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相続とは何か?
相続や相続税と聞いて、仕組みをきちんと理解している人は、それほどいないと思います。
しかし、相続の手続きは膨大で、いざ誰かが亡くなってから調べ始めると、大変な苦労をすることになります。
そのときになってから慌てないように、今から相続や相続税について、正しく理解しておきましょう。
相続について考えておいたほうがいい理由について
相続の手続きとは大変煩雑で、長期間に渡ります。
また、手続きの中には期限が決まっているものもあります。
いざというときになって慌てないように、今のうちから相続の仕組みについて知っておきましょう。
相続手続きは一つやニつでは済まない
相続の手続きは一つや二つではなく、最低でも15個以上になります。
「死亡届」「素体火葬許可申請書」を始め、場合によっては「世帯主変更届」「児童扶養手当認定請求書」各種保険、不動産関係など、さまざまなので、事前にやるべきことを把握しておくとよいでしょう。
被相続人の死亡から1週間以内に済ませる相続手続き
- 死亡診断書の取得
死亡診断書の用紙は病院か、市役所の戸籍課にあり、医師に記入してもらう - 死亡届の提出
死亡届は死亡診断書と一体。
左側が医師に記入してもらった死亡診断書で、右側が死亡届になる。
死亡届の提出先は、届出人の住所地の役所か、死亡者の本籍地になる - 死体埋葬/火葬許可証の取得
役所に死亡診断書・死亡届の提出するとき、同時に火葬する許可を得るための「死体火葬許可証交付申請書」を市区町村の役所に提出することで「火葬許可証」が取得できる。
「火葬許可証」がないと、遺体を火葬できない。
火葬後、火葬場より戻ってきた「火葬許可証」がそのまま「埋葬許可証」となる。
葬儀社が代行してくれる場合もある
10日以内に済ませる相続手続き
- 年金受給権者死亡届
亡くなった方が年金を受けていた場合
2週間以内に済ませる相続手続き
- 国民健康保険証の返却
- 年金受給停止の手続き
亡くなった方が年金受給者の場合、厚生年金だと死亡後10日以内、国民年金の場合14日以内 - 介護保険の資格喪失届
死亡者が介護保険を受けていた場合 - 介護被保険者証
要介護認定を受けていた方は返還 - 住民票の抹消届
抹消自体は死亡届の提出をもって、自動的に処理されるため、手続きは不要です。
ただし、住民票から抹消された「除票」は、不動産登記や相続税申告に必要なので、取得の申請が必要。 - 世帯主の変更届
故人が世帯主であった場合。
残された世帯員が一人の場合、または15歳未満の子供とその親権者の二人だった場合は必要ない - 老人医療受給者・特定疾患医療受給者・身体障害受給者・児童手当
その他なるべく早く済ませておくべきこと
- 遺言書の有無の確認
- 相続人の確定する
- 相続財産の調査
- 遺産分割協議を始める
- 相続財産の確認と分割方法
3カ月以内に済ませる相続手続き
- 相続財産をどのようにするか決める
基本的に、相続財産は3カ月後にすべてを相続することになります。
例えば、故人に借金などがあり、相続したくない場合、3カ月以内に財産放棄の手続きを行わなければならないので、期限内に手続きをすることが大切です。
4カ月以内に済ませる相続手続き
- 準確定申告
故人が個人事業主として事業を行っていた場合など、故人に代わって確定申告を行うこと
できるだけ早く済ませておくべきこと
- 遺産分割協議書の作成
後のトラブル防止のため、相続人全員で相続財産の分配内容を文書にすること - 不動産の名義変更
不動産を相続することになった人は、法務局で不動産名義の変更を行う
10カ月以内で済ませる相続手続き
- 相続税の申告と納税
基礎控除額を超えた場合
2年以内に済ませる相続手続き
- 葬祭費、埋葬費の請求
国民傾向保険、健康保険に加入していた場合には、喪主は決まった額の葬祭・埋葬費用の給付を受けることができる - 高額医療費の還付金
相続人が相続放棄をしてい場合
2年で時効を迎えるもの
死亡一時金の請求
故人が国民年金のみに加入していて、国民年金の保険料を3年以上納め、なおかつ、老齢基礎年金・障害基礎年金の両方とももらわないまま亡くなった場合、故人と生計を共にしていた遺族が請求できる
3年で時効を迎えるもの
- 死亡保険金
故人が生命保険に加入したいた場合。
ただし、死亡保険金は遺産相続が決定するまで、請求することができない。
商法では、生命保険金支払い義務は2年となっているので、2年以内に請求したほうが安全
