UKANO家計のクリニック

空売りファンドの仕組みと、日本企業に与える影響が何かを知ろう

空売りファンドを詳しく知ることで株価をの推移が 予想しやすくなる

企業間の株取引をしていると、空売りファンドという存在を知ります。
この空売りファンドは、様々な日本の企業に影響を及ぼす存在です。
日本の企業にとっては、とても目につく存在ですが、空売りファンドを詳しく知ることで株価の推移が予想しやすくなります。
空売りファンドとは何か、そして日本企業にどのような影響を及ぼすのか知っていきましょう。

空売りファンドは株の空売りで利益を得る企業

空売りファンドとは、株の安売りで利益を得る投資ファンドの企業です。
今、日本の企業にとても影響を与えている企業といわれています。
では、その空売りファンドの実態とは一体どのようなものでしょうか。
また空売りの意味とは、そしてどのよう方法で利益を得ているのでしょうか。

空売りファンドで株価は変動する

空売り(ショート・セリング)とは、先に借り入れた株を売却し決済時に買い戻すことです。
この手法は株価が下がると利益が得られ、上がると損失がでてしまいます。
ですから空売りファンドは、狙った上場企業の株価を下落をさせるため、上場企業の不正や不備、過大評価を糾弾して株価を変動させます。
この空売りの手法は、個人投資家の中では当たり前に行われており、海外では空売りファンドの存在は広く認知されています。

独自調査のレポートで企業の株価下落を狙う

株価下落の方法としては、空売りファンドの独自調査のレポートで企業の株価下落を狙います。
やり方としては、まず始めに狙いをつけた企業を徹底的に調査をして、企業の不備(不正会計など)や過大評価を指摘し、投資家にその企業の株を売ることを奨めます。
そして狙われた企業は、格付け機関がその企業の評価を見直すので、投資家が保有株式を大量に手放すと、企業の株価が下落するので、そこで空売りファンドが利益を得ます。

空売りファンドにより倒産した米国の大企業

空売りファンドによって倒産した大企業があります。
日本の企業ではありませんが、アメリカの「エンロン」という企業です。
当時エンロンは急成長の代表格と言われ、アメリカで7位、世界16位の巨大多国籍企業でした。
ですが2012年12月に、空売りファンド「キニコス・アソシエイツ」により、エンロン社の巨額の粉飾決算を指摘し、結果倒産しました。

中国や香港も標的になり今の狙いは日本企業

今の狙いとしては日本の上場企業ですが、空売りファンドの狙いは中国や香港も標的になっていました。
それはアメリカの上場企業の情報公開が進み、極端な不正をしている企業が少なくなり、空売りファンドの動きが狭くなり外に向けて動き出したのです。

ですが、中国や香港の場合は中国政府の影響が大きく、実際に空売りファンドの調査員が投獄されたりとリスクが高いので、日本に進出してきました。
そして狙われた日本企業は「レポート」での指摘が2015年に1件、翌年2016年には6件になり、今もさまざまな企業が狙われています。

日本市場に台頭する空売りファンド

日本市場に進出した空売りファンドですが、どのような上場企業を狙いを定めたのか、そして、その狙われた日本企業は、空売りファンドの影響でどのようなことが起きてしまったのでしょうか。

日本企業初のレポートを発表された丸紅

日本企業で初めて空売りファンドのレポートを発表されたのは丸紅株式会社です。
丸紅はみずほグループの大手総合商社です。
2015年に丸紅の資産の減損損失を過少に見積もりをしていると指摘し、空売りレポート発表したことにより、丸紅の株価は30%近く下落し、格付け機関が丸紅の評価を下げました。

指摘したのは海外ファンドの調査会社の「ウェル・インベストメンツ・リサーチ」で、その後JIG-SAW、サイバーダイン、SMC、ユーグレナ、各企業の不正疑惑や過大評価などを指摘したレポートを次々と発表しました。

目標株価が高いと指摘を受けたサイバーダイン

サイバーダインとは、介護ロボットの研究開発や販売のロボット技術の新興企業です。
サイバーダイン社の開発した国産ロボット「HAL」は、世界で初めて医療機器として認可されマザーズ市場で注目を集めましたが、2016年8月にあるレポートが発表されました。

レポートを発表したのは米国の「シトロン・リサーチ」という企業で、サイバーダインが「実質的な収益を出したことがない」という指摘をし、株価は40%近く下落をしました。
しかし、レポート内容が攻撃的で稚拙だったため意図的に下落を狙ったものと考えられていて、現在も両者が対立をしています。

不正会計を指摘された伊藤忠商事

伊藤忠商事は、みずほグループの大手総合商社で、日本最大の総合商社と言われ、アジア有数のコングロマリット(異業種複合企業体)です。
2016年7月に米国の「グラウカス・リサーチ・グループ」は、3つの不正会計を指摘しレポートを発表しました。

このことにより伊藤忠商事の株価は、一時10%下落し年初来最安値になり、後に早い段階で切り替えをして、上昇トレンドに移行していきました。
これはレポートにまとめられた内容が事実に反しているとわけではないが、偏ってるようにも見える内容だったため、市場関係者からは「不正と呼べるかまでは疑問」だったからです。

自社株買いの上限を上げ対抗した日本電産

日本電産株式会社は、精密小型モーターの開発・製造において世界一のシェアを維持している電気機製造会社です。
2016年12月に、米国の調査会社「マディー・ウォーターズ」が「過去4年間、M&Aを除いた自律的な成長をしていない」「強引な会計手法を使っている」と過大評価と不正会計を指摘したレポートを発表しました。

このレポートに対して日本電産は、「当社の見解とは全く異なる」と反論し、自社株買い(発行した株式を買い戻すこと)の上限を2.1倍に引き上げ売りに対する対策をしました。
その結果レポート発表後に、株価は一時6%下降したが終値は横ばい、その後上昇しました。

懸念される空売りファンドの存在

空売りファンドは、企業の不正会計や過大評価などを指摘するレポートを発表しています。
これ自体は決して悪いわけではありません。
しかし、攻撃的な文言で、利益を上げるために意図的な企業叩きや、レポートの内容が真実であるか判断がつきにくい微妙な内容などが問題視されています。
いくら事実が真実だとしてもレポートによっては、名誉毀損や損害賠償になる可能性があります。

このような空売りファンドの存在を日本企業は懸念し、現在の法に抵触しないからと何をしても良いわけではないと捉え、日本取引所グループCEOは「空売りファンドは倫理的に問題がある」としています。

ひとつの情報をうのみにせず多角的にとらえて判断することが大事

株取引のポイントして空売りファンドの動きを詳しく把握していくと、株価の推移が予想しやすくなるので、投資家にとっては注目の存在です。
ですがこの空売りファンドの動きのみを見てしまうと、空売りファンドの動きに左右され物事の視野が狭くなってしまいます。

そして、空売りファンドは意図的に、利益だけを上げるために動いてる場合には、思っている以上に株価の変動がない場合があります。
これは企業が空売りファンドに対抗しているからです。
株取引をしていく中で大切なのは、ひとつの情報をうのみにせずに、視野を広く多角的にとらえて判断することが大切です。
情報に惑わされないようにしていきましょう。