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気になる厚生年金の加入条件。あなたも適用範囲に入るかも

拡充された厚生年金の加入条件とは?

これまでは週30時間以上働く人が加入対象であった厚生年金ですが、まず、平成28年10月以降、従業員501人以上の会社で週20時間以上働く人が加入できるようになりました。
平成29年4月からは、さらに条件が追加され、従業員が500人以下の会社であっても、労使で合意をしたら厚生年金に加入できます。

これで、以前より厚生年金に加入することのできる範囲がだいぶ広がりましたので、職場の上司から唐突に「うちの会社も今後厚生年金加入することになったから」と言われる方もいるかもしれません。
既にそのように言われた方も多いでしょう。
これから具体的に加入条件や、厚生年金に加入するようになればどういう影響があるのか確認してみましょう。

厚生年金について

まずここでは「厚生年金」の内容を書いていきます。
厚生年金の制度や仕組み、加入する事のできる年齢と、受給が始まる年齢について触れます。

加入を義務付けられている制度

厚生年金は加入条件を満たす事業所や労働者にとって、入る義務がある制度です。
加入条件を満たす事業所についての詳細は後述します。
労働者側は個人の所得に応じて決められた額を納付しますが、国民年金とは違って半額は会社が負担することになっています。

厚生年金の仕組み

厚生年金は基礎年金と「2階建て」と言われ、公的年金の2階部分にあたるものです。
年金受給時に1階部分の国民年金、つまり基礎年金に上乗せされて支払われます。
厚生年金で支払った額によって、受け取ることのできる将来の年金額に差が出てくる仕組みです。

加入年齢と支給開始年齢

国民年金は20歳から60歳までが加入年齢ですが、厚生年金の場合は、学校を出て会社に入社した年齢から加入します。
中卒入社であれば15歳から、高卒ならば18歳からです。
そして、会社を退職するまで、その会社の人間として厚生年金に加入することとなります。
また、たとえ会社に在籍していても、70歳になると厚生年金に加入する資格を失います。

年金の受給は以前は60歳からでしたが、平成12年の法律改正によって、段階的に受給年齢が60歳から65歳へ引き上げられることとなりました。
生まれ年に応じて、男性は平成25年度から徐々に受給年齢の引き上げが行われ、女性は平成30年度から引き上げが行われます。
それにより、男性は昭和36年4月2日生まれ、女性は昭和41年4月2日生まれ以降の人は65歳からの受給と限定されます。

労働者側の厚生年金の加入条件

ここでは、どのような人が厚生年金に加入できるのか、加入しなければいけないのかを見ていきたいと思います。

雇用されている人

まず、健康保険・厚生年金の適用事業所で「性別問わず常時雇用されている70歳未満」の人は厚生年金に加入しなければなりません。
また、「2カ月以上の雇用見込みがあり、労働時間が週30時間以上・月15日以上出勤している人」も加入条件に当てはまります。
外国人労働者であっても同様です。

事業者から認可された人

厚生年金に加入するための条件として、性別を問わず70歳未満の人であるというのは先ほどと同じですが、何が違うかというと「従業員を雇っている事業所が厚生年金加入の条件を満たしていない」ということです。

この場合、従業員が厚生年金に加入するには、保険料を半額負担してもらう必要があるため、事業主の同意が条件になります。
それによって厚生年金に加入した人は、所属する職場が適用事業所ではなく、従業員単独で任意加入をするので「任意単独被保険者」といいます。
任意単独被保険者は、厚生労働大臣からの認可があった日に資格を取得することになります。

年金の不足分を補う人

70歳以上でも老齢年金の受給資格期間が足りない在職中の人は、申し出る事により、不足する期間を補うまで厚生年金に任意加入して受給権を得られます。
ただし、基本的には70歳以上の人は全額本人負担になります。
事業主の同意が得られたら、保険料を折半してもらうことも可能です。

パートやアルバイト

パートやアルバイトでも常時雇用で、正社員の勤務時間および労働日数の4分の3以上働いている人は厚生年金の加入対象となります。
例えば、正社員が一週間で40時間働くとすれば30時間以上、そして、正社員がひと月で20日間働くとしたら、15日以上働いているパートまたはアルバイトの人は厚生年金の加入対象です。

また、労働日数および勤務時間が正社員の4分の3以下であっても、次の条件をすべて満たす人は厚生年金の加入対象です。
週の労働時間が20時間以上で給料が月額8万8000円以上、1年以上の勤務見込み(就業規則や雇用契約書等の書面において、契約が更新される場合がある旨が明記されている場合など)がある人。
そして、501人以上の会社に勤めていて、学生ではないことです。

ただ、学生であっても、夜間・通信・定時制学生は加入対象となりますので気をつけましょう。

加入義務のない人

一方、厚生年金の加入義務がない人もいます。
日ごとに雇い入れられる人や、2カ月以内の期間を定めて雇用される人、4カ月以内の季節的な業務での雇用、6カ月以内の臨時的な事業での雇用といった、短期で雇用されている人達です。
そして、所在地が一定ではない事業所に雇用される人や学生(夜間・通信・定時制以外)も、加入義務はありません。

所在地が一定ではない事業所というのは、サーカスや劇団などがこれにあたります。
短期雇用の人はそれぞれ、その期間以上続けて働く場合や、はじめからその期間以上働く予定で雇われた場合は、厚生年金に加入する必要が出てきますのでご確認ください。