5年で時効を迎えるもの
- 遺族基礎年金・遺族厚生年金の請求
支給の条件を満たした遺族は申請可能 - 遺族基礎年金・遺族厚生年金の申請
故人が国民年金又は、厚生年金保険の被保険者だった場合、故人によって生計を維持していた配偶者と、18歳以下の子が申請可能 - 寡婦年金
国民年金のみに加入しており、支給条件を満たした者
ほとんどの相続手続きに期限がある
上記で述べたように、ほとんどの相続手続きには、提出期限が定められています。
期限は手続きの種類によって、死亡から7日以内から、3カ月、4カ月、10カ月、2年、3年、5年とそれぞれ決まっています。
さらに、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産がある場合、財産放棄などの手続きを怠ると、借金も相続しなくてならないケースもあります。
こちらも提出期限がありますので、必要な場合は期限内にきちんと手続きをするように、注意が必要です。
平成27年1月に相続税の改正が行われた
ご存じない方も多いかもしれませんが、平成27年(2015年)1月から相続税が改正されました。
大きな変更は、基礎控除額が下がったことです。
それによって、これまで課税対象とならなかったケースも、相続税が発生する場合が増加しました。
つまり、遺産相続手続きを行わなくてはならない人が増えたのです。
- 相続税の基礎控除額の引き下げ
平成26年12月まで:5,000万円 +(1000万円×法定相続人の数)
平成27年1月より:3,000万円 +(600万円×法定相続人の数)
この改正により、平成27年分の遺産相続で、課税対象者が大幅に増えました。
例えば、東京国税局(管轄:東京都、神奈川県、千葉県、山梨県)での相続税の課税対象者は、これまでの約2倍の12.7%に急増しています。
ほかの都市でも同じく、課税対象者増加の傾向がみられました。
税金対策は事前にやらなくてはいけない
遺産相続額というのは、あらかじめ定められた計算方法によって出すので、相続が実際に発生したあとに変更することはできません。
しかも、納税は基本的に現金支払いであり、もし相続財産が不動産などの現金でない場合、納税用の現金を別に用意するか、もしくは相続した不動産を、支払いまでに現金に変えなくてはなりません。
しかし、急いで売る場合は、適正価格で売れない可能性もあります。
さらに、あとから相続人同士の争いを避けるためにも、事前に相続人同士で話し合ったり、場合によっては遺言状を用意しておいたりすることも対策の一つです。
このような理由から、相続税対策は事前に考えて、準備しておいたほうがよいでしょう。
相続についての基礎知識
相続に関して、相続と贈与の違いや、相続順位などを知っておかなくてはならない、専門用語が多く出てきます。
そのときになって慌てないように、事前に基本となる用語や決まりを把握しておきましょう。
相続と贈与の違いについて
簡単にいうと、相続とは亡くなった人から財産をもらうことで、贈与とは生きている間に財産をもらうことです。
基本的には、相続にかかる「相続税」と同じで、贈与にも「贈与税」という税金がかかりますが、控除や特例もあります。
例えば、年間110万円以下の贈与は非課税になります。
こちらも知識があれば、事前に対処することができます。
相続人と被相続人について
「被相続人」とは、相続財産を残して亡くなった人のことをいいます。
「相続人」とは、亡くなった人から財産を受け取る権利を持った人のことを指します。
民法では故人の配偶者は、必ず相続人になります。
子どもがいる場合は、子どもも相続人になります。
相続される遺産の対象は、故人が生前に持っていた財産と、負債のすべてです。
故人から相続人が引き継ぐ財産には、さまざまなものが含まれます。
現金・預金のほか、不動産、権利などのプラスの財産や、借金や未払金などのマイナス財産もその中に含まれます。
相続できる人と相続順位は民法により定められている
相続できる人と相続の順位は、民法によりあらかじめ決められています。
故人の配偶者は、必ず相続人になります。
その他の相続第一順位は、故人の「子供」です。
第二順位は、故人の「父母」などの直系の親族です。
故人に子供がおらず、故人の親や祖父母が健在の場合、相続人になります。
第三順位は、故人の「兄弟姉妹」「甥・姪」などで、第一・第二順位の相続人がいない場合に該当します。
法定相続人と受遺者の違いについて
配偶者と第一から第三順位までの相続人は、法廷で決められた相続人のことです。
