相続する財産の税金と申告のこと
相続税とは、亡くなられた人の財産を受け継いだときにかかる税金のことです。
相続する金額によっては、税金を納めなくてもよい場合があります。
税金の計算方法は少し複雑ですが、しっかりと計算をして余計な税金を払わないようにしましょう。
税金の申告と控除などの計算、申告までの流れをつかんで、相続するときにやらなければならないことを、しっかりと把握しましょう。
申告や納税までの期間も定められています。
申告に必要な書類など準備に時間がかかることもあるので、早めに進められるようにしましょう。
相続にかかる税金の申告について
相続税といっても全ての相続に対して税金がかかるわけではありません。
では、どのような場合に税金の申告が必要となるのでしょうか。
遺産総額が基礎控除額超過時に申告する
課税対象と課税対象外の財産や基礎控除額の算出方法を理解しましょう。
相続税の課税対象になる財産
相続税は、相続税法に基づいて税金が課せられます。
まず、相続税には課税対象になる財産と課税対象にならない財産があります。
課税対象になる財産は、土地や建物などの不動産や現金や預貯金、ゴルフ会員権や有価証券、債券、特許権、自動車や貴金属・骨董品などがあります。
主に、売買ができるものが対象となります。
もし、日本に在住していた外国人が日本でなくなった場合は、海外で所有していた財産も相続税の対象となります。
また、相続開始から3年以内の贈与も相続税の課税対象となります。
【参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4105.htm】
相続税の課税対象にならない財産
課税の対象とならない財産は、墓地や墓石などの祭祀継承されるものです。
しかし、その中でも骨董価値や投資価値のあるものは課税対象となります。
死亡保険金や死亡退職金などは500万円×法定相続人の数で算出した金額まで非課税となります。
これを超えた部分は課税対象になるので注意してください。
【参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm】
相続税の基礎控除額の確認
相続税の基礎控除額は、
3000万円+600万円×法定相続人の数=相続税の基礎控除額
で算出されます。
法定相続人の数は相続放棄した人や財産を承継しない相続人、特別養子縁組による養子はその数全てを含めることができます。
また、実子がいる場合の普通養子は1人まで、実子がいない場合の普通養子は2人まで法定相続人の数に含めることができます。
死亡保険金・死亡退職金・相次相続控除・障害者控除などの非課税枠や控除の適用があった場合には、上乗せして算出できます。
算出結果が遺産総額を下回る場合は、申告が不要となります。
相続税の申告が必要ない場合
相続税には基礎控除額が設けてあり、その金額を下回る場合は相続税の申告は必要ありません。
また、課税遺産総額がゼロ以下の場合、特例の適用を受けていない場合は申告の必要はありません。
基礎控除額は、法定相続人が1人では3,600万円、2人では4,200万円、3人は4,800万円、4人は5,400万円、5人は6,000万円と定められています。
相続税を納めている人は、国民全体の割合から見るとそれほど多いものではありませんが、もし基礎控除額を上回る場合は忘れずに申告をしましょう。
納税額がない時でも申告が必要な時
基礎控除額以外にも税額を軽減できる制度があります。
しかし、その軽減を受けようとするときは、申告が必要です。
配偶者の税額軽減で納税額がない場合
配偶者は遺産の2分の1までは、非課税となります。
その金額に上限は設けられていません。
例えば配偶者と子ども1人が10億円の遺産を相続するとします。
通常であれば2分の1ずつなので、5億円ずつに分けられます。
配偶者は遺産の2分の1しか相続していないことになるので、この場合は非課税です。
しかし、これは「配偶者の税額軽減」という特例の適用に該当します。
この場合は前提として相続税の申告が必要なので忘れずに申告しましょう。
【参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm】
小規模宅地の特例で納税額がない場合
小規模宅地等の特例とは、亡くなられた方が自宅として使用していた土地を100坪までは8割引きで相続して良いという特例です。
100坪を超える場合は、100坪までは8割減、それ以上は通常の評価額にて換算されます。
この特例を受けることができるのは、配偶者と同居していた親族のみです。
特例の適用を受ける場合は前提として相続税の申告が必要です。
相続にかかる税金の納付義務があるのは
相続税の基礎控除額を超えた場合は納税の義務があります。
納付義務のある人の基準を説明します。
原則として遺産を承継した相続人や遺贈を受けた人であることを前提とします。
