返しすぎたお金の返還請求はできる?
あなたが、カードローンやキャッシングなど消費者金融やクレジット会社からお金を借り、返済しているか返済済みであれば、返しすぎたお金を返還請求できるかもしれません。
貸金業者は、民事上無効にも関わらず刑事罰が科せられない「グレーゾーン金利」を利用して利息制限法の上下を超えた利息を取っている場合があるからです。
しかし、そのためには過払い金があることを証明する必要があり、その他にも一定の条件があります。
テレビコマーシャルでもよく聞く「過払い金返還請求」とは、いったいどのようなもので、どんな手続きが必要なのでしょうか。
返還請求のメリット
過払い金返還請求は、返しすぎたお金を取り戻す手続きです。
お金が戻るのはありがたいのですが、その他にもメリットはあるのでしょうか。
返還請求におけるメリットをいくつか見てみましょう。
払いすぎた利息が返還される
もし返しすぎているお金があれば、貸金業者に請求すれば簡単に取り返すことができます。
それは自分自身で請求してもよいですし、司法書士・弁護士に依頼してもよいことになっています。
過払金は貸金業者によって戻ってくる過払金の返還率や、請求後お金が実際に返還されるまでの期間、返還請求に対してどんな対応をされるかは全く違います。
返還請求する前に、請求する貸金業者が過払金に対してどのような対応をしているか最新の情報を調べておきましょう。
完済している場合ブラックリストに登録されない
完済しているなら、返しすぎたお金は簡単に取り返すことができます。
もし戻ってきた過払金が多かったら、そのときに借り入れが必要だったとしてもそれに充当するなどして新たな借り入れを減らす、または借り入れしなくてもよくなるかもしれません。
また完済していれば借り入れ契約は完済の時点で終了していますから、ブラックリストに登録されることもありません。
返済中であれば返済額が減る
まだ返済途中であれば、すでに返してしまっている金額が過払い金返還請求の対象です。
もしその中に過払金があれば、まだ残っている借り入れに充当することができ、過払金が多ければ完済できるかもしれません。
完済できなくてもその分借り入れ残高を減らすことができるため、今後の資金計画は大きく改善するでしょう。
返還請求のデメリット
一方、過払い金返還請求には状況によってデメリットもあります。
お金が戻ってくることだけに目を奪われるのではなく、返還請求後にどのようなデメリットの可能性があるのかを詳しく知って行動しましょう。
返済中であればブラックリストに登録される
返済途中で過払い金返還請求するときは、信用情報機関のブラックリストに登録されることを覚悟しなくてはなりません。
この場合過払い金返還請求は、まだ借り入れ契約が有効である期間中に、その契約に対して変更を申し出ることです。
そうすると完済までの間は事故情報として履歴が残ります。
ブラックリストに登録されると、その貸金業者に限らず、他の貸金業者からも借り入れできなくなる、クレジットカード審査が通らない、クレジットカードが使えなくなるといったことが起こり、信用情報機関に保管されれいる5年間はその状態が続きます。
完済すればリストから削除されますが、完済までの期間が長いときは注意が必要です。
返還請求先から今後借りることができなくなる
一度過払い金返還請求すると、その貸金業者からは今後借り入れはできなくなります。
しかもキャッシングだけでなくクレジットでのショッピングや、もし利用しているならETCも利用できません。
今後の借り入れの必要や買い入れ先の確保を考えて慎重に考えるようにしましょう。
弁護士などに依頼する場合手数料がかかる
過払い金請求は自分でもできますが、法に則って請求するには法律について・手続きについて知る必要があります。
そのため多くの方が弁護士や司法書士に依頼しています。
その方が手続きに漏れがなく安全で、スムーズに進むことが多いようです。
主な費用は着手金・成功報酬・過払い報酬の3種類ですが、依頼先によっては高額な報酬を請求されることもあるので、正式に依頼する前に具体的に検討しましょう。
また取り戻した過払金が少額の場合、弁護士・司法書士へ支払う報酬を差し引くと手元にはわずかしか残らないこともありえます。
「お金が戻る」ことだけに目を奪われず、具体的に結果がどうなるかをしっかり見据えて決めましょう。
過払い金が返還されるまで
過払い金があることがわかれば、それを正式に請求して返還してもらわなくてはなりません。
それには正式な書類と手続きが必要です。
それを専門家に任せるか自分で手続きするか、それぞれ方法が異なります。