該当するのは、故人の配偶者とその子、故人の親、また兄弟姉妹等です。
これらの人を「法定相続人」といいます。
それとは別に、故人に遺言書によって指定された人も、財産を相続することができます。
こちらは「受遺者」といいます。
法定相続人と受遺者は条件が異なり、受遺者は、遺言で指定された財産のみ相続でき、その他のプラスの財産や、マイナスの財産には関係しません。
法定相続人についての詳しい説明
法定相続人とはどのような人を指すのか、詳しく見ていきましょう。
相続人の範囲が決められている
法定相続人は、法律によって範囲が決められています。
法定相続人になるのは、配偶者と血族のみです。
財産相続の際には、誰が相続人なのか、どの人が相続人に当たるのか、きちんと確定させる必要があります。
これは、あとから相続人だという人が現れ、遺産分割協議でもめたり、場合によっては遺産分割協議がやり直しになったりすることを避けるためです。
相続人を確定させるためには、故人が生まれてから亡くなるまでの、すべての戸籍を取り寄せる必要があります。
最後の本籍地で、過去の戸籍について尋ねれば、役所の担当者が教えてくれます。
時間も手間もかかる作業ですが、怠らずにすべての戸籍を取り寄せましょう。
法定相続人は順番がある
法定相続人には、配偶者をのぞいて、第一順位から第三順位までの順番があります。
第一順位相続人がいない場合、第二位、第二位もいない場合は、第三位が相続人になります。
配偶者は常に相続人となる
故人の配偶者は、順位とは関係なく、どのような場合でも相続人になります。
ただし相続者になるのは、正式な婚姻関係を結んだ配偶者のみで、事実婚のパートナーや内縁の妻は相続人になれません。
配偶者のほかに、誰も故人の親族がいない場合は、配偶者のみが相続人となります。
第一順位の法定相続人
配偶者の他、第一順位の法定相続人も、故人の財産を相続することができます。
第一順位に当たるのは、子供と、子供が亡くなっていた場合は孫になります。
これを代襲相続といい、相続人が死亡していたり、相続権を失っていた場合、その人の子供が代わりに相続することです。
第二順位の法定相続人
第二順位の法定相続人は、第一順位相続人がいない場合、故人の財産を相続することができます。
該当するのは、故人の両親や祖父母などの直系の尊属です。
第三順位の法定相続人
第三順位相続人に当たるのは、故人の兄弟姉妹で、故人に子供や孫、父母や祖父母などの直系親族(第一順位・第二順位)がいない場合に、相続人になります。
もしも、兄弟姉妹が故人より先に亡くなっていた場合、兄弟姉妹の子(個人にとって甥・姪)が、代襲相続します。
相続人が未成年の場合は代理人を立てる
もしも、相続人が未成年者だった場合、「代理人」を立てなくてはなりません。
通常は法定代理人は、その親が務めます。
しかし、親も相続人で、親と未成年者の間に「利益相反関係」が生じる場合、代理人になれないこともあります。
この場合は、家庭裁判所に「特別代理人」の申請をします。
ただし、未成年者であっても結婚してる場合などは、成人とみなされるケースもあります。
特定受遺者についての説明
「特定受遺者」とは、法定順位に関係なく、遺言で指定されて遺産を受け取ることのできる人です。
受け取る遺産が特定されているので、遺産に対する権利や義務が、法定相続人とは違います。
基本的に特定受遺者は、遺言で指示された遺産を受け取るだけなので、他の相続人と遺産分割の話し合いを行う必要はなく、故人の債務を引き受ける必要もありません。
そして特定受遺者は、指定された遺産の承認や放棄をすることができます。
相続の方法は三つある
誰が何を相続するかの方法には、大きく次の三つに分かれます。
民法による法定相続
相続の方法の一つに「民法による法定相続」があり、民法で決められた相続人以外は、故人の財産を相続できません。
故人の配偶者は、必ず相続人になります。
そのほかの相続人は、相続人順位が決められており、一人でも先の順位の人がいる場合は、第二順位・第三順位の人は、相続人になれません。
法定相続の場合は、以下の通りの割合で相続することになります。
同順位の人が複数いる場合は、相続分を人数で割ります。
配偶者・子: 2分の1・2分の1
配偶者・親:3分の2・3分の1
配偶者・兄弟姉妹:4分の3・4分の1
配偶者のみ、子のみ、親のみ、兄弟姉妹のみ:1
遺言による相続
「遺言による相続」では、故人は遺言によって相続人と相続の内容を、指定することができます。
