UKANO家計のクリニック

個人年金を途中解約するときに注意。仕組みや注意点をしっかり学ぼう

個人年金は必要なのか

最近は「老後の備えのために」などと銘打った、個人年金保険を目にする機会が増えてきました。
ゆとりのある老後を送りたいと考える人が増え、公的年金だけでは老後の備えに対して不安な人が多いためでしょう。
個人年金は、所定の年齢になったときに年金の給付を受け取ることができる、貯蓄型の保険です。
また、老後資金の積立以外にも、住宅資金や教育資金の積立などに利用されることもあります。

個人年金は、「保険料を支払い続ければ貯蓄ができる」という心理が働きやすいため、銀行に預金するより続けやすいメリットがありますが、老後資金を貯めるのに有利かというと、決してそうとは言い切れません。

個人年金に加入したものの、長期間に保険料を支払う必要があるため、金銭的な理由から途中解約をするか悩む人も増えています。
個人年金についての必要性や、メリットやデメリットをしっかりと抑え、加入を検討することが大切です。

個人年金の説明

個人年金の内容

生命保険の一種である個人年金は、長期間保険料を支払うように設計されており、契約途中で解約した場合は支払われる解約返戻金は、支払額を下回ることになります。
また、個人年金を解約したときに、解約返戻金を受け取ることができますが、解約返戻金は一時所得として扱われ、受け取った際は課税対象になります。

通常の場合、解約返戻金は一時所得で課税対象となるため、一時所得の金額が20万円を超える場合は確定申告が必要になります。
ただし、一時所得の計算方法は、特別控除(50万円)や、1/2課税などの措置が設けられているため、受け取る金額が20万円を超えていなければ、確定申告をする必要はなくなります。

個人年金の種類

個人年金の種類には「保険料の支払方法・年金の受取額・年金の受取期間」の三つに分けて考えることができます。
保険料の支払方法については「月払い」といった分割払いと、「一時払い」の一括払いがあります。

また、年金の受取額については、「定額年金」と「変額年金」があり、契約時に将来受け取る年金額が決まっているタイプを定額年金と呼び、保険会社の運用成績によって受け取る額が変わるタイプを変額年金と呼びます。

年金の受取期間については、「確定・有期・終身」の三つの種類があります。
5年、10年、15年など決められた期間、被保険者の生死にかかわらず年金を受け取る事ができる「確定年金」。
10年、15年、20年など決められた期間、被保険者が生きている限り、年金を受け取る事ができる「有期年金」。
一生涯、被保険者が生きている限り、年金を受け取る事ができる「終身年金」などに、分けることができます。

個人年金のように、積立型の生命保険を途中解約する場合、解約時に解約返戻金が支払われますが、支払った保険料はそのまま払い戻されず、保険会社の諸経費や積立金に対し、解約控除率を乗じた額を引いた金額が支払われることになります。

個人年金の解約

解約すると受け取れる解約返戻金

個人年金の契約を解約した場合、多くの場合は解約返戻金として受け取る金額は、それまで支払った払込保険料累計額を下回ってしまいます。
また、途中解約の場合は元本割れを起こすことが多く、さらに短期間での解約となると、解約返戻金の払い戻しが全くない場合もあります。

日本生命の個人年金を解約した場合

日本生命の個人年金は、契約日や商品によって、解約返戻金が払込保険料を下回る期間が決まっています。
そのため、それ以前に解約してしまう場合は、損をするということをまず頭に入れる必要があります。
解約後、新たな保険に加入する場合、保険は年齢が高くなればなるほど保険料が上がる仕組みになっているため、注意が必要です。

第一生命の個人年金を解約した場合

第一生命の個人年金も日本生命と同様に、途中解約をすると、解約返戻金として払い戻しされる金額が、それまで支払った総払込保険料を下回ることになります。
さらに、解約をした時点で契約は解除となり、保障がなくなります。
また、その後続けたいと思っても、契約内容を元に戻すことはできず、健康上の理由で再度契約することが難しくなります。

解約返戻金に税金がかかる場合もある

保険契約を解約して解約返戻金を受け取った場合は課税対象になるため、払い戻しされた個人年金の満期返戻金や解約返戻金は、一時所得として課税対象となります。
また、一時所得の金額が20万円を超えるようであれば、確定申告をする必要があります。

ただし、自分が契約していた個人年金を解約し、解約返戻金を自分で受け取ったということであれば一時所得となりますが、配偶者や親が保険料を支払い、その契約の解約返戻金を自分が受け取った場合は、贈与税の課税対象になります。

