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多額の借金を相続しないために
相続財産の中に多額の借金があり、相続したくない時は「相続放棄」という手段があります。
相続を放棄するわけですから、借金だけでなく、債権等も同時に放棄することになります。
また、いつでもできるわけではありません。
多額の借金を相続しないために、相続放棄のメリット・デメリットを知っておきましょう。
相続放棄で借金をゼロにする方法
まずは財産をすべて把握する
相続人が相続放棄をすると、最初から被相続人の相続人ではなかったことになるので、一切の相続ができなくなります。
借金などのマイナスの遺産はいいと思いますが、それと同時に不動産や預貯金などのプラスの遺産も相続できません。
借金だけ放棄してプラスの財産だけを相続するといった都合の良いことはできず、また一度相続を放棄すると、原則として取り消すことができません。
後に高額な遺産があることがわかっても、取り消すことができないので、相続放棄の期限内にしっかり遺産の調査をして手続きをするか、判断する必要があります。
手続きに必要な書類を取得する
どういうケースであっても、原則、下記の5つの書類を用意しましょう。
【相続放棄申述書】:相続放棄申述書は裁判所のウェブサイトからダウンロードできますし、裁判所にも置いてあるので直接行っても入手できます。
記入する内容は自体はそれほど難しくありませんが、「申述の理由」を書く欄に関しては、相続放棄をするに当たっての肝を書く箇所ですから重要な部分になります。
【被相続人の住民票除票、戸籍の附票】:被相続人が亡くなった事実を裁判所に明確に知らしめるために、亡くなった記載がある住民票(除票)、戸籍の附票が必要になります。
住民票の場合は、被相続人が住民登録をしていた市区町村に、戸籍の附票の場合は、被相続人の本籍地の登録がある市区町村にて手続きをします。
【申述人の戸籍謄本】:申述人(相続人)の身分も証明する必要があります。
本籍が置いてある市区町村で手続きをしましょう。
【収入印紙(800円分)】:相続放棄申述書に収入印紙(800円分)を必ず貼る必要があります。
【切手】:82円切手を5枚ほど用意しておきましょう。
家庭裁判所に申立てを行う
上記の必要書類が集まったら、次は実際に家庭裁判所に申立てを行います。
ここで注意すべきは、どこの家庭裁判所でも良いというわけではなく、被相続人の住所を管轄している家庭裁判所になります。
家庭裁判所は全国各地に点在しているので、どこの管轄になるのか、よく注意して申立てを行います。
相続放棄を行う際の注意点
相続放棄の手続き期限に注意
相続放棄はいつでも都合良くできるわけではありません。
「相続があったことを知った日から3カ月以内」に手続きをしなければならないと決まっています。
この期間を「熟考期間」と言います。
熟考期間内に相続放棄をしなかった場合、「単純承認」と見なされ、後から相続放棄をできなくなることもあるので、注意が必要です。
負債の遺産分割協議には債権者の同意が必要
マイナスの相続遺産に関して遺産分割協議をして相続しないと決めても、債権者には効力がなく、債権者の同意が必要になります。
遺産分割協議はあくまでも、相続人の間で話し合った結果、決めた内容にすぎず、債権者は関わっていないので、債権者に対して効力は及びません。
債権者との関係では、当然ながら法定相続分の割合で債務を負担することになります。
相続権が別の親族に移ってしまうことがある
相続放棄を行なった場合、相続人はそもそも相続人でなかったことになります。
その場合は、その相続人の次に相続するべき人が繰り上がって相続人(推定相続人)になり、つまり相続権が誰か(別の親族)に移ることになります。
これの意味するところは、法定相続人は債務を相続してしまう可能性があるということです。
あなた自身が相続放棄をしても、他の親族が相続の対象になることがあるので注意しなければなりません。
借金の存在を知らなかったら
被相続人に全く相続財産が無いと思っていた場合
熟考期間が過ぎた場合でも、例外的に相続放棄が認められることがあります。
あくまでも「例外的に」なので「特別な事情」がある場合に限定されます。
ここでいう特別な事情というのは、相続人が相続の開始を知った時から3ヶ月以内に相続放棄をしなかったのが、被相続人の財産は一切ないと思い、またそう思ったことに相当な理由がある場合で、その際に、熟考期間の起点を相続財産があるのを知った時から3ヶ月に変更できることがあります。
プラスの財産のみで借金は無いと思っていた場合
3ヶ月の熟考期間内に相続放棄等の手続きをしなかった場合は、単純承認となり、原則的にはもう相続放棄はできません。
ただし、借金があることを知らなかった相当な理由があれば、熟考期間の起算が借金があったことを知った日から3カ月以内に変更され、相続放棄が認められる場合もあります。
借金の存在を知らず相続財産を処分してしまった場合
相続を無条件に受け入れることを「法定単純承認」といい、法定単純承認になる理由に相続財産の処分があります。
相続人がもし相続放棄などをする場合、相続財産を自由に処分は当然できないはずです。
にも関わらず、相続人がもし相続財産を処分したとすると、その相続財産は相続人自身のものであると推定されるわけです。
相続財産を処分してしまうと、上記の法定単純承認したと見なされるので、相続放棄等ができなくなってしまうので注意が必要です。
相続財産とは、あくまでも相続するものであり、生命保険金や死亡退職金などは受け取る人の固有の財産なので相続財産にはならないので、仮にこれらを受け取っても相続財産の処分には当たりません。
被相続人の死亡自体を知らなかった場合
上記以外にも熟考期間が過ぎても相続放棄が認められる場合があり、それは相続人が被相続人の死亡した事実を知らなかった場合です。
家庭裁判所はこの事実を知る由もないので、死亡の事実を知らないということを別途、説明する必要があります。
相続放棄を正しく理解しよう
相続する財産の中に、多額の借金などの債務がある場合は相続放棄をした方がいいケースもあります。
しかし、相続放棄は原則、一度認められてしまうと撤回はできませんし、もちろんプラスの相続財産も一切相続できません。
また、相続放棄をした結果、その他の親族、親や兄弟に影響が及ぶ可能性もあります。
相続放棄をするに当たって、3カ月の熟考期間が与えられていますから、相続財産の調査をしっかり行い、相続放棄を正しく理解しましょう。