遺産分割をする方法(ライト層)
遺産とよばれる相続資産には現金、預貯金、証券などの有価証券と土地建物などの不動産などがあります。
遺産のすべてを把握し相続人で公平に分割することが遺産相続によるトラブルを回避するうえで大切です。
遺産分割でもめる場合
遺産相続に関するトラブルは、年々増加しています。
「たいした相続資産がないから」と対策をしていない家庭ほど大きなトラブルになる可能性があるのです。
中流家庭でもめる
遺産相続に関するトラブルのほとんどが中流家庭で起きています。
遺産総額が5,000万円以下の家庭で遺産相続に関するトラブルが起きているのです。
兄弟姉妹でも相続に関する考え方が違うことが原因。
長男だから遺産を多くもらえるはず、介護をしていたから遺産を多くもらいたいなど兄弟それぞれの立場、また相続人の配偶者の考えも含まれることにより遺産トラブルへと発展するのです。
不動産の分割方法でもめる
現金化しにくい不動産が遺産に含まれている場合、相続人同士でもめることが多くなります。
国税庁の平成24年度のデータでは遺産の中に含まれる不動産の割合は、土地が約45%、家屋などの建物が約5%。
遺産の半分は不動産なのです。
「投資用の不動産をたくさん所有している」わけではなく、「実家の土地建物」が遺産としての不動産のトラブルになる場合があります。
複雑な不動産の分け方
不動産は簡単に分けることができません。
そのため分割の仕方や不動産の評価方法でもめるのです。
とくに不動産の評価方法は4種類あり、遺産分割では「時価」を使用します。
この時価は不動産業者により値の付け方が異なることがトラブルの要因となるのです。
親を介護した相続人がいる場合
長年親と同居し、親の仕事を手伝い介護状態になれば介護した相続人がいる場合も遺産をめぐる争いになることがあります。
この問題は仲のよかった姉妹兄弟でも起きるのです。
「介護をしていて自分の生活も犠牲にしたのだから遺産の取得分を増やして欲しい」と介護していた人物は思います。
しかしほかの相続人は「同居していたのだから介護するのは当然」と同居し介護していた相続人の法定相続分の増額には同意しないからです。
同居していたせいで疑われる
ほかの相続人は同居していた相続人を疑うことがあります。
隠し財産として遺産の一部を隠しているのではないか、介護費用といつわり親の預貯金の一部を使い込んでいたのではないか、とほかの相続人から疑われてしまうケースもあるのです。
遺産分割の方法
遺産その物を現物で分ける現物分割
遺産の分割方法としては一般的な方法です。
例えば3人の相続人がおり、土地、現金、建物の遺産がある場合、協議のうえ1人は土地、1人は現金、1人は建物をそれぞれが相続。
現物分割は簡単にできる方法ですがそれぞれの遺産の価値が異なる可能性も考えられます。
価値の格差が大きい場合は遺産の一部を売却する、自己資金で調整するなど公平に分割することが必要となることもある方法です。
遺産を売却して金銭で分ける換価分割
土地建物などの不動産を売却し換金します。
換金により得た金銭を相続人の人数で分割する方法です。
換価分割するためには土地建物を相続登記する必要があります。
方法としては2つ。
1.換価により得る現金を法定相続分で公平に分配する
分割前の相続共有登記と判断され登記申請の際遺産分割協議書は提出の必要はありません。
2.換価により得る現金を法定相続分とは異なる割合で分配する
登記申請の際、遺産を換価することにより得る現金の分配割合を記載した遺産分割協議書の添付が必要になります。
相続登記をする場合、名義は相続人の代表者の名前です。
売却後に売却益を得た代表者がほかの相続人へ公平に分配します。
財産を相続した者が他の相続人へ金銭で支払う代償分割
相続人の中で法定相続分以上の相続をする人物がいるなど、遺産は公平に分配することが難しいこともあります。
とくに土地建物などの不動産は遺産の共有も難しい部分もあるのです。
そして共有はあとからトラブルになることも考えられます。
代償分割はすべての相続人の納得のいく遺産分割が難しい場合、相続人の代表者が遺産を相続しほかの相続人へ相当額の金銭を支払う方法です。
不動産を相続人で共有する共有物分割
土地建物を複数の相続人で共有して相続する方法となります。
この場合、管理や処分について共有する相続人すべての同意が必要。
しかし相続人同士で不動産の管理や処分についての意見は分かれることも多くあります。
