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退職の前に国民健康保険を知っておこう
サラリーマンの方がさまざまな事情により、勤めている会社を退職されるとき。
たとえば、脱サラして独立したり、しばらくゆっくり休養して社会復帰したいとお考えならば、一度国民健康保険に加入することになります。
この場合、退職した勤務先の会社に健康保険カードを返還しなければなりません。
次の手順として、お住いの各市町村に申請し、「国民健康保険」の手続きを行う必要があります。
ここで新しく国民健康保険に加入した場合、月々の支払いはどれ位かかるのか?その保険料の計算方法や、国民健康保険制度について知っておきましょう。
退職後の新しい人生のステップへ安心して歩んでいけるように、国民健康保険制度について知識を深めておくことは重要です。
退職後の健康保険について
会社勤めだったサラリーマンが、勤務先を退職すると同時に、健康保険の手続きを行わなければなりません。
この場合、そのまま今の健康保険を「任意継続」するか「国民健康保険」に新しく加入するか、いずれかを選択することになります。
それではこの二つの保険への手続きや加入方法などを個々に見ていきましょう。
今までの保険に任意継続
任意継続とは、退職後も現在の勤め先の会社が加入している、健康保険をそのまま使うことができる制度です。
本来は退職してしまうと加入資格が喪失してしまうのですが、限定として「2年間」に限り継続して、利用することができます。
サラリーマンの健康保険料は勤め先の会社が折半して負担してくれています。
しかしながら、退職すると会社が負担していた金額も払わなければいけなくります。
つまり全額負担となり、今まで支払っていた保険料の金額の2倍になってしまうので割高に感じるかもしれません。
任意継続のメリットは、今現在の月の給与が、「28万円以上を超える場合」国民健康保険に加入するより安くなる場合があります。
社会保険には「扶養」という仕組みがあり、他に家族がいても「保険料が一人分の支払いで済む」という事です。
しかし一定の要件があり、扶養家族の年間給与が130万以下や、一緒に住んでいるという条件等を満たしておくことが必要です。
国民健康保険へ加入
任意継続以外を選択する場合は、必ず国民健康保険に加入しなければなりません。
しかも会社を退職して、収入が無いのにも関わらず、毎月高額な保険料を支払うことになります。
国民健康保険の支払額は、各市町村によって定められていて、地域によって支払額が異なってきます。
もし仕事を辞めた場合に、国民健康保険料を毎月いくら払っていくのかを事前に調べることもできます。
お住いの自治体の市町村役場に、前年度の源泉徴収票や住民税・特別徴収税額の通知書を持参していくことで、計算してもらえます。
退職前の備えとして一度調べておくと、生活のシュミレーションがしやすくなります。
国民健康保険の計算の仕方
自治体に申請することで、おおよその国民健康保険の支払額が簡単に分かるのですが、どんな計算式を採用して算出しているのかということを知っておきましょう。
簡単な例を用いて実際に計算してみましょう。
平成30年度の東京都世田谷区を参考にして、実際に計算しながら順に解説していきます。
まず所得金額の確認する
国民健康保険料の支払額を、自分で計算する場合には、まず昨年度の1月1日~12月31日までに働いて得た「年間所得金額」を知ることが必要です。
1年間の所得金額は、源泉徴収票や確定申告書を用いて計算します。
ここでサラリーマンなのになぜ確定申告書?
