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企業による退職金の違いなどについて知る
退職金は採用している企業によって制度が異なります。
自分の勤める企業がどのような制度を導入しているのかを知っておくことが大切です。
実際に支給されたときに困らないよう、制度について前もって理解しておく必要があります。
企業による退職金制度の違いを知り、退職後の生活をしっかりとイメージしましょう。
そもそも退職金とは
退職金制度を理解するためには、そもそも退職金とはどんなものなのか、根本的な部分から知っておくことが大切です。
まずは基本的なことを学びましょう。
雇用関係の消滅により支給される
退職金は「雇用関係の消滅」によって支給されます。
雇用関係の消失としては、自己都合退職のほかに定年や解雇、死亡などがあげられます。
退職給付制度は企業の任意制度
退職金はすべての企業に存在するものと考えている人も多いですが、実はそうではありません。
退職金は企業が任意で定めている制度であり、法律で採用が義務付けられているわけではありません。
そのため退職金制度のない企業もあります。
もともと退職金制度がなかったとしても途中で導入した時点で、企業には支給義務が発生します。
導入時点で社員であれば支払いの対象です。
退職給付金が支払われるタイミングについて
退職金は正確には退職給付金と呼ばれます。
退職金は退職日にもらえるものではなく、企業の定めによっていつ受け取れるかは異なります。
給付されるタイミングは大きく2つに分けられますので、それぞれの違いを把握しておきましょう。
会社規定で支払期日を定めている場合
退職金の給付について会社規定で支払期日を定めている場合は、期日内の支払いで良いので、企業はすぐに支払わなければならないわけではありません。
支払期日は企業によって定めが違いますが、6カ月以内まで有効です。
期日の設定がある場合、その期間は請求の申し出はできないので注意しましょう。
会社規定で支払期日を定めていない場合
退職金の給付について会社規定で支払期日を定めていない場合は、企業は7日以内に支払わなければなりません。
これは労基法23条で定められています。
退職一時金制度と退職年金制度の違い
退職金制度としてメジャーなのは、退職一時金制度と退職年金制度の2つです。
退職金の給付方法などが違っています。
企業によってはどちらか一方を導入している場合もあれば、両方を導入しており社員が受け取り方法を選択できるという場合もあります。
自分に合った方法を選んで支給してもらうことが大切です。
退職後に一括で支給される一時金制度
退職一時金制度は、退職給付金が退職後に一括で支給される制度です。
給付金は社内準備金か外部積立金から拠出され、これまでの積み立て分を退職後にまとめてもらえます。
一度に多額の金額が給付されますので、退職後にまとまったお金が必要な人におすすめの制度です。
また退職一時金の場合は給与所得に含まれますので、所得税がかかります。
しかし退職金については控除枠が大きいことも特徴です。
そのため場合によっては非課税で多額のお金を手にできる場合もあります。
一定額を分割で支給される年金制度
退職年金制度は、一定額を分割で支給される制度です。
退職後に隔月で支払われるのが特徴であり、企業年金とも呼ばれています。
分割の割合は企業ごとによって違いますが、積み立てた分から少しずつ受け取れますので、公的年金と同じようなシステムと考えると分かりやすいでしょう。
退職年金として受け取る場合は、給付金は雑所得に含まれます。
少額ずつの給付になるので税金もかかりづらく、安定した収入を得たい人におすすめの制度です。
支給額の計算方法は企業により異なる
退職金をもらうとなれば、気になるのはいくら支給されるのかですが、支給額については勤めている企業によって異なります。
これはもともとの給料に関係するからだけではなく、企業ごとに支給額の計算方法などが違っているからです。
退職金制度は細部にわたって企業ごとの違いがありますので、現職の職場ではどのような計算方法を用いているのかを知っておくことも大切です。
勤続年数を考慮して基本給を基準に割出す
支給額の計算方法としてもっともスタンダードなのは、基本給を基準にして割り出す方法です。
この場合、勤続年数が考慮されており、長く勤めるほど退職金額は上がります。
勤続年数が多ければ、その分基本給も上がります。
新卒で入社してから定年まで勤め上げた人だと、もっとも大きな金額がもらえる制度です。
日本では終身雇用の考えを持つ企業が多く、長く勤めた人を優遇する方法で退職金の支給額を計算する企業は多いです。
給与に関係なく退職理由などを基に割出す
基本給は支給額を計算する上での要素のひとつですが、企業によっては給与以外の要因も含めて計算する場合もあります。
詳細な計算方法については社内規定に基づきますので、一概に決まっているわけではありませんが、勤続年数や業績、退職理由などが考慮されるケースが多いです。
特に退職理由の場合は、定年退職がもっとも支給額は高く、自己都合だと支給額は低くなる傾向にあるので注意しましょう。
入社時からの総ポイントで割出す
近年では退職金の支給額をポイント制で計算する企業も増えています。
