金保証金などの返還債務

預かり敷金・保証金など。
保証債務・保証人や賃貸借契約など、現在発生している保証債務だけではなく、将来起こりえる負債も相続されます。

マイナス財産についての補足

借金はすべてが財産分与の対象となるわけではない

故人の全ての借金が、財産分与の対象となるわけではなく、相続対象にならないマイナス財産もあります。
すべてのプラスとマイナス財産を把握し、相続対象なのかそうでないのかを見極めたうえで、財産を相続するかどうか決めましょう。

対象となる借金の例

家族のための借金、例えば衣食住や医療費、教育費などを家族が生活するために借りた借金、または家族で使うことを目的として買った車のローンや、家族で住むために購入した住宅ローンなどは、相続対象になるマイナス資産です。

対象とならない借金の例

相続の対象にならないマイナス財産とは、家族との生活にはまったく関係のない、個人的な買い物のための借金や、賭け事やギャンブル目的で作ったた借金などです。
相続人になった場合は、故人のマイナスの財産の中にも、引き継がなくてはならないものと、引き継ぐ必要のないものがあることを、きちんと把握しておきましょう。

マイナス財産のほうが多い場合は非課税となる

プラスの相続財産と、マイナスの相続財産の両方を相続した場合、両方を差し引きして、残ったプラス相続財産に対して相続税がかかります。
両方を差し引きして、マイナス相続財産のほうが多かった場合は、相続税はかかりません。

なお、葬式費用のように、どうしても故人の没後にかかる必要経費は、マイナス財産として相続財産から差し引きできます。
知識をもっていれば、相続税対策になるケースもあるので、必要以上に税金を支払うことを避けるためにも、一人ひとりが意識を持って、情報をしっかり把握しておくことをおすすめします。

相続財産とはならないもの

故人が持っていた一身専属の権利

故人が、個人の資格として所有していたもの、例えば医師免許や運転免許証、弁護士の資格などは、取得した人のものであり、この個人が亡くなった時点で資格は失効し、誰もその資格を相続することはできません。
これから一つずつ確認します。

就職のなどの身元保証人

故人との信頼関係によって生じた身元保証人などは、相続人が引き継ぐことはありません。
ただし、人間の保証ではなく、金銭の貸借で保証人になった場合は、相続の対象になります。

つまり、故人の死亡前にすでに発生している実際の金銭債務は、相続人に引き継がれますが、身元保証人の地位は相続人には引き継がれません。
よって、故人の死亡後に負債が発生したとしても、それに相続人は関与しなくてもよいということになります。

お墓や仏壇などの祭祀財産

仏壇・仏具、位牌、墓地・墓石などのいわゆる「祭祀(さいし)財産」と呼ばれるものは、代々引き継がれていくものですし、基本的には相続財産とはならず、相続税も発生しません。

しかし、祭祀財産はバラバラで継承されると、法要などを行う際に不便が生じるので、基本的には相続人のうちから、一人だけ継承します。

生命保険金や死亡退職金など

故人が掛けていた保険金の受け取りが、相続人の一人に指定されていた場合、これは相続財産ではなく、指定された個人の権利となります。
つまり、指定された相続人が相続を放棄していたとしても、この保険金は受け取ることができます。

死亡退職金や公的年金も同様で、受取人個人の権利であり、相続財産とはみなされません。

遺産相続に関する相談先

遺産相続をする相談先は、相談の内容によってさまざまです。
税務関係、弁護関係、登記の手続き関係、預貯金や年金の相談など多岐にわたります。
一口に専門家に相談といっても、相談内容よって、どの専門家に相談すればよいのか迷うこともあるでしょう。
ここでは、そのような問題を解決するために、どの内容をどの専門家に相談するのがよいかを説明します。

税理士に相談するもの

相続税の申告というのは、税理士しかできない仕事です。
したがって、相続税や税に関する相談は、税理士が適任でしょう。
ただし、相続のすべてのケースで相続税が発生するわけではありません。
それどころか、実際相続税の申告は、相続が発生した中でも4%程度といわれています。
(※平成27年1月1日の法律改正以降は1.5~2倍増)
それ以外の人は、財産を相続しても、相続税の申告は必要ないのです。
自身のケースと照らし合わせて、必要だと思われた場合に、税理士に相談しましょう。

弁護士に相談するもの

相続分与で問題が起こり、調停などの裁判の手続きを行う場合、弁護士しか正式な代理人になりません。
そのため、法廷で争うときには弁護士の助けが必要になります。

ただし、実際に裁判を起こしても、多くの場合は、「法定相続分」という、法律であらかじめ決められた割合に沿った結果になることがほとんどです。
しかも弁護士費用は高額とされているので、可能であれば裁判はできるだけ避けて、ほかの解決方法を探したほうがよいかもしれません。

司法書士に相談するもの

司法書士は、不動産の名義変更(相続登記)ができます。
そのため、相続財産に不動産がある人は、どこかで司法書士に仕事を頼むことになります。
さらに、相続税の申告の必要がなく、相続人同士で争っているわけでもない場合は、司法書士はその他のすべての手続きを遂行することができます。

そういう意味では、法廷に行く予定がなく、相続税の支払いがなく、なおかつ不動産がある人は、司法書士に相談するのが一番よい方法かもしれません。
一つだけ気を付けたいことは、司法書士事務所によっては、相続登記のみの専門という場合があるので、事前に調べておく必要があるでしょう。

公的機関に相談するもの

最初から何について相談したいのか、わかっているケースばかりではありません。
相続の手続きは大きな分野にまたがっており、むしろはじめは、具体的な手続きについてというより、何を相談したらよいのかわからない、という状態が多いかもしれません。

まだ何をすべきか、何の専門家に相談すべきかわからない人は、まず、税務署や商工会議所、または法テラスなどの公的機関に相談に行くとよいでしょう。
相談は基本的には無料です。
相続全般は商工会議所、税に関するものは税務署、法律に関する事は法テラスです。
そこで、具体的などの分野の相続手続きについて相談したいのかわかったら、あらためて専門家の所に行くとよいでしょう。

金融機関や専門業者に相談するもの

資産に関する問題を相談したいのであれば、金融機関や専門業者に相談することもよいでしょう。
相談内容によって、おおむね以下の三つに分かれます。

遺産相続にはさまざまな手続きが必要

現在は、インターネットで調べれば、大まかな情報はいつでも見つけることができます。
日ごろから情報収集をして、基礎知識を持っていればいざというときに慌てたり、どうすればよいのか困ることも減るでしょう。

具体的な自分のケースについて判断するときが来たら、専門家に相談してみるのが一番よいでしょう。