と疑問を思われたかもしれませんが、例えば給与所得以外に20万円を越える収入があった者(副業などで得た報酬等)や、給与の年間収入金額が2,000万円を超える等、一定の要件に該当した場合、確定申告が必要なケースが出てくるのが理由です。
源泉徴収票を紛失して手元に無い場合は、会社の経理や事務の方に申請し再発行を依頼することで入手することができます。
所得金額より基礎控除を引く
サラリーマンの年間所得金額の計算方法は「総収入の金額」ー「所得控除額」、自営業者の場合は、「総収入」-「諸経費」で算出します。
その年間所得金額から「基礎控除額33万円」を引くことによって、まずは「基準額」を導くことができます。
例えば夫40歳、所得金額2,660,000円、妻39歳、所得金額 350,000円 子供12歳 所得金額0円だとした場合、基礎控除額33万円で計算しますと、夫2,600,000円-330,000円=2,330,000円、妻350,000円-330,000円=20,000円、子0円となり、2,300,000円+20,000円+0円=2,350,000円が基準額になります。
固定金額の所得割
所得割は、読んで字のごとく所得の割合に応じて課される税金のことで、国民健康保険料の支払額の大多数を占めています。
上記で算出した基準額を用いて計算すると、
- 医療分(基準額×7.32%)基準額2,350,000円×7.32%=172,020円
- 支援金分(基準額×2.22%)基準額2,350,000円×2.22%=52,170円
- 介護分(40歳~64歳の方の賦課基準額×1.68% )
ここで注意が必要なのは妻は39歳で、これには該当しないため、夫のみの基準額を計算します。
基準額2,330,000円×1.68%=39,144円となり、この合算額、1+2+3=263,334円が所得割額となります
所得によって発生する均等割という税金
次に、均等割の計算をしましょう。
- 医療分(加入者数×39,000円)なので、3人×39,000円=117,000円
- 支援金分(加入者数×12,000円)で3人×12,000円=36,000円
- 介護分(40~64歳の加入者数×15,600円)
これに該当するのは夫のみなので、1人×15,600円=15,600円となり、5+6+7=168,600円が均等割額となります。
国民健康保険料の金額を算出
最後に上記で算出した、所得割+均等割の合計の額が実際の国民健康保険料となります。
計算してみますと、均等割+所得割で263,334円+168,600円=431,934円が、1年分の健康保険料の支払金額ということになります。
つまり、年間約432,000円近くの国民健康保険料の支払わなければなりません。
これを1カ月単位に換算すると、毎月約36,000円を支払う計算になります。
決して安くはありませんので、生活費への負担がとても大きくなるというのがお分かりになったのではないでしょうか。
【参考リンク:https://5kuho.com/html/keisan.html】
【参考リンク:http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/101/112/237/240/d00032129.html】
国民健康保険が高い理由
会社を退職し、国民健康保険への加入を選択した場合、「何でこんなに国民保険料が高いの!?」と感じる方がほとんどではないでしょうか。
ではなぜ、退職後にこんなに国民健康保険は高くなるのか?
これには国民健康保険が抱える様々な問題があり、特にサラリーマンを退職された方の負担額が増える要因がいくつか考えられます。
その例を挙げてみましたので、実際に検証してみましょう。
全額自己負担になる
会社員だった時は、健康保険料を会社が半分負担してくれてますので、残りの半分の保険料のみを、自己負担額として給与天引きされているのに対し、退職したら全額負担となります。
つまり、今の2倍の保険料を負担しなければならなくなるので、かなり割高に感じるでしょう。
また、国民健康保険を選択した場合でも全額自己負担になので、金額的には任意継続の場合と同じくらいの保険料を支払わなければなりません。
このような理由を知らなければ、どうしていきなりこんなに保険料が高くなるの?と感じるのも無理もありません。
国民健康保険加入者の平均所得の関係
国民健康保険が、自身の運営をしていく中での加入者の割合を調べてみると、年金生活者や無職層が多数で、合算すると約4割を占めています。
さらに、残りの就業者が農業や漁業などの個人経営の第一次産業事業者、それに加え扶養家族が占めています。
そして、この国民健康保険加入者の平均所得額が非常に低く、一人当たりの平均が約90万円で世代平均でも約160万円というデータも有り、そうなると必然的に年収250万円位の中間所得者であるサラリーマンや自営業者の方に支払負担額が掛かってしまうのです。
会社を退職後は、昨年度の年収に対して国民健康保険料支払い額が決定されます。