加点や減点のシステムについては社内規定によって異なりますが、資格や実績などを加点の対象とし、入社時から退職時までの総ポイントで支給額を割出します。
企業に貢献した人や活躍した人ほど退職金は増えるため、実力主義の企業で採用されていることが多いです。
中小企業退職金制度について
退職金制度のひとつに、中小企業退職金制度というものがあります。
文字通り中小企業を対象とした退職金制度であり、導入している企業も多いです。
中小企業退職金制度は、その他の退職金制度とは違った特徴がありますので、その違いを理解しておきましょう。
退職金の一部を国が負担してくれる
中小企業退職金制度は、退職金制度を導入するのが難しい企業を助成するための制度です。
従来の退職金制度は、企業が社員の退職金を積み立てなければなりませんでしたが、この制度の場合、退職金の一部を国が負担してくれます。
負担の割合は場合によって違いますが、新規加入時は社員一人につき最高6万円までの助成が受けられます。
掛金の増額に対する国の助成金がある
中小企業退職金制度の場合、掛金の増額に対しても国から助成金があります。
掛金が18,000円以下/1ヶ月の増額時から1年間の助成が受けられますので、企業としては負担が少なく退職金制度を実現できます。
近年導入する企業が増えている前払退職金制度について
退職金制度として近年注目を集めているのが、前払退職金制度です。
退職金は雇用関係の消滅時に支給されるというのが基本的な考えですが、前払退職金制度の場合は例外です。
分割した退職金が給与と一緒に支給される
前払退職金制度は、分割した退職金が給与と一緒に支給される制度です。
通常の企業であれば、毎月の給料は基本給+各種手当などで構成されていますが、前払退職金制度では毎月の給与+分割退職金=給与所得となります。
退職時には支給がないものの、通常時の給料が他の企業よりも高くなりやすいのが特徴です。
退職所得控除の適用外になる
退職金は一時金でまとめて受け取った場合、退職金所得となりますが、前払退職金の場合は退職所得控除の適用外となります。
これは退職金として支払われているわけではなく、扱いとしては給与所得になるからです。
所得が高くなる分、所得税も高くなりますが、通常の源泉徴収で済みます。
退職金制度と確定拠出年金制度の違いに注意
退職金制度とよく似た制度に確定拠出年金制度がありますが、これらはまったく別物ですので注意しなければなりません。
混同して考えてしまうと、退職時に困ることも多いので、相違点を正しく把握しておきましょう。
定年による退職時に支払われる確定拠出年金
退職金の場合は、雇用関係の消滅によって支給が開始されますが、確定拠出年金の場合は、定年による退職時にのみ支払われます。
そのため途中退職しても、確定拠出年金は支払われないので注意しましょう。
確定拠出年金は定年まで積み立てをするものであり、積み立て先は社外です。
そのため転職後も定年までの積立てが継続でき、途中退職しても積立金がリセットすることはありません。
積立は自分か会社か両者でさまざま
退職金の場合は積み立ては企業が全額負担していますが、確定拠出年金の場合は企業によって積み立て対象者が違います。
企業が積み立てる場合もあれば、自分で積み立てることもありますし、自分と企業の両者がおこなうこともあります。
どの場合でも総掛金+総利息=確定拠出年金となり、最終的な金額に応じて支給額が決定します。
退職金の源泉徴収について
退職金は源泉徴収の対象ですが、別枠での扱いになるので通常の給与と混同しないように注意しましょう。
毎月支払われる給与と退職金は別物として考えますので、源泉徴収においても取り扱いが異なっています。
給与とは異なる退職所得控除の適用
退職金は税制上は退職所得として扱われています。
所得税の課税対象ですが、給与とは異なる退職所得控除というものが適用されており、控除額を差し引いて最終的な税額が決定します。
控除額は勤続年数や退職理由によって異なり、長く勤めて定年退職であれば、控除額はもっとも大きくなります。
退職所得の受給に関する申告書の提出が必要
退職金を受け取る際には、退職所得の受給に関する申告書の提出が必要です。
これは通常在職中に企業に提出するものですが、提出していないと源泉徴収額が定額で上乗せされるので注意が必要です。
徴収分を取り戻すには確定申告が必要です。
必ず退職前に提出しておきましょう。
退職金の他に退職所得に該当するもの
退職所得に該当するのは退職金だけではなく、他にもさまざまなものが退職所得として扱われます。
退職時に給与と別の所得があった場合は、特別控除の対象です。
給与については通常通り給与所得ですが、その他の所得はすべて退職所得と考えましょう。
退職金制度の知識を高め正しく受給する
退職金制度は実にさまざまであり、企業によってどの制度を導入しているかは違います。
また同じ制度を導入していたとしても、支給にかかる要件や支給額の計算方法は社内規定で異なります。
自社の制度をまずはきちんと理解することが大切です。
退職金は退職後の生活を支える重要な資金であり、受給金額は把握しておかなければなりません。
退職金制度の知識を身に付け、自社の制度についてしっかりと理解し、上手に退職金を受け取りましょう。