相続人と遺産の内容は、故人が自由に決めることができます。
「遺言書」が正式に認められるためには、決められた形式にのっとって書かれていなくてはなりません。
形式によって、遺言書は以下の三種類に分かれます。
- 自筆証書遺言:遺言者が、遺言の全文・日付・氏名を自書し捺印した遺言
- 公正証書遺言:遺言者の指示により公証人が筆記した遺言書に、遺言者、公証人およびニ人以上の証人が、内容を承認の上署名・捺印した遺言
- 秘密証書遺言:遺言者が遺言書に署名・捺印の上封印し、封紙に公証人およびニ人以上の証人が署名・捺印等をした遺言
分割協議による相続
「分割協議による相続」とは、相続人全員が話し合って、遺産の分配の方法を決める相続方法です。
全員の合意のもと、各相続人それぞれの事情に応じて遺産を分けることができます。
相続割合は協議で決定されるので、特に決まりはありません。
さらに3つの財産相続方法がある
さらに、故人の遺産のどの部分を継続するかについても、三つの方法があります。
プラスマイナス関係なく、すべてを相続する「単純承認」、プラスの範囲でマイナス分も相続する「限定承認」、全ての相続を放棄する「相続放棄」です。
各内容をみていきましょう。
単純承認の手続きの仕方
「単純承認」とは、一般的な相続方法で、故人の資産も負債も含めたすべての権利と義務を、そのまま継承するものです。
とくに手続きをする必要はないので、一番取られる相続方法ではありますが、故人に借金が多く残っていると、その負債まで負わされてしまいます。
単純承認を選ぶかどうかは、故人に負債があるかを確認してから決定しましょう。
財産放棄と限定承認の手続きについて
故人に負債などがあり、相続財産の単純承認をしたくない場合、「財産放棄」と「限定承認」という方法があります。
「財産放棄」とは、プラスもマイナスも含めたすべての遺産を相続しないこと、「限定承認」とは、故人の財産のプラス分だけを引継ぎ、マイナスの部分は、プラスを超えない範囲で継続する方法です。
しかし、どちらの継続方法も、申告期限が3カ月と決められています。
その間に申請をしないと、自動的に単純承認になります。
もしも、ほかの相続方法を選択する場合は、3カ月以内に故人の住居地の家庭裁判所に、申告してください。
しかし、3カ月以内に決められない場合は、家庭裁判所で延長手続きも可能です。
相続財産の詳しい説明
相続財産とは具体的にどのようなものを指すのか、一つ一つ見ていきましょう。
大きく分けると、財産には、「積極財産」と呼ばれるプラス財産と、「消極財産」と呼ばれるマイナス財産の二つがあります。
積極財産と呼ばれるプラス財産
「積極財産」と呼ばれるプラス財産の内訳は以下のようなものです。
土地建物などの不動産
宅地・居宅・農地・店舗・貸地などの不動産は、積極財産です。
一般的に、相続財産の中で割合が高く、簡単に分けられないため、相続問題を起こしやすい財産といわれています。
借地権や地上権などの不動産の権利
借地権・地上権・定期借地権など、家や土地の借地権(借家権・借地権・定期借地件・耕作権・永小作健・賃貸/賃借契約など)は、相続財産にあたります。
借主が死亡した場合、相続人は大家などの許可を得る必要はなく、そのまま相続人に相続されます。
もし大家に契約者の死亡を理由に、立ち退きを迫られても、応じる必要はありません。
現金預貯金などの金融資産
現金・預貯金・有価証券・小切手・株券・国債・社債・債権・貸付金・売掛金・手形債券などは、すべて「金融資産」と呼ばれる財産で、プラス財産にあたります。
家財貴金属などの動産
車・家財・骨董品・宝石・貴金属・商品・原材料・製品・生産品などは、「動産」と呼ばれ、相続財産の一部です。
その他ゴルフ会員権特許権著作権など
株式・ゴルフ会員権・著作権・特許権・商標権・意匠権などの権利も、相続財産の一部です。
ただし、ゴルフ会員権などで、「会員が死亡したときはその資格を失う」などの記載がある場合は、相続の対象にはならないので、注意してください。
その他、慰謝料請求権、損害賠償請求権、電話加入権、生命保険契約に関する権利なども、このカテゴリーに分類されます。
ただし、生命保険契約など、受取人が決められている場合は、相続財産とみなされない場合もあるので注意が必要です。
消極財産と呼ばれるマイナス財産
「消極財産」と呼ばれるマイナス財産は、以下のようなものです。
故人が借り入れた借金
借金、買掛金、住宅ローン、手形、小切手など、故人が借り入れて未払い分すべてがマイナス財産となり、相続の対象になります。
