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確定拠出年金の節税効果とは。具体的なメリットやデメリットを知ろう

確定拠出年金のしくみ

日本の年金制度は、加入義務がある公的年金と、公的年金の補填として任意で加入できる私的年金で構成されています。
公的年金は国民年金や厚生年金。
私的年金とは国民年金基金や個人型確定拠出年金(iDeco)などがあります。

確定拠出年金とは、加入者や事業主が掛金を拠出して、加入者が自ら資産を運用し、運用した成績によって給付額が受け取れる制度のこと。
企業が加入する「企業型確定拠出年金」と、個人が加入する「個人型確定拠出年金(iDeco)」があります。

制度改正により、2017年1月からiDecoの加入対象範囲が大幅に拡大し、原則として全ての企業に勤めている方、専業主婦(主夫)、公務員の方でも加入できるようになりました。
加入を検討するために、確定拠出年金メリット、デメリットや節税効果を確認していきましょう。

確定拠出年金のメリット

確定拠出年金にはさまざまなメリットがあります。
一つずつ確認していきましょう。

掛金が全額所得控除で節税効果がある

確定拠出年金で拠出する掛金は非課税で全額所得控除になるので、節税効果があります。
個人型確定拠出年金(iDeco)の場合、拠出した掛金の額に応じて、所得税や住民税が減額されるのです。

実際の節税額は、「年間の確定拠出年金の掛金×(所得税率+住民税率)」の計算式で算出できます。
所得税率は課税所得額に応じて変わり、住民税率はどこに住んでいても10%です。
所得税は年末調整で戻り、住民税は翌年に納税額が減額されるという形で節税効果を受けることができます。

年末調整での所得控除申請でOK

個人型確定拠出年金(iDeco)の節税メリットを受けるため、年末調整での所得控除申請を行います。
会社員や公務員は、年末調整の際にiDecoに関する書類を添付することと、必要事項の記入が必要です。

年末調整は、会社員や公務員が納めた源泉徴収額と、本来納めるべき所得税の金額の差額を算出して清算をする手続きのことです。
自営業者や年間の給与収入が2,000万円以上ある方は、年末調整ではなく確定申告を行います。

iDecoの掛金を口座振替で払っている場合

iDecoの掛金を口座振替で支払っている場合は、勤務先からもらう保険料控除申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の中の「個人型または企業型年金加入者掛金」の欄に所定の金額を記入します。

記入する金額は、年末調整の時期の前に国民年金基金連合会から届く「掛金払込証明書」を見て確認しましょう。
また、この掛金払込証明書も一緒に添付して提出します。

iDecoの掛金を給与天引きで払っている場合

iDecoの掛金を給与天引きで払っている場合、掛金払込証明書は届きません。
年末調整に関する申請は企業が行うので、加入者が年末調整の手続きをすることがないからです。
(例外として、iDecoの加入が10月~12月だった場合、初年度のみ確定申告が必要になる可能性があります。)

運用費が非課税

運用費が非課税というのも、確定拠出年金(iDeco)の節税メリットの一つです。
運用中に得られる収益はすべて非課税になります。
2017年から専業主婦や公務員もiDecoの対象に加えられ、老後資金のための個人年金制度として利用する人が増加。
運用費が非課税になるという節税メリットも選ばれている理由です。

また、iDecoと同じように非課税がメリットのNISA(ニーサ)も、資産運用を目的にした制度として注目されています。
しかし、NISAは非課税期間が5年ですが、iDecoは退職するまでの運用費が非課税です。
一方で、毎年投資できる額は、NISAよりもiDecoのほうが低く抑えられています。

年金受給時にも税制優遇

年金受給時にも税制が優遇されます。
個人型確定拠出年金(iDeco)の受け取り方法は、「一時金(一括で受け取る方法)」と「年金(分割して受け取る方法)」から選択する、またはその両方を併用することができ、受け取り方法によって受け取りにかかる税金が変わるので、上手に受け取ることでより節税効果を高くすることが可能です。

積み立てたiDecoを一時金として受け取る場合は、退職所得控除という制度が利用可能。
iDecoに加入していた期間に応じて控除額が大きくなります。
年金として受け取る場合は、公的年金控除が利用可能です。