事業者側の厚生年金の加入条件

どういった事業所が厚生年金保険に加入条件を満たしているのかについてです。

適用事業所には2種類ある

厚生年金の適用事業所は2種類あります。
必ず厚生年金保険に加入しなければならない「強制適用事業所」と、条件を満たす事によって厚生年金保険等に加入する事のできる「任意適用事業所」があります。
ちなみに任意適用事業所の場合は、「厚生年金保険のみ」「健康保険のみ」というように、どちらか一方への加入もできます。

こんな事業所は強制適用事業所

法人として登記された事業所、つまり「会社」と名前のつく事業所は、たとえ社長ひとりしか従業員がいなくても、必ず厚生年金に加入しなければなりません。

個人事業所の場合、農林水産業、弁護士などの法務業やサービス業、宗教法人などを除いて、常時5人以上の従業員がいる事務所、工場、商店などが強制適用事業所にあたります。

加入申請を提出した任意適用事業所

今まで書いた条件を満たしていない事業所でも、厚生年金に加入することができます。
従業員の半数以上が加入に同意して、事業者の申請後に厚生労働大臣の認可を受けたら厚生年金の適用事業所となります。
適用事業所になった後の扱いは強制適用事業所と同じで、たとえ加入に反対していた従業員であっても、全員厚生年金に加入することとなります。
保険給付や保険料も強制適用事業所と同じです。

任意適用事業所には、常時5人以上の従業員がいる農林水産業、弁護士・会計士などの法務業や、飲食店・ホテルなどのサービス業、神社など宗教業の個人事業所、その他の業種で常時5人未満の事業所があてはまります。

条件に該当するにも関わらず未加入の場合

これまでの条件に明らかに合致しているのに、厚生年金未加入の事業所があると、日本年金機構から「適用調査対象事業所」という形で認識されてしまいます。
その場合は、まず日本年金機構に委託された民間業者を通して自主的な加入をすすめられます。
それでも加入しなければ、年金事務所の職員がおこなう加入指導や立入検査・認定を経て加入手続きをすることになります。

この立入検査については、事業主は避けて通れないことになっています。
正当な理由がなく検査を拒んだり、質問に答えなかったりすると、「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」というペナルティがあります。

厚生年金加入のメリットとデメリット

厚生年金に加入する事で手取りが減るからいやだなあと思う方も多いと思いますが、厚生年金にはメリットもあります。
ここで事業者側と雇用される側の双方からのメリット・デメリットを見てみましょう。

事業者側のメリットとデメリット

まず事業者側のメリットから言えば、厚生年金に加入していることで従業員も安心して働けるという点が挙げられます。
安心して働ける職場だと長期雇用にも繋がりますし、いい人材も集まりやすくなります。
また、支払った保険料は経費として計上できます。
適用事業所は、キャリアアップ制度による助成も受けることができます。

反面、デメリットはやはり、従業員全員の半額を負担すること。
従業員が多いほど雇用側の負担も増えてしまいます。

従業員側のメリットとデメリット

雇用されている側のメリットは、厚生年金に加入していると将来受け取る年金額が増えることです。
障害厚生年金・遺族厚生年金といった、万が一の場合の備えもあります。
傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金など、怪我や出産による休職時の給付もあります。
保険料を会社で半分負担してくれているため、場合によっては国民年金よりも安くなります。

デメリットとしては半額負担とは言え保険料が天引きされてしまうので、給料の手取り額が減ってしまうことです。

厚生年金に加入するための手続き

厚生年金に加入するためには事業者側で手続きを済ませなければならないことが多いので、その流れと必要な書類を知っておきましょう。

手続きは原則として事業所側が行う

手続きは、原則としては事業所が行います。
厚生年金の適用事業所になるための届出と、加入条件を満たす従業員の資格取得届、そしてその従業員に扶養家族がいる場合は被扶養者に関する届出をします。

厚生年金の適用を受けて加入する際に必要な書類は、加入条件を満たしたという事実が発生してから5日以内に年金事務所に提出します。
直接窓口へ出す場合は、事業所の所在地によって管轄が違いますので確認しましょう。
日本年金機構のホームページから確認できます。
それぞれの都道府県から年金事務所を探すようになっています。

他には年金事務センターへ郵送する方法と、電子申請もあります。
届出用紙以外に、CD・DVDでも受け付けています。

【参照リンク:http://www.nenkin.go.jp/section/soudan/index.html

提出する書類の種類

新規適用届

これは、新たに厚生年金保険に加入する事業所は必ず提出するものです。
裏にも地図などの記入欄があります。

被保険者資格取得届

被保険者資格取得届は、新たに雇い入れた従業員が加入条件を満たす場合に提出します。

被扶養者(異動)届

これは、加入条件を満たす従業員に配偶者や父母など、扶養する家族がいる場合に必要なものです。

その他

「被保険者資格取得届」には、マイナンバーと基礎年金番号を記入する欄がありますので、加入する従業員にそれらを確認しておく必要があります。
本人確認が取れないと年金事務所から資格取得届を返却されて、二度手間になってしまいますので気をつけましょう。

自分が加入条件を満たしているかどうかを確認

厚生年金の加入条件が広がり、加入できる人や事業所が増えました。
厚生年金に加入することで、企業側の負担は増えますが、それは経費にもなり節税になります。
雇用者は手取りは多少へりますが、将来の保障は厚くなります。

厚生年金の加入期間は、のちの年金額にも影響しますから、もし条件を満たしていても未加入だという方は早めに加入しましょう。
厚生年金の加入条件を満たしている事業所には入る義務がありますので、あらためて条件を確かめてみることをおすすめします。