故人が払い忘れた税金
未払いの所得税と住民税、固定資産税その他、故人が未払い分の税金全てがマイナス資産として、相続の対象になります。
その他の未払のもの
支払利息や未払いの家賃や地代、医療費など、故人が支払っていないものは、マイナス資産として相続の対象になります。
収益物件の敷金や預かり保証金などの返還債務
敷金や保証金などの預り金や、現時点で発生している保証債務だけではなく、将来発生するかもしれない保証人の地位なども継続されます。
財産相続で発生する相続税について
相続した財産に対して、相続人は相続税を支払わなくてはなりません。
相続税額の計算は、各相続人が実際に取得した財産に対して、直接税率をかけるのではなく、あらかじめ決められた基礎控除額を、差し引いた残りに税率を掛けたりして算出します。
また、相続税の納付期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から、10カ月となっています。
課税対象額の計算の仕方
課税対象額の計算の仕方を、詳しく見ていきましょう。
- 1.まず、プラス財産からマイナス財産を差し引いた、「正味の財産」を計算します。
- 2.税金のかからない「基礎控除額」を計算します。
- 3.生命保険の死亡保険金や死亡退職金など「みなし相続財産」を計算し、そこから非課税枠分を差し引きます。
(非課税枠は法定相続人1人につき、500万円) - 4.葬式費用など、贈与税控除の対象となる金額を算出します。
- 5.贈与税額を計算します: [1.]-[2.]+[3.]-[4.]。
この金額がプラスになると相続税が発生します。
まずは財産を確認する
まずは、すべての財産の確認をしましょう。
プラス財産の確認の仕方
プラスの財産といえば、大抵は預貯金と不動産です。
貯金については、預金通帳と郵便物から調査できます。
通帳でお金の流れが把握でき、郵便物で財産を管理している、預け先を知ることができます。
不動産がある場合は、固定資産税の支払いをしていれば、その管轄市町村に問い合わせができます。
さらに、どのような不動産を所有しているのか調べる方法の一つとして、「名寄帳」というその役所内の課税不動産の全てが記載されている帳簿を、役所で取得するという方法もあります。
ただし、課税されている不動産しかのっていないので、税金を支払っていない不動産を所有しているかを知るには、ほかの方法が必要です。
マイナス財産の確認の仕方
マイナス財産も相続の対象になるので、調査する必要があります。
マイナス財産も、預金通帳や郵便物を見れば流れがわかります。
定期的に引き落とされる金融会社や、ローン会社からの郵便にも気をつけてください。
住宅ローンなどもマイナスの相続財産に含まれますが、団体信用生命保険等の保険に加入していれば、ローン会社からの一括返済してくれる場合もあり、その手続きも忘れずに行ってください。
そうすれば、相続人はローンを支払う必要はなくなります。
その際に、もし抵当権が残っている場合は、相続登記と同時に「抵当権抹消手続き」を使用処理に依頼しましょう。
相続財産とはならないもの
その人にしか属さない権利や、年金等、相続財産とはならないものがいくつかあります。
運転免許証や医師免許、弁護士資格など、取得した個人だけの「一身専属の権利は、相続財産になりません。
また、会社の代表取締役の代表権や生活保護の受給権も相続はできません。
故人が誰かの身元保証人だったとしても、その関係は故人と相手の信頼関係のうえに成り立ったものなので、相続人が継続する必要はありません。
例外として、金銭貸借の保証人になった場合は、相続の対象になります。
しかし、財産放棄手続きを行い、保証債務を引き継がないことは可能です。
また、祭祀財産(仏壇・仏具、位牌、墓地・墓石など)は、バラバラに継承されると法要などを行う際に不便が生じるので、基本的に相続人のうち一人だけに継承されるとされています。
これらのものは、相続税の対象にはなりません。
基本的に、生命保険金や年金も相続財産の対象外です。
それは、生命保険は故人の財産ではなく、受取人の財産とみなされるからです。
しかし、被相続人が保険料を支払っていた場合、保険金は被相続人の財産でもあると考えられるため、一定の非課税枠はあるものの、一部は課税対象となります。
その他、民法上は相続財産にならないのに、税法上は相続税の対象となってしまう「みなし続財産」と呼ばれるものがあります。
死亡保険金や死亡退職金など、相続人が受け取るものの中で、民法上は故人の財産ではないので、相続財産ではないにもかかわらず、税法上は財産取得とみなされ課税対象になるものです。