弁護士に依頼する場合は弁護士との契約が必要
過払い金請求を考えたとき、最初にすべきなのは専門家への相談です。
弁護士・司法書士によっては「無料で相談できる」こともありますから上手に利用するようにしましょう。
返還請求について必要な資料を用意するなどいくつか相談前に準備する必要があるかもしれません。
また、過払い金返還請求するにあたって不安なことはや疑問なことはできるだけこの時点で相談しましょう。
中には「自分のお金にまつわることを他人に任せる」ことに後ろめたさを感じ、なかなか全てを話せないこともあります。
しかし弁護士や司法書士には依頼人の秘密を口外しないという守秘義務があります。
どんなことでも口外することはありませんから安心して尋ねてください。
相談で十分納得したら、正式に返還請求を依頼します。
過払金請求委任契約を取り交わした後は、自分に代わって専門家が相手の貸金業者とやりとりしてくれますので任せましょう。
ここで気をつけたいのは、請求にまつわる決定をするのは依頼者自身だということです。
弁護士や司法書士はあくまであなたの代理であり、法律上のアドバイスはしますが決めるのはあなた自身なのです。
進行状況をきちんと聞き、把握しておく必要があります。
過払い金がいくらあるか引き直し計算をする
貸金業者がお金を貸すとき適用されるのは利息制限法という法律で、これによって貸金利息の上限は、元金10万円未満なら年利20%まで、元金が10万円以上100万円未満なら年利18%まで、元金100万円以上なら年利15%までとされています。
ところが2010年までは利息制限法に違反して金利がオーバーしても出資法という別の法律の制限である年利29.2%を超えない限り貸金業者に対する罰則がありませんでした。
その結果、利息制限法で定められた年利を超え、年利29.2%までの間のグレーゾーン金利で貸すようになったのです。
過払い金とは、借り入れた時の年利で計算された利息と、利息制限法で定められた年利による利息の差額をいいます。
例えば年利29%で100万円を借りたとすると、1年後に利息として29万円が追加され借り入れ総額は129万円となります。
しかし利息制限法によれば1年後の利息は最高でも15万円、14万円を払いすぎてしまいます。
このように具体的に利息制限法に則った金利なら借金額はどうなるか計算し直すことを引き直し計算といいます。
この例で分割返済の場合を考えてみましょう。
1年に1度29万円を返済すると、1年後の借金総額は129万円でそのうち29万円を返済すると借金残高は100万円、つまり借金の元金は減らないことになります。
それを利息制限法に則った年利15%で考えると、1年後の残高は86万円、2年後の残高は70万円と徐々に減っていくのがわかります。
年利29%なら6年後も借金残高は100万円でしたが、年利15%なら6年後には借金が完済され22万円の過払金が発生しています。
引き直し計算は難しい計算ではありませんが、借り入れの契約内容や返済のスパンによって複雑な計算が必要になることがあります。
引き直し計算を自分で計算できるサイトもありますから、詳しく知りたいという方は一度詳しく見てみるとよいでしょう。
自分で請求する場合はまず取引履歴を取得しよう
弁護士・司法書士への報酬を節約するために自分で返還請求したい方もいるでしょう。
その時にまずやることは取引履歴の取得です。
取引履歴請求書を作成して貸金業者に送付します。
手に入れたらそれに基づいて、引き直し計算し過払い金を算出します。
表計算ソフトが使えるパソコンがあれば便利ですが、手書きでもできないわけではありません。
間違いのないよう確かめながら算出しましょう。
過払い金額が分かったら、貸金業者へ過払い金請求書を送付して請求します。
インターネットにはその雛形がダウンロードできるページがありますのでどんどん利用しましょう。
個人で返還請求すると多くの貸金業者は、実際に発生している過払い金額よりも低い金額で和解を求めてくる時があります。
しかし、過払い金請求は正当な権利ですから、どんな時でも満額返還してもらえるよう毅然とした対応を心がけましょう。
和解が困難な場合提訴になることも
交渉で和解が困難で、満足いく金額が得られない場合は、過払い金返還請求訴訟をすることになります。
そのためには訴状・証拠説明書・取引履歴・引き直し計算署・登記簿謄本といった書類と印紙代・郵券代・登記簿謄本取得代といった費用が必要です。
提訴した後でも、再度より良い条件での和解を求めてくる貸金業者もあります。
どれくらいの期間がかかる?