企業型確定拠出年金でのマッチング拠出の節税効果

2012年1月の法改正により、加入者も一定の範囲内であれば、事業主の掛金に上乗せして拠出できるマッチング拠出ができるようになりました。
マッチング拠出のメリットは、加入者の掛け金に税制優遇が適用されるので節税効果があること。
毎月積み立てた掛金は全額所得控除の対象になり、将来のために積立をすることで所得税や住民税が軽減されます。

加入者の掛金は、会社掛金と同額までとなっており、かつ合計で拠出限度額の月額55,000円まで。
(企業年金を併用している場合は月額27,500円まで)。
このように、マッチング拠出の金額には上限があるので注意しましょう。
マッチング拠出の導入を検討するときには、想定利回りや運用商品も併せて検討しましょう。

確定拠出年金のデメリット

確定拠出年金は、メリットだけでなくデメリットもあります。
デメリットも理解してから検討することが大切です。

60歳までは原則解約不可

確定拠出年金は、原則として60歳までは解約できません。
公的な年金制度の確定拠出年金には、税制優遇によって老後の資産確保を促す目的があり、老後難民の増加による生活保護費の増加を防ぐという政策意図があります。
そのため、60歳までは解約不可であり、引き出すこともできません。

ただし、加入期間が短い場合、資産の残高が極めて少ない場合、障害が生じた場合などは、脱退一時金を受け取ることが可能です。
一旦加入したら60歳以降まで引き出すことができないのですが、以下の条件がすべて満たされている場合は、特例が認められて脱退することができます。

・国民年金保険料の免除者である
・障害給付金の受給権利者ではない
・拠出期間が通算一カ月以上三年以内である、または管理資産が25万円以下である
・確定拠出年金の加入者資格を失ってから二年以内である
・企業型確定拠出年金の脱退一時金を受給していない

手数料が発生する

個人型確定拠出年金(iDeco)に加入する際、または企業型に加入していた方が退職し、転職先の企業型または個人型に移換する場合、初回手数料2,777円がかかります。
この金額は、国民年金基金連合会の運用管理費として支払う手数料です。

また、運営管理機関により、加入時や移換時の手数料がかかる場合があるので注意しましょう。
国民年金基金連合会に支払う手数料は、どの金融機関を選んだとしても金額は2,777円と一律です。
加入時または移換後の最初の掛金から手数料が差し引かれます。

インフレに弱い

確定拠出年金は、掛金を拠出して資産を運用するので、将来もらえる金額は確定していません。
そのためインフレに弱いというデメリットがあるのです。
元本保証商品もありますが、リスクがある金融商品に投資をすると、支払額より給付額が減少する可能性があります。

元本保証商品だけにした場合、インフレ率よりも資産の増加が少なくなり、損をしていないような気がするものの、貨幣価値や購買力と照らし合わせてみると、実質的に損になることもあるのです。
2013年以降は、金融緩和以降金利0時代が続いており、インフレ率が上がっているため、実質的に損になっている方が増えています。

住宅ローン控除とふるさと納税限度額に影響

住宅ローン控除とふるさと納税限度額に影響が出る可能性があるので注意が必要です。
住宅ローン控除は最終的に納税額を減少できますが、ローン控除で減額できるのは、その人の税額の範囲内です。
中には、控除の限度額を最大限に使えず、控除適用期間が終わってしまうこともあります。
控除で減る税金が減額になる可能性があるので気をつけましょう。

ふるさと納税の上限額は、課税所得(年収-所得控除)ですが、確定拠出年金の拠出額は全額所得控除になるので、所得に応じて決まるふるさと納税の上限額も、確定拠出年金の拠出額分に応じて減ることになるのです。
確定拠出年金で課税所得が減ることで、ふるさと納税で控除される翌年の住民税も減ります。
つまり、控除される予定の限度額以上にふるさと納税で寄付をした場合、その分は損をすることになるので、損をしない限度額を把握しておくことが大切です。

