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遺産相続時の最低保証となる遺留分
「遺留分権は誰にあるのか」「兄弟が遺産を受け取れるケースはどの場合か」など、疑問に感じやすい項目をまとめましたので、是非ご覧になって下さい。
お役に立つことができると幸いです。
遺留分における兄弟間のルール
遺留分について、遺留分減殺請求や遺言、権利は誰にあるのかなどをご説明します。
侵害されても兄弟間では取り返せない
遺留分権限は、亡くなられた方(以下:被相続人と呼びます)の「配偶者」・「直系卑属(子・孫)」・「直系尊属(父母祖父母など)」にあります。
被相続人の遺言などにより遺留分が「侵害」された場合には、財産を受け取った人から最低保証の遺留分を請求する、「遺留分減殺請求」ができます。
(ただし、相続が発生して減殺すべき相続であることを知ったときから1年、または相続が発生してから10年で時効となり消滅する。
民法第1042条)
しかし被相続人の兄弟には遺留分権は無いため、もし兄弟の内1人が遺産相続を受けたとしても、それは被相続人が残した「遺言」が成せることですので、兄弟間で取り返すことはできません。
詳しい内容は以下の項目で順を追って説明します。
財産は遺言によって分配される
「遺言」とは被相続人自身が亡くなった後のために、財産の処置をどうするかの文章を残したものをいいます。
内容は「相続の割合(法で定められた相続の割合と異なる場合)」や「相続人の排除・排除の取り消し」や「相続人以外に財産を贈る」といったことが記載されます。
遺言の種類としては、「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の3種類です。
自筆証書遺言は遺言者本人が自筆する遺言のことで、秘密証書遺言は遺言者が内容を他者に知られたくないときに使われ、公正人と証人に秘密証書遺言の存在を証明してもらった遺言のことをいいます。
公正証書遺言は公証人が作成した文章で、法律で定められている内容に沿って書かれた遺言です。
自筆証書遺言は、曖昧な表現がある場合は内容の法的解釈が難しく、分配を行うときに争いに繋がることがあります。
また、日付がなかったり修正の手順が間違っていることで無効となるケースもあります。
遺言がなければ平等に分配される
遺言がない場合は、被相続人の全財産を民法に基づいて分配します。
以下に例を挙げて説明します。
配偶者及び子が2人いる場合の割合
分配の割合は、配偶者が全財産の2分の1、子が2分の1なので、子が2人の場合は、1人当たり4分の1が分配されます。
子のうち1人が血縁関係のない養子
血縁関係のない養子であっても、実子と同様に財産を受け取る権利があります。
養子に出した子がいる
養子に出した子どもに関しても血縁関係は切れないので、他の兄弟と同様に財産を受け取ることができます。
(ただし養子縁組方法をとった場合は、血縁関係が切れるので財産を受け取ることはできません。よって、婿養子に出した場合には相続権は無くなります。)
配偶者がおり子はいない
子がいない場合は配偶者が3分の2、直系尊属(父母)が3分の1を受け取ります。
子のみがいる(配偶者は亡くなっている)
子がすべての財産を相続します。
兄弟は寄与分の主張が可能
二親等内の親族であれば、被相続人の生前に事業に関する労務の提供又は財産上の給付・被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持及び増加について特別の寄与をした者には、他の相続人との不公平を是正するための寄与分の主張が可能です。
(民法第904条の2)
当てはまる例としては、長年に渡り被相続人の介護をしていた(介護をしなければ被相続人が介護費用を負担する必要があった)、無償で家業を手伝っていたなどがあります。
遺留分権は第二順位の法定相続人まで
遺留分は、被相続人の遺言書の内容が、残された家族にとって不利益なものである場合でも、家族の生活が成り立つように、最低限保障される財産であるため、被相続人により近しい家族が対象とされてます。
遺留分権が認められる被相続人は、「配偶者」(配偶者は常に相続人となります)と第一順位の「直系卑属(子・孫)」、第二順位の「直系尊属(父母祖父母など)」までの法定相続人です。
「兄弟」は第三順位に当たり、“遺留分権は認められない”ということが分かります。
兄弟に遺留分が認められない理由
なぜ兄弟に遺留分が認められないのか、代襲相続・財産処分の自由について、詳しく説明します。
代襲相続があるから
代襲相続とは、相続発生前に相続人(子)が亡くなっていた場合には、その子ども(被相続人からして孫)が代わりに財産を相続する制度です。
では被相続人の兄弟には、代襲相続は関係ないかというと、そうではないです。
被相続人に直系卑属(子・孫)がおらず、直系尊属(父母祖父母など)が相続の開始以前に死亡している場合には、配偶者が4分の3、被相続人の兄弟が4分の1を分け合うことになります。
配偶者もすでに亡くなっている状況であれば、被相続人の兄弟だけが相続人となり、兄弟が財産相続を受け取る場合があるのです。
血縁上遠い存在であるから
そもそも遺留分とは、残された遺族の生活保障のためにあり、被相続人に近い人を優先して財産を分配する形が取られています。
この考え方からすると、関係が薄いとされる血縁上遠い存在の兄弟は、対象外とされることが分かります。
そして、被相続人には「財産処分の自由」という財産権があるので、もしも自身の兄弟に財産を渡したい場合には、生前贈与を行ったり遺言書へ配分の詳細を記載するといった対応ができるので、そういった被相続人の意思が無かった場合には、法律に基づいた分配がされるというわけです。
兄弟が財産相続を受け取れるケース
兄弟はまったく遺産相続を受けないかというと、受け取れるケースもあります。
遺言書に兄弟への遺産配分が記載されていた
資産相続の割合で1番優先されるのは、遺言書の内容です。
被相続人の生前に、兄弟にお世話になったから財産を残したいという思いがあり、残された遺言書に「兄弟への財産相続分の割合が指定されていた場合」には、兄弟も財産相続を受け取ることが可能です。
被相続人から生前贈与を受けていた
生前贈与とは、被相続人の生前に財産の贈与を受けることです。
ただし、“相続開始1年前に贈与されたもの”と、”贈与者と受贈者の双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したとき(1年以上前の場合も)”は遺留分減殺請求の対象となり(民法第1030条)、遺留分権利者の最低保障額を侵害していると判断できるので、生前贈与を受けても、返還を行う可能性があります。
被相続人と同居していた
被相続人と同居しており、長年に渡り被相続人の生活費を支払っていたり、被相続人の介護や看護を行ったり、身を削って尽くしてきた場合には、財産の維持及び増加に貢献していたとして、寄与分として認められる可能性があります。
寄与分が認められる条件は厳しく、ただ介護をしていただけで認められるものではありません。
介護や看護を行ったことにより、介護サービスを受ける必要がなくなり、財産の維持に繋がったなど、“特別な寄与”に当たることが前提です。
資産分割協議で相続人全員の同意を得られることが必要で、同意を得られなかった場合には、家庭裁判所に申し立てをすることになります。
まずは弁護士に相談してみよう
遺産相続は遺留分も含め親族間で協議をしますが、感情的になり揉め事に繋がりやすいです。
揉め事が脅迫に繋がると、裁判に発展することもあり、家族仲が悪くなる原因になるので、自分が脅迫する側にならないように、十分に注意をしましょう。
相続人全員が被相続人への感謝の気持ちを忘れず、親族の仲を悪くすることのないように、慎重に協議を進めることが大切です。
まずは豊富な知識をもった弁護士に相談し、冷静な視点で意見やアドバイスをもらうことから始めましょう。