- 財産を受け継いだときに、日本国内に住所がある人
- 財産を受け継いだときに、日本国籍であるが日本国内に住所が無い場合
- 相続する10年以内に日本国内に住所があった人
- 相続する10年以内に日本国内に住所が無かった人
- 財産を受け継いだときに、日本国籍でない人
- 上記に該当しない人で、贈与により相続時精算課税の適用を受ける財産を受け継いだ人
【参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm】
相続税の納付方法
相続税の納付について確認しておきましょう。
納付の期限
相続税法27条・33条で定めてあるとおり、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に納付しなければいけません。
例えば、1月20日に死亡した場合は、申告期限は11月20日です。
この期限の日が土日・祝日の場合は、翌日が期限となります。
納付できる場所
納付できる場所は、管轄の税務署窓口やゆうちょ銀行等の金融機関の窓口などがあります。
申告期限までに申告しても、税金を期限までに納めなかったときは利息にあたる延滞税がかかる場合があります。
申告書の提出期限までに行うようにしましょう。
通常は、現金にて一括で納付しなければいけません。
しかし、相続税においては特別に延納と物納制度があります。
延納は何年かに分けて納税すること、物納は相続で受け継いだ財産などで納めることです。
もし、この延納や物納の制度を利用する場合は、申告書の提出期限までに税務署などに申請して許可を得る必要があります。
延納や物納の制度はありますが、審査が厳しく申告した人全員が受けられるとは限りません。
受けられない場合のことも考えて、早めに準備をしましょう。
相続税の計算方法
相続税の計算方法を知り、いくらかかるのか算出できるようにしましょう。
相続税の課税価格を計算する
相続税を計算するには、相続人それぞれの課税価格を計算します。
課税価格の計算方法は、
本来の相続財産 + みなし相続財産 ー 非課税財産 + 相続時精算課税による贈与財産 ー 債務及び葬式費用 = 純資産価額
純資産価額 + 相続開始前3年以内の贈与財産 = 各人の課税価格
みなし相続財産とは、生命保険や死亡保険金、死亡退職金などのことをいいます。
死亡保険金や死亡退職金は500万円×法定相続人の数までは非課税になります。
法定相続人とは、遺産相続を放棄した人も含めての人数となります。
相続税の総額を計算する
相続税の総額の算出方法を確認しましょう。
課税遺産総額を計算する
各人の課税価格を計算したら、その価格の合計金額を算出します。
各人の課税価格の合計金額から基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を引いた金額が課税遺産額となります。
【参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm】
各法定相続人の税額を計算する
課税遺産額をそれぞれの相続の割合で算出します。
算出した金額は、相続税の基になる金額となります。
それぞれの金額に応じて、税率が変わります。
該当する税率と控除額を使用して、課税価格×税率-控除額で算出します。
税率と控除額は、1,000万円以下は10%、3,000万円以下は15%・控除額50万円、5,000万円以下は20%・控除額200万円、1億円以下は30%・控除額700万円、2億円以下は40%・控除額1,700万円、3億円以下は45%・控除額2,700万円、6億円以下は50%・控除額4,200万円、6億円超えは55%・控除額7,200万円です。
【参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm】
各法定相続人の相続税額を合計する
各法定相続人の税額で計算した金額を合計します。
合計した金額が相続税の総額となります。
ここまでで、相続税の総額の計算が終わりです。
各相続人の実際の納税額を計算する
1人1人の相続人の納税額を計算して、実際に必要な納税額を算出しましょう。
相続税の総額の実際の相続割合で計算する
相続税の総額は、相続する人全員の税額となるので、各人の相続の割合で計算しなければいけません。
相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計
で算出します。
各相続人それぞれの控除や加算で計算する
各人の相続税の金額が算出されたら、次に税額の軽減や控除などを計算して、実際に納税する相続税額が算出できます。
控除には、配偶者の税額軽減や贈与税額控除や未成年者控除などがあります。
また、配偶者と一親等親族以外、例えば被相続人の兄弟姉妹や、おい、めい、被相続人の養子などが相続する場合は、相続税の税額2割加算があります。
相続にかかる税金の申告と納税の流れ
