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相続放棄の手続きと流れは
ドラマやニュースでも聞くことのある「相続放棄」という言葉ですが、実際にはその詳細を知る方は少ないのではないでしょうか。
多くの方のイメージである、亡くなった方の借金が多い場合に使う制度という認識だけでは損をしてしまう場合もあります。
損をしないためにも相続放棄について基本からしっかりと理解しておきましょう。
事前に知っておきたい相続放棄の知識
相続はプラスになることもあれば、マイナスになることもあります。
そんな以外な相続に関する知識を解説していきます。
相続放棄の検討が必要なときがある
相続には単純承認・限定承認・相続放棄の3種類があります。
単純承認はなにもせずそのまま相続することです。
相続した財産がプラスの財産よりもマイナスの財産が多かった場合、単純承認すると相続したとしても結局マイナスの財産によってプラスの財産はなくなってしまいます。
あまり有名な制度ではないですが、限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの遺産を相続することです。
つまり相続財産が、プラスの財産よりも、マイナスの財産(主に借金等)が多かった場合、限定承認か相続放棄を選ぶことになります。
ただし、限定承認は手続きが複雑なため現実にはほとんど使われていませんので、実際は相続放棄を選択することになるでしょう。
相続放棄をするメリットを知る
相続放棄のメリットは複数ありますが一番大きいのは、マイナスの財産を受け継がなくて済むということです。
マイナスの財産がいつまでも相続され続けてしまう負の連鎖を断ち切ることができるのです。
相続放棄をする多くの場合は、亡くなった方に借金が多くあった場合です。
ここで、財産も同時に存在すれば返済が可能となるのですが、財産もまったくない状態だとすると、相続した場合借金だけが相続されることになります。
このような場合、相続放棄をすればそもそも相続人でなくなりますので借金を支払わなくてすむというメリットがあります。
相続放棄をするデメリットを知る
相続放棄したあとに実際あったケースでは、生前、不動産の共同所有者になっていたり、数百万単位の債権を持っていて、亡くなったあとその事実を聞いて負債者が返済しにきたりと、家族が知らなかった財産があったということもあります。
しかし、相続放棄をした場合、例外を除き撤回することはできません。
したがって、相続放棄する前には本当に財産がないのかしっかりと調査することが大切になってきます。
相続放棄の手続き方法と流れ
実際に相続放棄をする際に必要な手続きと流れを紹介していきます。
まずは相続財産の調査をおこなう
相続財産の調査は、役所等に任せてしてもらうことはできません。
自分でおこなうことになります。
相続財産の調査の対象は、主に不動産と預貯金となります。
亡くなった人にしかわからない財産もあるかもしれませんので、念入りに調べる必要があります。
預貯金は通帳やキャッシュカードから調べることができます。
不動産を所有している場合、固定資産税を支払っているため通知がきているはずです。
不動産を所有していることがわかった場合は、法務局に登記事項証明書を請求しましょう。
登記事項証明書は誰でも請求できるのですが、銀行の預貯金の残額を知るには家族であっても問い合わせてから時間がかかる場合があるため、時間に余裕をもっておこなってください。
必要な費用と書類を用意する
相続放棄に必要な書類は基本的に3種類です。
- 1.相続放棄申述書
- 2.亡くなった人の住民票除票または戸籍附表
- 3.相続放棄を申し立てる人の戸籍謄本
書類ではありませんが、相続放棄申述書に収入印紙800円分を貼る必要があります。
収入印紙は法務局で買うことができます。
裁判所へ相続放棄を申し立てる
念入りな財産調査の結果、プラスの財産よりマイナスの財産が多かった場合は、「被相続人の住民票の届出のある場所を管轄する家庭裁判所」へ相続放棄を申し立てます。
裁判所といっても、どこの裁判所でも良いわけではありません。
裁判所には簡易裁判所や家庭裁判所等の種類があるため、気をつけましょう。
相続放棄の申述は亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所に対しておこなうことになります。
家庭裁判所から照会書が届く
相続放棄を申立て後、約10日後に家庭裁判所から相続放棄に関する照会書が送付されます。
相続放棄照会書は家庭裁判所によって形式が異なりますが、照会を受ける人の名前で相続放棄の申述があったことや、相続放棄の注意事項が記載されております。
照会書に相続放棄回答書が一体になっている場合には、そこに必要事項を記入して返送します。
照会書と相続放棄回答書が別になっている場合には、同封の相続放棄回答書に必要事項を記入して返送します。
家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届く
照会書返送後約10日間が過ぎると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が送付され、正式に相続放棄が認められたことになります。
相続放棄手続き期限について
手続きには期限がありますので、注意しましょう。
申立てをおこなう期限は3カ月
相続放棄の申し立てを行うには期限があります。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならないと民法に定められています。
この期間を過ぎると相続放棄の申し立てができなくなりますが、やむを得ない事情がある場合は期間を伸ばすことも可能です。
期限を過ぎてしまいそうなときは
まだ期限は過ぎていないが財産調査に時間がかかったり、やむを得ない事情によって3カ月の期限以内に相続放棄の判断が難しい場合には、「相続放棄のための申述期間伸長の申請」を行ってください。
こちらの申請は家庭裁判所に対し行います。
申請内容によって1か月から3か月の延長がなされます。
申請したとしても、必ず認められるわけではないことに注意してください。
相続放棄の手続きは慣れない手続きであるうえに、準備に時間がかかることが多いため、期間伸長の手続きの存在を知っておくことはとても大事です。
期限を過ぎてしまったときは
すでに相続放棄の期限が過ぎてしまった場合は、裁判所に特別に期限の延長を認めてもらう必要があります。
期限前の申請より認めてもらえる可能性が低いですが、事情によっては認められる場合もあるため、弁護士など相続の専門家に相談することが望ましいでしょう。
スムーズに手続きするために事前に準備しておこう
相続放棄には期限があるため、手続きの際はスムーズに進める必要があります。
相続放棄の申述自体は亡くなる前にすることはできませんが、財産調査を前もってしておくことはできます。
生前に財産の話しを持ち出すのは気がひけるかもしれませんが、相続においてとても大切な作業なので、冷静に話してみることをおすすめします。
一番準備がかかる財産調査を、事前におこなっておくことで、亡くなってからの手続きがとてもスムーズになるので、行っておきましょう。