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個人事業主が退職金を得るには
個人事業主に定年はなく生涯働き続けることは可能ですが、健康状態や家庭の事情など、人生にはさまざまなことが起きます。
もちろん、余生を生きていくだけの貯蓄が十分にある人はべつですが、従業員を雇い、資金もギリギリのところで経営している人は少なくはありません。
何らかの理由で働けなくなったとき、個人事業主やその従業員の生活はどうなるのでしょうか。
個人事業主だから、退職金など得られないと考える人も多いでしょう。
しかし、実は個人事業主やその従業員でも退職金を得る方法はあるのです。
個人事業主が退職金を用意する方法
個人事業主だけではなく、そこで働く従業員にとっても、退職金や福利厚生は重要なものです。
それによって、従業員の定着や優秀な人材の確保につながることは確かです。
また、業績を左右するのはやはりそこで働く従業員なのです。
個人事業主が退職金を用意するための方法を知って、今後の運営に役立てましょう。
小規模企業共済制度に加入
小規模企業共済制度とは
中小機構が「経営者にも退職金を」を理念とし運営する共済制度で、小規模(従業員20名以下)の法人役員や個人事業主が対象となる積立型の退職金制度です。
この制度に加入することにより、個人事業主が廃業したときに、退職金を受取ることができます。
小規模企業共済制度の特徴
小規模企業共済制度は、掛金が月々1,000円?70,000円で、500円単位で設定が可能です。
加入期間は20年満期で、納付期間が一年未満の場合は、掛け捨てとなります。
また、
・加入後の掛金の増減額が可能
・掛金は全額が所得控除の対象になる
・受取方法は分割、一括、分割と一括の併用が選べる。(分割の場合は雑所得、一括の場合は退職所得扱いとなり、所得控除の対象となる)
・無担保・無保証人の貸付制度
このような特徴があります。
個人事業主にとっては退職金を受取れるだけでなく、事業資金の借入も可能となり、この制度に加入することによって将来の不安だけでなく、急な経営の悪化にも備えることができます。
特定退職金制度に加入
特定退職金制度とは
法人または個人事業主に従事する従業員に、所得税法施行令第73条に基づいた団体(商工会議所・商工会・商工会連合会・一般社団法人・一般財団法人など)より、給付される退職金制度となります。
この制度は、中小企業や大企業でも加入可能です。
個人事業主の場合、従業員の退職金を積み立てるのは一苦労でしょう。
そこで、この制度に加入することにより、個人事業主の負担は軽減できます。
特定退職金制度の特徴
特定退職金制度は、掛金が月々1,000円?30,000円で1,000円単位で設定可能です。
途中解約の場合でも受取可能で、全額事業主負担となります。
また、
・掛金は従業員ごとに設定可能(加入後の掛金の増減額可能で、過去の勤務期間との通算制度がある)
・遺族一時金の給付(加入従業員が死亡したときに給付され、掛金1,000円につき10,000円を加算した額での給付)
・年金の給付(加入期間10年以上の退職者が希望した場合)
・特定の従業員以外は全員加入義務(加入資格は14歳7カ月~75歳6カ月の事業主・役員・事業主と生計を一緒にする親族は除く、全従業員)
・掛金は必要経費として計上でき、従業員の給与の上積みにもならない
このように、従業員にとっては将来の不安をなくすための特徴があります。
この不安を解消することによって、従業員の定着が図れます。
中小企業倒産防止共済に加入
中小企業倒産防止共済とは
取引先が突然倒産したときに、事業の経営が悪化したり連鎖倒産を防ぐための制度です。
ただし、加入条件は一年以上事業を行っている事業主となり、また取引先が夜逃げした場合には借入ができません。
万が一、主な取引先の急な倒産により売掛金の回収ができなかったら…、そんな不安を解消するための制度となります。
中小企業倒産防止共済の特徴
中小企業倒産防止共済は、掛金が月々5,000円?200,000円で、5,000円単位で設定が可能です。
800万円が満額で、納付期間が一年未満の場合は掛け捨てとなります。
また、
・加入後の掛金の増減額可能
・無担保・無保証人の貸付制度(最大で掛金の10倍までの借入可能)
・取引先の倒産が確認でき次第すぐに借入可能
・自己都合であっても解約手当金が受取れる(納付期間が40カ月以上であれば全額受取れる)
