UKANO家計のクリニック

みなし残業制度とは?45時間の意味としくみについて知ろう

45時間の意味を知りましょう

たとえば、ご主人の会社ではみなし残業代45時間分が見込まれた基本給であっても、実際にはもっと働いているのではないだろうかと心配になっている方はいらっしゃいませんか?
また、会社の固定残業代が違法かどうか知りたいという方もいらっしゃるでしょう。

ここでは、みなし残業制度とはそもそも何なのか、みなし残業45時間の基礎知識から労働時間が違法にあたるかどうかを見分けるポイントまでをご説明しましょう。

みなし残業についての正しい知識を身につけて、さらによりよい生活をおくりましょう。

みなし残業制度について

まず、みなし残業制度とはいったいどのようなものなのか、その仕組みについて理解するところから始めましょう。

残業代が予め固定給に含まれている

みなし残業制度とは、実際に行った残業時間で給与が計算されるのではなく、毎月決まった時間分の残業代が固定給で支払われるもので、固定残業代制度とも呼ばれています。
仕事の内容が会社外や出張など労働時間を把握できない場合などで、原則として所定の労働時間労働したものとみなす制度です。

このみなし残業制度は、決められた残業時間に基づいて計算されます。
給与の支給では、固定残業代を基本給の中に含めて明記される場合と、基本給と固定残業代が分れて明記される場合とがあります。

たとえば、基本給25万円・固定残業代(45時間分)10万円 または、月給35万円(内45時間分の固定残業代10万円を含む)などと記載されている必要があります。

従業員へ周知の義務

労働基準法では、雇う側の会社は、就業規則、「36協定」、その他の労使協定などを、以下のいずれかの方法で従業員に周知しなければならないと定めています。

※「36協定」とは…1日8時間・週40時間を超える労働は、会社側と労働者代表や労働組合とで労使協定を結ぶことなどによって認められていますが、これが労基法(労働基準法)36条に規定されていることから、「36協定」と呼ばれています。

【参照URL】http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0146/7523/20171228164224.pdf

明確に記載する必要がある

みなし残業制度が適用されている場合、残業時間と固定残業代の金額が明確に記載されている必要があります。
36協定で許されている一般の労働者の場合の時間外労働の限度は、1カ月45時間です。

時間外や休日、深夜(原則午後10時~午前5時まで)などに労働した場合には、1時間当たりの賃金の2割5分以上、休日に労働した場合には、1時間当たりの賃金の3割5分以上の割増賃金が支払われます。

これらのみなし残業時間や賃金は、明確に記載する必要があります。

残業代の計算方法

みなし残業制度の仕組みが理解できたところで、次は、実際に残業代を計算してみましょう。

月給に1.25をかける

月給制の場合の1カ月あたりの残業代を計算してみましょう。

たとえば、月給が25万円で9時~18時までの実働8時間の人が1カ月15時間の残業をしたとします。
その際の残業代は以下のように計算されます。
(ここでは1カ月の勤務日数を21日としています)
1カ月の残業代=残業時間×1時間当たりの賃金×割増率(1.25)
1時間当たりの賃金=1日の所定労働時間×21日÷(月給-諸手当)
1時間あたりの賃金=8(時間)×21(日)÷(25万円)=1,488円
1カ月の残業代=15(時間)×1,488(円)×1.25=27,900円
1カ月の残業代は27,900円となります。

※月給の中に含まれる諸手当において、以下の6項目は割増賃金の算定基礎から除かれます。
これらは、名称ではなく実質によって判断されます。

・家族手当
・通勤手当
・別居・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われる賃金
・1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

残業代からみなし分をひく

みなし残業代はすでに固定給として支払われているので、前述で計算した本来の残業代からみなし残業代を引いた分が未払い残業代になります。

本来の残業代-みなし残業代=未払い残業代
もしもこの計算によって、未払い残業代が発生した場合には、請求することができます。
ですが、この計算はあくまでも大まかなものですので、厳密に計算されたい方は法的専門家に相談するとよいでしょう。

違法かどうかを見分けるポイント

ここでは、会社が違法かどうかを見分けるチェックポイント5項目について解説していきます。

金額や時間が明確に記載されていない

みなし残業代(固定残業代)において、残業時間やその金額は明確に記載されている必要があります。
違法なみなし残業の代表的なものとしては、固定残業代が明確に記載されず、曖昧になっているというものです。

雇い主である会社は、労働基準法やその命令の要旨、就業規則、36協定などの労使協定を労働条件通知書などをもって、従業員に周知する義務があります。
固定残業代においても、その金額や時間は基本給と固定残業代の区分を明確にして記載されている必要があります。

就業規則がない又は周知されていない

労働基準法において、「常時10人以上を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督 所長に届け出なければならない」とされています。
また、その内容は、従業員にしっかりと周知しなければなりません。

就業規則がない、または周知されていないというような場合は注意が必要です。
今後もお仕事をしていく上で、就業規則に関する知識は非常に役に立つものになります。
これを機会によく確認してみましょう。

【参照URL】http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0146/7523/20171228164224.pdf

最低賃金を下回る

最低賃金制度とは、法律に基づいて国が賃金の最低額を定めているもので、全国の最低賃金などというように、みなさんもよく耳にされたことがあるでしょう。

最低賃金には、各都道府県で働くすべての人に適用される「地域別最低賃金」と特定の産業について設定されている「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
地域別と特定(産業別)の2種類に設定されている場合は、高い方の最低賃金以上の賃金が支払われなければならないと定められています。
この最低賃金を下回って支払われている場合には、その差額を請求することができます。