日本生命の個人年金を解約した場合

日本生命の個人年金を解約した場合、万が一の場合の相続税の生命保険金非課税扱いや、所得税の生命保険料控除など、税法上の特典を受けることができなくなります。

第一生命の個人年金を解約した場合

第一生命の個人年金を解約した場合も、日本生命と同様に、万が一の場合の相続税の生命保険金非課税扱いや、所得税の生命保険料控除など、税法上の特典を受けることができなくなります。

解約の理由

まとまったお金が必要

個人年金や生命保険を解約する理由として、まとまったお金が必要となるケースがあります。
例えば、緊急の手術や入院に必要な費用であったり、事業などの失敗による負債の解消など、ライフスタイルにおける突然の変化に対応する場合がほとんどです。

こういった場合、一般金融機関などに貸付を頼むことも考えられますが、担保が必要になります。
ただし、担保を準備できない人には、契約者貸付制度を利用する方法もあります。

保険料の支払いが困難

保険料の支払いが困難になり、個人年金や生命保険の途中解約をするケースがあります。
こういった場合は、個人年金自体を払い済み保険にすることで、解決することが可能です。
払い込み保険とは、保険料の支払いをなくし、できるだけの保証内容に切り替えることです。

個人年金では、契約時から満期まで保険料を支払った後、十分な額を返戻していきますが、払い込み保険とは、契約時から支払う準備をして、その支払額はその時の積立額になるため、基本的にいつからでも支払い開始をしても問題ありません。
ただし、個人年金を払い込み保険にした場合は、毎月や毎年に受け取れる保険料の額が、引き下げられてしまうため、注意しましょう。

個人年金より良い貯蓄方法がある

個人年金や生命保険を途中解約して、他の貯蓄方法を選ぶ際に「確定拠出年金」が挙げられます。
確定拠出年金とは、自分自身で毎月の掛金を運用しながら積み立てていき、原則60歳以降に年金として受け取る仕組みになっています。
どのような金融商品を活用して運用するか、掛け金を毎月いくら積み立てるか、そしてお金を受け取るにはどうするのかなど、自分自身ですべて決めることができます。

確定拠出年金では、毎月の掛け金が全額所得控除され、所得税と住民税を軽減することができます。
一方、個人年金も所得控除の対象ですが、全額ではないため、確定拠出年金の方が節税効果が高く、メリットが大きいと言えます。

解約前に検討すべき事

保険会社からお金を借りる「契約者貸付制度」

契約者貸付制度とは、生命保険の解約返戻金の範囲内で、お金を借りることのできる制度です。
解約返戻金のうち、割合は保険会社によって違いますが、一定の範囲内でお金を借りることが可能です。
解約返戻金とは保険を解約する際に戻ってくるお金を指し、支払う保険料のうち、一定の割合が解約返戻金に回されます。
よって、契約者貸付制度とは、個人年金で積み立てている保険料のうちの一部を借り入れできる制度です。

住友生命の個人年金についての解約や、日生の個人年金を解約したい場合、個人年金を継続していく方法の一つとして、契約者貸付制度を提案することがあります。

保険料を少なくする「減額手続き」

個人年金や生命保険を解約する以外の方法として、減額手続きという制度があります。
減額手続きは、保障金額を減らしたり、給付日額などを減額するなどして、支払う保険料を抑えるという方法です。
ケースバイケースですが、日生の個人年金を解約する際にも利用できるため、減額手続きを行うことも検討してみましょう。

補償額の少ない保険に変更する「払済保険」

個人年金や生命保険を解約する以外の方法として、払済保険という制度があります。
払済保険とは、保険料の払込を中止し、解約返戻金を一時払の保険料に当てていきます。
保障額は少なくなりますが、保険期間はそのままの状態で契約を維持することができます。
ただし、払済保険可能な商品や最低金額が決まっているので、注意が必要です。
日生の個人年金を解約する前に、検討してみるのもよいでしょう。

本当に個人年金の解約が必要なのかもう一度考えよう

個人年金は、公的年金では足りない分を補い、老後の生活を豊かにするためのものです。
定年後、60歳以降も仕事を続けるという人や、老後を迎えるまでの間に十分な貯金をできる人については、個人年金は加入する必要性はないかもしれません。

しかし、20代から40代の人たちが老後を迎える頃、日本の公的年金制度である厚生年金や国民年金がどうなるかは、誰にも分かりません。
制度自体が崩壊しているようなことは無いかもしれませんが、年金の受け取り開始年齢が引き上げられていたり、金額が少なくなっている可能性は十分に考えられます。

地道に老後の貯蓄をしていくことが難しいという場合、個人年金という半強制的な形で貯蓄することも、将来のためには有益となります。
個人年金の解約を考えているならば、本当に解約が必要かしっかりと考えて、ゆとりある老後を迎えるために個人年金を活用しましょう。