会社を辞めた人への支払い負担額が大きくなってしまうということが制度の仕組みとしてあるのです。
国民健康保険の減免について
高い国民健康保険料を払いながら生活していけば自身の生活が成り立たない、というとき「国民健康保険料の減免・軽減」という制度を活用しましょう。
前年に比べて大幅に収入が減ったり、災害等で収入や所得が著しく減った場合に、保険料の全部または一部が免除される制度です。
この制度は、各自治体により大きく異なっており、残念ながらこの制度を利用していない自治体もあるので、お住いの自治体ではどうなのか、一度確認しておく必要があります。
国民健康保険の減免が適用となる場合
仕事を辞め、今年度の所得が前年度に比べて大幅に所得が減った場合や病気等で働けなくなった場合等、これらの事情により支払いが困難な場合、国民健康保険の減免が適用される場合があります。
生活を切り詰めて無理にでも国民健康保険料を全額負担をしたり、払えないからといって放置することはいけませんので、お住いの各市町村の健康保険課で事情を話し、減免申請できるかどうか相談してみましょう。
国民健康保険の減免の申請
国民健康保険の減免の申請に必要な書類は、「離職票」または失業手当を受給する際に発行される、「雇用保険受給資格者証」、「健康保険資格喪失証明書」や「印鑑」など。
これらを事前に用意して市町村役場に持っていけば、何度も足を運ぶ面倒も無くなります。
一度で減免申請を済ませることができるよう、あらかじめ用意できる物を揃えて、手続きをスムーズにしましょう。
減免適用後の国民健康保険料
国民健康保険の減免申請が適用されることにより、保険料がいくらになるかは自治体により変わりますが大体2~7割近くが減額されます。
自分の地域ではどれだけ減額できるのか、詳しく知りたい方は、お近くの各市町村役場の健康保険課でお尋ね下さい。
国民健康保険加入の利点
国民健康保険に加入した際のメリットは、いくつか挙げられます。
手続きが簡単な事や、各市町村によっては、減免申請を受けることができたり、最寄りの役場に申請すればよいということで、自宅から近かったり等があります。
加入手続きが簡単?
国民健康保険に加入する場合、お住いの市町村役場での手続きが必要です。
手続きに必要なものは、会社を退職した際にもらう、健康保険をやめた際に発行される資格喪失証明書。
また、2016年度よりマイナンバー制度が実施されたことにより、加入手続きの用紙にマイナンバーの個人番号を記載する欄があらたに付け加えられたため、マイナンバーカードや身元が確認できる免許証などの身分証明書が必要となります。
開庁時間に合わせて、それらの必要書類を持って窓口に行くだけで、簡単に加入手続きができます。
前年度の所得から計算
国民健康保険料は、今年度ではなく、「前年度の所得」をもとに算出されます。
保険料は、各市町村の健康保険課で確認することもできます。
まだ退職したわけでもなく、なかなか時間が取れないけど手っ取り早く概算だけでも知りたいなら、サイト上で自動計算してくれる自治体もありますので、月々の国民健康保険料がいくらになるのか確認してみましょう。
減免申請の利用の可能性
国民健康保険料が払えない理由に該当する場合、保険料の減免申請ができ、支払い保険料を安くしてもらえる可能性があります。
例えば、災害などの影響で働けなくなった場合や、会社が倒産し急に仕事がなくなり、あてにしていた収入が途絶えたり、途中で会社を退職したが次の働き口が見つかっておらず、国民健康保険を支払うのが困難などの正当な理由がある場合。
保険料が減額されたり、支払いが免除される減免申請を利用をできる可能性があるのです。
この減免申請は、各市役所の健康保険課にて受け付けています。
また、保険料が減額された場合、国民健康保険料はいくらに減額されるかについては、世帯全員の所得の合計額で決められ、次に各市町村役場で条件ごとに、2割・5割・7割の中から選ばれます。
尚、減額計算は申請者が提出した所得に基づき算出されるので、自分で計算する必要はありません。
問い合わせ窓口が近い
国民健康保険を申請したり、相談を問い合わせする場合、お住いの各市町村役場の健康保険課に行くことになります。
問い合わせの窓口が近くて気軽に相談できるので、身近で安心という点がメリットだということもあります。
国民健康保険がいくらかわかると便利です
何も考えずに会社を辞めたら、国民健康保険料が生活費を圧迫させる原因となります。
退職を決断する前に、国民健康保険に加入すると保険料はいくらかかるのか、また保険料の減免申請はできるのか等をチェックしておきましょう。
保険料などを知っておくことで、事前に保険料分を貯蓄しておくなどの対策も打てます。
また、減免制度を利用して月々の保険料を安くしたりすることもできるので、利用できるものはどんどん利用しましょう。
退職後も安心して次のステップへと進むためには、退職前と大きく変わる支出について把握しておく必要があります。
「備えあれば憂いなし」新しい一歩を安心して踏み出すために、できる限りの準備をしておきましょう。