税金の申告に必要な準備と納税までの流れを把握しましょう。
遺産全体の把握をする
まずは、遺言書の有無の確認や相続人と相続財産の調査をします。
遺言書があった場合は、遺産分割は遺言書通りに行います。
しかし、遺言書があったからといってその場ですぐに開封してはいけません。
遺言書の種類によっては家庭裁判所にて検認を受けなければなりません。
検認を受けずに開封した場合は、罰金などを支払わなければならない場合もあるので注意しましょう。
遺言書が無い場合は、戸籍調査と遺産・財産の調査を行います。
遺品整理をしながら、通帳やキャッシュカード・金融機関からの郵便物などから銀行口座を、ネット銀行も普及しているので、パソコンのメールやブックマークなども要チェック。
家や土地は固定資産税納税通知書や登記資料、名寄帳など調べる方法は複数あります。
すべての財産、債務の有無などを確認しながら財産目録を作成していきましょう。
見落としている財産がないか、慎重におこなうことが重要です。
遺産分割内容を決定する
遺言書が無い場合は、相続人全員で遺産をどのように分けるか決めます。
これを遺産分割といいます。
遺言書が無い場合は、なかなかスムーズに遺産分割の内容が決まらない場合が多いでしょう。
まず、相続人全員で話し合います。
話し合いで決定できないときは、家庭裁判所での家事調停で調停委員会にて意見を求め決定します。
それでも決定できないときは、家庭裁判所にて裁判官が遺産分割を行います。
相続人はその決定に従い相続します。
裁判官が遺産分割した場合は、一切内容を変更することはできません。
決まらない場合は、上記のように順序立てて決定していくことになります。
遺産分割協議書や相続税申告書等を作成する
遺産分割の方法が決定したら、遺産分割協議の内容をまとめ遺産分割協議書として作成します。
これは、相続人全員の合意を明確にし、のちのちの無用なトラブルが起こらないようにするためや、不動産や預貯金、自動車等の名義変更の手続きや相続税の申告時に必要となります。
遺産分割協議書には、決まった形式や書式はありません。
土地や建物などの不動産においては、登記簿謄本に記載されているとおりに、預貯金、車、株式、債務なども漏れなく正確に記載しましょう。
相続税の申告が必要な場合は、申告書を作成します。
申告書には第1表から第15表と多くの様式があります。
第1表が申告書となり、その他は計算書や明細書といった様式となります。
相続人の立場や相続する財産によって記入する様式は異なります。
申告書の詳しい作成方法は、申告書をもらうときに一緒にもらえる「相続税の申告のしかた」という冊子に記載があります。
この冊子を参考に記入していきます。
冊子だけでは分からない場合は、税務署でも相談にのってくれるので確認しましょう。
相続人や受遺者による署名捺印を行う
遺産分割協議書を作成したら、相続する全ての人の署名と捺印が必要となります。
複数のページで作成した場合は、契印を押します。
署名は自署で行い印鑑はなるべく実印が望ましいでしょう。
遺産分割協議書は契約書のようなものになり、話し合いで決定したことを覆されないようにするため、また、それぞれの相続人が実際に存在しているという証拠にもなります。
協議書は、複数通作成した場合や製本テープなどで作成した場合は、割印を押します。
また、のちのちの争いが起きたときでも早期解決が可能な場合もあるので、相続する人数分作成して、それぞれで1通ずつ持つことが望ましいでしょう。
相続税申告および相続税納付を行う
遺産分割協議書、申告書を作成できたら管轄の税務署へ申告を行います。
申告に必要な書類は、相続関係がわかる書類(マイナンバー、戸籍謄本、免許証やパスポートなどの写し、遺言書や遺産分割協議書、相続人・被相続人の住民票、印鑑証明書など)、遺産の内容を証明する書類(不動産・預貯金の状況がわかるもの、生命保険の状況・契約内容がわかるもの、退職金や負債の状況がわかるもの、葬儀費用の内訳がわかるものなど)とたくさんの種類の書類が必要です。
相続税の申告及び納税期限は相続が発生したことを知った日の翌日から10カ月以内と決められています。
申告漏れや不備があると税務調査が入る場合もあるので、慎重に行いましょう。
相続税の申告は相続に詳しい税理士に相談を
申告までの期間が10カ月と長いように感じますが、財産の調査を行うだけでもあっという間に時間が過ぎてしまうものです。
また、故人への悲しみに浸っている暇もなく、相続の手続きに取りかからなければなりません。
もちろん、時間はかかると思いますが、いろいろと調べながら自分ですべてを行うことも可能です。
任せられるところはプロの税理士に相談・依頼するほうが節税や申告漏れなどのミスも防げます。
税理士に任せたほうが税務調査に入られるケースも少なくなるようです。
デメリットとしては費用がかかることです。
税理士や弁護士を上手に利用して、相続税に申告をスムーズに行いましょう。