土地やマンションなどの不動産を共有して相続する方法は、相続人同士が仲違いする可能性もありできれば避けた方がよい相続方法です。
遺産分割の手続き
法定相続人だけで話し合う協議分割
相続人同士が遺産の分割方法について話し合うことを遺産分割協議といいます。
その遺産分割協議で決められたとおりに遺産を分割する方法が協議分割。
遺産分割協議にはすべての相続人の出席が必要です。
相続人全員の納得があれば法定通りの遺産分割でなくてもよいことになっています。
家庭裁判所の調停で決める調停分割
相続人同士の話し合いで遺産分割協議が決まらないときは、家庭裁判所が仲介となり協議を行うことになります。
遺産分割調停の申立書に必要事項を記入、添付書類とともに管轄の家庭裁判所に提出。
添付書類は遺産の内容のほか相続人の戸籍謄本が必要です。
調停委員や家庭裁判所の審判官の仲介のもとに協議を行います。
原則、相手方の相続人と顔を合わせることはなく、調停委員へ自分の考えを伝えることで分割方法を決定します。
調停が成立すれば調停調書が作成されて終了です。
家庭裁判所に決めてもらう審判分割
相続人同士の遺産分割協議でも、分割調停でも成立しない場合は遺産分割審判へ移行します。
審判は「訴訟」といえるものです。
お互いの主張、証拠の書面での提出が必要となります。
家庭裁判所では書面に基づき事実を調査。
裁判官による遺産分割の方法についての審判が下されます。
「審判書」とよばれる書面が作成され各相続人に交付され審判は終了となるのです。
遺言書どおりに分割する指定分割
遺言書で遺産分割の方法を指定している場合があります。
遺言書ですべての相続財産への分割方法の指定がある場合、相続人は協議の必要はありません。
ただし、遺言書と異なる遺産分割方法にすることも可能です。
相続人全員の同意が必要ですが、相続人同士で協議を行い分割する方法もできます。
その場合は遺産分割協議が優先されるのです。
遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議書の様式
遺産分割協議書の様式に決まったルールはありません。
手書き、パソコンで作成、そのどちらでも構いません。
横書き、縦書きのどちらでもよいことになっています。
自分自身で作成しても構いませんが、専門家に依頼することも検討しましょう。
遺産についての取り決めを書面にするものです。
弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に任せたほうがスムーズな場合もあります。
遺産分割協議書の書き方
遺産分割の話し合いを遺産分割協議といいます。
遺産分割協議書は、誰がどのくらいの遺産を相続するかを相続人全員で取り決め、内容を書面にまとめ相続人全員の署名と実印を押して作成。
作成に期限は決められていません。
しかし、確実に作成しないと銀行の解約、不動産の名義変更ができないこともあるのです。
遺産分割協議書
● 遺産分割協議書
タイトルとして必ず記入します。
● 被相続人の名前、死亡日時、最後の住所、最後の本籍地、登記簿上の住所
故人の名前と死亡日時を記入します。
住民票や戸籍を参考に故人の最終の本籍地と住所も記入。
● 前書き
故人の氏名と死亡日を記載し、分割協議を行ったことを明記します。
協議に出席した人物の名前も記入します。
● 相続財産の明記
誰がどのくらいの遺産を相続するのかを記入します。
通常、年齢が上の方から順番に記入しますが順番に決まりはありません。
● 債務を記入
借金などの債務がある場合もすべて記入。
● 財産が後日判明した場合について
後日、財産が判明した場合について記入。
● 作成年月を記入
遺産分割協議書を作成した日付を記入。
● 相続人全員の住所、氏名、実印にて押印
認印は不可です。
● 複数枚になるときは製本、実印で割印を押印
遺産分割協議書は数ページになる場合もあります。
そのときは市販の製本テープを使用して製本しましょう。
その後、表紙か裏表紙のどちらかに割印を押印します。
製本テープ、本紙をまたぐように相続人全員の実印で押印。
遺産分割協議書は各相続人が一通ずつ保管します。
この遺産分割協議書を作成すると遺産協議についてのやり直しはできません。
不動産の記載に注意
遺産分割協議書に記載する不動産は登記簿謄本の記載事項をそのまま記載します。
不動産の相続登記に遺産分割協議書が必要ですが、不動産の記載に間違いがあると相続登記ができないこともあるのです。
