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病気やケガで会社を休むともらえる傷病手当金
病気やケガで会社を休む場合、1日や2日であれば有給休暇を使用するかもしれません。
しかし、治療が長引き何日も、場合によっては何カ月も欠勤しなくてはならなくなったり、有給休暇の残日数がなかったりする場合は、十分な報酬が受けられず生活も苦しくなります。
傷病手当金は、休業中に就労者本人とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。
これから、どういうときに受け取れるのか、また支給期間や金額に関しても確認していきましょう。
健康保険の傷病手当金が受け取れる条件
傷病手当金が受け取れる条件について、詳しく確認していきましょう。
業務外のケガや病気で治療中であること
健康保険を使って診察を受けたり、治療を行ったたりした場合のケガや病気に限らず、自費でこれらの診療を受けた場合も、仕事ができなくなって会社を休んでいることを示すことができれば、傷病手当金の受給が可能です。
また、自宅療養をしている期間についても同様です。
ただし、労災保険の給付対象にあたる、業務上や通勤災害によるケガ・病気や、美容整形のように、病気と判断されないものは対象外です。
ケガや病気が原因で治療中は働けないこと
ケガや病気が原因で仕事が継続できないことの判定は、療養担当者である医師の意見等が、最も重要な判定材料となります。
あわせて、被保険者の仕事の内容を考慮して、給付の判断がなされます。
例えば、妊娠中の看護師が、切迫早産の危険があると診断されて、産前休業前に休業した場合なども、支給対象になります。
4日以上の休業であること
仕事以外のことが原因でケガや病気になり、仕事を休んだ日から数えて、連続3日間を経過(待機)したあとで、「4日目以降の休業日」に対して、傷病手当金が支給されます。
待期には、有給休暇や、土日・祝日等の公休も含まれるため、給料の支払いの有無とは関係ありません。
また、仕事を休む原因となったケガや病気が、仕事をしている期間中に発生していたものである場合には、その日を待期の初日とします。
休業中は給料の支払いがないこと
仕事以外のことが原因でケガや病気になり、その期間の収入等、生活面での保障を行う制度であることから、給与が支払われている間は、傷病手当金が支給されません。
ただし、給料の支払いが行われていても、その額が傷病手当金の額よりも少ない場合は、差額分が支給されます。
なお離職後、任意継続被保険者となった期間に発生したケガや病気については、傷病手当金の支給対象ではありません。
支給される期間と金額
傷病手当金が支給される期間と金額は、どのようになっているのでしょうか。
支給期間は最長1年6カ月
傷病手当金の支給期間には限度があり、最長1年6カ月です。
ただし、この1年6カ月の間に仕事に復帰した期間があり、再び同じ病気やケガで仕事を休まなくてはならなくなった場合も、最初に傷病手当金を支給された時から数えて、1年6カ月しか支給されません。
この期間を超えた場合は、同じケガや病気で仕事を休んでいる場合であっても、傷病手当金の支給対象外になるため、注意が必要です。
退職後も受け取れる場合がある
退職して、健康保険の資格を喪失した場合でも、傷病手当金を受け取れます。
資格喪失日の前日(退職日等)までに、被保険者であった期間が継続して1年以上あり、資格喪失日の前日に、傷病手当金を受けているか、もしくは受けられる状態であれば、資格喪失後も引き続いて支給を受けられます。
ただし、いったん仕事に復帰できる状態に回復した場合は、その後、再び同じケガや病気で仕事ができない状態になっても、傷病手当金の支給対象となりません。
支給金額は標準報酬の3分の2
傷病手当金の支給金額は、初めて傷病手当金が支給された日(支給開始日)以前の、継続した12カ月間の標準報酬月額を平均し、それを30で割って3分の2をかけたものが日額となります。
例えば、標準報酬月額の12カ月の平均が30万円だったとすると、30万÷30万×2/3で、6,667円が日額の支給額です。