みなし財産の課税対象額の計算の仕方
生命保険の中で、保険料の全額または一部を、故人が負担していたものは、「みなし相続財産」として相続税の対象となります。
ただし、故人の死亡保険金は、遺族の生活保障のためという意味があるので、一定の非課税枠が設けられています。
すべての相続人が受け取った保険金の合計が、この範囲内であれば、相続税はかかりません。
- 非課税枠:500万円×法定相続人の数
基礎控除額を計算する
相続財産から一定の額は基礎控除と呼ばれ、相続税の課税の対象から外れます。
残された遺産額が基礎控除以下の場合には、相続税はかかりません。
税金のかからない基礎控除額の計算は、以下の通りです。
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数
<例:法定相続人が妻と子供2人の場合の基礎控除額>
3,000万+600万×3人=4,800万円
葬儀費用は相続財産から控除される
葬儀費用は、基本的には相続財産から差し引かれますが、控除の範囲が決まっており、全てが認められるわけではありません。
認められるものと認められないものをみていきましょう。
認められるものには、本葬費用、仮葬費用、通夜費用、お寺への支払い、火葬費用、埋葬費用、納骨費用、遺骨回送費用などがあります。
葬式の前後に生じた出費の中で、通常葬式の範囲内と認められるものです。
また、葬式の際に施与した金品で、被相続人の職業、財産その他事情と合わせて、適応範囲内と認められるものが対象になります。
葬儀費用として控除が認められないものには、初七日の費用、香典返戻費用、位牌や墓碑及び墓地の買入費、墓地の借入料、法会に要する費用、医学上や裁判上で特別にかかった処置費用などがあります。
相続税の税率について
相続税は課税対象額に税率をかけて、控除額を引いて計算しますが、課税遺産の受取額(課税対象額)によって、税率と控除額が違います。
相続税の税率は以下のようになります。
課税対象額に税率を掛けて、控除額を引いた金額が、実際に支払う税金になります。
<課税対象額> <税率> <控除額>
1,000万円以下 10% ー
3,000万円以下 15% ? 50万円
5,000万円以下 20%? ? ? ?200万円
1億円以下 ? ? ? ?30%? ? ? ?700万円
2億円以下 ? ? ? ?40%? ? ?1,700万円
3億円以下 ? ? ? ?45%? ? ?2,700万円
6億円以下 ? ? ? ?50%? ? ?4,200万円
6億円超 55%? ? ?7,200万円
配偶者の税額軽減制度について
相続税ですが、配偶者にはさらに、「配偶者控除」という税額軽減制度が適用されます。
これは、夫婦が助け合ってこれまでの財産を築いたこと、配偶者は大抵故人と同世代のため、近い将来もう一度相続が起こり、同じ財産に二度も税金がかかること、さらに配偶者の老後を保障する意味で、適応されています。
婚姻の届け出を出してさえいれば、婚姻期間に関係なく、配偶者控除が受けられます。
配偶者は、実際に受け取った正味の遺産額が、法定相続分以内であれば、税金はかかりません。
また、法定相続分を超えても、1億6,000万円までは税金がかかりません。
配偶者控除を受ける場合は、決められた期限までに申告する必要があるので、忘れずに行ってください。
基本は、それまでに配偶者の相続分を決めて申告書を提出しなければなりませんが、相続分が決まらない場合でも、救済措置があります。
相続税のシミュレーションサイトを利用する
相続税の計算方法はわかっても、いくつも計算があるので、結局いくらなのか自分で計算することはなかなか難しいと思います。
今はインターネットに相続税の計算が簡単にできるシミュレーションサイトなど便利なものがあるので、概算を知りたいときなどには、これらのサイトを利用するのもいいでしょう。
参考:https://support-sozoku.com/souzokuzei/#c1
遺産相続も一から理解すれば難しくない
はじめは、何が何だかわからなかった遺産相続に関する専門用語や手続きも、一つ一つ見ていくことで理解できるかと思います。
実際に相続手続きを行うときには、相談すれば手助けをしてくれる専門家がたくさんいます。
ここで基礎知識を学んでおけば、どの場合にどの専門家に相談すればよいのかがわかるので、その都度、適宜専門家に相談する形をとるのが一番よいでしょう。