これら最低賃金は、基本給だけではなく、時間外労働などの割増賃金なども対象になります。

みなし分を超えた残業代が払われない

固定残業代は、固定残業分以上に残業をした場合、その超過分は、本来の固定分に上乗せして支払われるものです。

固定残業分の労働時間を超えて労働したにもかかわらず、その差額を本来の固定残業分に上乗せして支払われていない場合は、みなし残業代制(固定残業代制)の違法を疑ってもいいかもしれません。

上記ででお知らせしました計算方法などで確認してみましょう。

みなし残業時間が異常に長い

36協定で許されている一般の労働者の場合の時間外労働の限度は、1カ月45時間と決められています。
それを超える残業が常に想定されているような場合は、違法を疑ってもよいでしょう。

特に、月80時間を超えるような長時間の残業を想定するみなし残業代制(固定残業代制)においては、違法性が高いとされています。

その理由は、月80時間を超えるような残業は、過労死との因果関係が非常に強いとされ、危険性が高い残業量と言えるからです。

適正な残業代を取り戻す方法について

未払い残業代が発生した場合、それを取り戻す方法とその際の注意事項などについて解説していきます。

残業代請求権の時効は2年

残業代を計算してみたら、未払い分が出てきたという方もいらっしゃるでしょう。
未払い分の残業代を請求するには、その証拠となる書類などを集めておく必要があります。

まず、残業時間を求めて、次にその残業代を計算してみます。
その結果、未払い分がでてきたならば、実際に働いた時間が証明できる証拠集めをしていきます。

ここで気をつけたいことは、残業代請求権の時効です。
賃金の未払いや災害補償その他の請求権は、2年間と決めれていますので、後々請求しようと考えている方は、残業代の請求権に時効を迎えてしまうことにもなりかねません。
未払い分の残業代が多いと感じた方は、早めに請求を行うことをおすすめします。

証拠集めを行う

実際に未払いの残業代を請求する際、証拠集めが大切になってきます。
この作業を怠ると、請求できない可能性もありますので、しっかりと準備しましょう。

以下に、その証拠となるものを記載します。

タイムカードなどの労働時間がわかるもの

タイムカードや業務日報などの資料は、労働時間がわかるため、残業したことを証明する証拠になります。
ですが、未払い分の残業代を請求する際の証拠となる資料に制限はありませんので、タイムカードがない場合でも請求することが可能です。

たとえば、会社で使用しているパソコンのログイン履歴やFAX送信履歴、さらに、日記などの記録やスケジュール帳も証拠となります。
また、会社から家族へ送られたメールなどの、業務をしている時間などが記録されたものであれば、証拠として成り立ちます。

雇用契約したときの書類

「雇用契約書」や「労働条件通知書」などの雇用条件を明記したものには、残業代の支払い方法や給与の計算方法などが明記してあるため、これらの書類はしっかりと保管しておきましょう。

就業規則のコピー

就業規則は、会社で従業員が働く際の決まり事をまとめた書類です。
ここには、就業時間や休日、時間外労働などに関することが記載されています。
また、この就業規則は、従業員がいつでも閲覧できる状態にして周知することになっています。

就業規則は、未払い分の残業代を計算する際や雇用条件の確認などにも必要ですので、しっかりとコピーをとっておきましょう。

専門機関に相談する

実際に未払い残業代が発生して、ある程度必要な証拠書類を整えることができたとしても、自分で直接会社と交渉するのは、とても不安ですね。

そのような場合は無理をせず、専門機関にご相談されることをおすすめします。

専門機関の例としては、まずは「労働基準監督署」が挙げられます。
労働基準監督署は会社が労働基準法などの法律をきちんと守っているかどうかをチェックする機関です。
管轄の労働基準監督署に電話やメール、または直接の面談で問い合わせてみましょう。

次に、「社会保険労務士」に問い合わせる方法です。
「社会保険労務士」は労働分野の専門家ですので、必要に応じて対策を講じてくれます。

また、会社が話し合いに応じてくれなかった場合などは、裁判へとつながる可能性がありますが、裁判手続きには長い期間と労力が必要になります。

そこで、裁判よりもハードルの低い「労働審判」という制度をご説明しましょう。

この労働審判は、給料の不払いや解雇などの労働問題に関するトラブルを解決する目的でつくられた制度で、労働審判官1人と労働審判員2人で組織されています。

労働審判に関することは、裁判所のホームページで確認するか最寄りの地方裁判所に問い合わせをするなどして確認しましょう。
この労働審判は、もちろん個人でも申し立てをすることができますが、交渉がうまくいかなかった場合などは訴訟に移行することもあり得ます。
労働審判をお考えの方は、一度弁護士などに相談されるとよいでしょう。

【参照URL】http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_minzi/minzi_02_03/

みなし残業の正しい知識を身につけましょう

これまで、みなし残業制度について記載してまいりましたが、みなし残業 45時間の意味や仕組み、その違法性などについてご理解いただけたでしょうか?
ご自身やご主人の会社がブラック企業かどうかの一つの判断材料として、残業時間や残業代を確認してみるのもいいかもしれません。

みなさんがお仕事をするうえで、このような心配事や不安がなく、気持ちよくお仕事ができればいいですね。