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【国民健康保険の世帯分離】保険料の変化や申請方法を知っておこう

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世帯分離について

国民健康保険に加入している世帯で、両親と同居など複数の家族が一つの世帯になっている場合、別々の世帯に分けることでメリットがある場合があります。
そこでまず世帯分離について詳しく説明していきます。

世帯とは家計を一つにして暮らしている生活体のこと

まず世帯とは、同じ家に住み家計を一つにして暮らしている生活体を指します。
例えば、両親と夫婦で同居、夫婦と子供で同居、両親・夫婦・子供の三世代の同居など同じ家に住み「生活費を負担しあって一緒に住んでいる家族」のことをいいます。
この場合、住民票は世帯ごとに作られ、世帯主は「共に生活をしている家族の代表者」となる人のことを指します。

この代表の世帯主に国民健康保険の保険料の支払い義務が生じます。
しかし、支払い義務は世帯主ですが、世帯主のみの収入額ではなく、世帯全体の収入の額で国民健康保険の保険料は決まります。

世帯分離とは

世帯分離とは、1つの世帯を2つ以上の世帯に分けて、住民票に登録することです。
世帯分離をしても同じ家に住んでいて同一家計のままでも問題はありませんが、世帯主が2人以上いることになります。

世帯分離は介護費用を抑えられるシステム

この世帯分離というシステムが注目されるようになったのは、世帯分離をすることで、介護費用を抑えられるといった可能性があるからです。
介護が必要な家族がいて、介護サービスを利用する場合、介護サービス利用料の自己負担の上限額は、世帯の収入によって変わってくるようです。

両親の所得が低い場合、世帯分離をすると両親の所得に応じた介護サービスの利用料の自己負担額の上限額が決まります。
この時、子の収入が高く世帯分離せず介護サービスを利用すると、所得が高いため介護サービスの自己負担額の上限額が上がってしまうでしょう。

ちなみに、上限額を超えて支払った場合は、超過分の払い戻しができます。

夫婦の世帯分離は難しい

しかし、親世帯と子世帯の世帯分離は問題なくても、夫婦の世帯分離は簡単にはできないことになっています。
民法752条には、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」という決まりが設けられていて、法律で扶養の義務が定められているようです。

夫婦の世帯分離はこの民法に反することになるため、生計が別であることの証明やどちらかが死亡した後の書類申請などが必要なため、手続きが複雑で手間がかかったり、役所の窓口で断られることもありますので慎重に検討しましょう。

世帯分離による国民健康保険料の変化

世帯分離によって国民健康保険料はどのように変化するのでしょうか。
メリット・デメリットを考えてみましょう。

所得の低い世帯では負担額が軽減されることも

国民健康保険料の負担が軽減される可能性があります。
介護サービスの利用料と同じように、国民健康保険も世帯の所得が低い場合は減免制度が適用されて、2~7割軽減される場合もあるようです。

つまり、世帯の中に収入が高い人がいると、世帯収入が高くなってしまうので、収入が高ければ、受ける介護サービスに対して負担する費用が多くなってしまいます。
この場合、世帯分離をして介護費用の負担を軽減することで国民健康保険料の軽減ができるでしょう。

世帯で見た支出が増えてしまう可能性も

世帯分離で国民健康保険料が軽減されることもありますが、逆に高くなってしまう可能性もあります。
国民健康保険料には上限がありますが、親世帯・子世帯共に高い収入があると、世帯分離をすることで世帯主2人に対して国民健康保険料の支払い義務が生じます。
二世帯の収入が高い場合、各世帯で見た支出が増えてしまう可能性もあります。

国民健康保険の保険料には上限があるので、たくさん収入があっても上限額があるので、上限以上になることがありません。
高所得者で上限額を支払っている世帯にとっては世帯分離をしてしまうと、上限額を2件分支払わなくてはいけなくなることになります。

また、親を介護している人が、サラリーマンの場合、会社の健康保険組合を利用した方がよい場合があります。
会社の健康保険組合に親を扶養家族として加入させ、組合の保険制度を利用した方が得をする場合がありますので、1度保険組合に問い合わせてみるのもいいでしょう。

世帯分離の手続きについて

世帯分離をすることでメリットがあるとなれば、各市町村の役所で簡単な手続きをすれば世帯分離することができます。
各市町村によって手続きの仕方が違うかもしれないので詳しくは各市町村の役所に問い合わせてください。
こちらでは、一般的に必要な書類等の説明をしていきましょう。

市町村に「住民異動届」を提出する

世帯分離の手続きをするにはお住いの管轄の役所に行き、「住民異動届」という書類を入手し、必要事項を記入、捺印して役所に提出します。
国民健康保険でない方は「住民異動届」が受理されれば手続き完了となります。

複数の家族で同居してる場合、ここで世帯分離の手続きをするのは、家族の中で収入の高い人が世帯分離の手続きをする方がお得でしょう。
また、手続きができるのは、本人、世帯主、代理人ですが、代理人の場合親族であっても委任状が必要です。

世帯分離の手続きのために用意するもの

手続きの際に、忘れてはならない書類等もしっかりチェックしておきましょう。

印鑑

「住民異動届」の書類に捺印するための印鑑です。

本人確認書類

運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなど(写真付きの物がよいのですが、顔写真がついていなければ、念のため2つ用意した方が安心です。)

委任状

世帯分離したい本人が、介護が必要などで届け出ができない場合は、たとえ親族であっても委任状が必要です。

国民健康保険証・納付書

国民健康保険に加入している場合、国民健康保険証と納付書が必要です。

新しい国民健康保険の手続きが必要

国民健康保険に加入している場合は、世帯分離の手続きを役所でした後に、国民健康保険の手続きが必要です。
新しく世帯主となった新たな保険証が必要になるからです。

世帯分離によるメリットとデメリットを考えよう

世帯分離をするのは、各家庭の状況によりメリット・デメリットがあることがわかったでしょう。
基本的に世帯分離とは、介護費用の負担を軽減するための制度ではありません。

しかし、世帯分離をした方が介護費用の軽減につながるケースもあります。
高額な費用が掛かる施設に入所するような場合、介護費用の負担額に大きな差が出るのも事実でしょう。

介護保険の制度は3年ごとに見直されているので、申請する前にインターネットや市区町村の役所に問い合わせて、ご自身の収入状況や将来のこと、また保険情報などの確認をしながら、その時々の正しい情報を入手することをおすすめします。