過払い金請求したからといって、すぐに返還されるわけではありません。
それは和解するのか訴訟になるのか、また貸金業者によっても違うようですが、それぞれある程度の範囲があるようです。
和解なら3カ月から6カ月以上
最も早くに解決するなら和解でしょうが、今までの過払い金返還請求実績を考えるとそれでも3カ月から6カ月以上はかかっています。
また貸金業者によっても対応のスピードは大きく違い、中には「遅くて有名」な貸金業者もあります。
貸金業者の立場になれば、相次ぐ返還請求によって資金が底をつき倒産した武富士を考えると、返還すべきお金とはいえできるだけ支払いたくない、先伸ばしたいと考えているようです。
提訴になると更に数カ月伸びる場合もある
訴訟になれば、和解以上に時間がかかり、弁護士費用も上がります。
例えば6カ月後までに70万円必要で、過払金は満額で100万円。
和解に応じれば4カ月後までには必ず70万円入金が約束されており、その70万円がなければ廃業の危機、となれば和解も視野に入れた方がよいかもしれません。
格別の事情がなければ訴訟にするのもよいかもしれませんが、増えた30万円のうち弁護士費用として30万円必要ならどうでしょうか。
単純に期間や金額の問題ではなく、見えにくいものではありますがそれに割かなくてはならない、悩んでやきもきする時間も失われるあなたの大切な資源です。
どちらにするかはあなたの決断次第です。
貸金業者によっては期間にバラつきがある
貸金業者によって入金までの時間にはバラつきがあります。
全ての業者は和解の方が訴訟よりも短期間で返還されるようですが、それも時期や事情によるようです。
和解案は満額の50%ほどを提示されることが多いようで、和解で解決するかどうか非常に悩ましいところです。
過払い請求時の注意点
メリットもデメリットもある過払い金返還請求ですが、注意すべき点がいくつかあります。
まれなケースですが該当すると返還請求自体ができなくなる場合もあります。
完済日から10年で時効が成立する
過払い金は、完済日から10年で時効が成立するため請求できなくなります。
これはあくまで完済日が基準になっているのがポイントで、現在返済中のものは時効にはならないということです。
過払い金があるかどうかを調べる際に、まず最初に完済日がいつなのか、それから10年が経過していないかどうかを確かめましょう。
借入先が倒産すると返還請求ができなくなる
前述の武富士のように、借入先が倒産することもあり得ないことではありません。
貸金業者が倒産すればその会社自体がなくなるのですから過払金を請求のしようがありません。
過払金を請求しようと考えたらら、手続きはできるだけ早くすることをおすすめします。
その会社がいつどんなことになるかわからないからです。
自分で請求する場合返済の一時停止ができない
過払い金返還請求を弁護士や司法書士に依頼した場合、返済中の借金を一時的にストップさせることができますが、自分で請求する場合はできません。
この必要があるなら弁護士・司法書士に依頼することを検討しましょう。
過払いの返還請求は迅速に行おう
過払い金返還請求は、適用される全ての人に正当な手続きですが、完済日から10年の時効や、返還までの時間と訴訟などにかかる費用、必要な手続きや書類などいくつものハードルがあります。
最も安心で手間が省けるのは弁護士・司法書士に依頼することですが、それにも費用が発生します。
だからと言って自分でしようとすると返済中の借り入れをストップできないなどの制限もあります。
正当な権利ではありますが、結果としてどれくらいが戻ってくるのか、それにかかる費用や手間・時間がそれに見合うのかなどより広い視野で返還請求を見つめる必要があります。
過払い金返還請求の仕組み全体を俯瞰し、今のあなたにとって最も適切な使い方ができるよう賢く振舞う必要があります。