標準報酬月額とは、健康保険料の金額や、保険給付の金額を計算するときの基準となる数字で、仕事をしている人が会社から受ける、毎月の給料・手当などの月額を、一定の幅で区分したものです。
なお、健康保険の場合、1級の58,000円から50級の139万円までの全50等級に区分されます。
なお、支給開始日以前の継続した期間が、12カ月に満たない場合は、支給開始日が含まれる月以前の継続した期間における、「標準報酬月額の平均額」と、「当該年度の前年度9月30日における、すべての健康保険加入者の同月の標準報酬月額の平均額」とを比べ、少ないほうが使用されます。
健康保険の傷病手当金の申請方法
ここからは、具体的な申請方法を見ていきましょう。
主にサラリーマンが加入している「協会けんぽ」の申請書を例にとって説明します。
申請書に必要事項を記入する
協会けんぽの「傷病手当金支給申請書」は、勤務している地域の協会けんぽ各支部で入手できるほか、ホームページからもダウンロードできます。
なお、ダウンロードできる申請書の形式はPDFファイルで、「手書き用」と、パソコンなどでPDFファイルに直接入力ができる「入力用」があります。
本人記載部分に自分で記入する
まずは、申請書の1枚目に、被保険者証の記号・番号、生年月日、氏名、住所、電話番号を記入します。
そして、傷病手当金を受け取る銀行口座の情報を、記入します。
また、代理人が受け取る場合は、代理人の氏名、住所、申請者との関係などを記入します。
申請書2枚目には、傷病手当金の支給を申請するに至ったケガや病気のことを記入します。
傷病名、初診日、ケガか病気かの区分、そして療養のために休んだ期間と仕事の内容などです。
また、ケガや病気で休んでいた期間中に報酬を受け取ったかどうか、障害厚生年金、障害手当金、公的年金、労災保険の休業補償給付の受給有無などを、確認欄に記入します。
会社記載部分を会社など雇用先に記入してもらう
申請書の3枚目は事業所(会社)が記入する用紙なので、労務や人事の担当者にお願いして記入してもらいます。
会社から受け取ったら、事業所の証明欄に事業所所在地・事業所名称・代表者の氏名が記載されていることと、事業所印が押印されていることを確認しましょう。
医師記入欄に医師や療養機関に記入してもらう
最後の4枚目は療養担当者、いわゆる医師が記入する用紙です。
入院中や通院中に、病院・診療所の窓口で記入を依頼します。
通常は医師が書類を作成するまでに、数日~数週間を要するので、早めに依頼することがポイントです。
支給申請書を健康保険に提出
全ての書類が揃ったら、加入している健康保険組合に郵送または持参して提出します。
これら一連の書類提出を、会社が代行してくれる場合もあります。
また、現在の職場での健康保険加入期間が、12カ月に満たない場合などは、別途提出書類が必要な場合もあります。
加入している健康保険組合や、会社に確認しておきましょう。
傷病手当金を受給する際の注意点
傷病手当金を受給する際の注意点には、どのようなものがあるでしょうか。
生命保険に新たに加入できない場合がある
生命保険に新たに加入する際の審査では、病歴が主なチェック対象になりますが、傷病手当金の給付を受けていた期間も審査対象になることがあります。
ケガや病気が回復して、傷病手当金の受給終了後、おおむね5年以上が経過すると、多くの生命保険では問題なく加入できるようになります。
また、治療継続中でも加入できる保険もあります。
傷病手当金を受給中は失業保険を受給できない
仕事へ復帰できずに退職した場合、雇用保険から失業保険給付を受けられます。
しかし、退職前に傷病病手当金を申請していて、退職後も傷病手当金を受給している間は、失業保険給付は受けられません。
傷病手当金をすべて受給し終わったあとも、仕事に復帰できない場合は、障害年金を申請することをおすすめします。
注意点もあるがメリットは多いのでぜひ活用を
傷病手当金は、ケガや病気でやむを得ず休業することになった期間の生活を、保障してくれる制度です。
受給に際して、申請手続き上の注意点や、受給期間に関する決まりごとなどがありますが、収入が滞っている期間の生活を支えてくれるメリットの大きな社会保障の仕組みです。
わからないことは、会社や加入している健康保険組合に確認して、ぜひ活用してください。