法律相談所のご案内
遺産分割などのトラブルは弁護士などの専門家に相談しましょう。
法テラス
正式名称は「日本司法支援センター」です。
法的なトラブルを解決するために必要な情報、サービスを全国どこでも受けられるような社会の実現」が設立理念となっています。
相談は法テラスのサポートダイヤルへ電話。
自宅近くの法テラス事務所の紹介などを行っています。
遺産分割など相続のトラブルを解決するための相談窓口の紹介、手続きなどを無料で紹介します。
解決についてのアドバイスのための相談とは異なり、あくまでも相談内容に合わせた適切な窓口紹介、法手続きの案内です。
【参照URL:https://www.houterasu.or.jp/service/souzoku_igon/index.html】
遺産相続無料相談センター
40年以上の経験がある弁護士が中心となって発足しました。
相談窓口を一つにし、不動産についての相談も可能。
ファイナンシャルプランナー、税理士、障がい者相談支援専門員、司法書士などの資格を持つスタッフがチームとなり解決に向けて取り組みます。
2つの法律事務所が行っているため、平日と休日・祝日で対応する事務所が異なる分担制です。
事務所は東京都内ですが、地方の方の相談にも電話やメールで受付ております。
【参照URL:https://isan-soudan.org/】
遺産相続弁護士相談広場
遺産分割のトラブルの解決に強い弁護士を紹介するポータルサイトです。
相談内容と居住している地域から検索し相談内容に最も適した弁護士を探すことができます。
地方ごとに遺産相続問題に強い弁護士のランキングや条件によって弁護士を探すことも可能です。
連絡は各弁護士事務所に直接電話かメールで行います。
土日の電話受付は行わない事務所があるなど対応が異なりますので注意が必要です。
【参照URL:https://www.souzokuhiroba.com/】
相続遺言相談センター
行政書士法人・司法書士法人オーシャンが運営しています。
東京都渋谷、神奈川県藤沢市、横浜市などの遺産相続についての相談を受付ています。
スタッフは行政書士、司法書士、相続遺言アドバイザー、社会労務士などの資格を取得。
弁護士、税理士、土地家屋調査士などの専門家とも連携し相続問題を解決します。
初回の相談は90分間無料です。
まずは電話で相談を受付け、このときに相談内容の確認と面談の日程を決定します。
その後、面談の際にトラブル解決にかかる期間と費用についてと相続遺言センターがサポートする内容についてが書面で説明されるのです。
【参照URL:https://ocean-souzoku.com/isanbunkatsukyougi/】
相続弁護士ナビ
相続問題に強い弁護士を紹介するポータルサイトです。
居住地域と相談内容から弁護士を探すことが可能です。
検索によって探した弁護士に直接メールか電話で問い合わせをします。
電話での相談は無料、一部ですが面談も無料になっている事務所も。
事務所により異なるので注意が必要です。
登録されている弁護士はすべて相続問題に詳しい弁護士となっています。
【 参照URL:URL:https://souzoku-pro.info/columns/8/ 】
遺産分割協議の期限
いつまでに遺産分割協議を行いましょうという期限は設けられていません。
ただし、相続税の申告期限は定められています。
相続税は配偶者控除などの控除制度が設けられていますが、この適用を受けるための相続税の申告期限は相続を開始してから10カ月です。
未成年の相続人
相続人の中に未成年の方が含まれている場合、親権者である親が子どもの代理として遺産分割協議に参加することはできません。
これは親子の利害が対立してしまうこともあるからです。
この場合は家庭裁判所へ申し立てをし親権者の代わりとなる「特別代理人」を選任します。
また未成年の方が成人するのを待ってから遺産分割の協議を開始する方法も可能です。
この場合は特別代理人の選定の必要はありません。
生前に家族で話し合う場をもちましょう
遺産相続に関するトラブルは近年増加傾向にあります。
しかも中流家庭でのトラブルが多くなっています。
金銭にまつわる問題ですので長期化する傾向にあり精神的に負担も大きいです。
親が生きているうちに家族で遺産分割についての話し合いの場を持ちましょう。
すべての資産を明らかにしてもらい、とくに不動産の分割方法については時間をかけて納得のいくまで話し合いましょう。