・掛金は必要経費として計上できる
金融情勢も不安定な昨今、自らの過失だけで経営が悪化するとも限りません。
一度、事業を立ち上げたからには、廃業を望む人もいないでしょう。
どんな不測の事態にも備えておくことは、重要な課題ではないでしょうか。
福利厚生目的で生命保険に加入
従業員や事業主にとっても重要な福利厚生ですが、福利厚生を充実させることにより従業員の定着が図れ、また優秀な人材の確保にもなります。
しかし、現実的には個人事業主が福利厚生を充実させるのは、たいへん困難な状況です。
そのために活用するのが、生命保険の加入です。
一般的には、福利厚生目的の生命保険は三つあります。
・養老保険:満期保険金または解約払戻金を退職金とでき、被保険者が死亡した場合死亡保障としても活用できる。
・定期保険:掛け捨て型の保険のため、満期になる前に解約し、解約払戻金を退職金として活用する。
・医療保険:病気や怪我をした場合の見舞金として活用する。
このように、それぞれの特徴を理解し活用することで、従業員だけではなく事業主にとっても福利厚生を充実させることができます。
貯蓄性のある養老保険に加入
一般的にはあまり知られていない養老保険ですが、法人の間ではこの養老保険(福利厚生プラン)を活用して従業員や役員の退職金を積み立てる例が多くあります。
特徴としては、被保険者の退職時に満期保険金または解約払戻金を退職金として活用でき、契約期間中に死亡した場合は、満期保険料が支払われるため、遺族への死亡保障にもなります。
ただし、福利厚生を目的とした保険のため、原則全員加入が条件となります。
また、掛金の二分の一を必要経費とすることができます。
個人型確定拠出型年金に加入
年金には、20歳以上の全国民が加入する国民年金、民間企業のサラリーマンや公務員が加入する厚生年金、個人事業主が加入する国民年金基金などがありますが、それらとはべつに、加入者が自分で運営する確定拠出型年金があります。
個人型確定拠出型年金とは
加入先(金融機関など)に掛金を納め、その加入先の金融商品(信用信託や定期預金など加入先によって異なる)を運用し積み立てることができます。
その運用した(運用方法によっては掛金より増える可能性もある)積立金を60歳以降に分割、一括どちらかを選択して受取れます。
国にお金を預ける国民年金とは違い、個人で運用し受取り可能な年金制度をうまく運用して、老後に備えておくこともよいでしょう。
個人事業主が退職金を用意するメリット
今後の事業を展開させたり、さまざまなリスクを軽減することは事業をする上での重要な課題ですが、退職金を用意するための制度をうまく活用することで、それらの課題をクリアできる可能性は広がります。
税金面で優遇される
小規模企業共済制度は掛金の全額が所得控除となります。
また、特定退職金制度や中小企業倒産防止共済の掛金は、全額が経費として計上でき、養老保険においても掛金の二分の一が経費として計上できます。
これらをうまく活用することで、保障だけでなく、税金対策にもなるのです。
経営不振による廃業に備えられる
経営不振によって廃業した場合、従業員の退職金を用意することはほぼ不可能でしょう。
しかし、特定退職金制度や中小企業倒産防止共済、養老保険などをうまく活用することで、退職金が確保できます。
仕事ができなくなった場合のリスクを軽減
事業主やその従業員どちらであっても、老齢や病気などの理由で仕事ができなった場合でも、日々の生活費は必要です。
小規模企業共済制度や特定退職金制度、保険などすべてにおいて、仕事ができなくなった場合でも生活費を確保することができます。
事業資金の貸付が受けられる
小規模企業共済制度や中小企業倒産防止共済では、無担保、無保証人で事業資金の借入が受けられます。
これらに加入することによって、廃業することを避け、経営の立て直しを図ることができます。
退職金を用意して将来の不安をなくそう
「個人事業主のため、会社員や法人とは違って将来の保障などない」と思っていたかたは、少し安心されたのではないでしょうか。
事業主ご本人であっても、その従業員であっても、一寸先は闇という生活を続けていくことは、心身ともにストレスを感じるはずです。
しかし、このような制度や保険を知っているだけでも、将来の不安が解消されるのではないでしょうか。
このようなような制度を利用して、それぞれにあった方法で退職金を用意しましょう。