年金受給時に相当課税される場合がある

金融機関にもよりますが、年金の受給方法は、「一時金、年金、一時金と年金の併用」のいずれかを選択します。
一時金を選ぶと退職所得控除の対象となり、確定拠出年金の加入年数(勤務年数)によって控除額を算出します。
退職金の制度がない場合、または受取額が少額な場合は、一時金が有利。
そうでない場合は、年金または年金と一時金を併用して受け取ると、節税効果が高くなる可能性があります。

一時金で受け取る場合、加入年数が20年までは年40万円の控除、21年目以降は年70万円の控除を受けることが可能。
35年加入した場合、1,850万円まで非課税で受給できます。
年金で受け取る場合、公的年金控除の対象となり、64歳まで年70万円、65歳以降は年120万円まで税金はかかりません。

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確定拠出年金の節税効果シュミレーション

確定拠出年金の節税効果シュミレーションをパターン別で紹介します。

会社員35歳で年収500万円で月23.000円の掛金の場合

企業年金を行っていない会社員35歳の場合、掛金の限度額は23,000円。
そのため、会社員35歳で年収500万円で月23,000円の掛金を支払った場合の節税効果のシミュレーションをしてみましょう。
「給与支払額-給与所得控除-所得控除=課税所得」、「課税所得×税率=所得税額」の計算式をもとにして、シミュレーションをします。

・課税所得=5,000,000円-1,540,000円-380,000円-276,000円=2,804,000円
・所得税=2,804,000円×10%-97,500円=182,900円
・住民税=2,804,000円×10%=28,400円
・所得税+住民税=463,300円
・節税効果=518,500円-463,300円=55,200円

月23,000円を25年間積み立てた場合、690万円貯まることになり、これに加えて運用益がプラス。
この金額は60歳まで引き出せないので拘束される金額ではありますが、毎年の節税額があるので、実質はこの金額とは違うことになるのです。
年収が25年間500万円で変わらないと仮定すると、25年間で138万円(55,200円×25年)の節税。
運用利率3%の運用利回りの場合の運用益と合わせると、年金額は1025万8,180円になります。

自営業者35歳で年収500万円で月23.000円の掛金の場合

自営業者の掛金は、月68,000円までです。
自営業者は所得控除額が人によって異なるので、各種所得控除を考慮せずに、年収を課税所得として計算します。
自営業者35歳で年収500万円で月23,000円の掛金の場合の節税効果は以下のようになります。

月23,000円を25年間積み立てた合計額は690万円で、これに運用益をプラスします。
年収500万円の場合、2,070,000円節税になります。
25年間で運用利率3%の利回りの場合、年金額は10,258,180円です。

確定拠出年金の留意点

確定拠出年金の留意点についても確認しておきましょう。

職業別に掛金の上限がある

確定拠出年金の掛け金には、職業別に掛金の上限があります。
自営業者68,000円、企業型DCなしの会社員23,000円、専業主婦23,000円です。

毎月一定の掛金を拠出して運用し、将来の年金につなげていくのが確定拠出年金のしくみなので、掛金をいくらに設定するかがポイントになりますが、掛金には上限があるので注意しましょう。
また、無理のある金額を設定してしまい、あとで困らないようにすることも重要です。

凍結中の特別法人税

現在凍結中の特別法人税は、復活すると税制メリットがなくなってしまうので注意です。
特別法人税とは、企業年金の積立金に対して、年率1.173%を課税する税金のことなので、確定拠出年金の積立金全額の1.173%が毎年取られてしまうということになります。

1999年から課税凍結されており、繰り返し課税凍結が延長されているので、現在は加入者には影響ありません。
しかし、今後復活するとなると、加入者にとっては痛手となってしまいます。

確定拠出年金の節税効果は動向に注意

確定拠出年金は、掛金が全額所得控除になるなど、さまざまな節税効果があります。
しかし、インフレに弱い、受給時に課税される場合がある、などのデメリットもあるということも頭に入れておきましょう。

現在凍結されている特別法人税がもし復活したら、税制メリットがなくなってしまということも起こりえることです。
確定拠出年金の節税効果は、今後の動向に注意が必要。
原則として60歳までは解約不可で引き出すこともできないので、メリットやデメリットをよく理解し、老後資金の準備にふさわしいかを判断しましょう。